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『Dual Duel 』
エルレーン・バルハザードja0889


●Destined

「見つけたぞ‥‥エルレーン!」
 盾を背負い。大剣を構えた少年が、少女を目にしたその瞬間。
 怒りを露にし、地を蹴り‥‥猛然と、飛び掛る!
「私の大剣で、貴様を今日こそ真っ二つにしてくれるッ!」
 それを、少女は、上着一枚を盾にし、回避する。
 引き裂かれた布屑が宙を舞う中、少女の声もまた、響く。
「‥‥どぉしてラグナはわかってくれないの?私はいつだって、ラグナのために頑張ってるのに‥‥!」

 彼らは、元は一人の師の下で学んだ、兄弟弟子だった。
 関係は必ずしも良好とは言えない物であったが、それでも、お互い最低限の礼儀は弁えていた。
 ――だが、ある日、惨劇は起こってしまう。
 師が、エルレーンを救うため、命を落としてしまったのである。

 師の遺言に従い、ラグナを守ろうとするエルレーン。
 師の仇として、エルレーンを師と同じ目にあわせるべく復讐に燃えるラグナ。
 二人の戦いは、悲しいすれ違いによる、必然の物。


●力と技、剛と柔

「っ、このぉ!」
 ラグナの大剣が一直線に上から振り下ろされる。
 だが、エルレーンの身のこなしは、尋常のそれではない。紙一重で横に体をずらし、そしてそのまま大剣の腹に手を当て、滑らせるようにしながらラグナへ急速接近!
「――ちょこまかと!」
 強引に、腕力に任せて地を抉りながら。大剣を横に振り回しハエタタキの如く横からエルレーンを狙う。
 跳躍。速度に優れるエルレーンを捉えるのは、そう簡単な事ではない。
 しかし、反撃のため投げ付けられた苦無は、ラグナの鎧に弾かれる。ラグナの防御力もまた、一級品なのである。
 再度振り上げられる大剣。空中に居る状態ならば、回避もままならない。そう踏んでの一撃なのだろう。
 だが、体重が軽めかつ軽装備のエルレーンはそのまま自分から体を浮かし、薙がれた勢いそのままに空を駆け、近くの電柱に足をつけて三角ジャンプし、ラグナの上方を取る!
「貰ったよー!」
「ちぃぃ!」
 苦無を構えたエルレーンに対し、咄嗟に盾を構えその攻撃を防ごうとする。
(「このままカウンターで‥‥!」)
 圧倒的な防御能力を誇るラグナ。腕力では彼の方が圧倒的に上。このまま防いでそのままシールドバッシュで反撃を――

「?」
 だが、想像していた衝撃がやってくる事はなかった。
 視界をも覆い隠していた大盾を僅かにずらし。上の様子を見るラグナ。そこに、エルレーンの姿はない。

 ちゅっ。
「!?!!?」
 頬への柔らかな感触。それが、エルレーンの口付けだと気づくのに少々時間は掛かり――そして、認識されたその事実は、ラグナを一気に混乱の渦中へと叩き込んだのである。
「な、何故‥‥何を‥‥っ!?!?」
 自他共に認める『非モテ』であるラグナ。女性免疫の無い彼にとってこの行動は‥‥その、少々『刺激が強すぎた』のだろう。何かを振り払うかのように高速で振り回されるその大剣は、周囲の岩や電柱等の障害物を次々と粉砕していくが‥‥その行動には技術等なく、極論すれば駄々っ子が腕をぶんぶん振り回しているのと然程代わりはない。

 ――但し、巨人並みの力を持った駄々っ子だが。

「ちょ、危ないよラグナ!」
 初撃を武器で受け流し、即座に後退する。
 時には服を身代わりにしながら(余談だが、この技を使う度に、エルレーンの‥‥‥‥『露出度』、は、高まっている)飛来する瓦礫を回避していくエルレーン。だが、乱打によって飛び散る瓦礫は、時には不可解な軌道を描く事すらあり――それがエルレーンの肌を掠め、傷つける事もあった。
「もー、怒ったんだからぁ!」
 放たれたのは、霧の刃。ラグナを大きく傷つける事はなく――寧ろ、エルレーンはそれを知って、安心して放ったのだが――霧が目に纏わりつき、視界を奪う。
 だが、それは更に、ラグナの恐怖を煽る事になる。
「来るなっ!!」
 振り回す速度は一層、上がり、伴って飛来する土石の密度も上昇する。
「あっちゃー、怒らせちゃったか」
 バックステップ。壁走りで付近の電柱の上へと上がり、観察するエルレーン。
「ま、その内疲れるか。んふふー」
 じっと、そのまま観察する。


●逸を以って労を待つ

 如何に撃退士が常人を上回る体力を持っていようと。
 如何にラグナが、その撃退士の中でも持久力が優れていようと。
 その力は無限ではない以上、永遠に動き続ける事は不可能である。

「っと、今だよぉ!」
 纏わり付く霧が晴れ、ラグナの動きが僅かに遅くなるその瞬間。死角となる背後から急接近し、再度霧の刃を叩き付けると共に、首筋にちゅっと口付け。
「うぉぉぉぉ!?」
 振り向くように振りぬかれた大剣は、しかし視界の悪さが影響し、エルレーンを掠めることすらない。

「はぁ‥‥っ、はぁ‥‥!」
 疲労したラグナの手は、終に止まる。ほぼ同時に、その目を覆っていた最後の一片の霧が晴れ、彼は視力を取り戻す。
「次はこれだね!」
 高所に立っており、影を可能な限り伸ばしたエルレーンの影が、ほぼ同時にラグナを縛り上げる。
「ぬおぉぉ!」
 振り回す剣は、しかしエルレーンには届かない。
 射程の違いだ。腕力では圧倒的にラグナが有利であるが‥‥それも「届かなければ」意味がない。
 動きを止められた事により、ラグナが見せた一瞬の隙。そこを突き、体当たりするエルレーン。ラグナのバランスを崩し、しりもちを付いたその隙に、縄がラグナに絡み付き、縛り上げた。

「ぐうぅ‥‥っ!」
 腕に力を込め、ラグナが縄を引きちぎろうとする。
「無駄よぉ!一応魔具なんだからね」
 にやにやと笑うエルレーン。
 ラグナの体力が万全の状態なのであれば、或いは千切れたかも知れない。だが、先ほどに彼は、余りに消耗しすぎた。大剣を持ち上げる事すら難しい現状では、脱出は難しいだろう。

 ――そもそも、今回の件に於いて、エルレーンとラグナでは『勝利条件』に大きな違いがあった。
 ラグナはエルレーンの殺害を狙っていたのに対し、エルレーンが狙うのはラグナの『捕縛』。
 本当にお互い、殺し合いになるのならば、回避で当たらないエルレーンと、防御が高く当たってもダメージになり難いラグナでは、千日手に成りかねない。だが、そもそも殺害を狙っていないとしたら?
 捕縛を狙うのならば、如何に防御に優れる者でも、意味がないのだ。傷つける事を、相手は狙っていないのだから。

「んっふふ、さて、はじめようかっ☆」
 エルレーンの笑みに、悪寒がラグナの背筋を駆け抜ける。


●お楽しみタイム

「ね、これはどう?ラグナ!」
 指でつーっと撫でられ、腹筋がピクッ、ピクッと跳ねる。
「やめろぉ!顔を近づけるな!」
 今度は頬に吹きかけられる息に、じたばたと暴れる。だが、念入りに縛ってある拘束がそう簡単に解ける訳はなく、ラグナはもがくだけである。
 ――こうやって暴れるということは体力が減少していく事であり、その分脱出より遠ざかると言う事なのだが‥‥余りの不慣れなシチュエーションにその事に気づく余裕すらないのだろう。
 しばらく我慢して動かないで居れば、体力が回復して拘束から抜け出せるはずなのだが‥‥

「えーい、いっそくすぐっちゃえ!」
 こちょこちょ。
「く‥‥や、やめっ‥‥!」
 我慢している所へ、唇に柔らかい物が触れる。

「ラグナは私がずーっとおまもりしてあげるんだからねっ☆」
 ラグナの受難は、まだまだ終わらない。
 彼が開放されたのは3時間後。余りの精神的刺激に気絶してしまった、その後であった。

 しかし――
「エルレーン、今日こそは叩き切る!」
 二日後。またもや同様の事が、始まったのであった。
 ‥‥無論、その結果もまた、言うまでもない。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
ja0647/エルレーン・バルハザード/女/17/鬼道忍軍
ja3538/ラグナ・グラウシード/男/20/ディバインナイト


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました。

発注文の中で投げかけられた質問。それに対する剣崎の回答がこちらとなります。
敵をフルボッコにするのみが戦いではございません。目的が違えば、取れる手段も違う物です。

尚、最後のいちゃつきについては量がやや少なめですが、これ以上やると見せられないよ的な事になる可能性がございましたので、これまでとさせていただきました。ご了承くださいませ。
■イベントシチュエーションノベル■ -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年08月15日

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