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『子猫たちの夏☆温泉 』
猫宮・千佳(ib0045)


 波音は耳に心地良く繰り返し、白い砂浜を洗っては返す。
「にゅふふ、待つにゃよ〜っ!」
 輝く陽光に踊る、まとめた金髪。
 青い空をバックにピンと立つ猫耳。
 そして好奇心旺盛な大きな瞳。
 薄いオレンジのパレオをひらめかせ三段フリルでふわふわのビキニトップに包んだ幼い体をいっぱいに使い、少女が波打ち際を走る。
「コクリちゃん……」
 猫宮・千佳(ib0045)、走る姿勢から一瞬ためて、万歳ダイブ。
「……つっかまえたにゃーっ!」
「ああんっ。千佳さん激しすぎーっ!」
――ずしゃ、ばしゃーっ!
 千佳、前を走っていた少女、コクリ・コクル(iz0150)の腰に抱き付いて押し倒した。二人して転んだところを、ざぶ〜んと波が包む。
「ぷわっ!」
「にゅ〜」
 二人して身を起こす。砂浜にぺったり座って改めて前を見ると、お互いの顔が近いことに気付く。ざぷ〜ん、と波がまた寄せて二人の太股などを洗う。
 見詰め合い、くすくす笑う。
「千佳さん、髪の毛乱れちゃってる」
「うに、コクリちゃんもにゃ」
 手を伸ばしちょいちょい、と前髪を整えあったり。
 ここでコクリが「あ!」。
「ねえ千佳さん。浜で黒い水着を着た女の人がまたボクたちのほうを見てニコニコしてるよ?」
 コクリ、ちょっと足を崩して浜の方を見て言う。
 が、「ひゃんっ!」。
 千佳がコクリの尾てい骨を撫でているではないか。
「にゅふふー。コクリちゃんのお尻、タッチにゃ♪」
「あん、駄目だよう。千佳さんに借りたこの水着、お尻が出てるんだから〜っ!」
 コクリは白いワンピース水着に包まれた胸の前で両脇を締めるように腕を合わせてぶるぶるっと身震い。その水着、背中がざっくりと開いて背骨はもちろんお尻の尾てい骨まで丸出しだった。
「猫の尻尾が出るようになってるからにゃ。獣人用の水着なら当たり前にゃ♪」
 当然、という感じでにゃふんとしている千佳。
「んもう。それじゃ千佳さんのビキニはどうなってるか……こうだ!」
「にゃ! コクリちゃんエッチにゃ!」
 千佳、コクリにパレオを剥がされそうになって立ち上がり逃げる。それを追うコクリ。必死にパレオを捲ろうとしている。
 にゃんにゃん揺れる千佳の猫尻尾。
 頭の猫耳もぴくぴく揺れているよう。
「コクリちゃんも猫尻尾と猫耳付ければよかったのににゃ〜。今からでも遅くないにゃよ?」
 ききき、と止まって振り向く千佳。逃げると不利なのが分かったらしい。悪戯そうに両手をわきわき。攻撃に転じる。
 止まったコクリは身の危険を感じ、回れ右。
「千佳さんほどかわいくならないからいいよぅ〜」
「そんなことないにゃよ〜」
 またもコクリが背中をさらして逃げる。
「待つにゃ〜」
「ああん。だったら黒いマイクロビキニの方を借りればよかった〜っ」
「あれもローライズにゃよ?」
 そんなことを言いつつ浜辺を走る少女二人。
 浜にいた黒い水着に黒い長髪の女性はその様子を飽きもせずに眺めて微笑していた。


「コクリちゃん楽しかったにゃね〜♪」
「だよね〜」
 たっぷり遊んだ千佳とコクリ、浜辺近くの旅館へと仲良く水着姿のまま帰り着いた。
「あら、お帰りなさいませ。たくさん遊んだようですね。……体が塩水でべとべとするでしょう? 温泉で流すといいですよ」
 宿の女性はにっこりと奥へと手を差し伸べる。そこには男女と書き分けられた暖簾があった。
「露天風呂にゃか?」
「ええ。見晴らしがいいですよ。あら、そちらさまは確か……」
「コクリちゃん、早速行くにゃ〜っ。……うに、お姉さんも温泉行くにゃ?」
 千佳、右拳を突き上げコクリの手を取ったところで、浜で自分たちを見ていた女性がいたことに気付く。
「温泉、楽しそうですね」
 女性は目尻を下げて千佳に微笑する。
「そうだね。一緒にいこっ」
 コクリが頷き、共に「女湯」へ。
 で、更衣室。
「うに?」
「どうしたの、千佳さん?」
「お姉さん、水着のまま温泉に行ったにゃ」
「混浴ってわけでもないのにね。……って、千佳さん脱ぐの早っ!」
 妖しく黒ビキニの豊満なヒップを揺らし一足先に温泉に行く女性。その姿に気をとられていたコクリ、千佳の早業にビックリする。トップとパレオがぽ〜んと宙に舞っている。
「あれだけボクにパレオをめくらせなかったのに……」
「うに? それよりコクリちゃんも脱ぐにゃよ♪」
 身を屈めて足を踏み代えぱんつを脱いでいた千佳が、屈んだままコクリににこっ☆。ぽ〜ん、とオレンジのぱんつが宙に舞ったかと思うとコクリに抱き付きタックル。
「千佳さん〜っ!」
「あたしがコクリちゃんの水着を脱がしてあげるにゃ。これは背中が広く開いてるから肩の部分が簡単にずり落ちるにゃ」
 さすが水着の持ち主。押し倒したままちょいちょいと肩紐を外側に滑らせるとあっという間に白ワンピはコクリの腰の部分までずり落ちた。
「あんっ。両腕の自由が……」
「にゅふふ♪ 丁寧にずらしてあげるにゃ☆」
 コクリは上半身裸だが、覆い被さる千佳の頭で大切なところは見えない。組み敷いたままずりずり、ぴちっ、と水着を剥いていく。
「にゅふ☆ これでいいにゃ。それじゃお風呂にゃ〜っ!」
「あっ。ちょっと千佳さん、たおる忘れてる。手荷物も忘れてるよぅ〜!」
 コクリの履いていた白ワンピがぽ〜んと宙を舞ったと思うと湯船に万歳ダッシュする千佳。コクリはタオルや風呂敷包みを抱え身を丸めながらたたたと追う。
 がらり、と引き戸を開けて出ると、岩に囲まれた湯の間と、その奥に広がる大海原と夏の空が待っていた。
 時は夕暮れ。
 沈んだ太陽が空を茜色に染め上げている。
「うわあっ」
「すごいにゃね〜」
「あら。ちょうど私は自分の体を洗ったところよ」
 二人が並んで景色に見惚れていると、先に水着のまま入った女性が長い黒髪を梳りながら見返してきた。近くに二人分の風呂椅子がある。
「まずは身体を綺麗に洗うにゃ♪ コクリちゃん綺麗にするにゃ♪」
「私が背中を流してあげるわね?」
 千佳とコクリが対面で座り、女性はコクリの背中側に座る。
「ふうん。結構大胆な水着着てたのね。これならそっちのお嬢さんみたいに猫耳つけて猫尻尾付けてもかわいいんじゃない?」
「そんな……あっ。千佳さん、たおるじゃないの?」
 女性はコクリの日焼け跡を見ながら洗っている。が、コクリは正面から千佳が石鹸の泡だらけにした手の平でさわさわしているのでもじもじ身をよじっている。
「たおる、持ってきてないにゃからね。手の平でたっぷり洗ってあげるにゃ」
 湯気に包まれよく見えない中、文字通り手探りで泡だらけにしてうにうにもにゅもにゅと前の方を丹念に手洗い。
「うに。今度はあたしを奇麗にしてにゃ」
「はぁ、はぁ……う、うん。いくね?」
「あらあらかわいいわね。今度はそちらのお嬢ちゃんね」
 今度は千佳をサンドイッチ状態にしてうにうにもにゅもにゅ。
「コクリちゃん、えっちにゃ〜」
「えええ、違う違う〜っ」
「ふうん。猫しっぽ。いいわね〜」
 とかなんとか、とにかく楽しく騒がしく。


 が。
「まだ出ちゃ駄目」
 満天の星空の下、女性が更衣室への引き戸の前に立ち通せんぼする。
「えーっ。どうして?」
「だって私、まだ満足してないもの」
 抗議の声を上げるコクリに、寂しそうに答える女性。
「うに……優しいお姉さんにゃし、満足するまでいるにゃよ」
「う、うん。そうだね」
 というわけで、再び湯船にどぷ〜ん。
 今度は女性は一緒に湯船には漬からず、風呂椅子に座ってにこにこと二人を見るばかり。
「でも、もう景色もたっぷり見たしたくさん湯にも漬かったし、泳いだりもしたし……」
 コクリは困惑するが、千佳はなにやらごそごそやってるぞ。コクリが千佳に代わって持って入った風呂敷を開けたようだ。
「コクリちゃん、今度はこっちのビキニを着てみるにゃ?」
 千佳、小さな三角形の黒い布がついただけの紐を出した。マイクロビキニのトップである。
「……千佳さん、それ着たことあるの?」
「ないにゃ。コクリちゃんに着て欲しいにゃ」
「そんなのボク、恥ずかしい〜」
 またもばしゃばしゃと追いかけっこ。
 女性はそんな二人を見てさらににこにこ。

 そして数時間後、女性は変わらず風呂椅子に座ってにこにこ。
「うう……このままじゃのぼせちゃうよ〜」
「というか、のぼせてもうお姉さんの横をすり抜けるとかいう元気もないにゃ……」
 コクリと千佳、仲良く洗い場でばたんきゅ〜。
「あらら……。私の猫ちゃんたちみたいに元気いっぱいだったのに……」
 うにに、と転がる千佳とコクリの耳にそんな声が聞こえてくる。しかしそれは聞こえてくるだけ。限界なので意味までは分からない。
「うに……」
 ごろん、と寝返りをうつ千佳。うっすら開けた目に、眉をハの字にして転がりへばるコクリの顔が映った。
 そして千佳の手には、マイクロビキニのトップが握られている。
「にゅ……これでコクリちゃんも黒猫にゃ……」
 夢うつつの中、ビキニノトップをコクリの頭に回して顎で結ぶ千佳。うに〜ん、と三角の布を猫耳のように伸ばして満足すると、いつもするようにコクリに抱き付く。
――ガタ……。
「うにゅ?」
 物音の方を見る千佳。コクリも気付いて習う。
 すると。
「いた……。私の猫ちゃんたち……」
 女性が目を見開き風呂椅子から立ち上がり、そして――。
 二人に近寄りながら、足からすううっと消えた。
「うにゃ、お姉さんが消えたにゃ!?」
 がばりと起き上がる千佳。
 んんん? と目をこすりながらコクリも起きるのだった。

「ええ、幽霊です。……仲のいい猫二匹を残して亡くなったらしくて、それを探してたまに浜に出るそうなんです」
 翌朝、宿の女性に聞いてみるとそんな話が返ってきた。
「……子猫みたいに仲のいいお嬢さんたちに、ついついついて来たしまったのかもしれないですね」
「子猫みたいに、仲のいい……」
 にっこり微笑む言葉を聞き、千佳は嬉しそうにコクリに抱きつくのだった。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib0045/猫宮・千佳/女/15/魔術師
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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猫宮・千佳 様

 いつもお世話様になっております。
 海で水着でたくさん遊んで、お風呂で洗いっこ。日焼けの跡を確認しあって……とかいう描写は字数の関係上カットしましたが、楽しく賑やかに。
 幽霊さんにも登場人物に絡むような裏設定を付けました。もちろん、コクリとは風呂場ではなくお布団のほうで朝まで一緒です♪

 可愛らしいお話の注文、ありがとうございました。お気に召していただけますように☆
流星の夏ノベル -
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舵天照 -DTS-
2013年08月15日

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