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『Let's (Boot)Camp☆ 』
夜来野 遥久ja6843

 夏である。

 真っ青な空、沸き上がる入道雲。
 照りつける陽差し、そしてきらきらと輝く大海原。
 夏の海が見せる姿は、内包する生命の鼓動そのもの。
 白浜からたゆたう水面を眺める度に、僕は思うのだ。
 夏が、僕らを誘う。
 海が、僕らに歌いかける。

 さあ目一杯満喫しろ、と。



 ――これがフラグやって、俺わかってました。(小野友真談)

●夏の海と言えば

「そうだ、キャンプに行こう」

 いつぞやも似た台詞を聞いたなと思い、加倉一臣は思わず笑みをこぼす。
 目の前では恋人の小野友真が、大はしゃぎで準備を行っている。
「何持ってったらいいかな。なあ一臣さん何がいるん?」
「キャンプに必要なものは準備してあるから、着替えと水着忘れなければ何とかなるぜ」
「え、そうなん?」
 あれやこれやを詰め込もうとしていた友真に、うなずいてみせ。
「ああ。ガキの頃から毎年欠かさず、キャンプには行ってるからな。お任せあれ」
 そう応える一臣を見て、友真は考える。
(なんかそれも悪い気するけど……)
 三秒で結論。
「ま、いっか。じゃあ全部任せるな! 俺は楽しむ担当ってことで!」

 一方、月居愁也と夜来野遥久は友人の西橋旅人の自宅へと向かっていた。
「加倉さんに準備は全部任しちゃったからな。俺たちは旅人さんを迎えに行こ−!」
 張り切る愁也に、遥久は怪訝な表情を浮かべる。
「……愁也、何も西橋殿の家まで迎えに行く必要は無いんじゃないのか」
 普通に考えれば、待ちあわせをすれば済むことである。常識人遥久にしてみれば、むしろ失礼では無いかと心配したのだ。
 しかし愁也はいいやとかぶりを振りながら、真顔で言い切る。
「無人島に着く前に迷子になられちゃ困るからね。加倉さんと友真にも『絶対に捕獲しろ』って言われてるし」
「しかしいくら西橋殿でもそこまで迷うことは……」
「遥久はあの時鬼だったから知らないんだよ……!」
 蘇る沖縄での悪夢。
 遊園地での一件は、鬼(遥久)を除く全員にトラウm……もとい貴重な経験となった。
 そう、彼らは撃退士。得た教訓は無駄にはしないのである。
 絶対に。
 いや、多分。

●そんなわけで、無人島到着

「わーー海めっちゃ綺麗やでーー!!」
 きめ細やかな白浜。穏やかな波打ち際。
 陽光を反射するコバルトブルーの海面に、友真が歓喜の声を上げる。
 愁也が笑いながら。
「夏だけ解放してる無人島なんだってさ。すげぇ穴場だろ?」
「ああ。これはいい……! 思いっきり遊べそうだな」
 そう返す一臣の隣では、旅人が彼方の水平線に目を細めている。
 遥久もしばし島の空気を満喫した後。
 はしゃぐメンバーを見渡して、宣言した。
「よし、準備を始めるか」

 キャンプの準備は滞りなく進められた。
 一臣の指示の元、風の方向や地形を見てテントやタープを張っていく。
「雨対策にテントの周囲には溝を掘ってな」
「一臣さんこれどうするんー?」
「ああ、それは……」
 さすがは毎年行っているだけあって、実に手慣れたもの。
 今のところ、サバイバル訓練だと勘違いした旅人が全身迷彩服で現れたことを除けば、概ね順調である。
 クーラーボックスの上で大人しくしている黒鷹を見て、友真が言う。
「旅人さん半蔵も連れてきたんやー。近くで見るとやっぱかっこええなー!」
「ありがとう。久しぶりの外出で本人も喜んでるみたいだよ」
 そう言ってにこにことテントを組み立てる旅人は上下迷彩服に、ミリタリーゴーグルまで着用する本気装備。そんな彼を見て、一臣が青ざめた表情で。
「おい愁也、なんでタビットを止めてやらなかったんだよ……!」
「仕方ないだろ! あれだけ嬉しそうにフル装備着てたら『今から着替えろ』なんて言いづらかったし!」
 遥久も、そっとかぶりを振りながら。
「何か信念があってのことかもしれない。私にはとても『その服装はおかしい』とは言えなかった」
「いや、多分言ってもよかったと思うな!な!ミ´;ω;ミ」
「え? 俺結構かっこええなーって思ったんやけど……半蔵とセットでめっちゃ絵になってるなーとか」
「友真……お前のポジティブシンキングは、尊敬に値すると思う」

 テント張りが終わったら、皆でBBQの準備。
「火を熾すとき、焼き過ぎ防止に退避場所もよろしく!」
 一臣の手際よい指示の中、着々と火の準備も整い。
 食事までにはまだ時間もあったため、海釣り隊と島探索隊に分かれて行動することとなった。
「僕も島探検に行こうかな」
 そう話す旅人に愁也はちょっと心配そうに。
「旅人さん迷子体質だけど……。まあインフィいるから大丈夫……だよね?」
 遥久も一抹の不安を覚えながらも、大丈夫だと言い切った友真と一臣の言葉を信じ見送る。
 愁也は海パン姿になると、早速海へと向かい。
「じゃあ俺は素潜りで何か採ってくるな。遥久、火の番よろしく!」

 こうしてメンバーは島内の各所に散らばることとなった。

●島探索班

「よっし、探索行くでー!」
 張り切る友真、意気揚々と森の中に向かって足を踏み入れた直後。
「あっでも待って。でかい虫とかおらんかな……」
 旅人が、思い出すように。
「そう言えば……南国にいる虫ってすっごく大きかったような」
「えっまじで。俺、そういうのめっちゃ苦手やねん……出んかったらええな」
 華麗なるフラグを立てつつ、友真は旅人の迷子防止のためにこっそり頼む。
「一臣さん、マーキングよろしくな」
「ああ、わかってるぜ……っと」
 直後、瞬時に光纏。一臣は旅人に向かって、アウルを撃ち込む。

 さっ。

「あら?」
 あっさりとかわした旅人を見て、一臣は笑いながら。
「ハハハ、待て待てコイツゥ☆」
 もう一度狙撃する一臣、回避してみせる旅人。
 ちょっと本気で狙うインフィルトレイター、まじ全力で逃げる阿修羅。
「待ってタビット! 本気で回避しようとするのはよくないと思います、訓練ではありませんから!ミ´;ω;ミ」
「え、そうだったの?」
 旅人は慌てて謝る。
「ご、ごめん。僕てっきり訓練が始まったのかと……危なかった、もうちょっとで薙ぎ払い打ち込むところだったよ」
「ハハハ、またまたコイツゥ☆」
 二人を見守っていた友真が、そっと微笑んだ。

「旅人さんの目、マジやったな……」


●海釣り班

 その頃、火の番をしながら釣りをしていた遥久は、海面に妙なモノが浮いているのに気がついていた。
「……あれは……どこかで見たような」
 赤っぽい布の切れ端。ついさっき見たと気付き、思い至る。
 そうだ、あの生地は確か……。

「遥久ああああああ」

 つんざくような悲鳴。相方の愁也のものであるのは明白で、声がした方向へ視線を向ける。
「なんだ……?」
 見ればいつの間にか愁也が砂浜に打ち上げられている。
 遥久はため息をつきながら。
「あいつ……まさか溺れたんじゃないだろうな」
 仕方なく釣りを中断し、砂浜へと向かう。波打ち際で倒れている愁也は、近くで見るとどういうわけかぼろぼろになっていて。
「おい、愁也どうした」
「は……るひさ……」
 海パンの至る所が破れて悲惨なことになっている。先程海面で見たのはこれだったのだ、と合点しながら。
「お前、この噛まれたような痕はなんだ」
 愁也の身体には、至る所に歯形が付いていた。問われた彼は震えながら。
「遥久……俺は思い知った。この世には知らない方がいいこともあるんだよ……!」
「? 何を言っている。一体海中で何と遭遇したんだ」
「し……白くて大きくて顔がおっさn……うわああああ」

 〜(∈ ^o^)<呼んだかしらぁ?

 ※ただいま不適切な映像が流れました※

 気を失った愁也に、それ以上は何も問わず。
 遥久は入道雲へ視線を馳せながら、一人呟いた。

「――とりあえず、見なかったことにするか」

●お約束

「あれ見てー! 果物あるー!」
 友真が指さす先には、たわわに実ったイチジクの大木。
「こっちにも! これみかんやんな?」
 二人をぐいぐい引っ張りながら、どんどん森の奥へと進んでいく。
 食べ頃のいくつかを採取しながら、一臣が興味深そうに木を眺め。
「イチジクとかみかんって普通自生してないよな……誰かが植えたのかな」
「多分昔は人が住んでたんじゃ無いかなあ。ほら、あれ見て」
 旅人が示した先には、林の間から崩れかけた屋根が見えている。それを見た友真の瞳がきらきらと輝き。
「えっあれってもしかしなくても廃墟やん……?」
 THE廃墟。
 男心くすぐる甘美な響き。ここへ来て一気に漂う冒険の香りに、友真は迷わず宣言。
「行ってみよ!」
 
 建物は古い民家のようだった。
 人が住まなくなって久しいのだろう。崩れ落ちた瓦、壁や扉は朽ち果て、かろうじて家の体裁を保てている状態である。
 周囲を見渡しながら旅人が呟く。
「だいぶ傷んでるね……」
 一臣も床を慎重に踏みしめながら。
「今にも抜けそうだな。友真、足下気を付けろよ」
「わかってる……て、うわっこれ見て!」
 指さした先にはコーヒー缶らしきものが落ちている。拾い上げてみると、サビだらけだが印字が微かに読めた。
「これ……めっちゃ古いで。昭和40年くらいのちゃう……?」
「凄いな、残ってるものなんだな」
 ぼろぼろになった戸棚を開けると、雑誌が残されていた。そのあまりにも古い装丁を見て、一臣も思わず見入ってしまう。
 雑誌をめくりながら振り返り。
「なータビット、これ凄いぜ。見てみ……」

 だがそこに旅人の姿は無かった。

「あれ?」
 慌てて周囲を見渡すが、見あたらない。
「しまった、タビットがいねえ!」
「え! さっきまでいたと思ったんやけど」
 友真もきょろきょろしながら、青ざめる。
「……まさかはぐれた?」
 そこで一臣がふ、と笑んでみせる。
「だが心配ご無用! 俺にはマーキングという能力がある。これでタビットの位置が手に取るように……」
 そこではたと気付いた。
 いや、わかんねぇわ。
 スキルの効果10分だったわ。
 余裕で切れてたわこれ。
「友真……」
「どうしたん、一臣さん」
「うっかり効果切れてたてへぺろ☆」
「おいいいいいい」

●捜索

「……で、結局西橋殿を見失ったと言う訳か」

 目の前で正座する一臣と友真を見て、遥久はため息をついていた。
「まさかとは思ったが、いや案の定と言うべきか……」
 ここで遥久のライトヒール(物理)によって意識を取り戻した愁也が、一臣に向かって訊く。
「っていうかマーキングしてたんじゃなかったの?」
「それが……効果が切れていてだな……」
「意味ねえええええ」
 遥久が仕方ないと言った様子で言う。
「こうなったら全員で捜すしかないな。とりあえず生命探知を活性化させておくか……」
 思案する遥久に向かって、友真がそっと提案。
「あの……愁也さんの咆哮で犬の遠吠えみたいにして連絡取れへんかな?」
「ちょっ俺も旅人さんも犬じゃねえし」
「なるほど、よしやってみろ愁也」
「真顔で言うのかよ遥久!」
「\キャーシューヤカッコイー/」
「加倉さんは黙れ」

 そんなわけで、咆哮開始。
 唸るような叫び声が、森林を震わせる。
 ぎゃあぎゃあと鳥が一斉に騒ぎ、これはもしかしていけるかも……と思ったがそんなことは無かった。

 |^o^)┐<呼んだぁ?

「呼んじゃいけないもの呼び出したああああ」

 四人は一斉に森へと逃げ込んでいった。

●一臣の場合

「あ……れ、しまったな。皆とはぐれちまったか」
 島の北西部へと逃げてきた一臣。気がつけば一人になっていた。
「まあ南へ出れば砂浜に着くだろうし、とりあえずタビットを捜すか」
 と言うわけで、森の中を探索しはじめる。北西部はうっそうとした森林に覆われ、視界が余り良くない。
「そういや……あいつ迷彩服着てたよな……」
 こんな状況下で背景と同化するとか、何という無理ゲー。ウォーリーを捜すよりも難しいのではと困惑しつつ、一臣は先へと歩み進む。
「ん……?」
 急に開けた場所に出た。目の前に見えるのは、どう見てもそこだけ色の違う地面。
「これ怪しくね? いかにも罠じゃね?」
 でも触れてみたいのが削られもとい撃退士魂。
 観察してみようと近付いた時だった。

 ずさー。

 余裕の落とし穴。
「知ってた! 罠だって知ってた! 体を張ってサーチトラップしただけですし!」

 Ξ┌(┌ ^o^)┐<いらっしゃ〜い♪

「待って下さい! 俺にはまだ失いたくないモノが一応あr」
 一臣は☆になった。

●遥久の場合

「……ん? 今の悲鳴は……?」
 その頃遥久は、キャンプ設営地点へと戻ってきていた。
 辺りを注意深く見渡し。
「誰か戻って来ているかと思ったが……」
 砂浜付近には人一人見えない。旅人どころか全員どこにいるのかすらわからない。
 遥久は折りたたみチェアに腰を下ろすと、思案する。
「さて、どうしたものか」
 今下手に動いて入れ違いが続いても意味が無い。出来れば居場所の検討がついた上で、動きたいものだが。
 そこでふと、視線を感じる。
「……あ」
 クーラーボックスの上でくつろいでいた半蔵が、こちらを見ている。
 しばし黒鷹と見つめ合った後。
 遥久は思い切って話しかけてみる。
「半蔵殿……でしたね」
「クェ」
「私は夜来野遥久と言います。貴方の主人である西橋殿の友人です」
「クェ」
「その……大変申し訳ないのですが、西橋殿とはぐれてしまいまして。半蔵殿が居場所を見つけられるなら、教えてくれませんか」
「クェ」
 直後、半蔵はばさりとその美しい翼を広げ舞い上がる。
 そしてしばらくの間上空を旋回した後。森の一箇所に向けて飛び込んでいった。
「あそこか」
 即座に降下地点へと向かう遥久。さすがは学園主席。鷹とのコミュニケーションなど朝飯前である。

●合流

 ようやく全員が揃ったときには、既に夕方になっていた。
 どういうわけか気を失っていた旅人を遥久が見つけ、意識の無い友真を背負った愁也が瀕死状態の一臣を発見。
 最終的に遥久のライトヒール(物理)によって全員意識を取り戻し、事なきを得たのであった。

「やっとご飯や腹減った−!」
 肉が焼ける香ばしい匂いに、友真が待ちきれない様子で叫ぶ。
「お前のためにホタテも用意してあるぜ」
「えっまじで愁也さんやったーー!」
 何とか無事開始されたBBQ。
 釣った魚や果物も食べながら、楽しい時間は過ぎていく。
 友真が旅人に向かって訊く。
「そう言えば旅人さん、どうして気失ってたん?」
「それが……僕もよく覚えていないんだ。あの廃墟にいるときに何か物音がしたからそっちに行ってみたんだけど」
 困惑しながら、続ける。
「何か見ちゃいけないものを見た気がするんだよね……それで逃げようとしたら、うっかり斜面を転げ落ちちゃって」
「ああうん、なんとなく察しましたよね……」
「とりあえず旅人さんが犠牲者にならなくて、よかったかなって……」
 一臣と愁也が遠い目をした所で、遥久が苦笑しながら言う。
「ある意味で迷彩服が役に立ったな」

 食後は皆で花火。
 すっかり暗くなった砂浜で、炎の花が鮮やかに咲いていく。
「ロケット花火は手持ちでバトルな!」
 指の間にロケット花火を目一杯挟んだ友真が、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「ハッ受けて立ってやんぜ! 来いよ友真!」
 同じく両手の指にロケット花火を挟んだ愁也が、友真に向かって一気に発射!
「甘いで! 俺にはこのビニ傘という選ばれし盾がやだ溶けてる待って待ってええええ」
「待たねえよヒャッハー!」
 友真が盛大に爆破されている隣では、遥久と旅人がうっかり手をすべらせていた。
「「あ、しまった」」
 彼らが放ったロケット花火は、友真と愁也のバトルを見て笑っていた一臣へと全弾直撃。
「さすがにひどいと思います!!!ミ´;ω;ミ」
 黒焦げになった一臣の悲鳴が、満天の夜空に響き渡った。

 その後も花火は続き、愁也が旅人のうっかり自爆に巻き込まれて☆になったり、遥久がついよそ見をして全弾一臣に直撃したり、友真が狙いを間違えて全弾一臣に直撃したりもしたが、全てライトヒール(物理)で事なきを得た。

●相方

 最後は火を囲んで皆で談笑。
 削り合戦で盛り上がった後、始まったのは愁也による相方自慢。
「みんなこれだけは言っておくぜ。俺 の 遥 久 は最高の男だ」
「うん、知ってるで」
「知ってるな」
「知ってるね」
「クェ」
 遥久以外の全員が返事する中、愁也は熱弁を続ける。
「これも言っておくぜ。俺 の 遥 久 は道標であり、目標であり、憧れであり、世界一のオトコマエだ」
「それも知ってるかな」
「知ってるな」
「知ってるね」
「クェ」
 当の遥久は、相方自慢はいつものことなのでスルー。愁也は驚愕の表情を浮かべ。
「おい遥久……みんな知ってるってすごくね?」
「そう思えるお前の頭が凄いんじゃないか」
 そっけなく返しながらも、遥久は微かに笑む。道標となるのは、お互い様。そして常に目標であるための自分でいたいと思わせるのは、この親友がいるから。
 なかなか、口に出すことは無いけれど。

 そこで友真が我慢できないと言った様子で切り出す。
「あーーなんか、俺も相方自慢したなってきた!」
 楽しくて幸せなこの空気が、いつもより解放な気持ちにさせるのだろう。
 いつもなら恥ずかしくて言えないことが、今は皆に知って欲しくてたまらない。
 旅人がにっこりと微笑んで。
「うん。聞かせてほしいな」
 友真は、一つ一つ考えながら嬉しそうに話す。
「えっとなー……一臣さんはな、とにかく敵わないって思うことが多いん。凄い一杯色んな事知ってて、色んな事を見てて、色んな事を考えてる。だから俺、一臣さんがいれば安心できる」
「……なんかそこまで褒められると照れくさいものがあるな」
 所在なさげな一臣に、友真はびしっと。
「駄目な所も一杯あるけどな!」
「それは重々承知しております!ミ´;ω;ミ」
「……でも一臣さん、いつもみんなが幸せでいられる方法を探してるって、俺わかってる。そんなところ、尊敬してるんやで」
 その言葉に一臣は少し驚いたように黙り込んだ後。かわいい恋人に向けて、笑みをこぼす。
「友真、サンキュな」
 
「じゃあ俺もせっかくだし、相方自慢させてもらうかな」
 ぱちぱちと炎が揺らめく中、一臣は語り出す。
「友真は俺に無いものを沢山持ってるんだよなー……。ここぞと言うときは、正直俺より肝が据わってるし、腹くくってる」
 時に自分が圧倒されてしまう程に。あの強さがどこから来ているのか不思議でもあり。
「見た目通り明るくて元気な中に、しぶとさも脆さも熱意も秘めていて……しょっちゅう驚かされてます」
「……一臣さん、そんな風に俺の事思っててくれたん」
 感激する友真の言葉に笑いながら。
「普段は人懐っこい柴犬そのものなのにな。意外と警戒心強いところも含めて」
「えっ……それは褒めてられてるんかな」
 その言葉に、愁也達が揃って返した。
「微妙かな」
「微妙だな」
「僕柴犬好きだよ」
「クェ」

●特別

 皆の話を聞き終えた旅人が、そこでぽつりと呟く。
「……『特別』って不思議な感情だよね」
「不思議?」
 一臣の返しに、旅人はうなずき。
「自分の中で誰かの占める割合が大きくなって、気がついたら特別になってる……でもそれって、恋人や親友だけじゃ無いよね。例えば……敵とか」
「そうやな……うん、それはわかる」
 友真の言葉に、考えるような表情で。
「どれも少しずつ中身は違うはずなのに、心が占められるのは同じ。何が同じで何が違うんだろうって。僕にはよくわからなくて」
 困ったように微笑む。
「でも僕の中には誰かを特別に思う感情はちゃんとあって……いつの間にか機能してるんだよね」
「確かに……愁也の何がどう特別なのかと問われても、理屈で語れることではありませんね」
 聞いた愁也が即座に反応。
「えっ……遥久、今俺の事特別って言った?」
「(完全無視)特別という感情は、そういうものだと思います。心奪われるきっかげはあったとしても、そこに理屈は無い」
「えっ……遥久、今俺に心奪われたって言っt」
「(愁也を沈めて)例え敵であったとしても、根本は同じではないかと」
「なるほど……」
「うん……俺も一臣さんの好きな所は一杯言えるけど、『特別』だって言う理由とはちょっと違う気がする」
 一生懸命考える友真に、一臣も頷きながら。
「そうだな。強いて言うなら、自分の魂が惹かれる……ってところか。まあ、やっかいな感情でもあるよな。理屈じゃ無い分、否定もできないし」

「でもそれがいい。だろ?」

 復活した愁也が、にっと笑ってみせる。
 聞いた旅人も、にっこりと笑んだ。

「否定できないね」

 見上げれば、そこは星降る満点の夜空。
 皆ではしゃいで、皆で語って、最後は皆で寝落ち。
「トイレ行くときは腰にロープつけてってね旅人さん!」
 そんな冗談めいた本気の言葉も、星空にゆるゆると溶けてゆく。
 気心知れた友人と過ごすひとときは、宵の深まりと共に穏やかに過ぎていった。
 
●翌朝

「……よし、全員間違い無くいるな」
 人数点呼する遥久を見て、友真が微笑む。
「行きよりも心なしか念入りやな……」
 船に乗り込んだ一臣も笑いながら。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「楽しかったーーーまた絶対来ようぜ!」
 愁也の宣言に、旅人も頷いて。
「うん、来年も必ず」

 離れ行く島を眺めていると、ほんの少し寂しくなる。
 だからそっと心に誓う。
 夏が来たら、また来よう。
 皆ではしゃいで、皆で語って、皆で寝落ちよう。
 その時にはきっと、話したいことも増えているから。

 一夏の思い出を胸に、季節は巡る。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/ジョブ/瀕死回数】

【ja5823/加倉 一臣/男/26/インフィルトレイター/4】
【ja6837/月居 愁也/男/23/阿修羅/3】
【ja6843/夜来野 遥久/男/27/アストラルヴァンガード/0】
【ja6901/小野 友真/男/18/インフィルトレイター/2】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
発注ありがとうございました!
まさにブートキャンプ、ライトヒール(物理)の発動回数に震えるしかありません。
楽しすぎて字数がマッハでした。マッハでした。
「捜索」以降、2パターンがあります。

流星の夏ノベル -
久生夕貴 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年08月16日

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