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『天の王、地の王 』
ルドルフ・ストゥルルソンja0051

(「‥‥他愛もない。アレに比べれば、攻撃が見えるし‥‥遅い」)
 眼前のディアボロが振り上げる腕を、軽々と横に回避しながら‥‥ルドルフは、その後ろへと回り込む。
 方向転換のため力を入れて地面を蹴った足が、ぐっと痛む。
 まだ前の闘いで足に受けた傷は、完全に治ってはいない。
 その痛みが、彼にその敵の事を思い出させる。

 ――あの敵は、どう定義すべき者なのだろうか。
 重力を操作し、自らを王と称する傲岸不遜なヴァニタス。
(「主様に敵なす者は、確かに敵なのだろう」)
 ――だが、その主は、寧ろ彼のヴァニタスの闘いを楽しんでいる節がある。その関係は、ルドルフの目から見るのならば‥‥『仇敵』と言うよりは、『好敵手』に近い。同じ『王』を名乗る者として、主はあるいは、対等に彼の敵と戦う事を望んでいるのかも知れない。
 そして、自分は主の従者。それ故に、主の『好敵手』は自分の『好敵手』足りえなく――

「うるさい!考え事をしているのに邪魔するんじゃない」
 ずん。その手に持った忍刀が、彼に突進してきたディアボロの胸元に突き刺さる。
 周りを見渡す。元々、この依頼で討伐すべきディアボロは、それ程強い物ではない。味方にも特に闘いで不利になっている者はいない。

 ――思考を、戻す。
 そもそも、主の好敵手は自分の好敵手足りえない。このロジックは正しいのだろうか?
 確かに、自分は従者故に、主とは並ばず一歩下がる必要がある。だが、従者とは、時に主君の刃となり――その盾にならなければいけない者。ならば、主に敵対する者を自らの敵としても、それはそれで当たり前なのではないだろうか?

 刃が、ディアボロの喉元を裂く。

 ――だが、それでも。彼のヴァニタスを敵としてみた場合でも、自分はまだ、力不足だ。
 先の一件に於いては。自らの速度を見込まれ、主に大役を任せられたにも関わらず‥‥肝心な所で重力槌によって片足を折られ、結果地へ墜ちた。
 従者として有るまじき失態。じんじんと、未だに痛む足が。心の痛みと共に、ルドルフを未だ苛んでいる。
 次は、次こそは、一矢報いる覚悟はある。だが――果たして、自分の刃は――自分の牙は、重力と言う鎧を纏いし彼のヴァニタスに、届くのだろうか?
 自信の揺らぎは、少しずつ、拡大していく。

「ぐっ‥‥!」
 小石に躓いてしまった。
 足を負傷していたとは言え、常時高速で駆け回る事に慣れている普段の彼から見れば、ありえない事だ。精神の揺らぎが、影響したとでも言うのか。
 そこを狙って、狼型ディアボロの牙が迫る!
「大丈夫か!?」
 仲間の一人の狙撃が、狼の頭部を貫通し。ディアボロはその場に崩れ落ちる。
「あ‥‥うん」
 立ち上がる。

 ――先の依頼と同様に。醜態を見せてしまった。
 また、次回も同様の姿を見せたのならば――果たして主は、許してくれるのだろうか。

 ――そもそも、自分は彼女を『主』と認識している。だが、果たして彼女はどうなのだろうか。自分を『従者』として認識してくれるのだろうか?
 ‥‥彼女の下には、多くの者が集っている。強者にも物欠く訳ではあるまい。忠誠心では負けないと自負している。彼女の一言があれば、即座に自らの全力を以って、死ぬ気で敵の首を取ってくる覚悟はある。――最も、今のこの悔恨は、その命を果たせなかった事による物なのだが。

「‥‥!」
 怒りを刃に込め、貫く。音も無く、最後のディアボロが‥‥崩れ落ちた。

 ――主が信頼を向けてくれているのは、よく分かる。
 だが、それは本当に、従者に向ける物なのだろうか?
 自分は、本当に、主に――力を認められているのだろうか?

「お疲れ」
 ぽんっと肩を叩かれ、ちょっと無理やり、微笑を返して取り繕う。

 ――そうだ。深く考える必要はない。
 迷いは更なる弱さを呼ぶ。先程のように。
 主が自分をどう考えようと、自分の彼女に尽くす意思は揺るぎはしない。
 ――前に、進もう。

「‥‥この後暇ならお茶でもせん?」
 別の依頼から帰還したらしき、黒髪の少年。
 それに、ルドルフもまた‥‥微笑み返す。
「ああ、もちろん、歓迎だよ」

 次の機が、訪れる前に。
 今はせめて、この一時の休みを、楽しむとしよう――



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
ja0051/ルドルフ・ストゥルルソン/男/21/鬼道忍軍

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、剣崎です。
心情系はそれ程得意なわけではありませんが、精一杯に思う事を崩さない程度に、頑張って見ました。
ご満足いただけたのであれば幸いでございます。
■イベントシチュエーションノベル■ -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年08月23日

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