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『☆たまには二人っきりでキャンプでも 』
彩咲・陽花jb1871
 彩咲・陽花(jb1871)と葛城縁(jb1826)の二人は、夏の暑い日に森の中にあるキャンプ場を訪れた。
「ふひぃ〜。今日ばかりは巫女服着てこなくて、良かったよ。おヘソが出てしまう白い半袖Tシャツに、短パンって着慣れていないからちょっと恥ずかしいけど……。でも涼しいから良いや」
「うんうん。私もお腹が出ちゃう橙色の半袖Tシャツに短パンだけど、露出が激しくて照れるよりも、涼しくて助かると思っちゃう」
 太陽の強い輝きに眼を回す二人の頭には水色のツバ付き帽子があり、それぞれ長い髪をポニーテールにしているので、普段とは全く違った雰囲気を出している。
 しかし二人とも普段からモデルのアルバイトをしているだけにスタイルはよく、容姿も可愛らしいので、本人達は気付いていないがここまで来るのに人々の視線を釘付けにしていた。
「でも縁と服装が似ちゃうなんて、驚いたよ」
「そうだね。急にモデル仲間からキャンプ場の無料券を貰ったから、一緒に買い物に行く暇もなかったしね。こういうのを以心伝心って言うのかな?」
「ふふっ、そうだと良いね」
 二人は汗を流しながらも、微笑み合う。
 事の起こりは一週間ほど前、二人はモデルとして秋物の洋服を着て、雑誌の写真撮影をした。その時にモデル仲間の二人組の女の子達から、キャンプの無料券を貰ったのだ。
 二人分の券はキャンプ場の入口にある受付の建物に入って係りの人に見せれば、キャンプに必要な道具は全てタダで貸してくれる上に、食品と飲み物は無料で貰えると言う。
 女の子達は仕事の取引先から券を貰ったらしいが、急にアルバイトが入ってしまった為に行けなくなったのだ。
 券の有効期限が切れるまでに休みが入っていた二人は、喜んで貰うことにした。ちょうど大学も夏休み中であり、二人で一緒にどこかに出掛けたいと話していた最中だったので、すぐに予定を立て始める。
 キャンプ場は森の中にあると聞き、慌てて身の回りの物を用意して、今日ここに来たのだ。
 そして二人は無事にキャンプ場に到着すると受付で券を見せて、陽花はテントの鍵を受け取った。
「私達のテントナンバーは20番だね」
「すでに作ってあるのが嬉しいね! テントって作るの難しいんだもん」
 縁は平原に数多くあるグリーンのテントを見て、素直に喜ぶ。
 二人は20番のテントに荷物を置いて、キャンプ場を散策することにした。大きな木がたくさんある場所は涼しく、また緑の香りでだんだん落ち着いてくる。そして川を見つけて、そこで釣りをしている人々を見て、陽花は手をポンッと叩く。
「そうだわ! ここで釣りができるみたいだし、やってみましょうか。そして今夜はここのお魚を食べようか?」
 陽花の発言を聞いて、縁はビクッと体を震わせ、徐々に顔色を失っていった。
「いっいやいや! 川釣りは博打だよ? もし一匹も釣れなかったら、お夕飯なしだよ? そんなの悲しすぎるよ!」
「そっそう? じゃあキャンプの定番だけど、カレーにしとく?」
「うんうん! そうしようよ!」
 ――縁は必死になって陽花の興味をそらせたことにほっとするも、その理由は夕食を作る時に本人を前に暴露してしまう。


★夕食作りは命懸け?
 散策を終えてテントに戻ってきた頃には、太陽は夕日になりつつあった。
「ねぇ、縁。ちょっと早いけど、夕食の準備をしようか?」
「そうだね、陽花さん。調理場は外にあるらしいから、まだ明るいうちに作っちゃおう」
 二人は受付に行ってカレーの材料を貰い、調理道具を借りて調理場へ向かう。テントがある平原から少し離れた所にある調理場には水道はあるが、薪で火をつけるかまどを使うことになっている。
 カレーの材料を調理台の上に置いた陽花は満面の笑みを浮かべ、張り切って包丁を手に持つ。
「よーしっ! それじゃあ頑張って料理作るよー!」
「わーっ! 待って、陽花さん! 病院はここから遠くにあるから、救急車が森の中にあるこのキャンプ場に来るまで時間がかかるし、救急ヘリも同じ理由ですぐには来れないんだよ? キャンプ場の受付の人が対処できない状態だったら、大変なことになるから!」
 血相を変えた縁は、慌てて陽花の包丁を持つ腕にしがみつく。
 すると陽花の笑みが固まった。
「……ちなみに何の対処?」
「食中毒だよっ! ……あっ、しまった」
 慌てて自分の口を手で押さえる縁だが、すでに陽花は暗い表情になっている。
 さっき縁が川釣りを拒んだのは、生魚であれば食中毒の可能性が高くなってしまうからだった。カレーは煮込み料理なので、危険度は下がると思ったのだが……。
 縁は咄嗟に身の危険を察して、無意識に夢中で行動してしまった。
 陽花は包丁を静かに置くと、その場にしゃがみこんでしまう。
「ううっ……! どーせ私の料理なんて……」
「はっ陽花さんはお菓子作りは上手なんだけどね。料理が壊滅的……いやいや、個性的だから。料理を作るのは私に任せて、陽花さんは薪を燃やしたり、後片付けをお願いね」
「うん……」
「キャンプから帰ったら、料理を教えてあげるから、ね? 元気出して!」
「うん……」
 涙目で暗雲を背負いながら薪を燃やす陽花を見て、縁は内心ほっとしながら料理を始める。
 三十分後、カレーは完成し、飯盒で炊いたご飯もできた。二人は皿にカレーとご飯を盛り付け、調理場の外にある木のテーブルとイスのセットに向かう。
「こうやって外でご飯を食べるのって、キャンプならではだよね!」
「そうだね。それにここは空気もお水も美味しいから、きっとカレーも美味しいよ」
 すっかり機嫌を直した陽花と、無事に料理ができたことに心底安堵している縁の二人は向かい合わせに座り、両手を合わせる。
「「いただきまーすっ!」」
 そしてカレーを一口食べた二人は、驚いて眼を丸くした。
「美味しいー! 縁の味付け、最高だよ!」
「陽花さんの炊いたご飯も美味しいよ! お焦げもあって、キャンプらしいカレーになったね」
 カレーとご飯の美味しさに喜びながら食べ進め、二人は鍋と飯盒を綺麗に空にする。
 二人で後片付けをして道具を受付へ返すと、広場でキャンプファイヤーが行われることを教えてもらった。
 広場へ行って見るとすでに数人が集まっており、ギターによる演奏や歌、そして踊りが始まっている。歌は最新の流行曲であり、二人も知っていた。
「縁、一緒に踊ろうよ!」
「ええっ!? 私、この歌の踊り方、知らないよ?」
「そんなの適当で良いんだよ。この場の乗り、でね!」
 戸惑う縁の手を掴み、陽花は踊りだす。最初は困っていた縁も、徐々に緊張が解れて笑顔になる。
 こうして楽しく歌ったり踊ったりした後は、手持ち花火を受付の人から貰い、キャンプファイアーの火でつけた。色とりどりの花火が、夜の広場を彩っていく。花火の煙で軽く咳き込みながらも、二人は声をあげて笑った。


★二人で仲良く就寝
 花火が終わると今度は切ったスイカを配られて、冷たさと美味しさに感動する。そして他の女性参加者達と共に女性用の露天風呂に入った後、ようやくテントに戻ってきた。
 その頃にはすでに満月が空高く浮かび、虫の声が至る所から聞こえている。
 テントに入った二人は今日一日の疲れが一気に出てしまい、ぐったりしてしまう。
「ふぃ〜。心地いい疲れが出るね、縁。ふわぁ……」
「そうだねぇ、陽花さん。このまま着替え終えたら、すぐに眠れそう。……あふぅ」
 二人は大きな欠伸をしながら、寝巻きに着替え始める。ランプの光の下で陽花は偶然にも、縁が洋服を脱いで下着姿になったところを見てしまう。
 すると陽花の眼に、怪しい光が宿る。縁の背後からそーっと腕を伸ばし、十本の手の指で突然縁のお腹をくすぐりだした。
「えいっ! こちょこちょーっ!」
「きゃあっ!? キャハハハ! はっ陽花さん、いきなり何を……うっ、キャハハッ!」
 縁は笑いながらも逃げようと身をよじるが、それでも陽花の指は追いかけてくる。
「縁めっ! 料理が上手な上に、豊満な体つきをしているとはけしからん! 成敗じゃー!」
「いっ意味が分からない〜! もうっ、こうなったら反撃だよ!」
 笑い過ぎて涙を浮かべつつも縁は震える手で、陽花の首筋をくすぐった。
「うひゃあっ!? くっ首はダメぇ〜!」
 ――こうして二人は笑い過ぎてお腹が痛くなるまで、互いにくすぐり合い続けた。
 数十分後、ようやく終えると二人は先程よりもぐったりしながらペットボトルの水を飲み、静かに寝袋に入る。
「……何かとっても疲れたね」
「ごっゴメンね、縁。つい無防備な縁の脇腹を見たら、体が勝手に動いちゃったの」
「……そう。私の中の陽花さんノートに、【結構お茶目】って改めて書き足しておくよ」
「はっ『陽花さんノート』って何?」
「おやすみ、陽花さん」
 陽花の問いには答えず、縁は眼を閉じてしまう。
「うっ……。おやすみ、縁」
 陽花は気になりながらも無理には聞き出さず、眼を閉じる。
 しばらくすると縁は眼を開けて、顔を陽花の方に向けた。
「……ねぇ、陽花さん」
「なぁに?」
「またこんなふうに、二人で出掛けようね」
「縁……。うん! そうだね。じゃあ約束」
 陽花は寝袋の中から手を出して、小指を立てて縁に向ける。
 縁は微笑みながら、自分の小指を絡ませた。
「でも今回は交通費だけで済んだけど、次も無料券を貰えるとは限らないから。縁は浪費癖を何とかして、お金を貯めておいてね」
「うぐっ!? ……わっ分かったよ。陽花さんと出掛ける為に、頑張ってお金を貯めるね」
 最後は陽花のピリッとした言葉で、二人はようやく眠りについたのだった。


<終わり>
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エリュシオン
2013年08月26日

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