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『Star of the Future 』
酒井・瑞樹ja0375

静かな夏。
友と楽しむのも、恋人との一時を過ごすのも、全ては自由。
――星と月だけが、貴方たちを祝福してくれているのだ。


●Wait Time
「そろそろ、時間だろうか」
 自室。壁に掛けた時計を見る、この男子生徒の名は北条 秀一。
 真面目な彼の事。普段も、決して時間にルーズな訳ではない。
 だが、普段からここまで時間を気にしている訳でもない。

「見られて恥かしいような物は‥‥何も無いな。うむ」
 最後に、彼が部屋を見回した、その瞬間――

 ピンポーン。
 ドアのチャイムが響く。


●Arrival
(「北条さんのお宅は、ここで良いのだろうか」)
 僅かに顔を赤らめて、酒井・瑞樹はドアの前に立っていた。
(「落ち着け。何度も住所は確認したじゃないか」)
 彼がどう意識しているかは分からない。しかし、瑞樹にとって、この家の主である青年は、『もっと仲良くなりたい』対象なのだ。
(「北条さんの部屋‥‥どんな感じ何だろう」)
 ガチャン。
「ひゃっ!?」
 そんな瑞樹の思考をぶった切るように、扉は開かれる。
「む、むぅ、すまん。ぶつけてしまったか?」
「い、いや、大丈夫だ。少し驚いてしまっただけだ」
 笑ってみせる瑞樹に、秀一の表情が僅かに安心したように緩む。
「そうか。‥‥宿題はちゃんと持ってきたか?」
「へっ? あ、ああ、ちゃんとここに」
 肩から掛けた鞄を開き、見せる。
 一瞬、何の事か忘れたのかは秘密だ。そうだった。本当の目的がどうであろうと、表面上ここに来た目的は『宿題を教えて貰うため』なのである。

「立ち話も疲れるだろう。入って座るといい」
「‥‥お邪魔する」
 中に入り、座布団に正座し――瑞樹は、周囲を見渡す。
 男子生徒の一人暮らしにしては、綺麗に片付いている。いや、瑞樹も他の『男子の部屋』を見た事がある訳ではない。ただ、友人や、雑誌などの噂に聞く物に基づき、想像した状況に比べれば――実に『片付いている』状態なのだ。

 1台、部屋の奥に置かれているパソコン。その横にはゲームのパッケージらしき物が置かれている。
 歩み寄り、それを手に取ってみる。
(「北条さんは、こういうのが好きなのか」)

「飲み物は麦茶しかないが、それでいいだろうか?」
 キッチンから響く声に、慌ててパッケージを置き、元の場所へと跳ぶ様にして戻る。
「ああ、それで構わない」
 しばらくして、二つのコップに注がれた麦茶を持ち。秀一が部屋へと戻ってくる。
「この季節だ。外は暑かったのではないかね?」
「いや、この季節でも鍛錬は欠かせないからな。もう慣れてる」
 言いながら、鞄から宿題を取り出す。
「今日は、よろしくお願いするのだ」


●WorkOut
「うーん‥‥分からないのだ」
 10分過ぎた頃。ついにペンを投げて目を閉じ、腕を組んで瑞樹はその場にへたり込む。
「どうした?」
 持った皿をコトリとコタツの上に置き。秀一もまた、彼女の隣へと座る。

「っ!」
「ん、どうした?」
「いや、なんでもない‥‥のだ」
 コタツの中で、足が触れた。宿題の内容を見るために、嫌が応にも、秀一と瑞樹の体は、至近距離になるまで近づいているのだ。

 ドクン。
「ああ、これか。――そうだな」
 ドクン、ドクン。
「Yが整数であり、尚且つ条件1が成立するとすると、数式3と比べてみればXが偶数であると言う事は明白だ」
 早まる胸の鼓動。それによって送られる血液はどこに向かっているか‥‥分からないはずもない。顔は赤くなり、頭がぼーっと熱くなる。

「どうした?一気に詰め込みすぎたか?」
「へっ?」
 心配そうに冷えた麦茶のコップを差し出す秀一を見て、瑞樹は改めて自分の今の状態を自覚する。
「夏風邪かも知れん。その場合は一旦休んだ方がいい。風邪薬が残っていないか見て来よう」
「い、いや、ちょっと疲れただけで、大丈夫なのだ」
 しどろもどろになって弁解する。他にこの状況を説明する『口実』が見つからなかったが故か、かなり無理のある感覚になっているが――
「そうか、なら一旦、休憩としようか」
 良くも悪くも極めて『真面目』である秀一の性格が、この場合は瑞樹にとって幸いとなったといえよう。お菓子を取るためキッチンへ向かった彼の後姿を見ながら、深呼吸。


●Dinner
「普段俺が食べている物だが‥‥」
 お菓子として、秀一が持ってきたのはエナジーバーと呼ばれる類の、栄養補給用食品。
 果たしてこれはお菓子と呼べるのだろうか、等と言うツッコミは厳禁である。
(「普段、こんな生活を‥‥」)
 味気ないそれを摘みながら、瑞樹は考える。

「あの‥‥北条さんがよければ、なんだが」
 もじもじして、少し上目遣い。
「夕食は、私に作らせてもらえないか?」
「君は客だ。客にその様な事をさせるわけには――」
「今回、勉強を教えてもらうようお願いしたのは、私だ。そのお礼だと言っても、だめ、なのだろうか?」
 目を見つめあう。先に折れたのは――秀一。
「そう言う事であれば、お願いしよう」

 トントンと、キッチンから野菜を切る音が響く中。エプロンを着けた瑞樹の後姿を、秀一はじっと見ていた。
 楽しみにしていないと言えば嘘になる。普段、食事を味気ない栄養補給用の物で済ませる事が多い彼にとっては、女性の手料理と言う、このシチュエーションは――
(「いかんいかん。俺は何を考えているのだ、せっかくお礼に料理を作ってくれると言っているのに――」)
 そんな秀一の考えを知ってか知らずか。野菜を洗いながら、瑞樹は彼に語りかける。
「後1時間ほどで出来るのだ。待たせてすまないのだ」
「あ、ああ、ゆっくりで構わないぞ」
 思考を紛らわすかのように、秀一は話題を探す。
「普段も、こうやって料理しているのか?」
「いや、普段は鍛錬に時間を割いているので、こうやって作る事は少ないのだ。‥‥北条さんは普段、暇な時間は何をしているのだ?」
「む、先ほどそちらも見たように‥‥パソコンゲームと、後は読書だな」
 そうこう言っている内に、食事は机へと並べられていく。
 瑞樹は知らない事であろうが、秀一は食と言う物に並々ならぬこだわりを持つ。普段は余り人と同席したがらない彼が、これを許したと言う事は――彼もまた、親しい者、と認めていると言う事だろう。

「「いただきます」」


●Under the Night Sky

「「ごちそうさま」」
 手を合わせ、食事を終える。
「‥‥味のほうは‥‥口にあった、だろうか」
 不安げに問う瑞樹に、秀一は笑って見せる。
「ああ、美味しかった」

 ふと、外を見上げる。今宵はよく晴れている。月が、いつも以上に明るく見える。
 故に、二人でベランダで、空を見上げたのも、また自然な事であった。
「君は将来の夢とかは、あったりするのかね?」
 ふと、聞いた質問。それに瑞樹は俯く。
「私は、将来の夢とかは‥‥余り分からないのだ」
「どういうことだ?」
 聞き返す秀一。

「自分が何を目指せばいいのか、そういったイメージが‥‥浮かばないのだ」
 ふむ。と秀一もまた、暫し考え込む。
「‥‥武士とは元来、君主に仕えてきた」
 それが東にありては「武士」、西にありては「騎士」と呼ばれる者たちだ。
「‥‥ならば先ず、第一の目標として、己の仕えるべき君主を見つけては‥‥如何だろうか」
 純粋で、不器用な後輩の目をまっすぐ見つめ、先輩として。
 青年は、己の意を語る。
「君主‥‥」
「それが誰になるかは、俺には分からない。だが、君主を探すその過程上で、君は必ず力を得る。その力は決して君を裏切る事は無い」
 少女は青年を見つめる。まるで、己の君主が誰であるべきかを、探っているかのように。果たしてそれは――
「その中で力とは何か、強さとは何かを知ってゆけば良い。‥‥俺の考えだが、な」
 にっこりと笑ってみせる。
「そうか‥‥ゆっくりと、時間を掛けて、考えてみるのだ」
 大切な人がくれた言葉だから、大切に考えたいのだ。そう心の中で瑞樹は付け加える。
「それがいい。‥‥と、時間ももう遅い。帰りは送っていこう」
 送り狼にならないかと世の者は心配になるのかもしれないが、この二人には無縁である。
 また、もう一つ付け加えよう。『リア充爆発しろ』と。


●Under the Shooting Star
「あ、流れ星なのだ!」
 目ざとく空を横切るそれを見つけ、目を閉じてそれに向かって祈る瑞樹。
 それを見つめる、秀一。
 目の前の少女は、純粋だ。この戦乱の世の中では珍しい、宝物だ。
 だから、自分は、彼女の未来を守りたい。
 ――自分とて、今まで目標などと言う事を考えたことは余りない。生き延びるので必死であり、それを考える余裕も無かった。
 だが、目の前の彼女は、そんな自分に『目的』を与えてくれた。
 そんな気が、今の秀一にはしたのだった。

 ――夜闇の中。今だけは、恋人たちを静かに月と星が祝福した。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
ja0375/酒井・瑞樹/女/14/ルインズブレイド
ja4438/北条 秀一/男/16/ディバインナイト

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、剣崎です。
いやぁ、夏は青春の季節ですね!(さわやかな笑顔
砂糖率60%程でお届けしております。如何だったでしょうか。
これから二人の関係が良い方向へ向かうことを、お祈りしております。


流星の夏ノベル -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年09月17日

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