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『お祭りは賑やかに 』
レビィ・JS(ib2821)


 ある日「夏祭りを開催したいのだが、人手が足らないから手伝ってほしい」という依頼が、開拓者ギルドに貼り出された。たまたま仕事を探しに来ていたレビィは、依頼の備考欄まで読んだところで参加を決意。相棒の又鬼犬・ヒダマリを連れて、現地へと赴いた。

 お祭りの準備は朝から。レビィはもちろんのこと、ヒダマリもトレードマークの黄色いスカーフにゴーグルを首に巻き、元気に走り回る。
「仕事の後は、お楽しみが待ってるんだもんね!」
 ヒダマリがそういうと、レビィも「そうだね」と微笑んだ。そう、この依頼が終われば、そのままこのお祭りに参加できる。彼女らのお目当ては、仕事の報酬よりもこっちの方が魅力的だ。無論、それは村人たちもそうだし、他の参加者もそうだった。
 そんな彼女の前を、仏頂面で黙々と仕事に励むウルグが通りがかる。今は両手で大きな箱を抱えているが、その中から宝狐禅の導がひょっこりと顔を出している。どうやらお祭りを観察しているらしい。
「ぬ、ウルグ。またレビィがおるぞ?」
 その言い方にやや色気が混じっているのを察すると、ウルグはわざと持っている箱を乱暴に揺らした。
 隣に浮いていた小振りの鬼火玉・咲焔は、少し瞳を見開き、わずかに燃え盛りながら動き回る。彼はご主人様の何かを表現しているようだが、導は彼の言わんとすることがわかっていた。
「なるほど。咲焔は『ウルグはドキドキしている』と言いたいのかの?」
「ふたりとも、これは仕事だ。ちゃんと働いてくれよ」
 相変わらずのそっけない返答に、導が「わかっておる」と答え、ふらっとどこかへ移動した。そんな導だったが、わざとレビィの前を通過し、そのままプイといなくなる。こういう行動はいつものことなので、ウルグも今さら咎めない。
 レビィはお馴染みの顔を見つけると、「あ!」と声を出し、ウルグの前へ。
「ウルグも来てたんだー。終わったらさ、一緒にお祭りを楽しまない? 浴衣も貸してもらえるから、それ着てさ!」
「ああ、別に構わない」
 レビィは「約束だよ!」と伝え、また仕事へと戻っていった。それを見たヒダマリが、湿った視線をウルグに向ける。
「どうした、ヒダマリ。ロープ咥えたまま、ボーっとして」
 あまりにも冷静なツッコミに、ヒダマリは目が点になる。その後「ちぇっ」と言わんばかりにそっぽを向き、屋台の設置作業に戻った。

 開拓者の手伝いもあり、お祭りの準備は予定通りに終了。ここからは、報酬代わりでお祭りに参加できる。
 レビィは桜色の生地に赤い花弁の柄が入った浴衣に身を包み、ヒダマリも同じ花のペンダントをつけてもらった。お互いに珍しい姿なので、テンションも高くなる。
「ねぇ、この浴衣……似合うかな?」
「似合う! すごく似合うよ! すごく可愛いよ!」
 ヒダマリの「レビィお姉ちゃん大好き!」は、留まるところを知らない。とにかく全力でべた褒め。さらに「自分もお揃いなんだよ!」と猛アピール。これで、ふたりが仲間であることは一目瞭然。ヒダマリもご満悦の表情を浮かべる。
 そこへやってきたのは、紺色で染め抜かれた渋い浴衣を着たウルグ。そこへレビィが駆け寄り、自信たっぷりに尋ねる。
「ね、ね、どうかな? この浴衣、似合う?」
 ヒダマリの太鼓判があったからこその強気に、柴犬は静かに奥歯を噛みしめる。
「その赤い花弁、まるでいつものコートみたいで、イメージには合ってるな」
 そのやり取りを聞いた咲焔は音もなく地面へ墜落し、導は眉をひそめて渋い表情を浮かべた。
 ふたりの言いたいことはただひとつ、「もうちょっと気の利いた褒め方はないんかい!」である。導は呆れ気味に「今日はしっかり世話をしてやらんと」と呟いた。

 夕暮れを迎えた会場に、提灯の火が灯る。その様を見ていた咲焔は、宙をコロコロと転がり、楽しそうにはしゃいだ。
 まず、レビィは金魚すくいに挑戦。ウルグはその様子を、立って見守る。
「ウルグ、こういう時は近くで見物するものだ。隣に座って見るといいぞ」
 導がありがたいアドバイスを授けてやったのが、当のウルグはあっさり拒否。なぜなら、自分と同じ色の金魚がたくさんいるのを見た咲焔のテンションがあまりにも高く、放っておくと迷子になりそうだったからだ。導はさっそうと咲焔の傍に寄って「楽しいのか?」と聞けば、相手も「うんうん」と元気よく頷く。楽しいといっているものを、わざわざ阻む必要もないと、導も観念してウルグの肩に乗り、金魚すくいの様子を見守った。
「あ! そっちに大きいのが! そっちは黒いのがいるよ!」
「レビィ、あまり動くものは追うべきではないぞ。角はポイが扱いづらいから、中央付近で仕留めるといいだろう」
 ヒダマリの応援は熱を帯び、導のアドバイスも冴え渡ったが、レビィの結果は散々なものに終わった。着慣れない浴衣でのチャレンジに加え、使い慣れない道具での金魚すくいは困難を極めたらしい。
「惜しかったな、レビィ。0匹だ」
 フォローになってないウルグの慰めを聞いたからか、レビィはあることを呟く。
「け、剣を使う方なら、もうちょっと簡単に……!」
 どうやら泰拳士の技能で雪辱を晴らしたいらしい。もちろん実行に移すわけはないだろうが、それを聞いたウルグと導は、思わず周囲の様子を伺った。もし目の細かい網でもあろうものなら、本当にスキルを使用して「金魚を大漁!」しかねない。ふたりの額に冷たい汗が流れたが、そういったものは見当たらず、ホッと胸を撫で下ろした。
 その後、導と咲焔も金魚すくいにチャレンジ。いつも咥える筆をポイに変え、金魚の泳ぐ水槽を縦横無尽に飛び回る。やはりうまいのは導だが、それでも咲焔は1匹ゲットする大健闘を見せた。レビィに「よかったねー!」と褒められると、照れた表情と大きな火炎を吹き出し、まさに全身で喜びを表現した。

 続いては射的。こちらもレビィの本職には向かない遊戯ではあるが、ウルグにとってはまさに見せ場だ。
「えーっと、まずは手始めに、あのもふら人形落として!」
 屋台においてあるのは、使い込まれたおもちゃの銃。もちろん安全な空気銃だ。コルクの弾を込めて、ウルグは銃を構える。そのシルエットからして、もはや外す未来が予測できないほどだ。
 標的に向かってまっすぐに飛んだ弾は、見事もふら人形を地面へと落とし、その衝撃で「もふ〜」という音が鳴る。どうやら腹を押すと、声が出る仕組みらしい。
「ふふ。ウルグならば、こんなもの朝飯前ぞ」
 応援団の導は、納得の表情。咲焔に至っては、煌々と燃え上がることで「あれやりたいオーラ」を見せるほど盛り上がっている。一方、面白くないのはヒダマリ……もはや、不機嫌の理由を説明する必要はないか。
「さっすが砲術士! じゃあさ、次は……あの小さいペンダント狙って!」
 レビィが人形を頭に載せて指差したのは、さっきよりもかなり小さな的となるペンダント。それを見た導が「これは難しいの」と呟く。
「ウルグ、あれは高さもなく、接地面積も大きいぞ。主の見立てでは、一度で落とせないと見た」
「そうだな。弾はまだ4発ある」
 保護者の読みに頷いたウルグは、弾を込めてまず一発。命中はもちろんだが、ペンダントの重みがあってか、半分くらい後ろにずれた。
 第2射は急がず、ゆっくりと弾込めをし、ペンダントの向きなどをじっくりと観察。攻めの角度を決めると、さっと構えて即射撃。これで勝負あり。ペンダントは地面へと転がった。
「ワンッ? ツー?!」
 これにはさすがのヒダマリも、驚きの声を上げる。
「すごいすごい! 残り4発あるとか言いながら、2発で落としちゃった!」
 レビィはつい嬉しくなっちゃって、ウルグの背中に抱きつく。ところが、相手は至って冷静に尋ねる。
「次はどれを狙えばいい?」
「あと2発で落とせるならさ、ミズチのお面がほしいんだけどー!」
 レビィはともかくとして、導、咲焔、ヒダマリは目が点になっていた。さすがはウルグ、男の中の男。
「なんだか嫉妬してたのが、その、なんか……」
「ヒダマリも、その、なんじゃ。苦労するであろう。大好きなご主人様以上の難物が、こんな近くにいると……」
 さすがのウルグに、3匹は揃って頷くしかない。結局、ミズチのお面までゲットして、レビィはお祭りを満喫した。

 大いにはしゃいだせいか、お腹が空いたので、全員が揃って焼きもろこしを食べた。このお味に、咲焔が過敏に反応する。みんなが黙々ともっそもっそ食べている中、彼だけは嬉しいオーラを出しながらに食べ続けた。
「咲焔くん、それ気に入ったんだ。よかったね!」
 レビィに話しかけられると、咲焔もその場で跳ねて「うんうん」という動作を見せる。
「ふむ、咲焔がそのような反応をしたとなると、留守番のシャリアにも焼きもろこしを買っていかねばな」
「これだけ喜ぶ咲焔の姿は、なかなか見れないからな。多めに買っていけば足りるだろう」
 ヒダマリも前足を使って器用に食べるが、この時ばかりはレビィと同じ表情でもっそもっそと食べていた。
「ほら、ヒダマリ。私のコートと同じ色のペンダントだよ。スカーフにつけとくね」
 あの時、ウルグにおねだりしたペンダントは、実は自分のためだったと知ったヒダマリは「嬉しい! すごく嬉しいっ!」と喜び、レビィに抱きついた。そしてペンダントをつけてもらい、また焼きもろこしを食べる。
「ふふーん、やっぱり相棒だもん!」
 レビィから最高の扱いを受けたヒダマリは、もう鼻高々。焼きもろこしもおいしくなるというものだ。
 しかし、世の中そんなに甘くない。
「それを取ってくれたのは、ウルグなんだから。ちゃんとお礼を言いなさいよ!」
「えっ……?!」
 よりによって、あのウルグにお礼を言わなきゃいけないんだ……その一部始終を聞いていた導は、顔をニヤニヤさせながら口を開く。
「ほら、主たちも聞いてやろうぞ。あのヒダマリの心のこもったお礼だ。咲焔も耳を澄ませるのだ」

 その直後、お祭り会場に悲しい犬の遠吠えが響き渡ったという。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 ib2821 / レビィ・JS     / 女 / 19 / 泰拳士
 (ヒダマリは、レビィ・JSの相棒です)
 ib5700 / ウルグ・シュバルツ / 男 / 27 / 砲術士
 (導、咲焔、シャリアは、ウルグ・シュバルツの相棒です)


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、市川智彦でございます。
この度はご発注いただきまして、誠にありがとうございました。

レビィとウルグ、そして相棒たちの夏祭りを存分に描きました。
非常に魅力あふれるキャラばかりで、描くのが楽しかったです。
またの機会がございましたら、ぜひよろしくお願いします!
流星の夏ノベル -
市川智彦 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年10月04日

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