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『The Family 』
ロドルフォ・リウッツィjb5648

「いやー、しくじっちまったかな」
 病院のベッドの上で目を覚ます、ロドルフォ・リウッツィ。
 体を軽く起こし、首を横に振って、自分が何をしていたかを思い出そうとする。
「っあ、いってぇ‥‥!」
 背中に走る痛み。その刺激で、多少思い出してきた。

 繁華街に於ける一戦。その際に、空挺として敵の撹乱術の要であった、霧を起こしていたシュトラッサーを強襲したが‥‥待ち構えていたサーヴァントたちの、ネット捕縛からの集中攻撃に会い、重傷となったのである。

「ったく。サーヴァントが天使を襲うったぁ、世も末だな」
 確かに、必要なリスクである、と思っていた部分もあった。
 目標としたシュトラッサーを撃破しない限り、味方は随時奇襲されかねない霧中で交戦を行う事となり、著しく不利である。故に早期の撃破を狙おうとした。
 だが、感情が混じっていなかったかと言えば、それもまた否。
 ――あの天使のやり口。そして表情。それはロドルフォに、忌々しき記憶を思い出させたのであった。

『へっ、役立たずが――』
 脳裏に蘇るのは、床に伏せた自分と‥‥それを見下ろす、指揮官の姿。
 ぶんぶんと首を横に振り、それを追い払う。
「ったく、問題を人のせいにしてくれた上に、あの仕打ちとは‥‥いやなもんを思い出させてくれるもんだ」
 サーヴァントを盾としたその戦術を見る限り、あの天使は、恐らく自身が最も忌み嫌う昔の上司と同じ。
 あの上司と違って戦術的な頭脳がある分、尚性質が悪い、と言った所か。

 ――いい加減忍耐も限界な所へ、『お嬢』の堕天の一報。
 これ幸いと上司を半殺しにし、お嬢を追って堕天した物の‥‥追ってきた追っ手を振り払うために力の殆どを使い果たし、墜落した。
 その先で親切な老夫婦が自分を拾い上げ、人界の常識を教え、養ってくれなかったのであれば‥‥自分は恐らく、あのまま野垂れ死にしていただろう。この名前すら、彼らが自分の亡くなった子にちなんで、つけてくれた物なのだ。
「そう考えると、人間の方が天使よりも親切に思えてくるから不思議だ」
 自分の経歴を反省するかのように、やや自嘲気味に笑う。
 と、その瞬間、病室の扉がバコンと思いっきり開け放たれる!

 ズカズカズカ。
「またですか!全く、貴方はどうして己が身を省みようとしないのですか!」
「ぐふぉ!?」
 ばしーんと猛烈な平手打ちがロドルフォの額を叩き、彼はそのまま枕の上へと勢い良く倒れこむ。
 ――ベッドの上であった事は、ロドルフォにとって幸運だったと言わざるを得ない。枕の緩衝が無ければ、そのまま頭をぶつけ改めて『昇天』する可能性が存在していた。
 最も、治癒術に精通する、平手打ちをかました女性――フィーネ・アイオーンは、枕があるのを見越した上でこの力加減で叩いたのかも知れないが。
「まったく‥‥わたくしにも、怪我の様子を見せてくださいませ」
 ぐいっとロドルフォの服を捲り上げようとするフィーネ。この動作は男にとっては役得とも言えなくもない。そう考えたかどうかは定かではないが、ロドルフォに抵抗の様子はない。

「オホン。流石にそれは‥‥どうかと思うぜ、お二人さん」
 ――だが、人前なのであれば、それは別である。
 病室の門の前でわざとらしく咳き込んだ男を見て、ロドルフォは驚異的な反応速度でフィーネの手を押しのけ、服をさっと下ろす。
「た、隊長‥‥いつから?」
「あんたが『ばしーん』ってやられた時からだよ」
 すたすたと、歩み寄る『隊長』ロヴァランド・アレクサンダー。
 浮かべたにやにやとした悪戯っぽい笑みが、彼の性格を良く表しているとも言える。
「まーその、なんだ。早死にしねェ程度になら、無茶はしても良いモンさ。痛い経験は強さに直結しやすい」
 その言葉は、彼もまた同様の経験をして来た事を意味しているのか。彼自身にしか、本当の事は分かるまい。
 だが、それが正しいかどうかは兎も角、ロヴァランドが部下を気遣っているのは事実である。
 例えその言葉が冗談交じりだったとしても。彼は彼なりに、部下の為を考えているのだ。

「経験ねぇ‥‥刺されたのと、ネットで絡め取られたのを果たして経験と言っていいもんかね」
「どうしてそんな状況になったのかは、分かってんだろ?ならそれが経験ってモンだ」
「そんなもんか‥‥」
 そんなロドルフォの背中に、そっとフィーネの手が当てられる。
「‥‥何してるんですか?」
「回復魔法です。本当は直接触った方がよろしいのですけど‥‥このままでも、ないよりはマシですわ」
「う‥‥じゃあ、お願いします」
 そんな二人を見て、にやにやと笑いを浮かべるロヴァランド。
「何だよ、その笑い方」
「いや、ロドのそのクセ、分かりやすいなって思ってな」
 僅かにロドルフォの顔に赤みが差す。
「へいへい、どうせ俺はフィーネ大好きですよーっと」
「ちょっと、大人しくしないと回復できませんわよ」
 芝居かかった大仰な動きで、後ろから手を当てていたフィーネに抱きつく。
 冗談とも見えるそれは、果たして本当に『冗談』なのだろうか。それとも――

 ――一通りの回復魔法が施された後、腕を組み、ベッドの上で仰向けに眠るロドルフォ。
 見渡せば、お嬢はりんごを慣れない手つきで切っており、隊長はと言えば、先刻の依頼の報告書を読み直しているようだ。
「‥‥昔からは、想像もつかない生活になったもんだ」
 ――天界に居た頃は、ただ称号と番号で呼ばれるだけの一兵卒だった。『自分』として扱ってくれる者は、誰も居なかった。‥‥いや、当時から優しくしていたのは、今目の前に居る『お嬢』のみだった、か。
 堕天した自分に名をくれたのはあの老夫婦であったが‥‥真に『居場所』を得たのは、今の状況になってから、であるかもしれない。
 あの老夫婦は言っていた。真に居場所を見つけた時、そこには本当に望んだ『家族』がいるのだろうと。その意味では、今眼前に居る二人こそが、自分の『家族』と言えるのかも知れない。

「はい、あーんしてくださいね」
 大人しく口を開け、フィーネが差し出したりんごを飲み込む。甘い。

 ――この状況が、いつまでも続くことを、自分は望みたい。
 だが、この戦乱の世で、労せずその状況――『平和』と呼ばれるそれが手に入る事は、ありえないだろう。
 ならば、どうするか。

「よし、とりあえず読んだ。大体のあの天使の能力の予想はついたけど‥‥ま、天界に居た事があるやつらにも聞いてこないとな」
 パタンと、報告書のノートが、隊長の手の中で閉じられる。

 ――そうか。守りきればいい。
 自らの力を高め、知略を磨き。全ての障害を排除し、平和をその手に掴めばいい。
 そんな彼の表情から何か察したのか、心配そうな眼差しで、フィーネは彼の額に手を当てる。
「無理は――しないでくださいね」
 歩み寄る隊長の顔には、いつもはない真剣な表情。
「そうだぜ。フィーネちゃんに心配させたらだめじゃん、ね!」
 ――と思ったら、何時もの悪戯っぽい隊長だった。

 ――幸せは常に、お互いによって作られる物。自分が彼女らを失いたくないのと同様に、彼女らも、また同様に思ってくれているのではないだろうか。
 ならば、自分自身も、『守り切る』。何一つ、この幸せを奪わせたりはしない。
 『家族』が皆、笑って過ごせるよう、ロドルフォは目を閉じ、差し出されたりんごのもう一欠けらを飲み込んだのであった。

「ぐほっ‥‥辛っ‥‥水ー!?」
「へへ、タバスコりんごはどうだった?」
「もーう、病人に何してるんですかー!?」



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
jb5648/ロドルフォ・リウッツィ/男/20/ディバインナイト
jb5665/フィーネ・アイオーン/女/20/アストラルヴァンガード
jb2568/ロヴァランド・アレクサンダー/男/27/ディバインナイト

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうも、剣崎です。
過去描写、と言う物は著しく苦手なのではございましたが、精一杯がんばらせて頂きました。
文字数とプレイング内容の関係からアドリブは圧倒的多めではございますが、ご満足していただけたのならば幸いです。
ご依頼ありがとうございました。
■イベントシチュエーションノベル■ -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年10月15日

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