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『ハロウィンのメデューサ 』
セレシュ・ウィーラー(mr1850)


 ここは、ユグドラシル学園女子寮。
「トリック・オア・トリート!」
 狼の被り物に身を包んだ女学生が両手を上げてがおお、と襲い掛かる。
「きゃああっ! トリート〜っ!」
 襲われた背の低い女学生はひいいと身を縮めて棒付きキャンディーを差し出す。狼娘は満足満足。
「それじゃ私も……お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうんだからねっ!」
 背の低い娘が逆襲とばかりに魔法の杖をかざす。南瓜をイメージしたオレンジ色の衣装から伸びる真っ白な二の腕と太股が目に眩しい。
「うん。三角帽子に南瓜パンツかわいいかわいい。はい、ごほうび〜」
 狼娘は目の保養になったとばかりにプロ野球ポテトチップ(カード付き)の袋を手渡す。
「って、何でプロ野球ポテトチップ?」
「いやだって、オフシーズン突入で訳あり商品入りして安かったのよ」
「何だかなぁ……」
 最近の女学生はちゃっかりしているようで。
「でも、これじゃいつものお菓子の交換会と変わらないような?」
「うーんんん、仮装してる分雰囲気あるし……」
「でもやっぱり仮装してない人を襲いたいよね〜」
 とかそんな話をしているところに、制服姿の女学生が通りかかった。
 セレシュ・ウィーラー(mr1850)である。これはいいカモだとばかりに突撃開始!
「セレシュ、トリック・オア……」
「お、どないしたん?」
 がおお、と狼娘と魔法少女が襲いかかろうとしたところで顔を向けたセレシュの様子に気付く。
――ぎょろ。
 なんと、セレシュの髪の毛もこっち向いた。
 髪の毛が蛇なのである。
 セレシュの真の姿、メデューサだ!
「ちょっと待って。セレシュちゃんそれって仮装しなさすぎ〜っ!」
 ききき、と止まる魔法少女。
「ああ。眼鏡しとるから大丈夫や」
 セレシュの言う通り、石化能力を抑える眼鏡を掛けている。メデューサの能力は発揮されない。
「ほい、トリートな」
 ぽふ、と二人にアイドルチップス(カード付き)を渡すセレシュ。
「って、何でアイドルチップス?」
「いやだって、旬が過ぎて訳あり商品入りして安く……」
「勝手に旬過ぎさしてどないすんねん!」
 ツッコミが入り大爆笑。いつものノリだ。
「じゃ、今度はこっちの番やね」
「え? セレシュってば仮装してないじゃない」
「いやいや。どこから見ても立派なメデューサの仮装やん」
 くるりん☆と回るセレシュ。どこからどう見ても、服装だけは女学生だ。
「仮装に交じって強引に仮装で通す気ね……さすがセレシュちゃん」
「まあそんなとこやな。ほな、寮を回るで〜」
 というわけで、三人でハロウィンパレード。
「トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうよ?」
「お菓子はいいから悪戯させて〜」
 魔法少女、狼娘の旋風が吹き荒れる。セレシュは出遅れて見てるだけ。
「ほら、セレシュもやんなさいよ」
「仕方ないなぁ。……トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃ石にするで」
「えええっ! 石〜?」
 狼娘に促されたセレシュの悪戯は容赦ない。運悪くお菓子のない娘だったのであっさりと石化。
「せっかくやし、ここからさらに悪戯を……これでよし」
 セレシュ、ちょちょいと指示して石化した女子を動かす。ゴーレム魔法の応用だ。
 ポージングぐらいなら朝飯前のようで、お尻を突き出し腰をくねらせ、胸をツン☆とそらして脇の下を健康的にさらしウインク。セクシーポーズが完成してしまう。
「この娘、ミニスカートにハーフトップだから下着が見えそうじゃない」
「ま、女子寮なんでええんやない? というか、もっときわどくてもええんちゃう?」
 大丈夫かな、と心配した魔法少女だが、セレシュは気にもしない。これが女子寮。これぞ女の園のノリ。
「そうそう。じゃ、セレシュ。次はこの娘ね」
「えっ! 私ぃ〜?」
 狼娘、羽目を外した。セレシュの眼鏡を取って魔法少女の方を向かせる。
 途端に石化する魔法少女。
「それじゃこの娘は少年っぽいから……こうしてこうして」
「小便小憎! ええな、それ」
 セレシュも悪乗りした!
「そしたらアンタも……」
 こうなるとセレシュもタチが悪いぞ。
「え? きゃああっ!」
 なぁんと、狼娘の着ぐるみをずるりと脱がす。大きな口から白い柔肌が現れた。どうやら下着姿で着込んでいたようで。
「……いじらんでもせくしーぽーずになってもうたな」
 これにはセレシュもびっくり。いやん、な下着姿娘の石像、一丁上がり。
「はっ!」
 ここで気配を感じ振り返る。
 びくっ、とネコのように固まる通行中の女学生。というか、石化した。たちまちお尻を突き出しスカートの裾が跳ねて、きゃーいやんなポーズに。
「きゃあああ、セレシュがセクハラ魔人になった〜!」
「誰がセクハラ魔人やねん!」
 両手を上げて逃げるそのほかの女学生。言われようにカチンときて追うセレシュは暴走しまくり。もうはっちゃけまくりだ。
 こうして、寮の廊下にスカート無しで佇む少女、包帯が解けまくって胸やら前やらを両手で必死に押さえているミイラ女、ばさりと開いたマントの下は下着姿の変質者的なドラキュラなどの石像が林立することに。
「あっはは、たのしー。……ほなぎょうさん笑ったし、石化解除したげよかね〜」
 セレシュはウインクして指をぱちん、と鳴らした。
「あ、あれ? 私何を……」
「ぎゃーっ! 包帯が解ける〜!」
「ちょっと、いつの間に下着姿に」
「私のスカートどこーっ」
 たちまち正気に戻った娘達の悲鳴が響く。
「あっ。セレシュ〜」
「こぉの、セクハラ魔人めー」
 石化前を思い出し、というか、石化騒ぎときたら元凶はセレシュと皆分かっている。ぎらん、とセレシュを睨むとこの恨み晴らさでおくべきかと追ってくる。
 そのさま、まさに百鬼夜行。
「あはは、ほなさいなら〜」
 が、セレシュは窓から寮の外に脱出。まさか下着姿のセミヌード状態で外までは追って来まいという知能犯っぷりを見せる。
「ちくしょ〜っ! 覚えてろ〜」
 女学生たちの遠吠えを聞きつつ、心地良く走り去る。



 町はすっかり夜更けに。
「おっちゃん、トリック・オア・トリートや」
「お、めっちゃ怖いな。これで堪忍してえな」
「おばちゃん、お菓子をくれなきゃ石にするで」
「はいはい、そこの女学生さんね。これ、美味しいわよ」
「こら、セレシュ」
 街中をメデューサ姿女学生仕様で練り歩いていたセレシュ、街灯の灯る公園のベンチで一休みしていると知った顔に出会った。見掛けはセレシュと同年代風の少女ではあるが……。
「なんや、センセやん」
 ユグドラシル学園の先生である。長寿の種族のようで。
「なんやじゃない。まぁた石化騒ぎ……しかも街中で一般市民を巻き込んで」
 ふぅ、と溜息をつくロリな先生。
「……って、ちょい。まだ外で石化騒ぎ起こしとらんやん。ほら、ちゃんとお菓子もろたし」
「待て。今の間は何だ? もしかして私に悪戯でもしようとしたか?」
 一歩踏み込み睨め上げてくる先生。思わず目をそらすセレシュ。
「てゆうか、センセこそ去年うちらにしたように外でポーズ人形騒ぎ起こす気満々やない。そないな……」
「年甲斐もなくそないな不思議の国のアリス衣装着て、とか言いおったな、セレシュ〜!」
「いってないいってない〜っ!」
 どったんばったんとベンチの上でもみ合う。
――ころ……。
 この時、セレシュの衣装からキャンディーのように包んであるスモークチーズとか一口カツとか一口サラミとか柿ピーの小袋が飛び出した。
「……おい、仮にも乙女がハロウィンに受け取るお菓子か?」
「せ、せやかてしょうがないやん。おっちゃんやおばちゃんら、こんなんしかくれへんもん〜」
 ベンチでセレシュに馬乗りになった先生が固まり呆れると、じたばたとセレシュが言い訳。
「仕方ない。今晩は先生が付き合ってやるか」
「……露骨に態度、変わったなぁ」
 こほん、と先生。
 とにかく難を逃れたセレシュだった。

 が、しかし。
「セレシュ、帰って来たわね〜っ!」
「トリックオブソフト・オア・トリックオブハード〜っ!」
 すでに寮ではお菓子とジュースと、一部飲める年齢の人はお酒で玄関口から盛り上がっていた。
 というか、さっきの恨み晴らさで置くべきか状態で。
「ハードってなんや、ハードって〜!」
「よぅし。セレシュ、ハードってゆったね? どうしてくれよう」
「ああ。それなら先生の部屋に」
 というわけで、ロリ先生の部屋に。
――ぎし……。
「ちょい、何で天井にレールとか滑車とか吊り下げ施設があんねんっ!」
「ああら、セレシュ。いい格好よ?」
 セレシュ、天井から吊るされてお酒を酌をする羽目になっていた。
「セレシュ、こっちのお酒切れたわよ〜」
「セレシュちゃん、こっちもよろしく〜」
「まてまて。そないぐるぐる回したらうち目回るねん!」
「ちょっと。なんでこっちにお尻向けるのよ!」
――パシン! ぐるぐる……。
「ひぃぃぃ!」
「そういえば私、セレシュにスカート下ろされたのよね〜」
「ひぃ、スカート下ろすのだけは堪忍や〜っ」
 というわけで、吊るされたままぐるぐる回されたりスカートめくられたりパシンとお尻を叩かれたりと存分に仕返しされることとなった。
「はい、セレシュちゃんマシュマロ食べて〜」
「今度はこっち。はい、お酒〜」
「むぐぐ〜」
 中には親切に食べさせてくれたりもするが、罰ゲームなことには違いなく。
「あははっ。やっぱハロウィン、楽しいわ〜」
 ハロウィンにかんぱ〜い、と未明まで存分に騒ぐのだった。セレシュを吊ったまま。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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mr1850/セレシュ・ウィーラー/女/15(外見)/ゴルゴーン

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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セレシュ・ウィーラー 様

 いつもお世話様になっております。
 んもう、セレシュさんたら被害者を恥ずかしい格好にしてあとから追い掛けにくくするなんてー(。とか、楽しく書かせていただきました。
 あとは、無駄にお菓子にこだわってみました♪

 賑やかなハロウィン発注、ありがとうございました。
魔法のハッピーノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
学園創世記マギラギ
2013年10月22日

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