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『トリック・オア・トリック? 』
青空・アルベールja0732

「トリック・オア・トリート!」
 よく晴れた秋の空に、楽しげな声が賑やかに響き渡る。
 ハロウィーン・パーティーの会場には思い思いに恐ろしげな、またはコミカルな仮装をした人々がいて、思い思いにおしゃべりに興じていた。
 話の邪魔にならない程度に流れている音楽は、会場の隅に整然と並ぶ楽者達が奏でているものらしく、すぐ傍で音色にうっとりと聞き入っている者も居る。
 その、楽しげな空気に誘われるように、人混みの中を歩き出そうとしたら、スタッフらしき誰かに止められた。

「今日はハロウィーン・パーティーやぎ。トリック・オア・トリートやぎ。仮装でオバケでびっくりするやぎよ!」
「何を言うんだ! ハロウィンと言ったら、トリック・オア・トリック(お菓子をやるから悪戯させろ!)だろ?」

 一体何を言っているのか、解るようでいまいちまったく解らないが、とりあえずのこの機会に乗じておっぱいを(以下略)……ではなく、どうやら仮装しろと言っているらしい、と理解する。
 言われてみれば確かに、ハロウィーンと言えばオバケの仮装で楽しむパーティー。会場の誰も彼もが何らかの仮装をしているし、スタッフもヤギの着ぐるみを着ているし‥‥

「いやだからっ! 悪戯できるんなら、気になる子とか、彼女とかにしたいだろ? …てゆーか、リア充は死゛ね゛ぇー!」
(「着ぐるみ、だよな‥‥? 気になる子……とか、何?」)

 なんとなく違和感を覚えて首を傾げたが、ともあれ参加者の為に用意したのだという、ヤギスタッフの後ろに山のように用意された仮装衣装を1つ、選んだ。
 案内された部屋で着替えて、すっかり別人になってしまうと、改めてパーティー会場の中を歩き出す。
 たくさん並んだ、ハロウィーンの飾りで綺麗に飾られたテーブルに用意されているのは、パンプキンをたっぷり使ったお菓子やお料理。
 パンプキン・ジュースも忘れちゃいけないとばかりに、グラスの中で美味しそうに揺れている。
 仮装に身を包んだ人々は、見知った人も居るようだけれども、スタッフのように着ぐるみにすっぽりと隠れていたり、そうでなくてもすっかり顔が隠れて誰だかまったく解らない仮装の人も居て、なんだか不思議な世界に紛れ込んでしまったような、奇妙な心地がした。
(「もしかしたら本物のオバケだって、混ざって遊びに来ているかも‥‥?」)
 そんな事を考えた自分に思わず苦笑して、すぐ傍のテーブルに用意されていた、パンプキン・ジュースのグラスを手に取った。
 グラスの向こうでは、天使と悪魔の仮装をした人たちが冥魔とか、天魔とか、奪都とか訳のわからないことを言っている。気にしないでおこう。
 誰とも知れない隣の誰かと目が合って、カチンとグラスをぶつけ合う。

 会場のあちらこちらで、思い思いにゲームをして、仲間同士や見知らぬ人と談笑をして、そんな人達を少し離れた場所から、微笑みながら見つめる人が居て。
 奏でられている音楽は、ますます賑やかになっていく。
 ――あなたはどんな風に、ハロウィーン・パーティーを過ごしますか?

 でも、きっと悪戯されちゃうかもね(はあと)

●仲良しインフィル買い出しツアー
「はーるばるー来たぜかーいだっしー♪」
「かーいだっしー♪」
 小野友真(ja6901)と青空・アルベール(a0732)の二人は歌いだした。
 今日は英雄前線基地【ブレイバーズ】――英雄を志す者や憧憬を抱く者、例えばヒロインやら助け出されるお子様。はたまた、なぜかヒーローの集まる場所は食べ物屋で必ずマスターとか店長とか出て来るとか、通りすがりの人々は逃げるのが遅いとか。悪の結社員は「イー!」しか言わないとか。
 そんなお約束や熱き血潮の若者が集う、会議や特訓で互いを高め合い&切磋琢磨系「真の英雄」ロード驀進中(と思いたい)の部活ではあるが、それのパーティー用の買い出し最中であった。
 二人の後ろを大層イケメンな百々 清世がゆるりふわりと歩いていた。
 後輩二人と英雄部のハロウィンパーティの飾り付けなどを色々買いにきた系で、本人としてはあまり乗り気でない。ふーらふらと辺りを見て回っていた。時々、そこそこ可愛い女の子がこちらを窺っているのに気が付き、ニコリと笑って手を振る。
「部活のパーティとかぶっちゃけ気ぃすすまねーんだよなぁ……アルコールでねぇし、女の子いねぇし……(切実」
 今の子いいなーと思いつつ、わきゃわきゃ☆と買い物に興じる後輩を見つめていた。ただいま、ハロウィン衣装を購入中だ。
 そして、それに友真は異を唱えた。
「さすがに校舎内でお酒はアカンわー。部にも可愛い女の子おるやろ。副部長とか超可愛いやん、友真先輩頼りになります♪ ……って言うてくれるんやで……(きゅん」
 そんな様子に清世は苦笑した。女性関係は常に良い感じにゆるめ、三股くらいなら通常運転で、その手のいざこざは受け止められる度量の持ち主ゆえ、後輩の純情が微笑ましい。
「次、何買おうかな〜」
 アルベールが賑やかしい色彩のお菓子を眺めて言った。
 オレンジのクリーム、紫芋のマッシュ、金箔を振りまいたチシャ猫の飾りの乗ったカップケーキ。それを手に取って、キラキラと目を輝かす。普段なら手に取らない極彩色のケーキに「すごい色だけど大丈夫かな?」と笑って振り返った。
 オレンジと言うビタミンカラーと紫のビビッドな色彩が溢れるマルシェ(市場)風の会場は、和装に緩い黒髪とヘアピン、猫のマスコットと言うアルベールはすでに変装しているかのように見える。
「お菓子購入予定やで。あとコーラ! 飾り付けは、カボチャとかそゆのんでいいんかな」
「いいんじゃないかなー。あとはオバケとコウモリ? ハロウィンらしく可愛いもの買えたらいいなー! ……あ、これ可愛い」
 アリスのカップケーキににへっと目じりが下がる。隣に置かれた黒猫のチョコケーキも捨てがたい。
「これ、猫パッケージの瓶だー……あ、お酒だった(汗)。んー、お酒ってなんか皆好きだよな。美味しいのかな?」
「甘いのからそうじゃないのまで、様々。コーヒーリキュール入りのカルーアミルクは甘いし、レッドアイはトマトにビールだよ」
 そう言いつつ、ふらりふらりと今来た道を戻って気になる商品を見始めた。買い出しと言っても、いつも通りあっちにふらふらこっちにふらふら通常運転異常なし。面白そうなものハロウィンっぽいものに惹かれて、どっちが保護者だかわかんねぇよ状態になっていた。
 だがしかし、友真もミイラ取りがミイラになっている。
「おにーさんどこ行……あ、これ面白いな、土産にしよ。紙皿、派手やなあ。でも可愛い……あ、これキモ可愛い」
 清世を止めようとした友真も、ついつい、棺桶とコウモリオブジェ風チョコフォンデュセットに目を奪われていた。ラッパを真上に吹く髑髏から溢れるチョコの噴水。足元には大きなお皿。普通のチョコフォンデュの機械と違ってデザイン重視のため、変な方向にチョコが溢れている。
「ちょっ……商品として、成り立ってええの?」
 清世を止めようとして自分も恋人への土産物色にふらふら。そして、オバケの小さな置物の横に変なものを見つけて目が点になる。
「こ、れ積み┌(┌^o^)┐ホモォ? ……アリなんか(汗;」
 パーティーゲーム用のミニチュアの中に┌(┌^o^)┐を発見して眉を顰めた。お菓子付きのおもちゃだ。
「一つ、二つ……お尻引っ付けて……うわぁ、シュールやな……」
「もー2人ともふらふらしないのー! 迷子になっても知らねーのだよ」
「ごめん、つい! あ、これ……ハロウィン限定の百味マシュマロ付きミニチュアゲームやで」
「どうするの、コレ?!」
「どないしょ〜……女子にお土産? とりあえず写メかな」
 そう言ってパシャリとで携帯で写メる二人。そこに清世が戻ってきた。
「買い出しもいいけどさー、腹減ったべ? なんか食おう、ハロウィン限定系(きり☆」
「えっ、ハロウィン限定品?! 食べる食べる!! ハロウィン限定ドリームパフェ!! ヽ(*´∀`*)ノ」
 ほんわりとアルベールの幸せオーラ炸裂。南瓜アイスに南瓜クッキー。マロンクリーム、ココア、キャラメルと甘い物への想いを馳せた。
「限定ゆーたら南瓜系やろ、スープもええなー。今日ちょい寒いし」
「じゃあ、あそこ! そこのカフェ!」
「え? 青ちゃん、行く気満々?
「ハロウィン限定ドリームパッ、フェ〜〜!! ヽ(*´∀`*)ノ」
 力入りまくりのガッツポーズ。その様子に清世と友真は仕方ないなと言った風に笑う。そして、三人はカフェに向かった。

●やすらぎをどうぞ☆
 三人は小さなテーブルを囲んで料理を待った。
 魔女のテントをいくつも並べた様な、可愛いカフェの真ん中で、キャンドルライトの明かりに照らされて三人はぼーっとしていた。
「ええなあ、ここ」
「あれ、どうみても魔女のスープ鍋だよなあ」
「煉瓦作りの竈だよ! しかも、移動式っ」
 薄闇に紛れ、明々と皆を照らすのは鍋を温める炎。鍋をかき回しているのは、魔女の衣装を着たスタッフのようだ。
 竈はパン焼き部分と鍋を設置するコンロ部分からなっている。一方からはカボチャのスープの匂い。もう一方からはピザの匂いがしていた。
「おいしそうだねえ、それ」
「うんっ。ほいひいおー(おいしいよ)」
「あぁ、口に物入れたまま喋らなくていいから」
 後輩の幸せそうな笑顔に、清世は微笑んだ。
 紫芋、カボチャ、マロン、チョコ入りコーヒーとナッツのアイスクリームタワーに、生クリームとキャラメルシロップ、イチゴ、桃、チョコブラウニーのドリームパフェはアルベールが食べたがっていた物だ。
「美味しい……マロンアイスが優しい甘さ……美味しい……」
「さっきから美味しいしか言ってないなw」
「んー……だって、美味しい」
「よかったな」
「うん」
 カプチーノを飲みつつ、アイスを頬張るアルベール。自身が蕩けそうな笑顔でパクついている。
 友真は買い物をチェックしつつ、時々、南瓜スープに手を出し。飲み終わると、衣装を引っ張り出した。横から清世がひょいと覗き込む。
「えーっと、なんか適当に面白系のグッズとお菓子と仮装用の衣装…これか」
 そう言って、清世はアルベールにミニスカ魔女っ娘衣装を当ててみた。
「青ちゃんのミニスカ魔女っ子か……」
(「ありちゃう?」)
(「ねーよ」)
(「ねぇな」)
 と、言う顔。2対1で、友真の負け。
 「ハロウィンは皆の行事ですうー! 折角やし、仮装しようや」と友真。ガタァと立ち上がり、清世の肩をポン☆
「俺? 俺はほら、もう大人だし。ハロウィンは子供の行事じゃん?」
「おにーさんは吸血鬼かなー俺は狼男とかどない? 青ちゃん食べるでーがおー」
「だから、話を聞こう。な?」
 仮装したくないっつー、ささやかな反抗を雰囲気で表してみた。
「ほら……私ももう高校3年生だし、落ち着いて大人の階段登るっていうか……ていうか、振られても着ないよ! ゆーまくんの方が可愛いよ!(ぁ」
「いやだから、それは……そ、それよりっ! 女の子用の衣装もいるよな?」
「あ、誤魔化しやん、それ」
「ち、違っ……女子の衣装もちゃんと用意しないと……」
 そう言いつつ、自分の恋人の可愛い姿想像して、真っ赤になった。ここは話を本線に戻さないと、自分にどうなのとツッコまれてしまう。
「でも。清兄ちゃんはなんでも似合うよね。悪魔な衣装もおすすめー。私はグリムリーパーしようかな」
(「さて……と」)
 二人がきゃっきゃしてるのを尻目に、清世は喫煙スペースへそっと席を立った。無論、そこには可愛い女の子がいた。やっぱり、可愛い後輩とは言え、野郎よりも女の子の方が良い。
 しばらく話し込んでいると、清世がいないことに気が付いた。
「あれ? またおにーさんどこ行っt……ナンパか……」
 友真は仕方ないなと苦笑する。寄ってって女の子に微笑みかけた。
(「うわ、ごっつー可愛い……」)
「ごめんな、この人返して貰ってい?」
 ニコッと微笑んだ。
「え?」
 ピンクのニットに薔薇のティペット、ふんわりレースのスカートにブーツ姿のゆるふわ美少女は突然のことに驚いていた。
「今日は俺(ら)のなん♪」
 そう言って、腕組みをする。タイミングの悪さと言葉の内容に女の子は、真っ赤になって3人を見回している。頭の中は清世の甘く危険なハーレムの妄想光景だ。
「そ、そんな……バイだなんて……」
「こ、こらっ……相手が誤解をしてr……」
「そろそろ帰るんよー、何やってるのー?」
 ナンパしてる清世にタイミングよくと言うか、悪くと言うか、アルベールはドーンと軽く体当たりした。そして、友真とは反対から無邪気に腕を組んだ。
 もう、少女の方は驚いて、いたたまれなくて駆け出して行ってしまった。
「誤解招いた? 知らん知らん、ほい、荷物分担で持ち帰りです!」
「まあ……やるなら俺も楽しむけどさ」
(「さっきの子、惜しかったなあ……」)
「今年はあんまり備品壊したりすんなよ?」
「「やりぃ!」」
「なんだかんだで面倒見てくれるおにーさん好きよー。パーティ楽しみなー」
「あぁ、まあなー」
「じゃぁ、帰ろうな!」
 そう言って、友真は清世に荷物を渡し、腕を組んだまま歩き出そうとする。アルベールもそのままだ。
 周囲の熱ぅ〜い視線を受けつつ会計を済まし、店を出た。

 月末はハロウィン。
 年に一度の収穫祭。
 お兄さんを収穫なのか、パーティーのグッズを収穫なのか。
 三人は一路、久遠ヶ原学園絵と向かった。
 木枯らしも優しく、秋の季節はまだ自分たちの元に居てくれそうだった。

 ■END■

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / ジョブ】
  a3082  百々 清世  男    21  インフィルトレイター
  a0732  青空・アルベール    18  インフィルトレイター
  ja6901  小野友真        18  インフィルトレイター

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、皆瀬七々海です。
 ふんわりゆるふわお兄さんたちが幸せそうで、こちらも元気をいただきました。
 青ちゃん、グリグリしたいです。可愛いです(ほわわ☆
 この中にダイビングひゃっほい☆したかったとか(げふふん!
 それぐらい素敵な方々でした。至福です。
 奇しくも私は甘い物が苦手と言う、ハロウィンには残念無念な人間でございますが、カプチーノやラテが美味しい季節なので秋は大好きです。
 ご注文をありがとうございました。

 皆瀬七々海 拝
魔法のハッピーノベル -
皆瀬七々海 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年10月22日

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