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『秋を彩る・ハロウィンデート 』
奥戸 通jb3571

1.
「これで…よし!」
 奥戸 通(jb3571)は部屋を見回して、1人満足そうに頷く。
 秋の夕暮れ、窓の外は日が落ちかけて赤い光が街を包んでいる。
 準備万端、約束の時間まではあと少し。なんだかソワソワしてしまって落ち着かない。
 鏡を覗き込んで前髪を直したり、服のコーディネートのチェックをしたり…。
 すると、電話の音が鳴った。
「もしもし」
『あ、奥戸ちゃん? もうすぐ着くよー』
 聞き慣れた声。嬉しくなって、すぐに返事をした。
「うん、待ってますね」
 プツッと切れた電話を眺める。
 もうすぐ来る。もうちょっとで…。
 嬉しくてソファに倒れ込んでクッションに顔を埋める。
 落ちつけ、私! もうすぐ来るのに、こんなに顔が赤くちゃ恥ずかしい…でも…嬉しいものは嬉しいんだもん!
 …わかってる。今日来るのは今度みんなでやるハロウィンパーティーの打ち合わせ。落ち着け…落ち着け…。
 ピンポーンとチャイムが鳴る。軽く深呼吸して、もう一度鏡を覗き込む。
 大丈夫。いつもの私。
 ドアを開けると、シュークリームの箱が目に飛び込んできた。
「おーす…奥戸ちゃん、シュークリーム好きだっけ?」
「おぉーシュークリーム好き! いらっしゃいませ、ももちゃん」
 微笑む百々 清世(ja3082)を、通は嬉しそうに部屋に招き入れた。


2.
 早速部屋に上がってもらう。
 清世はところどころに置いてあるハロウィンの飾りを見ながら「おぉ」とか小さく感嘆の声をあげる。
「綺麗に飾り付けてるねー。奥戸ちゃん、センスいいなぁ」
「そう…ですか? そう言ってもらえると、頑張ったかいがあります」
「ドアのハロウィンぽい…リース…だっけ? あれも奥戸ちゃんが作ったの?」
「あ…えっと、買ってきました…」
 そんなことを話しながら、清世にソファに座るように促す。すると、清世が手に持っていた袋から1枚のDVDを取り出した。
「そうそう、来る途中に見かけたから映画レンタルしてきた。後で一緒に見よー」
「映画? どんなの借りて来たんですかー?」
 清世の手元を覗き込んだ通に、清世はあっけらかんと言う。
「んー…俺も見たことないけど、多分泣ける系?」
 キリッと言い切った清世に、通はふふっと口元を押えて笑う。
「ももたんの選んだものだから、楽しみにしてます」
 そう言って、通は腕まくりをする。清世は「ん?」と小首を傾げた。
「お腹空きません? 今度のハロウィンで作ろうと思ってる料理があるので、試食もかねて食べてくれませんか?」
 通の言葉に清世は明るい笑顔で答える。
「もしかして、今から作ってくれるとか?」
「はい! 料理は任せてくださいっ! 通ちゃん頑張っちゃいますっ!」
「お、まじでー? おにーさんお腹すいちゃったなー」
 期待度アップ! よぉし! ここでいいところ見せちゃうもんね!
 あらかじめ用意したエプロンに身を包み、通は手慣れた…とは程遠い手つきで材料を切り出す。
「………」
 清世が無言でそれを見つめる。しかし、通は材料に集中していてそれに気が付かない。
「オリーブオイルは大さじ3杯…塩コショウは少々…えっと、それから…バジル、バジル…」
 味付けは完璧に覚えたけれど、包丁さばきは一朝一夕で覚えられるものではない。
 危なっかしい手つきだなと自分でも思う。
「…うん、いっしょに作るか。奥戸ちゃん、人参の皮剥いてくんない?」
 清世が笑顔で、通の握っていた包丁を受け取る。
「え? でも…」
「いやいやまじ、皮剥きだけでいいから」
 凄まじいまでの清世の笑顔が…痛い。もしかして…呆れられちゃったんだろうか?
 手慣れた手つきで材料を切っていく清世の隣で、こくんと項垂れながら通は人参さんの皮を剥くのであった…。


3.
「ハロウィンパーティーにはやっぱりコスプレですよね!」
 料理を並べた机を前に、2人で並んで座る。話す内容はみんなでやるハロウィンパーティーのことだ。
「んー。まぁ、定番だよね。吸血鬼とか…ネコミミとか? あ、女の子は裸エプロンでも俺的にはオッケーだな」
 かるーく清世にそう言われ、通は少し考え込む。
「ももたんは裸エプロンしないの?」
 ちらっと清世に視線を送ると、清世は苦虫をかみつぶしたような顔でかろうじて笑顔を保っていた。
「え゛? 俺の裸エプロンとか誰得…?」
「…って冗談ですよー!」
 通がそう言って明るく笑うと、清世もホッとしたように微笑んだ。
 誰得って…私得?
 …なんて、そんなことは置いといて。通は用意しておいた衣装をじゃじゃーんと見せた。
「こっち着てみてください! 似合うと思うのっ!」
 取り出したのは映画で有名な海賊の衣装。ワイルドな雰囲気、それでいてセクシーで女性を引き付ける魅力がある清世にぴったりだと思った。
「うん、いいね。俺、それ着るわ。でもその代わり、奥戸ちゃんはコレかコレ、着るのよ? おにーさん超おすすめ。どう?」
 にやっと笑った清世が取り出したのは、ナース服と婦警の2択。
「あっ、こっちのナース服可愛い! …着てみますね」
 迷わずナース服を取り、通はバスルームに着替えに立った。
「…覗いちゃだめですよ?」
「覗かないって。俺、紳士だもん」
 そんな会話も楽しい。するするっと服を脱ぎ、ナース服に袖を通す。
「!?」
 着てみて、清世がおすすめした理由がようやくわかった。
 スカートの丈…みっ、短っ!!
 ぎりぎりラインのスカート丈は、ちょっとでも屈めばちらリズムどころの騒ぎじゃない。
 でも…ももちゃんのおすすめだし…これは…普段は絶対着れない丈だけど…ハロウィンだもんね?
 覚悟を決めて、バスルームを出る。
「…似合う、かなー?」
 恥らう通に、清世もまた先ほど通がおすすめした海賊衣装を身にまとって待っていた。
「…うん、やっぱ可愛いわ。似合う似合う」
 清世の笑顔に、着てよかったと思う。…恥ずかしいけど。
「ももたんも似合います。…よかった」
「奥戸ちゃんの選んでくれたものが、似合わないわけないじゃん」
 清世にそう断言されて、通は照れたように微笑む。清世の裏表のないその一言が嬉しい。
「さ、飯食おっか」
 促され、通は清世の横に座る。スカートに気をつけながら。
「…美味しい…」
 ほとんど清世の作ったグラタンは、とっても美味しくてなんだか涙が出た。
「味付けは奥戸ちゃんでしょ。うん、美味しいよ」
「ももちゃん…」
 清世のフォローにまた涙する通であった…。


4.
 ご飯を食べ、シュークリームも美味しくいただき、片づけを終えると清世はDVDをセットしていた。
「映画見よ、映画」
 泣ける映画…どんなだろう?
 再生を押して、通は清世の横に座る。少し古めの映画なのか、タイトルに見覚えはない。
 主人公は女の子。なんだか初恋系? 話が進むと男の子が出てきた。
「奥戸ちゃん、奥戸ちゃん」
 見入っていた通を、清世が呼んだ。
「なんですか?」
「横で見られてっとなんか寂しいわ。ここ、おいでよ」
 『ここ』と言いながら、清世は自分の膝をポンポンと叩いた。
「ふぇ、お膝?!」
 思わず赤くなった通を、清世は急かす。
「ほら、おいで」
「おっ、重いってば…」
「いいから、いいから」
 微笑む清世に通は素直に膝に座る。
「重く…ないですか?」
「重くないよ? このほうが落ち着くし」
 耳元で清世の低くて甘い声が聞こえる。耳まで熱い。
 どうしよう。きっと私、顔真っ赤だよね? ももちゃんにわかっちゃうかな?
 そこからはさっぱり映画の内容なんか入ってこなかった。
 心臓が破裂しそうな音がうるさくて、ももちゃんの声が近すぎて…もう、このままずっといられたらって…。

「……」
 柔らかな音楽と共に映画のスタッフロールが流れる。
「もうこんな時間かー」
 気が付けば、すっかり夜も遅い時間になっていた。
「女の子の部屋にあんまり長居しちゃ悪いよな」
「え!? と、泊まっていっても大丈夫…です…」
 清世が帰ろうとするのを通は止めた。できればもっと一緒にいたい。
「どうしよっかな…ソファ借りていいなら、泊まるけど」
 清世の思いがけない言葉に、通は顔を明るくした。
「それなら大丈夫です! えいっ!」
「うお!?」
 通はソファのレバーを引っ張って、思いっきり清世ごとソファを後ろに倒した。
「へへーん! このソファーは倒すとベッドになるのだー☆」
 してやったり! 通は満面の笑みで清世を見た。
「…やってくれるね、奥戸ちゃん」
 清世は胸の中に通をぎゅっと抱きしめた。
「悪い子には俺、お仕置きしちゃうよー?」
「ふふっ、お仕置きしてください」
「…おにーさんが奥戸ちゃんにお仕置きできるわけないじゃん」
 そう言って笑う清世に、通も微笑んだ。
 いつの間にか、DVDは自動的に停止してメニュー画面が現れていた。

 うつらうつらと夢の中。温かい人肌に包まれて、優しい夢を見る。
 柔らかな朝日の気配に、ふと目を覚ます。
 目を開ければまだ深く眠る清世の顔がある。
 朝まで一緒に居てくれた…嬉しいな。また来年もこうしていられたら幸せだなー…。
 寝顔を見ながら、通はまたウトウトとし始める。
 ももたんが起きたら食パンを焼こう。コーヒーと紅茶、どっちがいいかな?
 目玉焼きは好きかな? スクランブルエッグの方がいいかな?

 でも、今はこの温かな腕の中で眠っていたい…。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 / インフィルトレイター

 jb3571 / 奥戸 通 / 女 / 21 / アストラルヴァンガード


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 奥戸 通 様

 こんにちは、三咲都李です。
 この度は魔法のハッピーノベルご依頼いただきましてありがとうございます。
 激甘指定でしたので、砂糖過多(当方比)でいかせていただきました!
 少しでもお楽しみいただければ幸いです。
 楽しく幸せなハロウィンをお過ごしください。Happy Halloween!
魔法のハッピーノベル -
三咲 都李 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年10月23日

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