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『秋を彩る・ハロウィンデート 』
百々 清世ja3082

1.
「さみっ」
 百々 清世(ja3082)は夕闇迫る街の小さなケーキ屋から外に出た。
 日が暮れるとそれまで暖かかった日差しが消え、冷たい風が吹くようになった。
 …秋だな。めっちゃ秋だわ。
 ポケットから携帯を出して時間を見る。約束の時間まではあと少し。
 そろそろ連絡いれておくか。
 携帯の登録番号の中からお目当ての人物を探して、電話を掛ける。相手は直ぐに出た。
『もしもし』
 聞き慣れた可愛い後輩の声がした。
 清世は空を見上げながら告げる。
「あ、奥戸ちゃん? もうすぐ着くよー」
『うん、待ってますね』
 心なしか嬉しそうに聞こえるのは、俺の願望か?
 電話を切って、足を速める。目的の奥戸 通(jb3571)のマンションはもう少しだ。
 マンションに着くと、エレベーターを使って部屋のある階まで上がる。
 ふと、ドアに掛けられたハロウィンっぽい木の輪っかに気づく。…よく見たら、ここが通の部屋だ。
 もう一度時計を見て、約束の時間であることを確認した。
 ピンポーンとチャイムを押す。
 ドアが開くと、清世はケーキ屋の箱を顔の位置まで上げた。
「おーす…奥戸ちゃん、シュークリーム好きだっけ?」
「おぉーシュークリーム好き! いらっしゃいませ、ももちゃん」
 笑顔になった通に、おもわず清世も微笑んだ。
 女の子への手土産には、やっぱりスイーツが一番だな。


2.
 早速部屋に通される。
 ところどころに飾り付けられたハロウィンの飾りが目に付く。目立ちはしないが、どことなく季節を感じる配置だ。
「綺麗に飾り付けてるねー。奥戸ちゃん、センスいいなぁ」
「そう…ですか? そう言ってもらえると、頑張ったかいがあります」
 恥ずかしそうに笑う通に、ドアの木の輪っかを思い出す。
「ドアのハロウィンぽい…リース…だっけ? あれも奥戸ちゃんが作ったの?」
 そう、『リース』だ。『リース』。この単語が思い出せてよかった。
「あ…えっと、買ってきました…」
 そんなことを話しながら、通は清世にソファに座るように促した。清世は手に持っていた袋から1枚のDVDを取り出した。
「そうそう、来る途中に見かけたから映画レンタルしてきた。後で一緒に見よー」
「映画? どんなの借りて来たんですかー?」
 清世の手元を覗き込んだ通に、清世はあっけらかんと言った。
「んー…俺も見たことないけど、多分泣ける系?」
 キリッと言い切った清世に、通がふふっと口元を押えて笑う。
「ももたんの選んだものだから、楽しみにしてます」
 そう言って、通は腕まくりをする。清世は「ん?」と小首を傾げた。
「お腹空きません? 今度のハロウィンで作ろうと思ってる料理があるので、試食もかねて食べてくれませんか?」
 通の言葉に清世は明るい笑顔で答える。
「もしかして、今から作ってくれるとか?」
「はい! 料理は任せてくださいっ! 通ちゃん頑張っちゃいますっ!」
「お、まじでー? おにーさんお腹すいちゃったなー」
 おー、女の子だねー。
 エプロンに身を包んだ通はまた一段と女の子らしく、可愛く見えた。
 …が、通は手慣れた…とは程遠い手つきで材料を切り出す。
「………」
 清世が無言でそれを見つめる。しかし、通は材料に集中していてそれに気が付かない。
「オリーブオイルは大さじ3杯…塩コショウは少々…えっと、それから…バジル、バジル…」
 危ない。これは危ない。そのうち絶対に手を切る。
 できれば女の子が傷つくところは見たくない。血も見たくない。
「…うん、いっしょに作るか。奥戸ちゃん、人参の皮剥いてくんない?」
 清世はなるべく笑顔で、通の握っていた包丁を受け取る。
「え? でも…」
「いやいやまじ、皮剥きだけでいいから」
 優しく言ったつもりだ。笑顔で、なるべく傷つけないように。
 それでも手慣れた手つきで材料を切っていく清世の隣で、こくんと項垂れながら通は人参さんの皮を剥くのであった…。


3.
「ハロウィンパーティーにはやっぱりコスプレですよね!」
 料理を並べた机を前に、2人で並んで座る。話す内容はみんなでやるハロウィンパーティーのことだ。
「んー。まぁ、定番だよね。吸血鬼とか…ネコミミとか? あ、女の子は裸エプロンでも俺的にはオッケーだな」
 頭に思いつくまま清世はそう口にした。通は少し考え込む。
「ももたんは裸エプロンしないの?」
 ちらっと通の視線を感じた。清世はかろうじて笑顔を保って言った。
「え゛? 俺の裸エプロンとか誰得…?」
「…って冗談ですよー!」
 通がそう言って明るく笑うと、清世もホッとして微笑んだ。
 時々、通は冗談みたいに本気を言ってるんじゃないかと思う時がある…。
 と、通が隠してあったらしい衣装をじゃじゃーんと清世に見せた。
「こっち着てみてください! 似合うと思うのっ!」
 取り出したのは映画で有名な海賊の衣装。セクシーと言われる俳優が演じる役の衣装に似せたものだ。
「うん、いいね。俺、それ着るわ。でもその代わり、奥戸ちゃんはコレかコレ、着るのよ? おにーさん超おすすめ。どう?」
 にやっと笑った清世が取り出したのは、ナース服と婦警の2択。厳選した2品だ。どっちを選ばれても悔いはない。
「あっ、こっちのナース服可愛い! …着てみますね」
 迷わずナース服を取り、通はバスルームに着替えに立った。
「…覗いちゃだめですよ?」
「覗かないって。俺、紳士だもん」
 通は気付くだろうか? まぁ、気付かないわけないな。
 清世は通の用意した海賊衣装を羽織ってみる。…うん、悪くない。
 とりあえず、通だけにコスプレさせるのも気が引けるので着替えることにした。
「…似合う、かなー?」
 恥らうように出てきた通は、超ミニ丈スカートのナース服がよく似合っていた。
「…うん、やっぱ可愛いわ。似合う似合う」
 清世は超笑顔で言った。恥らう通もまた可愛い。
「ももたんも似合います。…よかった」
「奥戸ちゃんの選んでくれたものが、似合わないわけないじゃん」
 清世はそう断言した。通は照れたように微笑んだ。
「さ、飯食おっか」
 促され、通は清世の横に座る。
「…美味しい…」
 ぽつりと言った通の言葉に、清世は笑う。
「味付けは奥戸ちゃんでしょ。うん、美味しいよ」
「ももちゃん…」
 美味しく食べる清世の横で、なぜか切なそうな通の姿があった…。


4.
 ご飯を食べ、シュークリームも美味しくいただき、片づけを終えると清世はDVDをセットした。
「映画見よ、映画」
 再生を押して、通が清世の横に座る。適当に選んできた映画なので、本気で内容は知らない。
 主人公はどうやら女の子らしい。隣の通は既に真剣に見入っている。
 …落ち着かない。
「奥戸ちゃん、奥戸ちゃん」
 見入っていた通を、清世は呼んだ。
「なんですか?」
「横で見られてっとなんか寂しいわ。ここ、おいでよ」
 清世は自分の膝をポンポンと叩く。
「ふぇ、お膝?!」
 思わず赤くなった通を、清世は急かした。
「ほら、おいで」
「おっ、重いってば…」
「いいから、いいから」
 微笑む清世に通は素直に膝に座る。思ったほど重くない。
「重く…ないですか?」
 心配そうな通の声に、清世は優しく耳元で囁く。
「重くないよ? このほうが落ち着くし」
 通の前で手を組んで、通の髪に顔を埋めるように映画を見る。
 女の子のいい匂いがする。通の緊張が清世にも伝わってくる。
 可愛いよなー。
 映画は、小さな女の子と男の子の初恋の物語だった…。

「……」
 柔らかな音楽と共に映画のスタッフロールが流れる。
「もうこんな時間かー」
 気が付けば、すっかり夜も遅い時間になっていた。
「女の子の部屋にあんまり長居しちゃ悪いよな」
 親しき仲にも礼儀あり、というしここらが帰り時だろう。
「え!? と、泊まっていっても大丈夫…です…」
 清世が帰ろうとするのを通は止めた。意外な一言だったが、清世は少し考えたのち冷静に言った。
「どうしよっかな…ソファ借りていいなら、泊まるけど」
 すると、途端に通は顔を明るくした。
「それなら大丈夫です! えいっ!」
「うお!?」
 通がソファのレバーを引っ張って、思いっきり清世ごとソファを後ろに倒した。
「へへーん! このソファーは倒すとベッドになるのだー☆」
 してやったり! 通の満面の笑みにその言葉がぴったりだった。
「…やってくれるね、奥戸ちゃん」
 清世は胸の中に通をぎゅっと抱きしめた。
「悪い子には俺、お仕置きしちゃうよー?」
「ふふっ、お仕置きしてください」
「…おにーさんが奥戸ちゃんにお仕置きできるわけないじゃん」
 そう言って笑った清世に、通も微笑んだ。
 いつの間にか、DVDは自動的に停止してメニュー画面が現れていた。

 あったかいな。
 夢なのか、現実なのか。とぎれとぎれの記憶に彷徨う。
 柔らかい。温かい。それは、何の記憶?
 女の子は柔らかくて、温かくて、甘い匂いがする。
 みんな好きだよ。それ以上でも、それ以下でもない。
 このままでいいじゃん?

 まどろむ記憶の中で、ただ、その温かさは現実だった…。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 / インフィルトレイター

 jb3571 / 奥戸 通 / 女 / 21 / アストラルヴァンガード


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 百々 清世 様

 こんにちは、三咲都李です。
 この度は魔法のハッピーノベルご依頼いただきましてありがとうございます。
 シュークリーム!! …あ、いや、そこじゃなくて。
 お家でデート、いいですね♪ 女の子にスイーツのお土産は最強です(こくこく
 少しでもお楽しみいただければ幸いです。
 楽しく幸せなハロウィンをお過ごしください。Happy Halloween!

魔法のハッピーノベル -
三咲 都李 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年10月23日

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