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『お札の文字は変態滅殺! 』
綺咲・桜狐(ib3118)


 ふりん、と銀色の狐尻尾が揺らいだ。
「ねえ、ママー。銀狐さん〜」
「そうね。とっても気分良さそうに尻尾を振ってるわね」
「私も見てたら楽しい気分になった〜」
「まあ」
 ぴく、と動く銀狐の耳。背後で繰り広げられる小さな娘と母親らしき二人の会話に気付いたようだが、特に振り返ることはしない。ふりん、と尻尾を揺らめかせじっとショーウィンドウの張り紙を覗き込んでいる。
 一体、この狐獣人は何に熱心なのだろう。
「たまにはこういうところで働くのもいいのです…」
 決めた、とばかりに立ち去った後。
 喫茶店のガラスに張られていたのは、「アルバイト急募!」。
 なるほど、小さく添えられた「ハロウィンにつき、けも耳さん大歓迎!」に釣られたようだ。
 からん、と入店した銀色狐獣人の娘。
「おおぅ。グッドだねぇ、即決だよ!」
 何やら軽薄そうな店長の叫び声が聞こえる。
 こうして、綺咲・桜狐(ib3118)のハロウィンが始まる。
 まさか、あのようなことになろうとは思いもせず。



「じゃ、早速この衣装に着替えてウエイトレスをしてちょーだい!」
 ぐぐうん、と迫るぐりぐり眼鏡の店長。
「ちょ…変態さんですか? 変態は滅すべし…です……」
 桜狐、すかさず呪符を構えて腰を落とし身構える。
「ちょっと、この私のどこが変態?!」
「マッドサイエンティストが喫茶店の店長やってるところが変態さんぽい、です」
 がびん、とショックを受ける店長に狐耳を立てた桜狐がむーと警戒した目付きのまま答える。
「いやユー、それはおかしいよ。世の中、マッドサイエンティストが喫茶店の店長をやっててもいいじゃない」
 なにせマッドなんだし、と掌を両脇で持ち上げるようにやれやれふーと呆れる。
「べ、別にやっててもいいけど、何か変態さんのような気がしたのです…」
「ユー、君は勝手に決め付けるタイプのようだね。……オーケー。普段はそれでもいいけど、ここで働くならちょっとその性格は改めてもらうよ。何せお客さんはここに憩いを求めてやって来る。もしかしたら、君の敏感な変態レーダーに引っかかる真性の変態さんが来るかもしれない。だけど、この店のお客さんである限りはお客さんとして尊重するように」
 ずずい、と桜狐に詰め寄って諭す店長。
「わ、分かりました…」
 桜狐は店長の勢いに押されたじたじ。比較的ペタンコな胸元に手を添えて、上目遣いで恥じ入っていたり。変態だと思った店長に至極真っ当なことを言われたのがショックだったらしい。
「オーケー、フレンド。それじゃ早速働いてもらうから……ええと、名前は桜狐ちゃんだったね。それならピンクのこれなんかいいんじゃないかな? 更衣室で着替えてきてね」
 店長から制服を受け取り早速従業員控え室に。
 ごそごそ……と着替えをする気配。
 が、更衣室から声が飛んできた。
「え! 店長さん。この衣装って……」
「ハロウィンの仮装だから気にしちゃだぁめ!」
 カウンターから答える店長。
「でも……」
「恥ずかしいと思ったら大切なところをちゃんと隠すといーよぅ?」
「わ、分かりました…」
 というわけで、ようやく着替えて出てきた桜狐。
「わぁお。桜狐ちゃん、イケてるじゃない〜。これで来客もそのキュートな姿にずっきゅんメロメロで入院患者さんの仲間入りねっ! それじゃ、開店しちゃうよっ!」
 桜狐の姿を見たマッドサイエンティスト仮装をした店長。ノリにノッたまま、いざハロウィン・デーの仮装イベント開店だ。



――からん。
 早速の来店者。
 客の前に立ったのは……。
「い、いらっしゃいませ、です…」
 白くて清楚なパンプスに、ピンクのニーハイソックスの脚がすらりと伸びる。
 絶対領域の太股はやや内側に擦り付けるように。
 淡い桜色のスカートはこれでもかというようなミニで、折り目のまったくないぴっちぴち。
 くびれたウエストは素肌のまま。胸下丈の上着も清楚な桜色でぴっちぴち。胸はぺたん娘だけど。
 そして頭部には、狐耳の間にナース帽。
「その、こちらの病棟に……はわわっ。こちらのテーブルにどうぞ」
 桜狐、清楚な桜色のセパレートナース服姿だった。
 青年男子二人客は一発でずっきゅん。
「あの……カルテ……もとい、メニューは?」
「はわわ、ど、どうぞカルテ……はわっ! メニュー、です…」
 桜狐の魅力にお熱の客が言うと、桜狐まで間違えてしまう有様だったり。
「ナースさん、ボク、ちょっと熱があるみたいなんですけど」
「栄養をしっかりとってください…南瓜ケーキなんかいいかも、です…」
「ナースさん、こっちは辛抱たまりません」
「南瓜ドリンクも飲んで安静にしててくださいね…」
 おさわりとかを必死に押さえつつ頑張る桜狐。普段なら「変態さんですね」と滅殺しているだろう。だが今日はハロウィン。客は九死に一生を得る。
「桜狐ちゃん、あっちのテーブルも頼むよ?」
「は、はい。店長…。いらっしゃいませ。今日はこの南瓜のケーキがお勧めです…。はい、セットで南瓜ジュースはどうですか…?」
 何だかんだで激しく適応しているようで。基本的に真面目な娘なのである。
――からん。
 ここで新たな客。
 で、桜狐を見て一言。
「……アンタ、ばっかじゃない? そんな格好で寒くないの? 恥ずかしくないの?」
 今度の客はツンツンな娘。
「さ、寒くはないですが恥ずかしい……」
 思わず本音が出る桜狐。肩をすぼめて内股で太股すりすりしつつ、きゅっと短すぎるスカートの裾を下げて恥ずかしがっていたり。狐耳と狐しっぽは、しゅん。
「ふん。私は恥ずかしくないけど……そうね。この温かそうな南瓜のスープを頂戴」
 ツン娘は悪魔っ娘のセパレート衣装。恥ずかしくはないけど寒いようで。
「分かり、ました…。店長〜。南瓜スープのお注射一本…」
「な、何よ! スープをお注射にするのっ!」
 どうやらハロウィン・デーは悪乗りもするらしい。もちろんスープは普通の器で出て、巨大な注射器は飾りとして出ただけだが。
 そして、また新たな客がやってきた。



――からん。
「ん、いらっしゃいませ…え?」
 接客に寄った桜狐、今までと違う様子に立ち止まった。
「おおっと動くな、トリックオアトリートだ!」
「俺たちゃ強盗。トリートはトリートでも、有り金全部頂いちゃうよ!」
 白黒横縞の囚人服を着たノッポとデブの客が符と魔槍砲を構えて威嚇するッ!
 緊張が走る店内。
 しかし、桜狐は敢然と診察もとい接客に立つ!
「悪い強盗さんにはお仕置きします…」
「おっと、動くとこの『全裸服切り丸』が火を噴くよ?」
 陰陽符「稲荷神」を構えた桜狐に魔槍砲のデブが動く。
「……強盗さんで、変態さんですね?」
 突っ込みをかわされ、ざっくり上着の右脇下を切られた。隙間から見える白のブラ。今日の下着が白とばれる。
「安心していいよ。ボクたちは女性には優しいんだ。肌は傷つけず降参してもらうのさ。この『全裸服切り丸』……ぎゃっ!」
――バリバリッ!
 桜狐、すべてを言わせなかった。
 いい気になって喋ってるうちに接近して雷撃符をデブの額に貼り付けたのだ。雷撃を脳天に直接喰らって悶絶ダウンするデブ。伸ばした右腕の脇の下から見える、ぺたんこながら形のいいブラカップの一部がちらりん☆して目を奪われたのが勝敗を分けた。
「『変態滅殺雷撃符』…。この格好は恥ずかしいですけど、強盗さんで変態さんには容赦はしないですよ…!」
 きっ、と振り返り距離を取ったノッポを見返す桜狐。敵の武器の名を耳にして、彼女はこの二人を変態と認識したようだ。こうなると手が付けられないぞ!
「やるな。それでは喰らえ、『全裸斬撃符』!」
 ノッポは引きつつ斬撃符。桜狐を襲い切り裂くっ。呼び名の通り、もちろん肌を傷つけず衣服を切り裂いて女性の無力化を図る技だ。
「ん……」
 桜狐の方は、新たな武器の名を聞いてもう周りは見えない状態。服を狙われたが敵に向かう。舞い散る桜のように衣装が千切れていくのも気にしない。いや、後回し。
「おっと」
 ノッポ、戦い慣れている。
 がたんとテーブルを倒し牽制してから距離を取り、また全裸斬撃符。さらに桜が散るように衣服が裂ける。踏み込むたびにむちっと太股に食い込み生地が伸びきっていたスカート。深く入りまくりの切れ込みから下着が覗く。ちなみに、やはり上下の揃いで白だったり。
「しぶとい…です」
 追う桜狐。さらに喰らった斬撃符でもう服はズタズタだ。
「仕方ないわね」
 ここで、客の悪魔っ娘がおもむろに巨大注射器を投げた。
「おっと」
 かわすノッポ。とすんと壁に刺さる巨大注射器。
「隙あり、です…」
 こごてぐん、と踏み込み腕を伸ばす桜狐。
――バチチッ!
「ぐわあっ!」
 雷撃符が見事脳天炸裂。指先ひとつでそのままダウンだ。
「ふうっ。…お客様、もう安心を……きゃっ!」
 無事撃退しほっとして皆を振り返る桜狐だったが、ここで大量の桜吹雪が舞った。
 いや、さらにっ!
 白い布地も交ざり散っているではないかっ。
 桜狐のまとう衣装で白といえば下着しかないはずだがッ!
 まさか、と客達が注目する。
 きゃあ、と両手を上げていた桜狐の姿は……。
 なんと、ささやかな膨らみには符が張られていた。描写は避けるが下も同じく。
 着替えの時に店長に言われて、大切なところはしっかり隠していたのだ。
「助かりましたけど…そ、それでも十分恥ずかしいです」
 桜狐、白い頬を……いや、全身を桜色に染めて恥じ入った。肩を小さくして前を隠しつつ、太股を擦り付けるようにもじもじと更衣室に逃げるのだった。
 余談だが、ふさふさ銀狐のしっぽはこういう時も役に立つ。
 くるん、とうまく使って大切なところを隠すのに一役買っていた。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib3118/綺咲・桜狐/女/16/陰陽師

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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綺咲・桜狐 様

 こんにちは、瀬川潮です。
 この度はご発注、ありがとうございました。
 設定を見て噴きましたというのはさておき、どんな服装をしてもらおうかな〜と結構な時間を掛けて考えました。結果、変態→病気というラインを使うことにしてナース服で。全身図のチャイナもとっても魅力的ですけど今回はこちらにしました♪

 では、桜狐さんの受難をお楽しみください。
魔法のハッピーノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年11月06日

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