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『気まま系女子の食べ放題暴走記録 』
佐倉・咲江(gb1946)

●秋をいっぱいバイキング!

 秋と言えば何だろう。
 スポーツの秋。爆発は多分しないけれど芸術の秋。それに読書の秋に。たーくさんある。
 これだけ沢山の秋を考えた昔の人の感性って凄いと思う。だけどね、やっぱり――。

「食欲の秋だよねー」

 秋の空より清々しい晴れやかな笑顔で葛城 縁おねーさんは告げました。
 実りの秋だもの。収穫の秋だもの。だから、食欲の秋だよね!
「ん……」
 それに対して、こくりと頷いたのは佐倉・咲江ちゃん。
 食べ放題。秋の味覚が食べ放題。食べ放題。そう、食べ放題なのだ!
 ビュッフェというオシャレな言葉もあるけど、それはまぁ置いておいて、こんな素敵イベントに乙女が飛び付かずして何をする。
 此処はそこそこに有名なお店らしい。ある程度混んでいそうな時間を避けて来たものの空いている席はひとつだけ。
 ということで、相席することになった縁と咲江の瞳はまさに光り輝いているようだった。
 目の前には沢山の美味しそうな料理。流石有名店とある。
「わぁ〜っ。こんなに沢山、美味しそうだよ〜♪」
 和食に洋食、中華にエスニック料理。何だかよく解らないけれど高級そうな何かの鳥の丸焼きもあった。
 それらが全て折り重なるようにかぐわしい香りを立てて鼻をくすぐる。
「がぅ、いい匂い。美味しそうな料理いっぱい……。全部制覇する……」
 じぃっと運ばれてきた料理を眺めている咲江。時折チラッチラと縁の方を見ては、また視線を料理に戻す。
 例えるならば『待て』をされた仔犬のよう。それに縁は少しだけ苦笑して。
「じゃあ、そろそろ食べよっか♪」
「ん……」
 よし、と言うような縁の言葉にこくりと頷いて、手を合わせていただきますをしてから箸を伸ばす。
 水を得た魚のように。其処からは只管夢中に、齧り付いていた。
「そんなに焦って食べたら喉に詰まらせちゃうよ?」
「ん、これくらい大丈夫。それよりそっちもいっぱい食べるね……」
「だって、美味しいもん」
 咲江が視線を縁の方に向ける。
 すると、いつの間にこんなにも食べていたんだろうか。縁の周囲には沢山の空き皿が広がっていた。
「がぅ、私も負けない。食べ放題勝負……」
「美味しそうに食べるんだね〜。私も負けてられないよ♪」
 おっとりと見える縁は実は侮れないお姉さんなのかもしれない。
 そう、密かに思った咲江は静かに対抗心を燃やすが、大した縁は朗らかに笑うだけ。
 そうして、また運ばれてくる料理達に舌鼓をしながら、。お互いの食べっぷりに、いつの間にか意気投合したふたりの周囲に積み上がっていく空き皿の数々。
「あ、咲江ちゃん。このローストビーフおいしいよー」
「がぅ……ほんと?」
「うんっ♪」
 笑顔でそう頷いた縁。一口サイズに切り取ったローストビーフをフォークで突き刺して咲江の口へと運ぶ。
「はい、あーん」
「ん……がぅ、おいしい……」
 促されるままに口を開いた咲江。口いっぱいに広がる旨味に思わず破顔する。
 といっても、あまり表情は変わらない。だから、なんとなくの雰囲気だけれど、かなり幸せそうだ。
 そうして、ひとしきりローストビーフの味を堪能した咲江は、再びじぃっと縁の顔を見て。
「んー……がぅ? ご飯ほっぺたについてる。だから、とる……」
「うん?」
 そんな言葉とともに見つめられて、きょとりと首を傾げた縁。
「……ん」
 少しだけ体を起こした咲江。縁の頬に付いている米粒を舐め取った。
「ひゃっ! も、もー! そんな意地汚い事しちゃ駄目だよー?」
「……ん、綺麗にしただけだから問題ないの」
 慣れない感覚にひゃ、と小さな悲鳴をあげて少しだけ顔を赤く染めた縁。だけれど、悪びれる様子も無く咲江は告げる。

 その後も、きゃいきゃいと語りながらも乙女達のペースは留まることを知らない。
 ふたりともお世辞にも大柄とは言えない体型だ。既に胃の許容量は超えていそうなのに、何処にそんなにも入るのだろう。
 気付けば周囲の人やヤギもふたりを興味深く眺めていたが、当人達はその視線を気にする様子も無く次々と平らげていく。

 アレだけあった全ての料理を制覇して、数合ったデザートも完食したふたり。
「はふ、腹八分目くらい? いっぱい食べて満足なの……」
「やっぱり美味しい物は沢山、楽しく食べてこそだねー♪ ところで……」
 だけれど、ふたりともまだまだ行けそうな余裕の表情。
 咲江の頬についた生クリームを拭き取りながら縁はとあることに気が付いた。
「咲江ちゃん……何を、抱えているのかな?」
 何処から連れ去ってきたのか。縁が瞳を向けた先には咲江の腕の中でバタバタと抵抗するようにしているヤギの姿。
 必死の抵抗であろう。だけれどそれも虚しく咲江はけろっとしている。
「ん……おみやげ……」
 ついに、抵抗を止めてされるがままのヤギ。
 ヤギ、哀れ。

 店を出たふたりの頭上に広がるのはいっぱいのオレンジ色の空。遠くには既に藍色が待っていて、もうすぐ夜が訪れる。
「んー! また来ようね♪」
「ん……」
 夕陽に映るふたりの影は長く、長く伸びていた。
 こうして、食欲の秋は賑やかに過ぎ去ってゆく。
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CATCH THE SKY 地球SOS
2013年11月07日

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