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『ハロウィンライブでジャンプ☆ 』
リィムナ・ピサレット(ib5201)


「あっ。……そんなにパイを投げないで」
 ステージの上でコクリ・コクル(iz0150)が身を小さくしていた。
 客席からパイを投げられていたのだ。ひらひらのワンピース型テニスウエアに似たミニスカステージ衣装に身を包み、体をくの字に折りパイを全身で受けている。
「コクリちゃん! もういいから。あたしをかばわなくていいからっ!」
 同じくひらひらワンピ型テニスウエアなミニスカ衣装を着たリィムナ・ピサレット(ib5201)がコクリの前に出る。ちょうど観客のジャック・オ・ランタンたちが用意していたパイも尽きたようだ。
「あはっ。こんな悪戯されちゃった」
 てへ、と身を縮めるコクリ。全身生クリームだらけ。
「大丈夫。あたしが全部舐め取ってあげるからねっ」
 リィムナ、コクリに抱き付きほっぺの生クリームをぺろり。
「あ……。リィムナさん、くすぐったいよ」
「待ってて。全部、全部舐めてあげるから」
 抱きついているうちに客席のジャック・オ・ランタンたちは次のパイを用意していた。
――べしゃり
 二人に次々新たなパイが飛んでくる。
 それでも舐めるのを止めないリィムナ。
「リィムナさん……」
 これを見て、コクリもリィムナについた生クリームを舐め始めた。
 悪戯のパイは容赦なく飛んでくる。
「リィムナさん、リィムナさん……」
 コクリは丁寧に熱心に、リィムナの汚れを舐め取っていく。
 自分が汚れるのもいとわず。
 なぜなら、自分の汚れはリィムナが舐め取ってくれるから。
「リィムナさん、リィムナさん……」
 うわごとのような、呪文のようなコクリの声だけがリィムナの耳に聞こえてくる――。



「リィムナさんったら!」
 ひときわ大きなコクリの声が響いた。
「わっ! ……あれ、コクリちゃん? 私の汚れ、ちゃんと舐めてくれた?」
 正気に戻るリィムナ。
 どうやら今までのはリィムナの妄想だったようで。
「え? 何言ってるの。にへ〜っとデレ顔してたけど、それどころじゃないよ」
「ええっと。……何だっけ?」
 リィムナ、まだ妄想の余韻に浸っている。
「あん、もう。僕たちのバックバンドを集めないと……ボク一人じゃ歌えないよ。リィムナさん、演奏できるけど一緒に歌ってほしいんだ。だから、誰か演奏してくれる人探さないと……でないと、僕たち本当にあの大勢のジャック・オ・ランタンから悪戯されちゃうよっ!」
 リィムナの顔を覗き込んで必死に訴えるコクリ。ステージの袖から覗く観客席は南瓜頭の来場者でいっぱいだ。
 どうやらこの二人。
 なぜかアイドルグループ「ろりぃ☆ぱんぷきん」としてハロウィンステージに上がることになっているようで。
 きっかけはリィムナとコクリが南瓜頭の通行人に「トリック・オア・トリート」したこと。その南瓜頭の男はプロデューサーで、アイドルデビューを勧められて強引にここに連れて来られたらしい。
「あのプロデューサーは……」
「もう客席に行っちゃった。……観客を満足させられないと寄ってたかって悪戯されるって分かってるのにバンドメンバーがいないとかさ、何か最初からボクたちに悪戯するためにここに連れ込んだんじゃないかなぁ?」
「寄ってたかって悪戯……」
 ここでリィムナ、またもにへ〜となった。
「寄ってたかって……腕を縛られて吊るされて脇の下とか全身をくすぐられて悶えるコクリちゃんとか、その衣装のまま逆立ちして客席を回って倒れたらその場で一枚ずつ衣装を剥ぎ取られるコクリちゃんとか……」
「わーっ! 何を想像してんの、リィムナさんっ! リィムナさんだって同じ悪戯……う……」
 コクリも同じ目に合うリィムナを想像して顔を真っ赤にしてたり。
 どうでもいいが、このまま手をこまねいていると本当にそうなってしまう。
 が、どうしていいかも分からない。
「……その、悪戯される時は一緒だからね」
 コクリが諦めてそう言った時だった。



「まったくだらしのない」
「私たちがいないとお前ら何もできないんだな、バカ」
「でも、悪戯される姿も見てみたいかも〜」
 突然、女の子三人の容赦ない言葉が聞こえてきた。
 振り向くリィムナ。
 そして瞳を大きく見開いた。
「アイちゃん? ……アイちゃんたちじゃない!」
 何と、そこには泰国の桃園で楽しいひと時を過ごした気紛れ妖精の三人組、グライアイがふわふわ浮かんでいたのだ。
「アイちゃん、あの時は騒がしくしてゴメンね〜っ」
 突撃してむぎゅりすりすりするリィムナ。二人を捕まえた。
「こら、抱きつくな」
「私たちは一人しか見えないって分かってんのか、このバカ」
 グライアイの両目には黒いバンダナが巻かれている。
「その、グライアイがどうしてここに?」
「お前たちが楽しそうなんで透明になってずっと見てたに決まってる」
 唯一、占い師の水晶球のような目玉を両手に持ったグライアイの一人がコクリに向いて説明した。
 ちなみにグライアイ。三人ともリィムナたちの着ているひらひらテニスウエア風ミニスカワンピ衣装を着ていた。ホルターネックで背中がざっくり開いているので羽の邪魔にはならない。
「……もしかして、ボクたちの着替えも覗いてたとか?」
「当たり前だな。同じところで着替えたし、下着も一緒だ。二人ともぺったんこだな」
 指摘するコクリに、えへんとぺたんこな胸を張るグライアイ。途端に真っ赤になって「あん、もう」とか怒り出すコクリ。
「はっ、コクリちゃん。それどころじゃないよ。こうなったらアイちゃん達に演奏を任せようよ」
 思いっきりグライアイの二体に抱き付き満足したリィムナが顔を上げる。
「当たり前だ。何のために姿を現したと思ってんだ、バカ」
「桃園での演奏と舞、そしてお弁当のお礼だよねっ」
 ふわふわ浮きつつ距離を取り、ギターやドラムのバチを取り出すグライアイ。実はこの三人組の妖精、リィムナとほぼ同じ背丈。コクリが一番背が高かったりする。
「よ、よし。それじゃ、ボクたち『ろりぃ☆ぱんぷきん』の初舞台だよっ☆」
「おーっ!」
 ミニスカートを翻し、コクリの掛け声で一斉に駆け出す。健康的な太ももから上は見えないが、ざっくりあいた背中からは白い下着の肩紐が見えているが。



 ぼんぼんぼん、とグライアイの一人が弦楽器を刻む。
 たんた・すたたんと同じく一人が太鼓のセットを乱打・乱打。
 ゆんゆん・ゆんと同じく一人が鍵盤楽器。
「じゃ、一曲目は『いたずら☆ろりぃナイト』聞いてねっ!」
 リィムナが弦楽器でリードし叫んだ!
 コクリが拡声宝珠を手に意気を吸い込む!


妙だよ変だよ 胸騒ぎ
こういう晩は一人はヤだよ
ねえ、隣 座ってもいい?
甘えるつもり ないんだよ


 リィムナも撥を捌きつつ、カチューシャにセットし口元に伸ばした拡声宝珠で歌に入る。


いーでしょダメかな 二人きり
こういう晩は仲良く一緒
どう、私 成長したかな?
腕に絡んで お伺い


 二人一緒に背中を合わせて甘くおねだり。


知ってた? 気付いて 私の気持ち
まだまだ足りないかもだけど
誰にも 負けない 恋感じてよ
ぎゅっと握った手の平で


 ぎゅんぎゅんのビートにきゃぴきゃぴな振り付け・眼差し。
 観客もきゅんきゅん感じて総立ちしリズムを刻む。
「それじゃ続いて、『にゃんにゃん☆ろりろりパラダイス』っ!」
 おー、とリィムナが拳を突き上げバリバリのアイドルソングにっ。
 途端に「にゃんにゃんろりろり……」と観客席からもコーラスが。
「突き出すお尻の尻尾が……」
 楽しそうに歌って横を見るコクリ。
「ピンと立てた耳とヒゲ……」
 視線を受け止め歌うリィムナ。
 伸ばした手と手と繋いで振り返る。
 ぱんぱん、とリズムにわざと無音を入れて手を叩くグライアイたち。
 視線と視線で分かり合える喜び、充実感。
 そして、前を見る。
 光る宝珠を仕込んだ棒を整然と、一斉に振るジャック・オ・ランタンたち。
 やがてBメロが終った。
 うん、と頷き合って前に走るリィムナとコクリ。そして羽ばたきやって来るグライアイたち。
「いくよーっ!」
 高らかに叫んだリィムナ、その刹那!
 何と、一斉にリィムナが、コクリが、グライアイたちが舞台衣装の首元を外した!
――ぱさっ……
 まだあどけないラインを描く体を滑り、衣装が足元に落ちた。
 脱いだのだッ!
「おおおっ!」
 視線を下にして熱くなる観客。
 そしてじわりと視線を上げる。
 瑞々しい太股を視線で辿ると……。
 スクール水着っ!
 しかも白で全員お揃いっ。白い猫耳と猫尻尾もついてるぞ。
「さあ、いこう!」


それが にゃんにゃんろりろりパラダイス
みんな にゃんにゃんろりろりパラダイス


 もう伴奏無しの大合唱。
 手首を曲げて掲げ、右ににゃんにゃん、左ににゃん♪
 客もノリノリ。にゃんこダンスで右ににゃん♪ お尻突き出し可愛くフリフリ☆
 五つの尻尾と可愛いお尻が揺れるたびに観客のハートをずきゅーんずきゅーん。
「さあ、ラスト。みんな一緒に可愛くいくよっ!」  
 白いスク水の体を目いっぱい弓反りにしてリィムナが人差指を上げる。ぺたんこな胸のふくらみがここぞとばかりにささやかなふくらみを主張するっ!


ねこねこかわいいパラダイスっ!


 最後にみんな笑顔で一斉にネコネコカワイイ・ジャンプ!
 内股を開き両外に踵を跳ね上げるジャンプで決めた。太股で作るWの字がきれいに五つ並んだ。
 わあっ、と大歓声が巻き起こる。
「リィムナさん、良かった。これで悪戯されないよっ!」
「よかったな、バカ」
「よかったよかった」
「でももうちょっとやってもよかったかも?」
 感極まってコクリが抱きついてくる。グライアイの三人も。
「ありがとう、コクリちゃん、アイちゃんたち」
 リィムナはすべて受け止め、ちゅっちゅとキスして回り。コクリの頬に、グライアイたちの額に、そしてまとめてハグしてほっぺすりすり。
 と、ここで。
「あははっ。楽しかったよね〜」
 コクリの目尻から興奮した後のうれし涙がこぼれた。
「……あっ!」
 はっとコクリが息を詰めたような声を出したのは、リィムナがペロッと涙を舐め取ったから。
「さあ。アンコール、いこう!」
 微笑したリィムナは気付いていた。
 観客からもう一曲ねだる歓声が響いていたことを。
「うんっ」
「さ、アイちゃんたちも」
 振り返るリィムナ。「仕方ないな〜」、「調子に乗んな、バカ」、「でも、今日はトクベツだからね」とかグライアイも準備する。
 期待する観客の方を改めて向いたリィムナ。
 すううっ、と息を吸い込んで最後のナンバーを高らかに告げるのだった。
 うおおお、と再び大きくジャック・オ・ランタンたちが盛り上がる――。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ib5201/リィムナ・ピサレット/女/10/ジプシー
iz0150/コクリ・コクル/女/11/志士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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リィムナ・ピサレット 様

 いつもお世話様になっております、瀬川潮です。
 舵天照のとある依頼で出会ったグライアイとの、楽しいハロウィンドリームをお送りします。
 舞台衣装、どうしようか迷った挙句テニスウェア的なもので。あまりにフリフリなのだと脱ぐときに困るしな〜とか思った末の判断です。
 コクリちゃんとも一緒に遊んでいただき、ありがとうございます。

 では、ネコネコロリロリなステージをご堪能くださいませ。
魔法のハッピーノベル -
瀬川潮 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年11月11日

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