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『ガールズハロウィンパーティーはハプニングがいっぱい? 〜浅葱 恋華編〜 』
浅葱 恋華(ib3116)

 年に一度のハロウィンの夜、街では盛大なパーティーが行われていた。
 屋台では美味しそうな食べ物や飲み物、可愛らしい小物などが売られており、広場では楽器の生演奏に合わせて人々が踊っている。
 盛り上がっている中、街の中心ではパレードに参加する人々が集まっていた。
 そこへ綺咲・桜狐が全速力で走って来る。
「すっすみません! 待ち合わせ時間に遅れちゃいましたー!」
「あっ、やっと来たわね」
「大丈夫よ〜。まだパレードははじまっていないから」
 先に待ち合わせ場所に到着していたイゥラ・ヴァナ=ハルムと浅葱恋華は桜狐に向かって手を振りながら、声をかけた。
「かっ仮装を何にしようかと迷っていましたら……、時間がかかっちゃいまして……はあはあ」
 激しく息を切らしながら、桜狐は立ち止まる。
「でもせっかくの仮装が乱れているわよ」
 イゥラは桜狐の衣装と髪の乱れを直してあげた。
「うふふっ♪ 桜狐の衣装、よく似合っているわ。乱れたままでもいいんじゃないかしら?」
「……恋華は桜狐が将来、嫁にいけなくなってもいいと思っているの?」
 恋華の冗談なのか本気なのか分からない言葉に、イゥラは軽く迷う。
「お二人もその仮装、スッゴク似合っていますよ。ステキですぅ!」
 桜狐は二人の姿を改めて見て、大きな黒い瞳を輝かせる。
 仮装はそれぞれ自分で決めて、ハロウィンパーティーに参加するということになっていた。
 桜狐は白い着物を着て、白い三角頭巾を頭につけた幽霊姿。銀の長い髪と白い肌があいまって儚い美少女幽霊に見えるも、銀色の狐耳と狐の尻尾が見えているので愛らしさが出ている。
 イゥラも白い着物を着ているが丈は短く、白い三角頭巾を頭につけた幽霊になっていた。短い髪と同じ茶色の猫耳と猫の尻尾が見えており、大きな胸がまた人々の注目を集めている。
 恋華は白いツギハギだらけのボロボロの布を身にまとったゴースト姿になっていた。恋華も長い髪と同じ赤い色の垂れ犬耳と犬の尻尾が出ていているものの、豊満な体付きは衣装で隠されている。
「ハロウィンパーティーは故郷では縁がないものだったけど、こうやって異国のオバケの姿をするのは楽しいものね」
「そうね〜。オバケやモンスターになるなんて、年に一度しかないことだしね。楽しまなくちゃ損よ♪」
 イゥラと恋華は周囲を見回し、笑顔を浮かべた。
 するとパーティーの主催者達から突然、声をかけられる。そしてお菓子がいっぱい入っているカゴバッグを一人一つ、渡された。パレードで歩いている途中、子供を見つけたらお菓子をあげてほしいと頼まれる。
「はぅん! 焼きたてのカボチャのクッキーの甘い香りがしますぅ〜」
「作りたてのカボチャのマフィンも入っているわ。スゥ……はあ。良い匂い……」
「カボチャのパイも作ったのね〜。……って、二人とも、子供にあげるお菓子を先に食べちゃダメよ?」
 恋華は鼻をヒクヒクしながらカゴの中身を凝視している桜狐とイゥラの姿を見て、思わず真面目に注意をした。
 しかし二人は今にも涎を流しそうになっており、恋華は深いため息を吐く。
「はあ〜、分かったわ。パレードをちゃんと終えたら、私が屋台で食べ物と飲み物をご馳走してあげるから。まずは我慢して、ね?」
「ほっ本当ですか?」
「よしっ! それじゃあ頑張りましょう!」
 ――そしてはじまったパレードは、仮装した人々が行列で街の中を歩く。楽器の演奏隊や、歩きながら芸を見せる人もいて、人々の視線を集めていた。
 三人は笑顔で歩きながら、見物人の中で子供を見つけると近寄ってお菓子を渡していく。
「ハロウィンパレード、三人で参加するとスッゴク楽しいですね♪ ……でも本当は『トリックオアトリート!』とちょっと言いたいです」
「まあそれは後でね。今は子供達を喜ばせて、パレードを盛り上げなくちゃいけないから」
「子供達の仮装、可愛いわね♪ 何だか子供が欲しくなっちゃったな」
 恋華のその一言で、笑みを浮かべていた桜狐とイゥラは真顔になってしまった。


「まったく! 恋華の言葉は冗談なのか本気なのか、分かりにくいです! もぐもぐ……んっ〜! このカボチャのカップケーキ、とっても美味しいです♪」
「じゅる〜、ゴックン。パンプキンスープも良い味しているわ。……でも桜狐の言う通りね。おかげで子供達が私と桜狐の真顔を見て、固まっちゃったじゃない」
「悪かったわよ〜。でも二人とも、食べるか飲むか怒るかのどれかにしてくれない?」
 恋華に屋台の食べ物と飲み物を両手いっぱいに買ってもらった二人は、歩きながら食べて飲んでしゃべっている。
 先程からグチグチと文句を言われている恋華だが、幸せそうな顔をしている二人を見ていると、どうしても頬が緩んでしまう。
 温かいマロンラテを飲んでいた恋華は、突然顔に冷たい液体が触れたことに気付く。空を見上げると夜とは違った暗さが広がっており、強くなっていく風にふかれて雲が早く流れている。肌がじめっとしてきて、雨の匂いを嗅ぎとった。
「あらら、マズイわね。一雨きそうよ」
「えっ!? 雨ですか?」
「まだパーティーは続いているのに……」
 桜狐とイゥラも視線を空に向けると、ポツポツと雨が降り始める。そしてあっという間にザバーッと激しい物音を立てながら、豪雨となった。
「きゃああっ! 耳と尻尾が濡れちゃいますぅ!」
「衣装も濡れるわね。困ったわ」
「まあ二人は大変よね」
 恋華の冷静な一言で、二人は濡れていく自分の体を見て、顔を引きつらせる。
 二人とも着物と同じ白い下着しか着ておらず、濡れてしまった為にその形が着物の上から分かるようになってしまっていた。
「いっいやぁんっ!」
 桜狐は顔を真っ赤に染め、その場にしゃがみこんでしまう。
 イゥラも自分を抱き締めるように、身を縮ませる。
「この衣装で濡れるとヤバイわね! ……って言うか、何で恋華は落ち着いているの?」
「私の衣装はパッチワークで作ったからね♪ 多少濡れてもあなた達の衣装のように透けないのよ♪」
 言われてみれば確かに恋華の衣装は二人と違って、濡れても体に張り付くこともなければ透けることもない。
 用意周到な衣装を見て、イゥラは悔しそうにギリっと歯を食いしばった後、深いため息を吐く。
「……いつまでもここにいるわけにもいかないわね。雨に濡れ続けていると風邪をひいちゃうし。どこかで雨宿りをしましょう。ホラ、桜狐、立って」
「ううっ……。はーい」
「恋華も場所を探すのよ!」
「はいはい」
 しかし突然の雨なので、屋根がある場所には他の人々が既に入っており、開いている店も同じ状態だ。どこもいっぱいで、三人が入れる場所が見つからない。
「今日はパーティーをしているから、余計に人が多いのよね。……仕方ない。宿に行きましょう。二人とも、泊まりでも大丈夫?」
 恋華は雨宿りできる場所が見つからないと諦めながら、桜狐とイゥラに問いかける。
 二人は全身が濡れており、寒さに震えだしていた。
「おっお泊りでもいいです〜」
「もう街外れに来ちゃっているしね。宿を見つけたら、入りましょう」
 三人は小さな宿を見つけて入ると、中年の女性が慌ててタオルを持ってきてくれる。
 幸いにも一部屋だけ空いているということで、三人は泊まることを決めた。
 宿は小さいものの中には温泉があると聞いて、三人は喜んですぐに入ることにする。
「着替えは女将さんが用意してくれるそうです。お洋服屋さんも近所にあるそうですから、明日はそこで服を買って帰りましょう」
「そうね。濡れた衣装は女将が洗ってくれるそうだし、帰りにはお礼も渡さないと」
「はあ〜ん。でも雨で濡れた体に、温泉ってきくわね〜。気持ち良いわ♪」
 夜遅くなっていたので、温泉は三人しかいない。気を使うことなく、のんびりと手足を伸ばす。
「街から随分離れてしまいましたが、宿がとれて良かったです。まさかいきなり雨が降るなんて思わなかったですしね」
 あたたかい温泉に入ったことで、桜狐の真っ青だった肌が桃色に染まっていく。
 その姿を見て、恋華の青い瞳に怪しい光が宿る。
「桜狐、ただお湯に浸かっているだけじゃダメよ。体を揉んで、血行を良くした方がいいわ。ホラ、こういうふうに、ね♪」
 恋華は桜狐の背後に回り、肩をゆっくりと優しく揉み始める。
「あっ、ああ〜。気持ち良いですぅ〜」
「でしょう?」
 しかし怪しい手つきで首を撫でられ、桜狐はぞわっと身の危険を感じた。
「はうっ!? 恋華、そこはくすぐったいからダメです!」
「アラ、そう? じゃあ腕や足にしましょうか。体の末端が一番冷えやすいしね」
 恋華はそう言って、桜狐の腕や足を揉んでいくがどうにもイヤラシイ。
 桜狐は身をよじって逃げようとするものの、いつの間にか背後から恋華に抱き締められるような形になっており、逃げられなくなっている。
「もっもう止めてください! イゥラ、助けてくださーいっ!」
「うふふ♪ おびえる桜狐、可愛いわね♪」
「恋華! いい加減に……」
「私はただ、桜狐にマッサージをしていただけよ? イゥラにもやってあげましょうか?」
 お湯の中で素早く動き、恋華はイゥラの後ろに回った。そしてピッタリと体を密着させながら、イゥラの体をマッサージしていく。
「くぅっ! あっ、そこはダメ……! きっ気持ち良い!」
「イゥラったら、だいぶ肩が凝っているわね。大きな胸を持っているんだから、肩こりには気を付けないといけないわよ? ああ、それにここも、こんなところも凝っているわね」
「いやぁん! はっ離して!」
「口ではそう言っても、体は喜んでいるわよ? ほぉら、こんなに熱くなっているじゃない♪」
「……何かイヤラシイ会話に聞こえるのは、私の気のせいでしょうか?」
 桜狐は冷めた眼で、離れた所から二人を見ている。
 恋華に体のいろいろなところをマッサージされて、イゥラはうっとりした表情で肌をピンク色に染めていく。熱い吐息を何度ももらし、最後には抵抗しなくなった。
「よしっ、これでおしまい♪ 二人とも、随分と血行が良くなったみたいね。顔色が良いわよ」
「別の意味で、血行が良くなった気がしなくもないのですが……」
 桜狐は顔を真っ赤にしながら息を切らしているイゥラを見ながら、ボソッと呟く。
 イゥラは息を整えると、赤く染まった眼で恋華を睨み付ける。
「よっよくも好き勝手にやってくれたわね! 覚悟はいいかしら?」
 両手を握ったり開いたりしながら、イゥラは静かに恋華に近付く。
「あら、イゥラのテクニックで私を気持ち良くさせられるかしら?」
「恋華、『テクニック』じゃなくて『マッサージ』って言いましょうよ」
 桜狐が見守る中、イゥラと恋華の間に眼に見えない火花が散った時だった。
 突然、脱衣所に続く扉が開き、心配顔の女将が現われる。どうやら思いのほか長風呂をしていたらしく、三人を心配して女将は様子を見に来たらしい。
「あははっ……。だっ大丈夫ですよ」
「温泉があまりに気持ち良くって、つい長い時間入っていただけ」
「すぐに上がるわね」
 三人は恥ずかしそうに顔を赤く染めながら、温泉から出た。


☆浅葱恋華の二人への思い
 女将が用意してくれた寝巻きに着替え、三人はベッドが三つ並んでいる部屋に入る。
 疲れていたせいか、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。
 ――だがしばらくして恋華は一人、眼を覚ます。
「んっん〜。……はあ、何だか眼が覚めちゃったわね」
 ゆっくりと起き上がるもまだ外は暗く、二人も熟睡している。
 そんな二人を見て、恋華は何かを思いついたようにニヤ〜っと笑う。
 ベッドから出ると気配と物音を消しながら、まずは桜狐に近付く。
「うふふっ♪ 可愛い寝顔ね」
 桜狐はすやすやと子供のような寝顔を浮かべており、つい指で頬をプニプニとつついてしまう。
 そして桜狐の額と自分の額を当てて体温をはかった後、ほっと安堵のため息をつく。
「熱は出てないようね。真っ青な顔になっていたから、心配してたのよ」
 慈愛を込めた声を出して、掛け布団を直してあげた。
 次にイゥラの所へ行き、同じように額で体温を調べる。
「……うん、イゥラも大丈夫ね。二人とも薄着だったから風邪をひくかなって思っていたんだけど、温泉に入って本当に良かったわ」
 イゥラも安らかな寝顔を浮かべており、恋華は胸をなでおろす。
 温泉で恋華がやったマッサージを、桜狐とイゥラはふざけているように思っただろうが、ちゃんと効果は出ていた。
「同業者とはいえ、まだまだ二人とも世話が焼けるんだから」
 そう言いながらも、恋華が二人を見る眼はとてもあたたかい。
「さて、と。心配事もなくなったことだし、寝直すことにしましょう」
 ベッドに戻りかけた恋華だがふと立ち止まると、再び桜狐とイゥラの所へ行き、二人の頬に軽くキスをしてからベッドに潜り込む。
「ふふっ♪ 良い夢が見れそうだわ。今日みたいなハプニングはいつでも大歓迎よ♪」


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ib3118/綺咲・桜狐/女/16/陰陽師】
【ib3138/イゥラ・ヴナ=ハルム/女/21/泰拳士】
【ib3116/浅葱 恋華/女/20/泰拳士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 ライターのhosimure(ホシムレ)です。
 ご依頼していただき、ありがとうございました(ペコリ)。
 可愛らしい三人の女の子達のストーリーを書くのは、とても華やかで楽しかったです♪
 『☆』が付いている所から個別のストーリーとなっておりますので、他のお二人のノベルも読んでいただければと思います。
魔法のハッピーノベル -
hosimure クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年11月14日

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