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『Happy Halloween! 〜ジャミール・ライルの場合〜 』
ジャミール・ライル(ic0451)

「トリック・オア・トリート!」
よく晴れた秋の空に、楽しげな声が賑やかに響き渡る。
ハロウィーン・パーティーの会場には思い思いに恐ろしげな、またはコミカルな仮装をした人々がいて、思い思いにおしゃべりに興じていた。
話の邪魔にならない程度に流れている音楽は、会場の隅に整然と並ぶ楽者達が奏でているものらしく、すぐ傍で音色にうっとりと聞き入っている者も居る。

●Sinnliche grune Raupe
「ジルベリアのお祭り……?天儀で?」
かくり、と首を傾げたジャミールに音野寄朔はええ、と答えた。
「ハロウィンというらしいわ。南瓜に関係があるのだとか」
「よくわかんないけど楽しそうだし、良いよー」
未知のものに対するわりには暢気に、二つ返事で了承したジャミールを見てありがとう、と朔が礼を述べた。
そのまま去っていく朔の背中を眺めながら、踊りとか出るのだろうか、美味しいご飯も……?と、楽しみにしつつ……時は流れ。
当日。
ジャミールはコミカルな仮装をした人々の流れを掻き分けながら、なんとなく不思議そうに会場を眺めていた。
ハロウィンというものに馴染みが無いせいか、どう反応すればいいのか。
二つ返事で了承したのはこういうの詳しそうなしろちゃんも誘ったって音野寄ちゃん言ってたし、なにより音野寄ちゃんが案内してくれそうだし大丈夫だよね、というのも数ある理由のなかになくも無いようなそうでないような。
今日はハロウィン・パーティーだよ、仮装はいかが。好きなの貸すよと客引きするヤギの着ぐるみを良くできているなとスルーしつつ、ジャミールは待ち合わせ場所へと向かっていた。

●Nacht vom Halloween
で、待ち合わせ場所に来た二人を、先に来ていた朔は快く迎えたが。
朔のいつもとは違うその姿に不覚にも衝撃を受けた。
「え、ええー……音野寄ちゃん、なに、その格好」
「仮装よ」
朔の衣装は、黒と赤を基調とした、大胆に胸元の開いたドレス。
たぶんおそらくきっと、ハートの女王をイメージしたものだろう……というのはなんとなく分かる気もするが……胸元を避けてスカート部分に目を逸らしても、そこは深くスリットが入っていて生脚が覗いて見える。
せくしー、なのだが……微妙に、目の遣りどころに困る……。
朔から今日は仮装をすると聞いていなかった分、ちょっとツッコミを入れなきゃ気がすまないところもある。
つい口から滑り落ちた言葉は紛れもなく本心だった。
「おにーさん聞いてないよ……」
「俺もです……」
困惑混じりの表情を見せる二人に朔はふっと微笑んで
「だと思ったから、用意しておいたわ。ちゃんと二人分あるから、着てね」
待ち合わせ場所に来る前に用意しておいた、二人分の仮装をそれぞれに手渡した。
朔自身もどんな衣装なのかわかっていないが、さすがに控えめなものだろうと思っていたが……
衣装を取り出して凍りついた獅琅の顔を見ていると、そうでもないように思えてきた。
「あの、えっとこれ……」
「ジャミールさん大丈夫?着替え手伝うわね」
ともかく着替えに間誤付いているジャミールを手伝ってから考えようと、朔は手を伸ばした。
着替えているジャミールの顔は凍りついてはいないのだが、なんとなく複雑である。
「んー……これ、何の仮装?」
「芋虫……じゃないかしら。パイプもあることだし」
「俺の知ってる芋虫じゃねぇな?」
「そうね……」
着替え終わったジャミールが身に纏うのは、緑と青を基調色に、露出は多いがどこか高尚な印象も与えるジルベリア系のデザイン。小道具として水パイプも用意されている。
ジャミール自身がそう言うように、一般にイメージされる芋虫とは全然違う。
ただ、朔やジャミールの知ってる芋虫そのままだと非常に歩きにくい、というか歩ける寝袋のようになっていただろうから、これはこれでいいような気もする……。それに、その衣装は非常に似合っている。から問題ないだろう、たぶん
「芋虫ならまだいいじゃないですか……」
問答する二人を遮るように、どこか羞恥心を含んだ声が挟まる
「音野寄さん、やっぱりこれ……女性用なんじゃあないですか!?」
二人分、とは言った。
しかし朔は仮装のレンタルをする際、男性用を二人分とは言っていなかった。
……というわけで、獅琅の仮装は女性向けに作られたデザインである。朔の仮装もなかなか大胆だが、獅琅のそれは大胆を通り越して過激なものだ。
頭には黒い兎耳が立ち、上半身はまだ露出少ないものの、下半身は……しかし、下を隠そうとするとまた別の場所が出る仕様で逃れられない。
「ウケるー!やばくね?やばいんだけどー」
似合っているかどうかは別として、その仮装に対しジャミールは大爆笑。
腹筋は引き攣り、笑いすぎて声が出なくなるくらいである
「……ふっ……似合ってるわ」
「なんで目逸らして言うんですか!!」
「見て欲しいの?」
「……いや、見なくていいですけど」
そして朔は似合っているわよ、と言いつつも目を逸らしている。
獅琅も獅琅で見られたら見られたで困る。といったところか。
着替えとコメントも終えたところで、三人は改めてパーティー会場の中を歩き出す。
会場に並べられた、綺麗に装飾されたテーブルに用意されているのは、この時期に相応しい南瓜をたっぷり使ったお菓子や料理。
出店に並ぶここらでは珍しいアクセサリーにジャミールが吸い寄せられたり、それに二人がついていったりする。朔といえば、南瓜料理に興味を示しては、それにジャミールが反応し……、今も出店で買った南瓜味のチョコレートを口に含んで味わっている。
二人の後を獅琅は挙動不審な態度で追従していた。
スカスカするし、ズレるし、食い込むし。なにより恥ずかしいしで気が気でなく、せっかくのお祭りも素直に楽しめていない状態である。
いや、変だと思っている自分が変で、何ら気にすることなく堂々と着こなしていればいいのだろうか、だがしかし……と、獅琅は一人悶々としていた。
「しろちゃん?」
「獅琅君?」
あ、はい!と返答が帰ってきたのをみて、二人は安心した。

出店を巡りながら朔はそれにしても、ヒールの靴というのは歩きにくいものだわと一人語散る。
ふだん巫女服でいる彼女にとってはなおさらで、時々バランスを崩してはなんとか持ち直す、といった流れを繰り返していた。クールに振舞っていても、少しヒヤリとする。
突如ぐぎっ、と足首に痛みが走ったと同時に朔の視界がぐらりと揺れる。
「わっ危ない音野寄さん…!」
倒れた彼女を支えるべくそっと手を添えたのだが、場所が悪い。
「ちょ、ちょっと獅琅君…っ!?」
……今、獅琅の手は朔の胸に置かれていた。Dカップの形のいい美乳がふにゅっと手に収まっている
ぴくんっと朔に生えた耳が動く。指を動かすともふもふの耳が更にぴくぴく動くことに気付いた獅琅は、調子に乗って朔の胸を揉むのだが……
「……獅琅、君。しろうくん」
「しろちゃん、あっち仮想グランプリだって、しろちゃん出ない?おーい」
朔の背後に漂う怒りの炎を知らないジャミールはからかい混じりに獅琅に話しかけているが……
「あ、あわわ、あわ……」
「ちょっと二人とも」
「打ち首よ」
そんなにはしゃぐと転ぶよ、というジャミールの言葉を掻き消すほど大きな破裂音を立てて、獅琅の頬に紅葉が色付いた。
その勢い、留まることを知らず。
「ちょ…あぶね!?」
隣にいたジャミールをも巻き添えにして獅琅は転倒した。
「勢い良すぎたかしら……?」
とうの朔は首を傾げるだけである。
「痛い………」
「ジャミールさん何で脱ぐんですか……!?俺そういうのはちょっと範囲外かなって……!」
転倒した勢いでジャミールの衣装が脱げてしまったらしく、現在裸のジャミールの上に獅琅が乗っかるという一部の方には大変受けのいい状態になっている。
そして、音野寄さんの陰謀かもしれないし頑張るべきだろうか…いや、そんな、往来で…!と少々飛躍しすぎた発想が獅琅の頭の中でぐるぐると巡っていた。
「無理です!」
何が範囲外で、何が無理なのかジャミールと朔にはよくわからないが、こんな状況で慌てているのだろうと判断してスルーしていた。
「つーか、服!破れたんだけど大丈夫?」
「たぶん大丈夫よ。あの店の子面食いだもの。寧ろ喜ぶわ多分」
とまあ、適当に受け答えをした朔のもふもふの尻尾は上下している。朔の言うとおり、店員はきゃーっと顔を覆い隠すも指の隙間から覗きこむような、少々古典的な仕草を見せているから、たぶん。問題ないんだろう

そんなこんなで、もうあっという間に日が暮れて。楽しかった時間も短く過ぎ去っていって。
「もー……散々だわ、でも美味いもん食えたし……いっかぁ」
帰り道すがら、いつもの服に着替え直したジャミールがどこか寂しそうに言っていた。
獅琅はいつもの服に戻っていてほっとしたようで、仮装をしていた間の挙動不審さはもうどこにもない。
「こんな格好は二度としません!」
「あら残念ね、似合ってたのに」
「また目逸らしてるじゃないですか!……いや、見なくていいですけど」
朔はそっと獅琅から目を逸らしてはまた戻して、疲れからくる溜息を漏らした
「何だか疲れたわ……でもまぁ、楽しかったわね」
Happy Halloween。また来年も、楽しい日でありますように。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ib9892/音野寄 朔/女/17/巫女】
【ic0451/ジャミール・ライル/男/24/ジプシー】
【ic0392/徒紫野 獅琅/男/14/志士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました。個別部分少なめで重ね重ね申し訳ありません。
ご期待に副えればいいのですが……
とても楽しそうなハロウィンパーティーの様子を描けてこちらも楽しかったです。
この度は発注ありがとうございました。
魔法のハッピーノベル -
黒木茨 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年11月22日

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