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『実りある秋に祝いを 』
ドミニク・リーネ(ic0901)

●序 〜天職〜
 歌舞音曲を以て人々を楽しませる事を生業とする者達がいる。
 これは、それを天職とし、自他共に楽しむ者達の物語。

●踊り子さんの仕事探し
 天儀は神楽の都にある、開拓者ギルド。
 その日、ジャミール・ライル(ic0451)は仕事を探しに此処を訪れていた――のだが、何やら受付職員と揉めていた。
「アヤカシ討伐? んなもん開拓者に任せときゃいいんだよ」
「いや、だからキミはその開拓者でしょうが‥‥」
 職員は口篭り、眉間に縦皺を作って渋い顔をした。
 横に逸れるが、ギルドは開拓者登録した者達に仕事を斡旋する場所である。ついでに説明すれば、開拓者登録した者達は皆、志体と呼ばれる強靭な肉体と能力を先天的に備えている者達で、人口全体から見ればごく少数派の稀有な存在だ。そして志体持ちは、瘴気が満ちアヤカシ共が跋扈するこの世界に於いて対抗できる有力な戦力となり得る。更に付け加えるならば、ジャミールは志体を持つ開拓者登録をしている者――だからギルドに仕事を探しに来たのだが――だった。
「俺は踊り子、踊るのが仕事よ?」
「はいはい、踊り子さんね」
 確かに、華やかで綺羅綺羅しい青年だった。
 出自はアル=カマルであろうか、均整の取れたしなやかな体躯、露出多めのアル=カマル風の衣装や装飾品が小麦色の肌にしっくりと似合っている。
 開拓者は変わり者が多いから――などと内心溜息吐いて依頼帳を繰り始めた職員の心中などお構いなしに、帳簿を覗き込んだジャミールは職員と一緒に職探し。
「へー、事務所の帳簿整理だってよ? あんたに合いそー」
「わたしはギルドの仕事がありますから! 今は貴方の仕事を探しているんでしょうが!!」
「あー、そーだっけ‥‥お、これとかいーんじゃない?」
 切れる職員を他所に、ジャミールはある依頼を指差した。

 ギルド職員が踊り子おにーさんから開放されて暫く経った頃――
「えっ、そんなおいしいお仕事があるの!?」
 ドミニク・リーネ(ic0901)が喜声を上げていた。
 街でばったり出逢ったジャミールに、ギルドで見つけた仕事の話を聞いているのである。
「うんうん、おいしいよねー」
「そうね、色んな意味で美味しいわっ」
 両手で頬を押さえて、うっとり。
 実りの秋、食欲の秋。収穫祭で一節舞ってご祝儀がいただける、何とも美味しい話である。勿論、実りを祝う祭りだけに御馳走が出るのは想像に難くない。
「行くでしょ?」
「もちろんっ 行くわっ!!」
 ドミニクが身を乗り出した拍子に、胸元に輝くペンダントの飾りがしゃりと鳴った。踊りを糧に生きるジャミール同様、ドミニクもまた楽を糧に生きている開拓者だ。
 祝いの席を盛り上げる仕事――まさに願ったり叶ったり。
 踊り子と楽師はギルドで貰った地図を手に、楽しげに収穫祭会場へと向かった。

●収穫祭を盛り上げよう!
 戦があろうと人は食わねば生きてはゆけぬ。
 秋は食を得る上で大変重要な季節だ。春に蒔いた種が育ち、実り、糧となる。人々は実りに感謝し、長きに渡り育て上げた労を労い合うのだ。

 ――という訳で、二人は収穫祭会場へと来ていた。
「わーぁ、すっごい‥‥にぎわってる!」
 農業を生業とする村での祭りであった。しかし身内だけのささやかな宴ではない。開拓者ギルドへ余興の依頼を出していた事からも判るように、近隣の村々も寄り合っての大層規模の大きな祭りだ。
 月並みだったかなと、へらり微笑うジャミールにドミニクは紅潮した顔をううんと振った。
「みんな楽しそうね♪ さあ、歌って踊って収穫祭を盛り上げるわよ!」
 あっちかしらとドミニクは人垣になっている場所を指差した。収穫済の農作物や米俵が山と積まれた前の場所が少し開けていて、そこで出し物を披露しているようだ。
 祭りの纏め役に会釈して神楽から来た旨を告げた二人は、前の演者が終わった頃合を見計らって広場へ出た。にこやかに周囲を見渡すと、それだけでもう観客達は拍手喝采である。
「アル=カマルの風俗は珍しい? じゃあこの辺だとあんまり見ない踊りなんじゃない?」
 そう言って、ジャミールは薄布をさらりと宙に泳がせた。からりと晴れた空に薄紫の虹が掛かり、しゃらりと涼やかな音が鳴った。リーネちゃん頼むよと目配せして、ステップを踏み始める。ジャミールの装飾品が奏でる音に合わせてドミニクが歌い始めた。

『みそら すみし あきのひ
 めぐみ あおぎ ことほぐ――』

 収穫祭を意識して、まずは寿ぎの歌を。
 ゆったりと、のびやかに天儀風に即興詩を歌い上げるドミニクに合わせて、ジャミールが雄大に被布を振る。くるりくるり、しゃらりしゃらり、緩やかに大らかに舞い、ジャミールは胸の前で手を組んだ――と、その時、ドミニクが弦を強く弾いた。

『二度と来ぬこの日 手と手かさね 踊ろう
 好き日あなた誘って 想いかさね 歌おう』

 力強く歌い上げ、曲調を変えた。
 ゆったりと流れていた演奏が、人の鼓動に合わせやがて追い越し速さを増してゆく。激しく、熱っぽく――ドミニクが奏でようとしているのは、恋歌に違いない。
 前奏の間、足で拍子を取って合わせていたジャミールは被布の端を握り直した。歌の再開に先駆けて、情熱的に踊り始める。

『嗚呼 一度きりの 時よ
 止まることを 知らぬなら
 今 この時だけは あなたの腕の中で』

 小麦色の逞しい腕を伸ばし、空を抱くジャミール。
 その先にあるのは誰の姿だろう――眼鏡に叶う可愛い娘を観客の中に見つけた彼は、振りに交えてウインクひとつ。娘の周囲から黄色い声が挙がった。演奏を続けつつ観客でもあるドミニクもその一人だ。
「キャー、ジャミちゃんカッコいいわー!」
 整った顔立ちとしなやかな体躯を健康的な肌の色が引き立てる。異儀の青年の姿は、その珍しさも相まってさながら豊饒の神にも勝る美々しさであった。
「珍しいでしょ、おひねり奮発してくれていいのよ?」
 冗談めかして言うジャミールの茶目っ気に、会場が沸いた。次々と彼の足元に飛ぶ小銭やら紙包みやら、果ては恋文らしき結び文までが宙を舞う。
「ジャミちゃん素敵ー! その調子でおひねり沢山集めてねっ!!」
 いつしか演奏のみで声援に回っていたドミニク、割と容赦ない相方だった――

●秋の味覚
 祭りを大いに盛り上げたジャミールとドミニクは、村の皆に惜しまれつつ神楽への帰途に就いていた。
「誘ってくれて有難う! 久し振りに思いっきり歌えたし、とっても楽しかった!」
「こっちこそ、やっぱり楽器あった方が断然楽しいしねー 俺も楽しかった、ありがとー」
 和気藹々と街道を行く。目の保養もできたわとドミニクはご機嫌だ。

 峠の茶屋で一服していると、ほくほく顔のドミニクは依頼主に持たされた大きな包みを抱いていた。
「お、なんか貰ったんー?」
「ええ。沢山のおひねりのほかにも、お礼にって‥‥ねえ、これどうやって食べるの?」
「どれどれ‥‥は、これは‥‥!」
 包みの中は、ごろごろした赤紫の――芋。ジャミールは知っている、これは美味いものだ!!
「どうしたのジャミちゃん?」
「これな! こうやってまじ、包んで焼くじゃん? したらまじやばいんだから!」
 ジャミールが興奮気味に風呂敷の隅っこで芋を包んで説明してみせたが、ドミニクはピンと来ない様子だ。というのも、彼女は料理をした事がなくて、彼の説明で想像ができなかったからなのだが――
「ホントだって! この前、俺の先生の教えて貰ったの! まじで!!」
 テンション鰻昇りで語るジャミールの熱意はドミニクにも伝わったようだ。美味しい食べ物だと判ると彼女の目にも熱意の火が灯る。
「美味しいのね? ジャミちゃんが、お芋を焼いてくれるのね?」
「俺?」
「だって、わたくしお料理とかやったことないんですもの。手が荒れると楽器が弾けないでしょう?」
 ドミニク、何気にお嬢様育ちであった。

 ――という訳で。急遽、枯葉集めて落ち葉焚き。
「こうやって火をおこすのね‥‥お芋はどうするの?」
「あー、風呂敷勿体無いから、反古紙とかでテキトーにね?」
 疑問を口にするドミニクだが、手を動かしているのはジャミールのみだ。大人がする事を初めて目にした幼子のように、ドミニクは素直にじっと芋が焼けるのを待っている。
 ジャミールは濡らした反古紙で芋をひとつずつ包んで行った。そうこうしている内に落ち葉は燃え尽き、熱を帯びた灰だけが残る。そこを枝で掘り返し芋を埋める。
 待つ事暫し――
「そろそろいーんじゃない?」
 埋めた場所を掘り返し、芋を包んだ塊を取り出した。あちちと両手でお手玉しながら芋をふたつに割ると、中から黄金色が湯気立てて現れた。
「わあ、甘い匂い‥‥美味しそう!」
「熱いから気ぃつけてなー まじ美味いけど危ないから」
 ほくほくの芋を乾いた布に包みなおしてドミニクに渡しがてら「俺もこの前火傷した」と言い添える。
 はふはふもぐもぐ。火傷しないよう真剣に口にしたドミニク、嚥下するや驚愕の声を上げた。
「なにこれ、焼いただけなのに、こんなに美味しいの‥‥?」
 すごいすごい、何でこんなに甘くてほくほくで――!
 感激冷めやらぬ内に、ジャミールから次の芋を貰ってはふはふ。ほくほく過ぎて口の中がもそもそして来たタイミングで水を貰ってごくん。
「ああ、美味しい! やだもー 太っちゃうじゃない‥‥!」
 当人が言うほどぽっちゃりではないし、ジャミール的には寧ろ抱き心地良さげな範囲の豊満加減なのだけれども、体型が気になってしまうのは年頃の乙女ならではだから仕方ない。ちゃっかりしっかり堪能して、ドミニクは満足気に笑った。
「また歌ってお腹空かせないと‥‥ね♪」



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ic0901 / ドミニク・リーネ / 女 / 24 / 天賦の歌い手 】
【 ic0451 / ジャミール・ライル / 男 / 24 / 踊り子くん 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 初めまして、綺麗なお姉さんv
 PC情報を拝見して「まだ気にしなくてOKOK!」と突っ込んだのは私だけではないはず!
 ‥‥と、申し遅れました周利芽乃香と申します。この度は楽しいお話のご申請ありがとうございました。

 ジャミールさんが踊りでドミニクさんが演奏。
 どんな歌にするか悩んだのですが、自由設定を拝見している内に、フリーダムに歌い始める彼女なら恋歌が似合いそうな気がして、途中から歌詞の内容を変えてみました。センスの欠片もない割とありがちな歌詞を歌わせてしまい恐縮です;
 あれこれ想像しながら楽しく書かせていただきました。お気に召していただけましたら大変嬉しゅうございますv
魔法のハッピーノベル -
周利 芽乃香 クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2013年12月03日

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