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『誰も知らない街で 』
小野友真ja6901)&月居 愁也ja6837)&夜来野 遥久ja6843


 天上と地下と地上と
 この大陸において、それぞれに住まいし者たちの覇権争いが勃発して久しい。

 とある国で、一つの戦いが終わった。
 勝利は、地上に住まう者たちの手へ。
 祝典が開かれ、その日はとても賑やかだった。
 平和は、いつまでも続かない。そう、知っていても。

 ある者は、つかの間の休息を
 ある者は、日常の延長を
 そしてある者は、棄てられたはずの手を取り、旅路を。

 郷が再び戦渦に巻き込まれるその時まで、わずかで良い、愛すべき平穏な日々を願って。




 秋晴れの、清々しい日のことだった。
 名も知れぬ、小さな街。土地こそ狭いが交通の要の一つで、行商人や旅人たちが行き交い活気に溢れていた。
「そろそろ、冬の支度もせんとアカンかなぁ。ここらで、装備を改めとこか」
 路銀を確認するのはユウマ。腰に提げた剣に銘打った名の恋人とは現在、別行動中――が。
「な、ソウヘイさん?」
 彼の、やや後方を痩身の男が無表情に歩いていた。
 ソウヘイ、と呼ばれた男は柔らかな黒髪を片手でかき上げ、ふと目を逸らす。
「俺は、このままでも不自由はないが」
「まじか」
 簡素な暗色のマントの下は、夏から秋にかけての軽装に過ぎない。
 まさか、通年仕様……だと?
 外見は人間と全く変わらないこの男は、かつて天上の脅威を率いる将の一人であった。
 先の大戦で命を落としたと思われていたが、奇跡的に生き延び、ユウマに拾われ、『ソウヘイ』の名を与えられた。
「それがホンマやとしても、ホンマなら尚のこと、カモフラージュ必要やん!」
 まったく、この『地上』に馴染む気がないな!?
 ユウマは慌てて、ソウヘイの手を引く。
 冷やりとした感触に、思わず離しかける。
「……無理は、しなくていい」
「無理も無茶も、とっくにしとる。俺の覚悟、安く見んといてください」
 見上げることができないまま、震えそうな声を押さえてユウマは告げた。
「ほら、行きましょ。ここ逃したら、次はいつ、大きな買い物できるか――」
 言いかけたところで。

「あっれー? ユウマ?」

 聞き慣れた声が、名を呼んだ。
「え、あ、うわー!? 二人とも、どうしてここに居るん!?」
「そっちこそー」
「久方ぶりですね、ユウマ殿」
 道の向こうに、旅装の騎士が二人。
 赤髪のシュウヤ、銀髪のハルヒサは国内に名を馳せる剣使いでもある。
「争いも落ち着いたしさ、長期休暇とって二人旅してたんだよ。いいよなー、肩書ないって!」
「あったところで、お前は上官に対する態度がなっていないだろう」
 騎士団の盾たるハルヒサは、切り込み隊長であるシュウヤの上官だ。それさえ降ろしてしまえば、二人の関係は対等な親友へ戻る。
「元気そうだな、お互いな!」
「そうそうハルヒサも……」
 キャッキャと笑い合い肩を叩くユウマとシュウヤ。――の、横で。

「……生きていたのか」
「…………白銀の盾、か」

 絶対零度の視線が紫電を散らし合った。
「ユウマ。あれまずくね?」
「すみません怖いです」
「てか、俺がいるのに他の奴と見つめ合うとか!!」
「シュウヤさん、たぶん今そこ違うん! アレや、えーと、腹へりません!? そこの酒場であったまりましょ!!!?」
「……ユウマは未成年だろう?」
「お、覚えとってくれたんですかー!? やない、この世界じゃ16ったら大人! 俺18!! 充分大人!!」
「便利な世界ですね……。まあ、こんな機会でもなければ、ユウマ殿と飲む機会も無いでしょうか」
「そそ! 行きましょ、行きましょ!!」
 力づくでソウヘイとハルヒサの背を押し、ユウマは酒場へと誘う。

 積もる話は、たくさんある。たくさんたくさん、ある。




「こちら、ソウヘイさん。新しい仲間です」
 敵将? なにそれ美味しいの。
 山盛りサラダをとりわけ終えたところでユウマが紹介した。
「なになに、恋人チェンジしたのか?」
「違ぇよ、そこは変わってへんわ! でも、大事な仲間なん」
 茶化すシュウヤに一吼えし、それからユウマはハルヒサをジッと見つめる。
 色んなことがあった。
 色んな仲間に助けられ、今、『ソウヘイ』は此処にいる。
 恋人と別行動をとっているのも、ほとぼりが完全に冷めるのを待つための策の一つだ。
 合流と別行動を繰り返し、特定の印象を持たれないようにしている。
(はいはい、何も見てません)
「何でも拾うなって教わっただろ……?」
 剣呑な雰囲気の消えないソウヘイとハルヒサの間へ、シュウヤが言葉を挟む。
 ユウマに向けたものであり、『そういうこと』とするための促しだ。
 流しの傭兵であるユウマとは、騎士と言う立場を越えての友人だ。
 彼がそれほど入れ込む相手を、それ以上どうこうしようとは思わない。
 仕方がないと言わんばかりに肩を竦め、シュウヤは隣の相棒へ目配せを。
 ――シュウヤがそこまで言うなら。ハルヒサもまた、視線で諦めを返した。
「ソウヘイ、それが今の名か」
「……悪くはない」
  ガタン
 ハルヒサへの返答を聞いて、ユウマが椅子から転げ落ちた。
「ユウマ?」
「あ、なんか発作みたいなもんなんで、ほっとけばいいんじゃないの」
 きょとんとするソウヘイへ、シュウヤが面白がるように。
「悪く! ないて!! 名前、俺がつけたん!! ソウヘイさん、今までそんなデレ見せてくれたことなかったやん……!!」
「……デレ?」
「病気みたいなもんなんで、ほっといて飯にしようぜ。ほら、えーと、ソウヘイ? 酒注ぐし。ハルヒサも!」
 床板をゴロゴロ転がるユウマはそのままに、着々と場は進められる。
 いざ、乾杯―― そのタイミングで、盛大に酒場の窓ガラスが割れた。

「な、なん!?」
「ちっ、こんなところに来てまで騒ぎかよ」
 銃火器や刃物を手に、わめき散らす集団が押し入ってきた。
 客らは皆、手を挙げている。
 シュウヤが舌打ち一つ、ゆっくりと立ち上がる。
「ひょっとして、お前が呼びこんでるんじゃないだろうな、シュウヤ」
「ンなワケねえだろ!!? これで旅はじめてから強盗6件目だけどよ!」
「多いわ! シュウヤさんのせいや!!」
 シュウヤとユウマが騒ぐ、その間を銃弾が抜けた。サラダのボウルが華麗にひっくり返り、酒瓶が砕けて床へ中身をぶちまけた。
「……マスター、これ鎮圧したら報酬くれへん?」
 てへっと人好きのする笑みを浮かべ、ユウマはカウンター奥で震える男性へ呼びかけた。
 OKサインが、指先だけで届けられる。
「よっしゃ。台無しにされた飯代以上は稼いだろ!」
「ま、暇を持て余してたところだしな」
 ユウマに続き、シュウヤも血気盛んに立ち上がる。
「……休暇を楽しむ暇が無いな」
「まったくだ」
 呆れ顔のハルヒサへ、同様にソウヘイもゆっくりと腰を上げた。
「お二人、意外に気ぃ合うんやないですー?」
「「…………」」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 絶対零度の更に下って何度ですか!!
 波長の合った冷たい眼差しを同時に受けて、ユウマは戦う前から精神力にダメージを負った。




 銃弾の雨を、ハルヒサの盾が凌ぐ。尽きた瞬間を狙い、シュウヤが電光石火で飛び出す。引き抜きざまに剣を横に払って前列の賊へまとめて斬りつける。
 ソウヘイの放つ投げナイフが、後方の賊をドアへ縫い付けた。
「とりあえず、店内は面倒だ。外に出な。俺たちを崩すことが出来たら、この店は好きにしな」
 紅蓮の光を身体に纏い、シュウヤは盗賊団へ告げた。

 恋人が射手のため、普段であれば剣を使うユウマだが、今日は頼もしい片手剣使いが二人も居る。
 ワンテンポ遅れて二丁拳銃を手に、援護に回る。
 銃弾を足元に撃ちこまれ怯んだ隙に、シュウヤが軽い身のこなしで刃を閃かせた。他方向からの斧槍をハルヒサが盾でガードし、返す刃で一閃。
 騎士のように優れた装甲を纏わぬ盗賊など、彼らの敵ではない。
 倒れた向こうでボウガンを構えていた射手の手を、ユウマは先んじて狙撃する。
「ユウマ殿、あまり身を高くしては――」
 どこぞに潜んだ狙撃兵の銃弾が、ユウマの頬を掠めた。
「増援ありなん!?」
 酒場周辺に、盗賊団たちの仲間が潜んでいた!
「包囲網を敷かれていた、ということですね……」
 発射点を辿り、ユウマはすぐさま応酬する。
「そんな、大人数で襲うほどの店かあ!?」
「探りは無用だ、シュウヤ」
「なるほど」
 大人数で襲うに値する『裏』がある、そういうことだ。
 しかし二人は現在、肩書を持たぬ身。知らぬふりを通せというわけだ。店の空気自体は悪くなく、目くじらを立てるレベルの不正ではないのだろう。
 のどかな会話のリズムの間にも、剣を振るう手は止まらない。
 視界の端で動いた布きれに気づいたユウマが、シュウヤを狙うその銃口を早撃ちで潰す。
「シュウヤさん、貸し一個なー♪」
「言ってろ!」
 口の端を歪め、シュウヤは東方系らしき剣士と対峙する。
「アンタほどの使い手が賊たぁ、もったいねえな」
 至近距離でぶつかり合う、獣と獣の瞳。
「が、残念。俺に負ける程度の腕じゃあ…… 話にならねえ!」
 力を一瞬だけ抜く、相手のバランスが崩れた隙に弾きかえす!
 そこから連撃で、剣士は地に沈んだ。

「――伏せろ」

 キリが無い、とも聞こえた。
 ソウヘイが、前衛二人へ呼びかける。彼は投げナイフで援護をしていたはずだが、そういえば一時からピタリと止んでいた。
「へっ?」
 驚き振り向いたシュウヤの頭を、ハルヒサが強引に押さえつけ地に伏す。
 外套の下、ソウヘイの両手には雷球が生み出されていた。
「鎮圧、すればいいんだろう……?」
 蒼い雷球が疾る。軌跡は、一筋の槍のよう。
 地表で爆ぜ、バチバチと火花を迸らせた。
「や、やりすぎや……」
「命までは奪っていない。それくらいの加減はしている」

 
 周囲一帯が焦げ臭い――が、血の匂いはほとんどしなかった。
「そんな大技あるなら、最初から使えよな!!」
 がしっとシュウヤがソウヘイの首へ腕を絡める。
「『六星の将』にしては、控えめに見えたが――あれが、今の力か」
 ハルヒサの言葉に、ソウヘイは自嘲的な表情で肯と返す。
 加減をしたと言ったが……所属を離れた今、ソウヘイには力の『枷』がある。
 魔道の力を扱うには、いくつもの制約が課せられていた。
「報酬! 報酬――!」
 パタパタと、革袋を手にユウマが酒場から戻ってくる。
「うぇーい! でかした!」
「……すごい弾みようだな」
 ハイタッチするユウマとシュウヤの横で、金額を確認したハルヒサが目を見開いた。
「このまま、今日のうちに街を出ろー、やて。すぐに報復はないやろうけど、宿を囲まれたらアウトやん」
「なるほど」
 報酬、そして詫びも籠められていると。
「せっかく、こうして会えたんにな……」
「生きてりゃまた、道が交差することもあるだろうよ」
 シュウヤが、あっけらかんと笑い飛ばす。
「な、ソウヘイ?」
「……だと、良いがな」
 話を振られ、ソウヘイが鼻を鳴らす。いつまで、この命があるのか予測できない。
 不確かなことは、口にしたくなかった。




「また、会えるとええな! 旅の先に、祝福あれ!!」
「おう! 幸多かれ!」

 笑顔で、ユウマとシュウヤたちは別れる。
 西と東、それぞれ真逆の方向へ。
 それでもきっと、命ある限り幾度でも道は交差するだろう。
「さて、行くか」
 ユウマとソウヘイの姿が街道へと消えてゆくのを見送り、ハルヒサは相棒の背を叩いた。
(道は、いつか――)
 臨む空は青く高く果てが無く、全てに等しく広がっている。
 目を細め、ハルヒサはその蒼を焼き付けた。

 いつか道が途切れ、分かたれる日が来るかもしれない。
 そうだとしても、今日という日を忘れないように。
 語り継がれる、サーガの一つとなるように。




【誰も知らない街で 了】


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja6901 /  ユウマ  / 男 / 18歳 / 小野友真 】
【ja6837 / シュウヤ / 男 / 23歳 / 月居 愁也 】
【ja6843 / ハルヒサ / 男 / 27歳 / 夜来野 遥久 】
【jz0092 / ソウヘイ / 男 / 35歳 / 米倉創平 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございました!
西洋ファンタジーな旅路での再会とトラブル、お届けいたします。
楽しんでいただけましたら幸いです。
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エリュシオン
2013年12月09日

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