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『雪舞う聖夜の中で 』
龍騎jb0719

 雪舞う中で、貴方は何を想う……
 手の中には何がある?

 奇跡。

 神と人だけが知る、最高の証。

●今年は我が家で
「リュウくんへ
 クリスマス前の土曜日、お家でパーティーします!
 お昼は食べないで来てね♪
 プレゼント交換もするよー♪ リュウくん来てくれる?
 P/S…千代くんも来るよ。 莉音より」

「これでいいよ、ね?」
 うーんと唸って、紫ノ宮莉音(ja6473)は書いたばかりのクリスマスカードを見た。赤と緑と白のコントラスト。柊とポインセチア柄のそれは、目に眩しく、心には明るい。そんな気がする。このカードは、ただパーティーに招待するためだけにあるわけじゃない。
 誰かのために。奉仕のために。
 だから、だから……
(「本当は冬休みお家に帰るの?、って。普通に聞ければよかった。京都は戻って来たけど、家族の所には帰らないのかな?」)
 莉音はあの時の戦いを、斡旋所のデータファイルに終われた【封都】とラべリングされた事件を思い出した。
 そこにいた龍騎とその家族――苦手な親戚。安否は、よく知らない。無事であって欲しいけど二度と会いたくはない。
(「でも、リュウくんの家族だ……」)
 そう思って、一つだけ溜息を吐いた。
 だから、クリスマスカード。たった一通、届けばいい。
「メリークリスマス」
 誰にともなく。呟いた。

●電話。
「おー、りおちゃんじゃん」
 ゆるゆると百々 清世(ja3082)は言った。
 電話をかけてきたのは莉音。冬休み前のこの時期にかかってくる理由と言えば、ただ一つ。
『今度の土曜日、クリスマスパーティーやろうと思ってるんだよ。モモちゃんも、どう?』
「……クリパ? 行くに決まってんじゃんしー(暇」
『よかった!』
 莉音の顔が綻ぶのが見えたような気がして、清世は微笑んだ。
 電話の向こうでは、莉音があれこれと当日の予定やら、来るメンバーなどの話をしている。楽しげな様子に、再び清世は笑んでから、二・三言返して電話を切った。
「プレゼントは……プレゼント、何がいいだろ? つーか、女の子来んのか、これ……。参加者聞いても良いもんかしら――あ、電話切っちゃったし(をい」
 ツーツーと鳴っている携帯電葉を見つめ、清世は呟く。
「……ま、いっか。女の子にあたったら後でなんか買ってあげよ」
 そう言うと、清世はプレゼントを買いに出かけた。

 清世が買い物に出かけた頃。莉音はリュシアン・ベルナール(ja5755 )にクリスマスパーティーの連絡をしていた。
 携帯電話の向こうで説明する莉音の話を聞きながら、リュシアンは優雅に頷く。青年実業家として世界中を飛び回っていたという経歴に相応しい、気品ある所作だった。電話の向こうにいる相手に見えないのが残念である。
「パーティー? ああ、仕事は休暇を取るつもりだが。……ふっ、たまには息抜きも悪くない。是非参加させて頂くよ」
『ホント? リュリュさん、ありがとう!』
「礼には及ばない。楽しみにしているよ」
『わかった! じゃあ、土曜日にね♪』
「あぁ、次の土曜日に」
 相手の楽しげな様子に和らいだ表情を見せ、リュシアンは電話を切った。
 そして、ふと沸き起こる疑問。ドレスコード(服装規定)はあるのだろうか。エスコートすべき女性を連れていくべきか、と。
「ふむ……親しい間柄との電話は、過敏になる必要がないから余計に困るね。僕としたことが、質問し忘れるとは」
 そう言いつつも、ビジネスのような緊張感が必要ないことも、また彼には心地の良いことだった。
(「彼を見ていると何だか心が和むよ。癒し系……とでも言えばいいかな」)
 思い出し、リュシアンは微笑んだ。
 そして、しばらく何を着ていくかで悩んだ挙句、社交パーティーなどで着る様な、ウン十万のシワ一つないブランドスーツに髪はオールバックというスタイルで出かけることにした。

 この日一日、莉音は友人に電話をかけ、準備に買い出しにと忙しく過ごした。
 クリスマス前の街並みは明るく。どこもかしこも忙しい。そして、今年の12月は去年よりも寒かった。
 莉音は気にもせずに、準備のため買い出しにと街を駆けまわった。
 もちろん、心は温かいままで。

●パーティ会場へ
「お邪魔しー! 寒かったー! てか、暖かい場所確保」
 清世はさむさむと繰り言の様に言って、開けてもらったドアにするりと飛び込んできた。外は風が強く、気温も低い。相当寒かったはずだ。
「いらっしゃいませ、どうぞー♪」
「おー、温かほこほこだね」
 ササッと靴紐を解いて、莉音の家に上がり込んだ清世はヒーターの前まで行くと座り込む。
 そして、並べられた料理や部屋の飾りに改めて気が付き、感心したようにしばし見つめて溜息を吐いた。
「おー、すっげ……本格系じゃん…?」
「そうでもないよ? みんなが来るからって、頑張っただけで」
 そう言いつつ、頑張った甲斐があったと莉音は少し微笑んだ。あまり料理は得意な方ではないけれど、手間暇かけて、ゆっくりと一つずつ手順を踏めばできると知っていた。だから、皆に食べさせたくて、楽しみたくて頑張ったのだった。
「りおちゃん料理うまいんだー」
 温まったビーフシチューの香りに、清世はくんと鼻を鳴らして嗅いだ。
「んー、好きな方だとは思うけどね」
 ちょっと恥ずかしそうに笑って言う。頑張りが形になるぐらいにできるかもしれないねと莉音は思った。
 その瞬間、背後でピンポーン!と元気にチャイムが鳴る。
 莉音は小走りに近づいて、ドアを開けて声を掛けた。

「はーい! どうぞー」
「お邪魔しまーす」
 そう言って入って来たのは、七種 戒 (ja1267)。
「ふ、どうだね、私だってクリスマスに予定あるんだぜドヤァ……なんでもないです、ハイ」
 うちのパーティーに来たんじゃないの?と言った風に莉音が小首を傾げたので、戒は思わずペコッと頭を下げた。
「りおんたんにお誘いありがとー」
「来てくれてありがとー」
 逆にありがとうと言われ、戒は目を瞬いたが、すぐに微笑んでプレゼントのクリスマスリースを渡す。ありがとうと互いに言うのは嬉しいものだ。
「玄関に飾っていいかな?」
「え? いいよー♪」
「よっし! 綺麗に飾ろう」
「うん!」
 莉音と戒は玄関の外ではなく、家の中に飾ることにした。外に飾ればそれはそれで風情のある玄関になるが、折角のプレゼントが外に出っ放しになるし。玄関で莉音の帰りを待つ花があっても良いはずだ。
 すっきりと小物の置かれた玄関の靴箱の上に、戒のリースは花を添えた。
 小枝を組んだリースには、松ぼっくりと姫りんご、シナモンとドライオレンジの飾りが付いている。その真ん中に、柊とポインセチアの小さな造花がアクセントになっていた。
 ドライオレンジにはクローブが挿してあり、防虫効果もある昔ながらのリースだった。
「独特の香りだね」
「見た目はこれが一番可愛かったのだよ」
「へえー、こういうリースも良いね」
 ほわっと笑って莉音が言う。思わず戒は莉音の可愛さに抱き付いてグリグリした。自重なんてできない。
「あわわっ!」
「ふふり、可愛い子は宝なのだよー。よしよし」
「おーい、二人とも何やってるん? 七種ちゃん隣おいでー」
「今日も清にぃ、イケメン胸キュン(」
 猫のように足音もさせず、すすっと近付いてきた。戒は清世の胸に飛び込んでハグ、ハグ、ハグ。自重なんてどっかいけとばかりに、ぽふぽふってする清にぃの手の感触を堪能した。
 心のエネルギー充填は重要。これで来年も一年頑張れます、はい。
 互いにもふもふを堪能し、親愛をさらに深めていると。また一人とパーティーに呼ばれた友人がやって来た。

「こんにちは、お誘いありがとう」
 莉音の案内でリビングにやって来たのは、桜木 真里(ja5827)。
 手土産は、皆で飲む為のシャンパンとノンアルコールのワイン風カクテルジュースだ。日本では、子供のころから慣れ親しんだ者も多いであろう、アレである。最近はお洒落なアルミ包装もされていて、ちょっと大人の雰囲気があった。
「わぁ〜、懐かしいね、これ」
「そう。アルコールが苦手な俺でも飲めるし、雰囲気は大事だよね……何か手伝えることある?」
「来て早々に悪いよ……外は寒かったでしょ? ゆっくりしてね」
「ありがとう。じゃあ、料理の準備が整ったら手伝わせてもらうよ」
 真理はシチューが出来上がるのを待って、食器の用意など手伝えることがあればと莉音の傍にいた。準備ができれば、手早く皿を出し、テーブルの上に人数分のクロスと食器を並べていく。
 きっちりと綺麗に食器とカラトリーが並べられると、魔法の出てくる童話を彷彿とさせるような雰囲気に、莉音は微笑んだ。戒も誤読感を楽しむような気分になる。人がいて、誰かのために何かをすると、魔法をかけたような気分になれるのだなと皆はなんとなしに思った。
 人が人にかける魔法と言うのは素晴らしい。ましてや、今日はクリスマスパーティー。数日早くても、心に奇跡は起きるもの。
 グラスを掲げ、真理は皆が素敵な魔法にかかるようにと極上の笑みを浮かべた。

●土曜日の夜は賑やか
「莉音に誘わたクリスマスパーティーなんだぞー! ウシシシー! 俺、楽しみなんだぞー!!」
 ドアホンをピンポンピンポンと連打した上に、ドアを開けるないなや飛び込んできたのは彪姫 千代(jb0742)だった。
 もちろん、いつも通りに上半身は裸。
 困ったら脱げば良いと祖母から教えられ、最近は困った事しかないので常に脱いでいる。特に今日はこれと言って困ったことはなかった(プレゼント選びやら、道順やら、通り道でのイイ匂いの誘惑には困った)が、普段が普段で困ったが多いので(以下略。
 今日も脱いでいる(ぁ。
「リュウもいるって聞いたから、いっぱいいっぱい遊ぶんだぞー! みんなといっぱい楽しく遊ぶんだぞー!」
 靴も玄関に放って、ドドドッとリビングに飛び込んだ。
「うん、リュウくんももうすぐ来るよ。そこで待っててね」
「おー! 待ってるんだぞー! お?? もも兄も戒もいたのかー!」
 莉音の言葉にうんうんと頷いて、清世と戒に気が付いた千代は座り心地の良さそうなソファーにどーんと飛び込んだ。ボンッと跳ねて、千代が転がる。
「ふかふかだぞー!」
「あわわっ……おにーさんが転がるところだったよ。で、今日も千代は元気だね」
「うん、げんきなんだぞー……って、ところでパーティーって何するんだー?」
 ソファーで暴れて、危うく清世の方を転がし落としそうになった千代は、先程から疑問に思っていたことを述べた。
「え? パーティは何するかって……楽器とかじゃね?」
 横で聞いていた戒は、合っているような、違うような答えを言った。確かに歌ったりはするので、あながち間違いではない。幼稚園やらでは、クリスマス会は音楽が付き物なわけで。まあ、楽しければ正解なのだ。
「歌うのかー!? おー! 俺歌うんだぞー!! サンタさん来てくれるとうれしーなんだなー!」
 ずっと今でもサンタの存在を信じている千代は、キラキラと瞳を輝かせて頷いた。例えて言うならば、「真っ赤な衣装のサンタが街でチキンを売っていても、あれはチキンを配るサンタだ」と思うぐらいに信じ込んでいる。
 きっと、ベランダにプレゼントを置いて、「サンタさんが来た!」と言ったら取りに行くかもしれない。そんなまっすぐな千代に、皆は微笑んだ。その明るさが、皆の宝物。
「お、千代歌う? じゃあ合唱な。サンタさんに届くよーにな!」
「「おー!!」」
 そして、戒と千代は歌いはじめた。

「仕事柄、パーティーは幾度なく参加してきたが……こんなにアットホームなパーティーは初めてだ」
 ソファーで千代が跳ね、戒と共に歌う姿を目の当たりにして、リュシアンは目を瞬いた。
 野生児的青年は半裸(上半身が)。逆に紳士的英国青年は、どことなく気品漂う手付きで飲み物を注いでいる。
 でも、その光景は温かな雰囲気の中にあって、決して嫌ではない。むしろ、莉音のおっとりと大らかな性格がこの部屋に与えているであろう、その雰囲気がとても温かいもので、彼はホッとするのだった。
 誰も怒らない。慌てない。皆が皆、独自の中にありつつ、互いが認め合っている空間。
 パーティーと言えば、社交パーティー。そう思っていたのは自分の方だ。
「あ、リュリュさんごめんね。驚いた?」
 少し申し訳なさそうな莉音に、リュシアンは首を振って否と答えた。
「……いや、君の責任ではない。僕が勘違いしただけだ。……ッ!」

 ゴッ!

 盛大にぶつかる音が響いて、千代さえもがリュシアンの方を見た。それだけ大きな音だった。
「っつぅ……にっ、日本の家は……どうしてこんなに天井が低いん、だっ」
 頭を抑え、蹲りながらリュシアンが呻く。190近い長身のリュシアンでは、やはり日本の家屋を基準にしたワンルームの付け鴨居に頭をぶつけてしまうようだった。
「リュリュさん、ごめんね大丈夫? もうちょっと広い場所を選んだ方が良かったかな……」
「いやいや、君の住居に不満はないよ」
 相手に会場選びで惑わせてはいけないと、リュシアンは慌ててフォローする。元々、ヨーロッパの人間と日本人では人種そのものが違うのだから、住居の基本的サイズが違うのは当たり前なのだ。
「良い物が手に入ってね……手土産に地元(フランス)のシャンパンを持ってきたんだ。勿論ノンアルコールだぞ」
「わあ……格好良いパッケージ。本格的ね。甘いのかな? 美味しそう」
 一見、アルコールが入ってそうに見えるパッケージを前に、「いいのかな?」とドキドキしながら莉音はそれを受け取る。
 そして、最後のパーティーのメンバーがやって来たのだった。

「いらっしゃいませ、どうぞー♪」
「ああ……」
 莉音に迎えられ、龍騎は玄関に上がった。
 龍騎はクリスマスがどうでも興味ないんだけどと思ったものの、とりあえずは言わないでいた。
 アイノコノシセージ。莉音の母親のコト。
 何を意味するのか、龍騎は知らない。ただ大人達の様子でわかる。どうやら、一般で言うところの複雑な環境なのだ、と。
 だから彼女とその子供達は、紫ノ宮の家に相応しくない。
(「下等な存在だってコト!」)
 だが、そんな家で育った彼が、ある日突然、外へ放り出されることになる。
(「他にも選択肢はあったけど。偽善者に飼われるよりはマシ」)
 そう思って撃退士になったが、撃退士になると言うことはスタート地点は誰でも同等であるということだ。天魔は手加減などしない。自分達も天魔に対してそうであるように。そして、己が力と技を磨くと言う点でも、上下など無い。
(「そこへ成り下がっても僕自身は何も変わらなくて。だけどここは、あの莉音と同じ位置で。まだ整理はつかない。けど家に――過去に戻る気はない」)
 皆のいるリビングをひょいと覗くと、見知った顔がいくつもあった。
(「寂しがってるとか勝手に心配して誘ってきたんだろーな……せっかくだから来てやったけど…」)
「狭い」
「1、2、3、4…んー、狭いねー? 僕一人だと広いのにねー」
「つーかこの部屋なんか、密度がすごいね…? 誰かマフラーかして…俺ちょっとベランダ出るわ(一服」
「はい、マフラー」
「サンキュー」
 人が多くなってきた部屋からヤニの補充とばかりに清世が立ち上がってベランダに出ていった。
 それを横目で見た後、龍騎は莉音に言う。
「って、自分で言うか? 収容人数ぐらい把握しとけよ……そういう鈍臭い感じがイラッとする!」
「ごめんねー」
「……」
 臆面もなく、ごく普通にごめんと言えてしまう相手に、噛み応えの無い感触を感じて眉を顰めた。莉音はにこにこと笑っている。
「……」
 とりあえず、龍騎は黙ることにした。

●クリスマス☆パーティー
「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」
「圧倒的メンズ系クリパ…女の子が足りない気がするけど気のせいな?」
「気のせい気のせい」
 可愛い女子に囲まれていたいおにーさん。しかし、現実は(以下略。
「料理は紫ノ宮が作ったの?」
 美味しいとにこにこしながら真理は食べていた。
「うん、お料理はビーフシチューとその他諸々。プチパンケーキはフルーツ、クリーム、ジャム、粉砂糖、アラザン、カラースプレー……可愛くトッピングして1人1タワー♪ リュウくんの分はクリーム抜き」
「おお! 食べるんだぞー」
「どうぞ食べてね」
 千代の様子に破顔しつつ、莉音はカラースプレーチョコレートやイチゴ、ブルーベリー、サワークリームや生クリームなどで飾られたパンケーキの皿をテーブルに並べていく。
 カラフルなパンケーキは、子供が見たら喜びそうな可愛さだ。
 「お、パンケーキタワーかすげえな! りおんたんまだデコペンある?」と、戒。
「あるよ〜」
「じゃあ、ちょっと、清にぃちょっとデコっていい? って、お願いするな〜。あ、りゅーちゃんもやったげるな!」
「別にいい……」
「遠慮しない遠慮しない。清にぃ〜、デコらせてなー」
『おにーさんの、素敵にしてな?』
「了解!」

 ……で。

 この有り様(どやあ。

「すんませんでした」
 土下座の戒がここに一匹。猫の背伸びの様に土下座している。
「期待は、ね……」
「メンズ系クリパです、し?」
 ガラガラと窓を開けて清世が突っ込む。そして、またドアを閉めた。
「戒さん、がんばってたよ」
「美味しいんだぞー」等々。
 周知の事実が、まろやかに心に痛い。いっそ、切れる刃で切っていただきたく。
 甘いものが好きな真理のパンケーキは食べるペースが早いために、ある意味無事だった。
「リュウ、これ美味しいんだぞー! 一緒に食べるんだぞ!」
「それはもう食べたよ。お腹いっぱいだ」
「じゃあ、これで遊ぶんだぞ!」
「やり方知ってるのかい?」
「教えて欲しーんだぞ!」
「……」
 いつも全力で楽しむ千代のパワーに、リュウは渋々ながら応じるものの、リュウにはどんなに冷たくされても全然平気な千代は絶賛ベタベタ絡んでいた。リュウがいて幸せ。友達がいて幸せ。お菓子食べれて幸せな千代だった。 

●プレゼント交換
「そろそろプレゼントと交換しようか。モモちゃん、いい?」
 トントンとドアを突いて莉音は清世に合図した。煙草をふかしていた清世はそれに気が付いて顔を向ける。
「ん、おー。プレゼント交換する? 了解了解」
 清世が部屋に戻り、パーティーのメインイベントに突入した。
 輪になって並び、曲を流して曲の終ったところで止めると言う、お決まりの方法でやることにした。曲は長いとダレるので、ゲーム音楽を使うことにした。
 手持ちのゲームで適度なSEを探す。丁度良く、狩人になって古龍を倒すゲームの曲が良い長さだったので、それで行くことにした。肉焼きのSEである。
「では、行くね……スタート!」
 ポチとボタンを押す。軽快な曲が流れ、皆はプレゼントをぐるぐる手渡ししていった。
 真理はプレゼント交換なんて小学校以来だなと思いつつ、わくわくしている。
「はやくはやく!」
「きょ、曲が終わる!」
「……」
「あわわっ!」
「ちゃんちゃらんららん♪」
「歌ってるしw」
「こ、これは初めての経験だ……おっと!」
「ちゃららん♪」
「終わった! ストップ! ストーップ!!」
 手元に残ったプレゼントを確認すると、皆はパッケージを開け始めた。
 莉音のプレゼントはおにーさんへ。真理のプレゼントはリュシアンへ。千代のプレゼントは戒へ。おにーさんのプレゼントは真理へ。戒のプレゼントは龍騎へ。龍騎のプレゼントは莉音へ。リュシアンのプレゼントは千代へと渡った。
「お? 猫耳フード付マフラー……かぶれるタイプだね。おお……ちょい、パーツ可愛めのパンクおにーさんでイケるカモ」
「ピンクの豹柄。可愛いでしょー♪ 暖かいよー♪」
「うんうん、いいね。ハードめの服と合わせたらイケそう。ちょいワル系黒の革ジャンか……んむー」
「気に入ってもらえてよかった!」
 一方、真理たちの方はと言うと。
「チョコレートか……バニュルス、ポルト酒、シェリー酒、コニャック……どれで合わそうか悩むな」
「ああ、よかった。チョコはお酒似合いますからね。どうぞ楽しんでくださいね」
 プレゼントは悩んだ末にお気に入りの洋菓子店の、ちょっと高めのチョコレートをチョイスした。食べ物なら誰に当たっても大丈夫かなと考えた結果だったが、一番合う人間の元に言った気がする。楽しんでもらえるかもしれないと、真理は喜んだ。
「俺持ってきたプレゼントは、虎の手の手袋なんだぞー! がおーなんだぞー! ほかほかなんだぞー!」
「おおお! 私のところに千代のが来たぞ? ふおー……ほこほこだな。とりあえずは、千代、服着ろ」
「恥ずかしいんだなー!」
「着るものは買ったのになw で、私のプレゼントはどこに行ったのか」
「……これ、何? ボールペン?」
「はははw クリスマスプレゼントには、色違いのくーげるsy(Lv5)…ボールペンをな」
「……それか」
 ボールペンなら使えるしと、龍騎は小さく「さんきゅ……」と呟いた。
「あ、僕にはマグカップだよ」
「よかったら、おにーさんのプレゼント使ってな?」
「はい、冬の夜長に紅茶でも入れますよ。百々さんありがとうございます」
 ニコッと微笑んで、真理が言った。
「さーて、僕のところに来たプレゼントは……わぁ、マフラーだ」
「……」
「もしかして、リュウくんの?」
「ま……そういうことだな」
「ありがとう!」
「……」
 笑顔で莉音に言われ、その笑顔に負けて龍騎は何も言えなかった。
 ベージュ系チェックのマフラーは無難というか使いやすいと思ってのチョイスだったが、まさか莉音の元に行こうとは。
(「……来てるメンツや料理は気を遣ってくれたのがわかるケド。莉音を好きにはなれそうにない!」)
 まだまだ道は遠そうである。

「おー? 紙が入ってるぞ?」
「どれどれ」
 大人な感じのなら、もも兄に渡そうと思ったが、紙が一枚入った封筒だったので千代は迷った。千代からそれを渡してもらい、清世は目を瞬いた。
「おー…俺これよくわかんねーんだぞー?」
「これ、ハワイ旅行券。じゃんしー!」
「プレゼントはハワイ旅行券。僕の別荘に招待するよ」
「別荘って、食えるのか?」
「……何だ、何か不満でもあるのか。もちろん、宿泊中の食事は私持ちだが」
 千代の反応が微妙だったので、リュシアンはむぅっと唸った。
「ハワイでなく、タヒチの方が良かったか? それとも僕の故郷のフランスが好みか?」
「いや、それ以前の問題じゃんしー? ってか、千代と二人で旅行って大丈夫なん?」
「あ、そういう……なるほど」
 ポンと手を打って、戒が清世に間の手を入れる。
「つまり……全員ご招待と(えw」
「そっち? え? それもアリだけど」
「じゃあ、そっちの方向でw」
「は?」
 あっという間に戒に話を全員ご招待に持っていかれ、リュシアンは目を瞬いた。実際のところ、千代と海外まで行くのなら、退屈させないためにも(千代を)、すんなりと移動するためにも、複数で言った方が良いのは確かである。
 またこのような楽しみがあるのならばと、リュシアンはその意見に概ね同意した。

 そして、楽しい時ほど時間が過ぎるのは早くて……帰る時間になってしまった。
「飯、美味かったわ。また誘ってな」
 清世が莉音の頭をぽふっと撫でてくしゃくしゃにする。
 戒も莉音をハグし、ぽふぽふした。
「楽しかった、来年もやろーな!」
「うん」
 ささやかな願いが叶う様に、莉音は帰っていく皆を最後まで見送った。

 ◆END◆
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━」━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / ジョブ】

ja6473  / 紫ノ宮莉音  / 男  / 14歳 / アストラルヴァンガード 
ja5827  / 桜木 真里  / 男  / 20歳 / ダアト 
jb0742  / 彪姫 千代  / 男  / 16歳 / ナイトウォーカー 
ja3082   / 百々 清世  / 男  / 21歳 / インフィルトレイター 
ja1267  / 七種 戒  / 男  / 18歳 / インフィルトレイター  
jb0719   / 龍騎  / 男  / 12歳 / ナイトウォーカー 
ja5755   / リュシアン・ベルナール  / 男  / 29歳 / インフィルトレイター  

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、はじめまして。ライターの皆瀬七々海です。
ご参加いただきましてありがとうございます。

メリークリスマス! そして、今年一年ありがとうございました。

皆瀬七々海 拝
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エリュシオン
2013年12月20日

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