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『Winter! ― 恋人たちの遊園地 ― 』
百々 清世ja3082

1.
 クリスマスイルミネーションが綺麗な遊園地の貸切権。
 奥戸 通(jb3571)が誘ったそれを、百々 清世(ja3082)は快諾した。
 クリスマスという恋人にとって特別の日。
 通がその日に自分を誘ってきた意味はよくわかった。
 通とは少し前から付き合っている。彼女からの告白だった。
 好きだよ。
 けれど、その『好き』は他の女の子に対する気持ちと変わりない。
 通はそれでもいいと言う。
 呼び方を変えた。
 少しだけ、それは『特別の証』だった。

 早朝の駅前で待ち合わせ。
 人が少ない駅前で、ふわぁっとひとつあくびをしてきょろきょろと見回す。
 通はすぐに見つかった。
 可愛らしい恰好をして、息で手を温めている。
「おおー! こっち、こっちですよー」
 どうやら清世を見つけたようだ。
 ぴょんぴょんと飛び跳ねる通の元に、清世は笑顔で歩いていく。
「さむっ…なんでそんなに元気なの?」
「ふふ〜、だってキヨくんとクリスマスデートですもん」
 通の笑顔は朝から眩しい。ひとかけらの眠さも無いようだ。
「…とりあえず、指悴んじゃうし手ぇ繋ごうよー」
「はい!」
 通の手を繋いで、清世は歩き出した。温かく柔らかい手。華奢な手。
 自分の手とはずいぶん違う、と思った。
「キヨちゃん、手、冷たいですー…」
「通の手があったかいから、俺的にはオッケーだよ」
 通がふふっと笑う。なんで笑うんだ?
 でも、その笑顔が幸せそうなので、まぁ…いっか。

 さぁ、クリスマスデートの始まりだ。
 思いっきり楽しもう!
 

2.
 キラキラと煌めく遊園地の入り口に人気はなく、迎えてくれるのはスタッフとマスコットキャラクターたち。
「本当に貸切なんですねー…」
 どこもかしこもクリスマスカラーに染まった遊園地に2人きり。
「何乗りましょうかー…」
 マップを広げながら通は清世に視線を投げる。清世は思いついたことを口にする。
「絶叫系は? 俺、割と好きだよ」
「絶叫系は…体がスピードに慣れたら…ね」
 微妙に目が泳いでいる気がする。苦手なのだろうか?
 通の言葉に清世はマップを覗き込むと「この辺は?」と指を指した。
 絶叫系ではないが、少しスピード感のある乗り物が集まるエリアだ。
「よし、まずはカーレース辺り行きましょうか!」
 清世が指差したエリアの中から、通はカーレースを指定した。
 まぁ、最初のチョイスとしてはいいんじゃないだろうか。
「カーレースとか久々だな…よーし、おにーさんのハンドル捌きをとくとみよー」
「楽しみですー!」
 きりっと不敵に笑って、清世と微笑む通は足取り軽くカーレース乗り場へと足を向ける。
 ここのカーレースはコースが指定であるものの、レールなどがあるタイプではなく自らの運転で自走する本格的なカートだ。
 ブォンッと排気音を上げ、2人はカート場を疾走する。
 そんなにスピードは出ていないはずだが、視線の低さとむき出しの運転席のために体感速度が随分早く感じられる。
 心地よい乗り心地だ。
「おおーー?! ぎゃあー!」
 後ろで通の悲鳴とカートのドーンという衝突音が聞こえた。
「通! 大丈夫か?」
 ハンドルを切り、清世は元の道を戻る。通は角を曲がり損ねたようでコーナーで障害物にぶつかっていた。
「だ、大丈夫ですー…キヨくん、優しいね」
 ほわわんっと微笑む通に、なんだか少しくすぐったい気分になる。
「…大丈夫なら、勝負再開だな」
「あっ! 待ってくださいー!」
 
「きゃっほーーー!」
「やっほーー!!」
 清世と通の叫び声が園内に響く。ゴォォォォォッという轟音と共に。
 頬が痺れるほどの冷たい風を全身に受けながら、落ちていくジェットコースターはグインッとその角度を変えては通と清世を揺さぶる。
 爽快な気分で地面に降り立った通が大きく深呼吸をした。
「ジェットコースターも楽しいですねー…」
 赤いほっぺたで通は楽しそうに笑う。
「もっかい行く?」
 清世は少し笑って言うと、思いがけず通は力強く頷く。
「もう1回乗りましょう!」
 おー、やる気だな。
 通のノリの良さに清世は微笑む。
「行っちゃおー」
「行っちゃいましょー!」
 もう一度入り口に戻って、ジェットコースターに2人は乗る。
「もう一回行きましょー!」
「まだのる…?」
 清世は少し通を甘くて見ていたようだ。
 まさかジェットコースターを3回連続で乗ろうと言い出すとは思わなかった。
「だ、大丈夫…ですか?」
「大丈夫だよー。…ちょっと3連続はちょっと疲れるかな…って」
「休みましょう! いったん休憩をいれましょうーっ」
 気遣いを見せる通は少しだけ肩を落としたように見えた。
 清世はそんな通の頭を優しく撫でた。


3.
 ジェットコースターから少し離れたところに、軽食などがとれるオープンテラスのスペースがあった。
 その手前には遊園地定番の食べ歩きアイテムが可愛い箱に入って売られている。
「あっ、チュロス売ってますよ!」
 通が走っていく。清世もその後から「おっ」と歩いていく。
「ポップコーンもあるじゃーん」
「チュロスくださーい」
 通がそう言って、清世を見た。
「キヨくんも一緒に食べよ」
「お、いいねー」
 微笑む清世に通は「1本くださーい」と頼んだ。
「1本?」
「はいっ、あーん!」
 売り子から受け取ったチュロスを通は清世に差し出す。
「1本を分け合えば、もっともっと美味しいですよー」
 …これはきっと食べろ…ってことだよなー?
 通がなんだかソワソワしている。早く食べろってことだろうか?
 清世はチュロスを一かじりした。
「ん…美味しいねー。じゃあ俺もポップコーン買うから、分けっ子しよう。味どれがいいー?」
 通の顔がみるみる赤くなっていく。どうやら喜んでいるようだ。
 ぽーっと言葉もなくこちらを見つめている。
「…通?」
「あっ…んっと、キャラメル味がいいー!」
 通がそう答えたので、清世はキャラメル味のポップコーンを買ってそれを摘まんで今度は通に差し出した。
「はい、あーん」
「あーん…」
 通は戸惑う様子もなく、素直にそれを食べた。
 目が合った通照れたように微笑む。
 …可愛いよなー…。
 そんな気持ちがよぎって、清世もつられて微笑んだ。

 パレードもマスコットグリーティングも2人の為だけに。
 大迫力の3Dライディングや絵本をモチーフにしたイベントも、全て2人だけで楽しむ。
 清世と通だけの遊園地。
「次はあれに乗りましょー」
「うん、いいねー」
 恋人たちに時間はいくらあっても足りない。
 いつの間にか、辺りは夕やみに包まれ始めていた。
「んー! だいぶ暗くなってきましたねー!」
 薄闇に徐々に光りだすイルミネーション。ぼんやりと温かな光を眺めながらも、夜風はとても冷たい。
「…観覧車乗りましょうか」
 通がそう言うと、清世も頷いた。やはり夜は冷える。
「あー…寒くなってきたしねぇ。観覧車に避難、しますー?」
 にへっと2人は顔を見合わせた。どうやら同じことを考えていたらしい。
 観覧車に乗って向い合せに座ると、少しずつ地面が遠くなっていく。
「今年もあと少しですねー…」
 少し寂しそうに通は夜景を見ながら呟いた。
「沢山遊んだけど、まだまだ遊び足りないやー…」
 通の言葉はもっともだと思った。
 けれど、清世は通にこう言った。
「だねぇ。俺も遊び足りないけど…ま、ほら、来年もあるじゃん?」
 思ったことを口にしただけだった。
 けれど、通はビックリしたように目を丸くして清世を見た。
「ら…いね…ん?」
「そ。来年もまたこうして遊べたらいいじゃん?」
 清世は笑う。楽しい時間がいつまでも続けばいい。
 それは今年いっぱいで終わらせるには惜しいし、もっともっと楽しめると思った。
「そろそろ頂上かなー」
 清世は外を眺めながら呟く。そして、ポンポンと自らの膝を叩いた。
「つーか距離遠いわ、こっちおいで。寒い」
 また通の顔が赤くなる。素直なところが可愛い。
「ん…」
 席を立ち、清世の膝にちょこんと通はすわ…ガタン!!
「うわぁ! こわっ」
 思わぬ揺れに通が清世に抱きついた。
 揺れがゆっくりおさまると、2人は顔を見合わせるとクスっと笑った。


4.
 真っ暗になってイルミネーションの光の中を出口へと向かう。
「すっかり遅くなっちゃったねぇ…」
 清世はそう言って空を見上げた。透き通った空に冬の星座が光っている。
 折角のいい夜なのに、別れちゃうのもったいない感じだなー…。

「帰んのめんどいし、お泊まりしちゃう?」

 通の表情が固まって、目をパチパチと瞬かせている。
「お、、お…おとま…お泊り?!」
 声が裏返り、動揺しているのが清世にもわかった。
「嫌? 嫌ならこのまま帰るけど…」
 そんな通に、清世は覗き込んだ。通はすぐに顔を振って否定した。
「い、嫌じゃないですよ! ちょっとビックリしただけです!」
「そっかー。なら行こっか」
 歩き出したのは遊園地の中にあるホテルの案内所。
 今日、これからでも宿泊可能なホテルを予約してもらうと通と清世は歩き出す。
 意外と近くのホテルがとれた。
 最上階近くの遊園地が一望できる部屋だった。
 …よく空いてたなー…。
「ここからもイルミネーション見えますねー! 綺麗…!」
 夜景にはしゃぐ通を見ていると、まぁ、そんな些細なことはどうでもいいかと思う。
 今日が楽しければいいじゃん。
「ここ、おいでよ」
 ぽんぽんっと清世はベッドに座って通を呼んだ。
 通は少し微笑んで、清世の膝の上に座った…。

 朝方、なぜか目が覚めた。
 傍らには幸せそうに眠る通。小さな寝息を立てて眠っている。
 楽しい夢でも見ているのだろうか。わずかに微笑んでいるようにも見える。
 布団から出た部分が寒い。もう一度布団にもぐろうとした時、ふと枕元に何かが置いてあるのに気付いた。
 いつの間に?
 手に取ってみる。見覚えのないクリスマスカラーのラッピング。リボンが可愛らしい。
 通のサプライズプレゼントということか。
 なんでそのままプレゼントしなかったのだろう?
 …そうか、クリスマスだから枕元に置いたのか。
 通が起きたら、なにかお返しをしなきゃな。
 何がいいかなー…何が………。
 通のことを考えながら、また睡魔が襲ってきた。
 また起きた時に考えればいっか。
 そのまま、清世は人肌の温かさに目を閉じた…。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 jb3571 / 奥戸 通 / 女性 / 21歳 / アストラルヴァンガード

 ja3082 / 百々 清世 / 男性 / 21歳 / インフィルトレイター


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 百々 清世 様

 こんにちは、三咲都李です。
 この度はご依頼いただきましてありがとうございます。
 また、ご報告までしていただき、さらにはまた書かせて頂けて光栄です!
 少しだけ特別な関係…来年もまた楽しくいてくれたらいいなって思います。
 クリスマスデート、少しでもお楽しみいただければ幸いです。
winF☆思い出と共にノベル -
三咲 都李 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年12月24日

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