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『to the Happy New Year side友真 』
小野友真ja6901


 忙しない久遠ヶ原の年末風景。
 帰省する学園生も居るが、帰る場所のない者、馴染んだ地で新年を迎える者も増えてきて、クリスマスが終わったというのに街は人出が多い。
 寒空の下、縁起物を売る露店なども出ていた。
 見慣れたはずの街並みなのに、少しだけ知らない場所へ迷い込んだよう。


「こういうんも新鮮やなー……」
「人、居るもんだな」
 小野友真と加倉 一臣も、今年は帰省せずに久遠ヶ原で過ごすと決めていた。
 年越し準備の買い出しに来てみて、その賑やかさを愉しむ。
 いくつか見慣れた顔もあり、笑いあってすれ違う。
「不思議やな。ココも、一つの『帰る場所』なんかなー」
「卒業すると、そうなるのかもな」
「あー」
 身寄りを失ってる生徒にとっては、友人のいる学園こそが新たなる故郷なのかもしれないし、卒業してしまえば愛しい母校だ。
 血の繋がった家族のいる実家が恋しくないといえば嘘になるけれど、限られた時間を自分たちで選び取るのも贅沢に感じる。

 かくいう二人は現在、ルームシェアという形で共に暮らしていた。
 一臣が、撃退士の傍らで仕事としているフリーランスのデザイナー活動用にと借りている仕事部屋での寝泊りが増え、退寮したことがきっかけ。
 今日は、今年最後のデートといったところだろうか。
「縁起物は買うたし、あとは食材やんな! 俺、年越しはうどん派なん。甘めのお揚げ入れてな!! 一臣さんはー?」
「そうね、蕎麦と雑煮くらいは…… え、うどん? え、ソレ関西では主流なの……」
「俺流です」
「なるほど」
 年が離れていて、出身地も離れていて。
 共に過ごす時間を重ねても、互いに知らないことは案外と多い。
 ふとしたことで覗くのが、楽しかった。
 新しい発見は、日々、絶えない。
「男所帯だから凝ったモンは要らないが、雰囲気は味わいたいな。今年はうどんで行きますか」
「いえーい! それじゃ、来年は一臣さん流のにしよな」
 両手を挙げて喜ぶ友真の不意打ちに、一臣が咽こんだ。

 ――来年

(あー……)
 『オンリーワン何それおいしいの?』そんな時代もありました。
 赤くなる顔を片手で隠しながら、誤魔化すように他方で友真の背を叩く。
「そだな。来年は俺色に染めてやンぜ」
「ホタテたくさんなー!」
「俺の実家が目当てか!!」
 昨年は、一臣の実家で年越しした。
 関西出身のお客人、となると新鮮な食材で対抗したくなるのが道民のサガである。
 ホタテもカニも、あんなに新鮮なものは久遠ヶ原じゃ手に入らない。
 スーパーの鮮魚コーナーを軽く流し、二人は次の売り場へ。




「DVD見ながらポップコーンは鉄板やろー、それからコーラのストックとー」
「何日、引き篭もるつもりだよ!?」
 スーパーのお菓子コーナーではしゃぐ友真を、一臣は慌てて押しとどめる。
「冬季限定チョコ。これはどない?」
「……3つまでな、バランスよく!」
「よしゃー!」
 お菓子類を放り込まれ、重さはともかく随分な物量になった。
 笑いながら、大きな紙袋を抱えて二人は街を歩きはじめる。
 家を出たときより、幾分か風が冷たくなっていた。
「さすがに買い逃しはないだろ。正月って、何故かカレーも食いたくなるんだよな…… あ」
 袋の底が重いのは、一臣がスパイス類を買い足したから。
 凝ったものは必要ない、と言いながら、休暇中くらい凝ったカレーに挑戦してみようかなどと。
 ……そんな会話の先に、カレーの人発見。

「筧さん見ーっけー!」

 流れる動作で荷物を一臣へパスし、友真は人混みの中からロングコートの赤毛の背へと奇襲タックルを仕掛けた。
「うおわ!!」
「今年もお世話になりました!」
「びっくりした。あれ、二人とも今年はこっちなの?」
 深々と頭を下げる友真に対し、笑いながら筧 鷹政が振り返る。
「ども。帰省ラッシュも馬鹿になりませんしね」
 荷物に荷物を重ねて抱いた一臣が、ゆっくりと追いついた。
 冬の北海道は、天候一つで交通機関も大幅に狂う。
 電車はともかく、飛行機が飛ばないのは困る。
「たしかに、それもそうだ」
「筧さんは?」
「俺も、今年はこっちだねぇ。身の回り、慌ただしくてさ」
「ああ……」
「幸せなことだと思ってる」
 鷹政にも、色々と。色々とあった一年だった。
 一臣が携わった件もあったし、それ以外にも。ある程度は報告書で読んだり、友人から聞きかじっている。
 鷹政が見慣れた黒ではなく、ライトグレーのコートに身を包んでるのも、一つの変化なのかもしれなかった。
(……京都)
 ちら、と一臣は鷹政の表情を伺う。
 得たものも、失ったものも、多かっただろうと思えば安易に口にできない。
(あの時の皆さん……、いや)
「また、皆さん一緒に仕事できる機会を楽しみにしてます」
「ああ」
 あの日から、繋げて来た道は続いている。
 常に、ではなくても。途切れ途切れでも。きっと、顔を合わせたのなら、疲れが振り切ってハイテンションな撃退士たちと変わらぬ仕事ができるだろう。
 全てを語らずとも、鷹政にも一臣の伝えたい気持ちはわかる。
 返す言葉は短く、眼差しで応じた。
「来年は俺ももっと筧さんと仕事したいて思ってるんで、そん時は宜しくお願いしますね!!」
「銃の装備は忘れるなよ?」
「あれは! 模擬! やったから!!」
 秋の砂浜でのことを混ぜっ返すと、愉快なくらいに友真が過剰に反応した。
「あ、年明けにまた襲撃するので!」
「……鍵て、まだ使えます? アポは取りますんで」
 一臣に重ねて、真顔で訊ねる友真。
「何のために、『引っ越し』しなかったと思ってるのさ?」
 それが全てではないけれど、決断材料の一つであったことは本当だ。
「いつでもおいで、寝泊まりできるくらいにはしておくよ」
「……。筧さん」
 別れ際、ふと気になって一臣はその腕を引いた。
 自分とは違う方向でオープンすぎる『兄貴分』にして友人の。
「俺の勝手な印象だったらすみません、その、……お気を付け下さい」
「ははははははははは、ちょっと個人的に相談に乗ってもらうことがあるかもしんない」
 『何を』とは、触れずとも十分です。
 冗談めかした言葉の割に、鷹政は深刻な顔で耳打ちを。
(あ、これはヘヴィだわ)
 乾いた笑いで、一臣は頷いた。


「良いお年をー!」
「おーう、来年もよろしくなー」
 全く気付かぬ友真だけが、晴れやかな笑顔で手を振った。

 

●優良物件、お持ち帰り
「友真、餅いくつー?」
「んー、んー……3個、2個はきなこ!」
「りょっかい、俺はチーズ乗せよ」
「なにそれずるい!」
「ずるいか!??」
 夕飯の片付けも終え、年末の特別番組なんぞを見ながら餅を焼いたりして。
 暖かな部屋、暖かな恋人と、ゆったりとした時間を過ごす。
 仕事の心配もない、穏やかな時間だった。
「あと少しで、今年も終わりかー……」
「濃かったねえ、2013……」
 焼けた餅と、お茶をテーブルへ運び、一臣も腰を下ろした。
 壁の時計を見上げれば、残り一時間を切っている。

 撃退士としての戦いと。
 学生としてのお遊びと。
 二人だけの思い出と。

 嬉しいこと、楽しいこと、苦しいこと、悲しいこと、たくさんあった。
 ひとつひとつ挙げてみて、今となってはそれら全てが自分たちの糧になっているのだと感じる。
「改めて今月は誕生日おめでと、X'masと大晦日もありがとな」
「来年は海外旅行楽しみにしてるぜぇ」
「以降10年間はキノコの山でも、えぇかな」
「……ちょっと考える」


(元気の源、誰よりも愛しいかけがえない人、一生変わらんて言い切れる。……言わへんけど)
 純粋な憧れが、意味を変え始めたのはいつだったか。
 整った一臣の顔をぼんやり眺めて、友真は思い出そうとして3秒で放棄した。
 背中は守る。絶対に。
 戦いであっても、恋愛であっても。
(今年もやっぱり色々あったけど、全部含めて大事な思い出やんな。今年は一緒に暮らし始めたし!)
 感情に任せて走りがちな自分を、最後の部分で信頼して、手を握っていてくれる人。
 放任過ぎと違う? そう思うこともあるけれど、ジトリと見遣れば困ったような笑いを返してくれる。

「……知ってるか、同じ相手と二度目の年越しするのは初めてなんだぜ?」

 さらりとした友真の髪に触れながら、口説き文句と紙一重の墓穴を掘るのだ、友真の恋人は。
 年上なのに。
 普段は頼れるのに。
 時折、どこか抜けていて、放っておけない可愛さがある。などと、言わないけど。
「今後も沢山の初めてをあげるし貰うわ。俺に全部捧げろー?」
 だから代わりに、余裕たっぷりの言葉を。
 そうじゃなければ、一臣の恋人など務まるものか。
 表裏一体の長所と短所、知っているから隣にいるのだ。
 テーブルに頬杖を突き、友真は一臣を見上げる。
「やだ男前、惚れるわ」
「もっと…… 惚れてもええんやで? ちゅーすんぞアホめ」
 冗談めかして笑い合うと、遠くから除夜の鐘が響いてくる。
「あけましておめでと、愛してるで」
「知ってる。愛してンぜ、新年もよろしく」
 精いっぱいの背伸びで、友真が一臣の額へライトなキスを落とす。ちょっと頭突きに近いものがあるかもしれない。
「ん! 今年も宜しくな!! ……てなわけで、今年最初のデート行くか!」
「行きますか。……あー、雪、降り始めたか」
「雪ー! 雪合戦! 合戦する!?」
「しません、そこまで積もってねぇよ。しっかりまかなっていかないとな」
「まかな…… 着こむ、やな!!」
「……あれ、これ」
「標準語では、ないで……?」
「え」
「え」



 共に居る時を重ねて、年を重ねて、今という時間、未来という時間、一瞬を大切にしていきたい。
 気持ちを新たに、二人は新年の雪降る中を、初詣へと歩き始めた。




【to the Happy New Year side友真 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5823/ 加倉 一臣 / 男 /27歳/ インフィルトレイター】
【ja6901/ 小野友真  / 男 /18歳/ インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました!
年末年始デートパック、お届けいたします。
筧もゲスト出演に及びいただきましてありがとうございました。
内容から判断しまして、今回は終盤ワンシーンを互いの視点で切り替えています。
楽しんでいただけましたら幸いです。
winF☆思い出と共にノベル -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2013年12月30日

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