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『俺の名はブラッディベア! そこんとこ宜しく! 』
田中・哲夫8717)&フェイト・−(8636)&(登場しない)

「おー。フェイト。お疲れさん! ご苦労だったな」
 任務のため数日間東京を離れていたフェイトがIO2へと帰ってきた。疲れた表情のフェイトが自分の席に腰を下ろすと、隣にいた同僚がずいっと近づいてくる。
「フェイト。お前がいない間に新人エージェントが来たんだ」
「へぇ。それって……」
 目を瞬かせ、フェイトが詳細を聞こうと口を開くと同時に机に無造作に投げ出されていた携帯が鳴り響く。
 すかさず携帯を手に取り応答すると、その電話は次の任務の依頼だった。
『遠征から戻ったところ申し訳ないが次の任務が入った。神社で悪霊に取り憑かれた少女が暴れ回っているらしい。場所と詳しい詳細は……』
 フェイトは携帯を肩で挟み、近くにあったメモ用紙に素早く場所を書きとめる。
「分かりました。急行します」
『あー、あとな。新人エージェントも一緒に連れて行ってくれ。名前は田中哲夫。彼とは現地で合流してくれ。宜しく頼む』
「了解」
 すぐさま幹部から依頼書を受け取ると席を立ち上がると、フェイトは現場へと急いだ。


 突き抜けるような晴天とは裏腹に、現場は騒然たるものだった。
 悪霊に取り憑かれている少女は青白い顔をし、生気のない眼差しで髪の毛を逆立てて境内や賽銭箱を叩き壊している。年の頃なら中学生ぐらいだろうか。
 暴れ回る少女の側には互いに抱き合い怯えている同級生と思われる少女達がしゃがみこんでいた。
 フェイトはさっとその状況を確認すると、怯えている少女達の側に歩み寄り声をかける。
「俺はIO2の人間だ。何があったか説明してくれるかな」
 少女達は目に涙を浮かべ、声をかけてきたフェイトにすがる様な眼差しで見上げてくると震える声で話し始めた。
「こ、こっくりさんをやっていたんです……。そしたら悪霊を呼んでしまったみたいで、すぐにあんな感じになっちゃって……」
「そうか。分かった。ありがとう。ここは危ないから、別の場所に移動した方がいい」
「あの、あの子は大丈夫なんですよね?!」
 泣きすがる少女に、フェイトはやんわりと笑みを浮かべて頷いた。
「あぁ。大丈夫。だから下がってて」
 宥められた少女達は何とかその場に立ち上がるとその場を後にする。
 フェイトは再び暴れ回る少女に目を向けると、獣の如く咆哮を上げながら破壊の限りを尽くしていた少女がギロリとこちらに視線を向けてきた。
 目つきの鋭さは人間のものとは思えない。そう。例えるならまるで狐のようだ。
 フェイトはすぐに彼女に取り付いているのが強力な狐の霊であると判断する。
 腰に備えていた銃に手をかけると、少女は前に突き出した手を大きく横へなぎ払う。すると、崩れ落ちた灯篭の一部が少女の動きに合わせて物凄い速さでフェイトに襲い掛かる。
「!」
 フェイトはすぐさまその攻撃をかわす。だが、少女は辺りに四散している石や板などを自在に操り襲い掛かってくる。
 ヒュンヒュンと空を切るような音を立て、砕き割られた鋭利な板が飛び掛った。
「……っ」
 フェイトはバク転しながら素早くその場から飛び退く。フェイトが退いた側からドスドスと音を立て、深々と板が地面に突き刺さっていった。
 ヒラリと地面に降りたフェイトが体制を立てる前に更に攻撃が仕掛けられる。
 灯篭の石が再び襲い掛かってきたが、フェイトは地面を蹴って横っ飛びに飛び退きながら銃を構えて少女を狙う。
 ドンッと引き金を引くも、少女は易々と攻撃をかわしてしまった。
 ニヤリとほくそえんだ少女は両手を振り翳し、大きく前に仰ぐように振り下ろすと細かい石がつぶてのように無数に襲い掛かった。
 フェイトは咄嗟に両腕を顔の前にクロスし防御体制をとる。
「くっ……!」
 バチバチと激しい音を立てて浴びせられる石は、強かに彼の身体を打ちつけていく。
 今の状態では近づく事はおろか手も足も出せない。
 石つぶての雨が止まると、フェイトはたまらずその場に膝を着いてしまった。
 ヤバイ。このままじゃ……。
 顔を歪めて少女に視線を向けると同時に、フェイトの前に颯爽と誰かが飛び出してきた。それがすぐに誰か分かるとフェイトは彼を仰ぎ見る。
「お前……田中哲夫か?!」
 そう叫んだフェイトは、目を大きく見開いた。
 フェイトと同じエージェントの証でもある黒いスーツに身を包んだ彼。がっしりとした体系でそして毛深く……。
 どこかで会ったような……?
 どこから見てもただのクマにしか見えないその姿に見覚えのあるフェイトが言葉を飲み込むと、クマは肩越しにこちらを振り返る。そして帽子のツバを銃口で軽く持ち上げながら、サングラス越しにこちらを見やった。
「ふっ……違うな。俺の名は……ブラッディベアだ。俺の事は今後ブラッディと呼べ!」
「……」
 ニッと口角を上げたブラッディベア……もとい田中哲夫は格好よく決めたつもりのようだが、明らかに格好よさと言うよりも可愛さの方が勝っている。
 フェイトは、「キマッた。これ以上ないくらいキマッたぜ!」と得意げに肩を揺らし笑っている田中哲夫に、二の句が告げられず唖然としてしまう。
「ここは俺に任せて、お前は休んでいろ!」
 まだまだキメるぜ! と言わんばかりにフェイトを背後に庇い銃を突きつける哲夫だが、次の瞬間には焦った様子でキョロキョロと周りを見回し始める。
「って、あ、あれ?」
 慌てふためいている哲夫を余所にフェイトが前を覗き込むと、少女は分が悪くなったと悟り尋常ではない速さで逃走している後姿を目視した。
「くそっ! 何だよまったく!」
 哲夫は悔しそうにその場で足を踏み鳴らすも、すぐに何かを閃いたように顔を上げる。
「そ、そうだ! 近くに止めてあるスクーターで追跡を……!」
 哲夫は猛ダッシュでスクーターに駆け寄り颯爽と跨った。が、次の瞬間愕然としたように固まってしまう。
「くっ! 何てことだ! 俺としたことがっ!!」
 後を追いかけてきたフェイトの目の前で、サングラスをかけた黒尽くめの衣装を着た愛らしいクマが短い足をばたつかせている。
「おいおい……」
 呆れるフェイトの事など目にも入らないのか、哲夫はジタバタとバタつかせながら、さもこれは計算外だと言わんばかりにもがき続けている。
「くそ! 本当の俺はこんなんじゃないぞ! いつもなら届くんだ。あぁ、そうさ。いつもならなっ! ただたまたま今日は調子がちょっと悪くてだな」
 誰に言い訳をしているのか、一人でごちている哲夫にかける言葉もない。
 フェイトは哲夫の側に歩み寄るとその肩に手を置く。
「ちょっと代われ。田中哲夫」
 そう呼ばれると、哲夫は不本意だと言わんばかりに身体を小刻みに震わせながら抗議を始める。
「ばっ……!? 違うつってんだろ! 俺はブラッディベアだ!」
「はいはい。分かった分かった」
 今は哲夫に付き合っている場合じゃないと、フェイトは適当にあしらった。
 仕方なくフェイトが後ろに哲夫を乗せてスクーターを走らせると、飛びそうな帽子を短い手で押さえながら叫ぶ。
「いっけぇーっ!」
 勇ましく声を上げる哲夫に、フェイトはただ苦笑いを浮かべる。


 スクーターを走らせて少女の後を追いかけると、少女は街外れの廃墟の路地に追い詰めた。
「ふふふ……ここまでだ。観念しな」
 フェイトに降ろしてもらいながら格好つける哲夫は、サングラスの端からつぶらな眼差しを光らせ少女を見る。
「いくぜっ!」
 ゆらり……と哲夫の身体からオーラが立ち昇る。そしてその短い手を振り上げ思い切り振り下ろすと、爆風を起こしながら霊体エネルギーが少女に向かい飛び掛った。
 バチィッ! と電気の弾けるような音がしたと同時に、取り憑いていた悪霊が少女の身体から弾き出された。
「今だ!」
 悪霊の抜けた少女はその場に気を失い屑折れると同時に、フェイトは対霊銃弾を悪霊目掛けて打ち込んだ。
 悪霊は咆哮を上げて撃滅したのだった……。

              ****

「で? お前なんでここに?」
 憮然とした表情で復活した哲夫を見つめると、哲夫は短い親指をつき立ててニッと笑う。
「ま、なんつーの? もう一度昇天するまでの間、弟を影で見守るためにここに入った感じ?」
「……あ、そ」
 フェイトはガックリと肩を落とし、深いため息を吐く。
 そんな彼をみやりながら、哲夫はペロッと舌を出して微笑んだ。
「そんなわけでヨロシク! 相棒!」
 相棒じゃねぇし……。
 フェイトは再び嘆息を漏らすのだった。
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東京怪談
2014年01月15日

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