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『ラブラブ羽根つき大会 〜ハルシオン編〜 』
ハルシオンjb2740

 正月にハルシオンと共に、神社に参拝に来たアムルは大きな緑色の眼を丸くする。
「うわぁ〜! お正月の神社って人がいっぱいだね〜、ハルちゃん」
「大声を出すんじゃない! 本当に汝は見た目に反して、中身は子供じゃのう」
「そう言うハルちゃんは中身はお年寄りで、見た目はお子様だよね」
「汝は新年早々、ケンカ売っとるのかっ!」
 新年を迎えたばかりだというのに、アムルのボケとハルシオンのツッコミはいつも通りだった。
「……しかしアムルよ、そういう振袖の着方をして、寒くはないのかの?」
「大丈夫だよ〜、首元に羽毛のショールを巻いているから。胸のところが開いちゃったのは、入らなかったせいだし」
「いや、それ以外にも……と、もう遅いか。来年はわしも一緒にアムルの振袖を選んでやるからの。大きめのを選ぼうな」
 アムルは髪の色と同じ桃色の振袖を着ているのだが、胸元が開いている上に、ところどころ着崩れている。どうやら自ら頑張って着付けをしたらしいが、いろんな意味で人目を集めてしまっていた。
 そんなアムルを見て、ハルシオンはため息を吐くしかない。
 ハルシオンはちゃんと長い紫色の髪を結い上げて、黒と紫の縦縞に梅の花柄模様の振袖を着ている。異国の容姿をしていても振袖姿はちゃんとしており、彼女の真面目な性格が出ていた。
 二人は温度差のある空気をまといながら、それでも列に並んで参拝を済ませる。おみくじを引いたり、甘酒を飲んでまったりしていると、アムルがとある看板を見つけた。
「『本日、羽根つき大会開催! 参加者には勝敗関係なく、ミカンをプレゼント! 更に優勝者には、神社で作ったお餅を差し上げます』だって! ハルちゃん、参加してみよーよ!」
「ふむ……。羽子板は見るも良し、遊ぶのも良しじゃな。正月の遊びを楽しむのもよかろう」
 こうして二人は、羽根つき大会に参加することにした。
 受付を済ませると、神社の巫女が紐で振袖の袖の部分を縛ってくれた上に、羽子板を貸してくれる。
 神社の敷地内で大会ははじまり、二人は自分の番がくるまで貰ったミカンを食べて過ごす。
 しばらくして巫女に呼ばれて行くと、何と二人は対戦相手になっていた。
「あらら〜。こういうのも運命のイタズラって言うのかなぁ? 天使と悪魔の対決なんて、映画みたいだね〜」
 種族が天使のアムルが声をかけても、悪魔のハルシオンはジッと手に持った羽子板に視線を向けている。
「今回の羽根つきは追羽根と呼ばれるもので、羽子板を手に持った二人が向かい合い、羽根を打ち合う試合なのじゃな。羽根を打ちそこない、地面に落とした者は墨で顔にラクガキをされるという……ある意味、恐ろしいゲームじゃ。しかし勝つのはわしじゃ!」
「……ハルちゃんはすっかり夢中だね〜。でもボクに集中してくれないと、後悔しちゃうぞ!」
 神主の「はじめっ!」の声で、二人は真剣な顔付きになった。
 アムルは持ち前の運動能力で、ハルシオンは頭脳を使って、互いの隙を狙って羽根を打つ。
 しかしハルシオンは羽根に集中するあまり、足元の注意が疎かになって体勢を一瞬崩す。
「しまった!」
「チャーンスッ!」
 ここぞとばかりに、アムルは力を入れて羽根を打った。その羽根はハルシオンの腕の横を通り抜け、地面に落ちる。
「やったぁ♪ それじゃあハルちゃんに、罰を与えなきゃね〜」
「くぅっ……! 仕方あるまい」
 アムルは巫女から墨をたっぷり吸い込んだ筆を受け取り、上機嫌でハルシオンの顔にラクガキをしていく。
「くっくすぐったいのじゃ!」
「ハルちゃん、動いちゃダメよ〜」
 クスクス笑いながらアムルはハルシオンの顔に相合傘を描き、自分と彼女の名前も書いた。
「ふふっ、これで良し♪」
「何を書いたのじゃ?」
「えへへ、秘密だよ〜。後のお楽しみってことで。まだ勝負はついていないでしょう?」
「おお、そうじゃった。まだわしは負けてはおらぬ! 今度はこちらの番じゃ!」
 気合を入れて、ハルシオンは羽根を打つ。
 しばらく打ち合いを繰り返していたが、草履を履き慣れていないアムルが足をひねって倒れてしまう。
「だっ大丈夫か? アムル」
「へーきへーき。足の裏がすべっちゃっただけだから」
「それなら遠慮なく、ラクガキをさせてもらおうかのう」
 実はアムルが転ぶと同時に、彼女に向かっていた羽根も地面に落ちたのだ。
 暗い笑みを浮かべながら、ハルシオンはアムルの顔に『駄目天使!』と書く。
「きゃははっ! くすぐったぁーい。ハルちゃんは何を書いたの〜?」
「くくくっ……。後のお楽しみじゃ」
 ――こうして、白熱した打ち合いが続いた。
 アムルとハルシオンは肩を揺らしながら激しい呼吸をして、振袖が着崩れるほど動き回る。
 見物人達も息を潜めながら試合を見ており、いつの間にか二人の周囲には多くの人が集まっていた。
 だが長時間動き回っていたせいで、ハルシオンの体は悲鳴を上げつつある。そのせいで自分に向かってきた羽根を、打ち返すことができなかった。
「ぐぬぬぬっ! 着慣れぬ振袖のせいで、動きがままならぬのじゃ!」
「う〜ん……。ハルちゃんの体にラクガキしまくっちゃったから、もう描ける場所がないみたいだね〜」
 アムルは困った表情で、ハルシオンの肌を見る。
 ハルシオンの素肌が見える部分には『大好き♪』や『愛しているよん♪』、『ロリババア萌え♪』や『げーじゅつバカ!』と書いてある。もちろん、ハルシオンからは見えない部分にだ。
「ただでさえハルちゃんの肌って黒いから、墨で書いてもあんまり目立たないんだよね〜」
「逆に汝の肌は白いから、目立つのぉ」
 ハルシオンは自分が書いたラクガキを見て、思わずプッと吹き出す。
 アムルから見えない肌の部分には、『頭の中は桃色畑』、『節操なし』、『貞淑を求む!』などと書かれている。
 お互い、本人が見える部分にはハートや星のマークなど単純なラクガキを描いているが、見えない部分にはとんでもないことを書いていた。
 しばらく悩んでいたアムルだったが、突然何かを決めたように両手をポンっと叩く。
「よしっ! こうなったら、ハルちゃんの襟元を開いて胸に……」
「アホかっー!」
 ハルシオンが着ている振袖の襟元に両手をかけたアムルの頭に、ゲンコツが落とされる。
「いったーい!」
「汝の考え方のほうがイタイわっ! やってられるか! もう引き分けでよいのじゃ!」
 怒ったハルシオンは袖の紐を解いて、羽子板と共に巫女に返す。
「あぁ〜ん! ハルちゃん、待ってよぉ!」
 涙目になりながらアムルも紐と羽子板を返して、ハルシオンの後を追う。
 しかし歩いていたハルシオンは、周囲にいる人々が自分を見てクスクス笑っていることに気付く。
「おお、そうじゃった。まだラクガキを消しておらんかったの。お手洗いで、肌を拭かなければ」
 慌ててトイレに入り、鏡を見たハルシオンの顔が引きつった。
「ぬわんじゃコレはあああっ!」
「あっ、ハルちゃん。トイレに入ってたのね〜」
 ハルシオンの絶叫を聞いて、アムルもトイレに入ってくる。
 ハルシオンはラクガキされた自分の姿を見て、眼を白黒させていた。
「アムルッ! 汝はこんなことを書いておったのか!」
「うん、そうだよ〜。あっ、ハルちゃんも結構ヒドイことを書いたんだねぇ」
 アムルも自分の姿を鏡で見て、失笑する。
 二人ともとんでもない姿で人前にいたのだが、改めてそのことを思い出したハルシオンの緑色の眼がグルグルと回り出す。
「……アムルとはもう絶交じゃあー!」
「えっ? ちょっと待ってぇ〜!」
 半泣き状態でハルシオンはトイレから飛び出し、続いてアムルも走り出した。
 ――が、二人の体格差のせいで、あっと言う間にハルシオンはアムルに背後から抱き着かれる。
「ふう……。ハルちゃんをやっと捕まえたよぉ」
「はっ離せぇ! 恥ずかしいではないか!」
「騒ぐ方が目立って恥ずかしいと思うけど……。早く家に帰って、一緒にお風呂に入ってラクガキを消そうね〜。そして二人っきりの部屋の中で、イチャイチャしながら遊ぶのよ」
「ひぃっ! みっ耳元で、甘く囁くんじゃない! くすぐったいわー!」
「うふふ、可愛い♪ それじゃあ帰ろうね〜」
 アムルに抱き上げられながら、ハルシオンは抵抗むなしく連れてかれた。


☆ハルシオンの本心
「全く……。どこまで本気で、どこまで冗談なのか分からぬ天使よのぉ」
 ハルシオンは深いため息を吐きながら、お茶をすする。
 家に到着した後、二人で風呂に入ってラクガキを消した。そして私服に着替えてスゴロクや福笑い、お手玉をして遊ぶと、はしゃぎ疲れたのかアムルは突然眠ってしまう。
「こやつはこんなんだから、堕天使なんぞになったのじゃな。……しかし地上に出て来たわしと仲良くなるなんて、本当におかしなヤツよのぉ」
 アムルの寝顔は天使そのものの愛らしさがあり、彼女の柔らかい髪に触れながらハルシオンは遠い目になった。
「……いつもこんな感じなら、わしも怒らずに済むのじゃがな」
 今日一日で何度も怒鳴ってしまったことを、ハルシオンは少し後悔していたのだ。
 いくら勝負ごとをしていたとは言え、真面目に取り組み過ぎると熱くなってしまうのがハルシオンの少々悪いところだった。
「しかしアムルも悪いのじゃぞ? あっあんなことをわしの肌に書きおってからに……! ああいうのは他の者に見せてはいけないのじゃ。例えばそう……手紙とかに書いてだなぁ」
 ブツブツと文句を言っているようだが、その顔は赤く、照れているように見える。
 アムルが好意を表現する方法は、いつも真っ直ぐで分かりやすい。
 ハルシオンは嬉しく思うものの、上手く返せないのがもどかしくもあった。
「はあ……、ヤレヤレ。今年はもう少し、素直にならなければのぉ。おお、そうじゃった」
 ふと何かを思い出したように、ハルシオンはアムルの耳元に口を近付ける。
「今年一年もよろしくな。……じゃが、浮気は決して許さぬぞ?」
「ひぃっ……!」
 アムルは夢の中にいても、ハルシオンのただならぬ気配に驚くのであった。



<終わり>

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb2503/アムル・アムリタ・アールマティ/女/大学部1年/陰陽師】
【jb2740/ハルシオン/女/中等部1年/ナイトウォーカー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご依頼していただき、ありがとうございました(ペコリ)。
 『☆』の部分から個人ストーリーになっていますので、お二人分を合わせて読んでいただければと思います。
 仲が良いお二人を、コメディ風に書けて楽しかったです♪
winF☆思い出と共にノベル -
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エリュシオン
2014年02月03日

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