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『ヤキツケル 』
藤田あやこ(ga0204)

 師走。
 何かと慌ただしい年の瀬。
 だけど、2013年、その年の各地の慌ただしさは、例年とは異なる様相を見せていた。
 終戦を迎えてからの年末。行きかう人々の顔は皆安堵に満ちており、やれ飾りの準備だ、料理の支度だと駆けずり回る中にも、平和を満喫する緩んだ空気が漂い始めている。
 そんな世界の空に、轟と音が響く。寒風ではない、KVの機体音だ。
 sms――サルディニア島に基地を置く映画社、その社員たちの営業回り。その中には、事業主である藤田あやこ(ga0204)自らが駆るKVも含まれていた。
 一瞬一秒も惜しいと駆け回るKVが、これまた、常人には無茶と思える急制動でポートに降り立つ。
 くぐもって響く発砲音。リハーサルを行っているのは向こうか。あやこはKVから降り立つと、マネージャーに連絡を入れ、カツカツと靴音を慣らしながら控室へと向かった。
 あやこが控室に到着するころには、マネージャーによって集められた、sms48の面々が顔をそろえて待ち構えている。
「おまいら! 伊太利歌謡祭、抜かるんじゃないよ」
 戦中の依頼でMSIやプチロフと渡りをつけキャンギャル契約を締結し、また自らもボリウッド女優として名を挙げた、並みのアイドル達からすれば伝説的ともいえる、あやこ自身による檄。
「「紅組優勝っ」」
 sms48のメンバーから、歓喜や憧憬、気合の入り混じった嬌声が上がる。
 KVの翼を舞台に見立て、覚醒した能力者が踊る姿は、これまでも数々の慰問先に元気を与えてきた。
 そして今回、その評判が認められてきたのか……彼女たちは、伊太利歌謡祭において、赤組の応援、そして大トリという大役を任せられることとなったのだ。
 失敗は許されない。
 気の緩みは許さない。
 書類上、いくら検討を重ね問題なしと判断したものであっても、この目で確かめるまでは妥協しない。
 あやこは、メンバーひとりひとりに声をかけ終えると、先ほど演習を行っていたKVの元へ。
 人型形態を取ったKVが、片膝をついた姿勢でスナイパーライフルを構えている。
 今回の目玉となるパフォーマンス。それが、このKVにかかっている。
『いい、今回のこれには、精密な射撃が必要よ! だけどお客さんに観てもらう以上、もたつくこともNG。気を引き締めて――構えて、撃ちなさい!』
 インカム越しのあやこの叱咤に、パイロットが照準を合わせ、トリガーを引く。破裂音と共に弾頭が放たれ、正確に標的を打つ。撃つ、ではない、打つ。
 別の場所では、戦闘機形態のKV達が編隊を組んで、アクロバット飛行を披露していた。ギリギリの間隔で交差。からの、急上昇。旋回し、その度に、空に炎の軌跡を描く。
 その、描く機動が、計画と差異がないか。あやこは手元の資料と目の前の光景を交互に見比べ、ギリギリまで細かい指示を出し続ける。そこに、一切の妥協はない。
 舞台に上がる子たちのダンスも、最後の仕上げに入っている。これまでも、真面目に、文字通り血のにじむような努力をしてきた少女たち。その子たちが今、あやこの熱意に後押しされるように、鬼気迫るようなオーラで呼吸を合わせている。
 本番の時間は、刻一刻と迫っていた。

「さぁ早めの年越し蕎麦で覚醒するよっ!」
「いただきまーす!」
 現地入り前。十分に練習し体力も回復した彼女たちに、あやこが蕎麦をふるまう。食事をしながらの、これまでの努力の労いと激励。美味しい食事に笑顔を見せる少女たちが、元気良くそれに応じて、そして――本番。
『では、KVが待つ基地に中継?ぎましょう! sms48の皆さーん!』
 モニター越しに、司会者の女性の声が響いてくる。
「はい、こちらsms48です!」
 ノリノリの伴奏と共にさっそうと、あやこを中心としたメンバーが、設置されたKVの機上で跳ねる。
 編隊を組んだKVが、空を踊る。
 全力で、舞い、歌い、踊る。
 少女たちの可憐なパフォーマンス。その足元に、空に、KV。
 ……戦争に使われていた、兵器。
 一歩間違えれば掠めそうなほどの距離で、二機のKVが交差すると、感嘆と恐怖の入り混じった悲鳴が、あちこちのモニターの前で上がっていた。
「ご覧ください! 太平の眠りをさますナイトフォーゲル。真紅の炎が天空を勝利で彩ります。赤赤赤……紅組優勝〜」
 メドレーの継ぎ目。歌が途切れるイントロの間を縫って、あやこが声を張り上げる。
 火薬の炸裂する音と共に、空に赤い炎と煙が舞う。
 ……彼女たちが踊る間、放送局には、リアルタイムで感想が寄せられ続けていた。
 少女たちに声援を送るもの。KVの操縦の見事さを称えるもの。
 ……それから、戦争の道具をこうした、皆が見るお祭りに持ちこむのはどうなのだ、と言う、ネガティブな意見もあった。
 それでいい。
 それでもいいのだ。
 たとえ称賛する声だけでなくとも、自分たちの活動で何かを感じ、動かす力となるのならば。
(語り継ぐのです! 復興に埋没する戦災遺恨をデジタル化して次代へ! 何でも伝えます)
 バグアとの戦いは終わった。
 世界各地で毎日のように繰り広げられていた戦いは、ほぼ収束しつつある。
 世界からゆっくりと傷は癒えて……だけど、傷痕の痛みに眠れぬ夜を過ごすものもまだ数多くいるのだろう。
 忘れない。
 忘れさせない。
 伝える。そのために、まだ、KVと飛び続ける――。

 ゴー……――ン。
 くぐもった、重い音が大晦日の夜に響く。
 大きく揺れる除夜の鐘。カメラが引いていき、それを鳴り響かせる存在をズームアップさせる。
 ……スナイパーライフルを構えたKV。
 それが、遠距離から、鐘の中心向けて特製の弾丸を、放つ!
 sms48が用意した今夜の目玉、KV除夜の鐘である。
『さあ、残りあと僅か! あと少しで、文字通りの百発百中! そこから、全弾成功させることが出来るでしょうか! sms48、このまま最後まで行けるのか!』
 会場の盛り上がりに合わせて視界が声を張り上げる。他のメンバーは応援するように、歌声を合わせていたが、その歌も終了する。
『ここからは、鐘の音と共にカウントダウンです! 皆さん、準備はいいでしょうかーーー!』
 歌謡祭の会場で、ゲストたちが続々とステージに並び。
『10!』
 声を合わせ、年始までのカウントダウンを開始する。
『9!』
 その声にあわせ、スナイパーライフルに火がともる。
『8!』
 百発百中! のテロップが、モニターを賑わす。
『7!』
 テレビの前で、大人も子供も、笑顔で声を上げている。
『6!』
 sms48の少女たちは、声を上げながら、祈るように仲間のKVを見つめていた。
『5!』
 あと五発。でも、一発でも外せば全てが大なし。このために、何度も練習した。
『4!』
 KV内に設置したモニタカメラが、パイロットの少女の真剣な顔を大写しにする。
『3!』
 一発撃つ度に、肩で大きく呼吸する少女たちを、皆が見守っている。
『2!』
 後少し……がんばれ! そんな想いをこめて、人々の声が大きくなっていく。
『1!』
 また、着弾した鐘が大きく揺れる。これで――残り一発!

『0!』


 ゴォー……――ン……

 静まり返った会場に。世界に。
 重厚な鐘の音が響き、そして収束していく。


 静寂、そして、時計が0:00を指す。

『明けまして、おめでとうございまーーす!』

 そして再び、笑顔の喧騒が、世界を包む。

 パイロットの少女が、精根尽き果てた様子で崩れ落ちるようにKVから降り立つと、仲間たちが泣きながらそれを抱きとめて、出迎える。
 あやこがsms48の代表として挨拶を告げる中、空ではまた新たに、新年を祝う灯が舞いあがっていた。

 暗い夜の空で燃える炎はすぐに、闇へと吸い込まれるように拡散していき。
 それでもしばらく、白い残像を遺す。己の存在を、焼き付けるかのように。
 その残影も、やがては薄れ消えていくのだろう。
 それならば。人々の記憶からも消えてしまう前に、また炎をその空に刻もう。
 込められた、記録と、想いと共に。

 謹賀新年。
 彼女たちはこれからも。人々に、想いを、願いを、伝えていく――

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga0204 / 藤田あやこ / 女 / 21 / サイエンティスト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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2014年02月06日

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