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『たのしいおもちつき 〜ピコハン無双・縁編 』
点喰 縁ja7176


●餅搗き計画

 それは年の瀬も押し迫ったある日のこと。
 月居 愁也が悪戯小僧のような笑顔で持ちかけた提案に、夜来野 遥久が珍しく二つ返事で応じた。
「……て、訳で。餅つきとかどうだろ?」
「それは面白そうだな」
 こうして準備が進む一方で、他の面子が呼び集められる。

 百々 清世は電話の向こうで実にめんどくさそうだった。
『年末なんてごろごろしてるもんだろ……しゅーやんもしかして暇?』
 ごろごろしてる人間は暇じゃないのだろうか。ともかく愁也は計画について説明する。
『餅つきって何それー、餅って普通に買うもんじゃねぇの?』
 だがこの計画には清世の協力が不可欠だった。何だかんだで最後には清世も同意する。

 奥戸 通は大いに張り切った。
『もしもし! え、お餅搗き?! 行く行く!! 杵と臼ならあるから任せて!!」
 臼と杵は使わない。いや、恐らく使えない。
 愁也は断念させようとするが、テンションの上がった通は聞いていない。
『……うん、いや! 重くないって、平気! ほらこうして、今から向かうか……ら。うわぁあ!?!』
 何かが派手に転がる音。愁也は改めて念を押し、電話を切る。

 点喰 縁は部活のよしみ、遥久の連絡に相好を崩す。
「勿論お邪魔しやす。材料は任せてくだせえや」
 細々とした決めごとが、二人の間でどんどん決まって行く。
 電話を終えた後、尚も縁は自分なりに必要そうなものを書き出し、最後にヒヒイロカネから巨大なピコピコハンマーを取り出した。
「……これが要りそうな気がしやすね」

 一体何に使うというのか。
 ともあれ、こうして餅搗き作戦は決行される。


●現場確保

 予期せぬ来訪者という物は、ままあるもの。
 だがこの年末のある日の出来事を、久遠ヶ原学園大学部講師ジュリアン・白川は恐らく忘れることはないだろう。……色んな意味で。
 やかましく鳴り響くドアのチャイムに眉を顰め、テレビドアフォンの画面を覗き込む。
 画面は真っ黒だった。
「……?」
 いや、良く見ると僅かに明るい部分がある。

 <●><●>

 この幅の三分の二ぐらいがくっつかんばかりに迫っていることに気がつき、白川は軽く光纏しそうになった。
「……どちら様です?」
 なんとか応答ボタンを押して低く呟くと、愁也の声が呪いのように響く。
『……来ちゃった☆』

 この時点で白川の予想は二、乃至三名。
 おそらく愁也はマンションの部屋を知らないはずだ。ということは同行者がいる。
 数人の顔を思い浮かべながら恐る恐るドアを開く。
 だが事態は白川の予想を超えていた。

 ドアが開くや否や、ついさっき起きたばかりという不機嫌そうな顔で入って来る清世。
「おじゃましまー。お化粧してないと出たくないとかそーゆーんじゃないんだし。開けんの遅いよ、じゅりりん」
 勝手に玄関先でスリッパに履き替え、自宅のように室内へ。やっぱりお前か!
「御在宅でしたね。お邪魔します。ああこれ、お口に合えばいいのですが」
 遥久が手土産の袋からワインを半分覗かせながら微笑む。
「ああ、ご丁寧に……って、君にしては意外な行動だな?」
「申し訳ありません、近くを通りかかったものですから」
 慇懃な態度だが、大嘘だ。白川は突っ込む気力も失せる。
「いやあ、よもや白川せんせ宅を強襲たあ思いやせんでしたねぇ。お邪魔しやす」
 しれっと縁が後に続く。
 玄関先でつかえているのは通だ。
「こんにちわですよー♪」
 大柄な男子の後ろで飛びあがりながら挨拶をする。
 最後に大荷物を抱え、満面の笑みを浮かべた愁也が入ってきた。
「白川先生ー餅つきしましょー!」
「は? ……餅搗き!?」
 一瞬、言葉の意味が理解できない。
 が、リビングに並ぶ大荷物の中身は餅つき機に餅米、その他諸々。
「どうせならつきたての餅食べたいでしょ先生? アネゴの臼と杵推しは全力で止めたんだからむしろ褒めて!」
 どうやらこの連中は本気らしい。
「何を考えてるんだ、君達は……!」
 白川は片手で顔を覆ってそれだけを言うのがやっとだった。


●家主が居ぬ間に 

 とにかくこの人数では騒がしいだろうから、階下に挨拶をして来る。
 そう言って白川は慌てて出て行った。結構律儀な性格である。

 縁はわざわざ地元で仕入れた調味料を、いそいそとキッチンへ持ち込んだ。
「餅食うから、ってお誘いで、まさかこういう展開たあねえ」
 テーブルの上に材料を並べながら、食器類や調理器具をチェック。おおむね必要なものは揃っていそうだ。

 清世は部屋の隅に座っていた大きなテディベアを抱え、エアコンの温風が一番よく当たる暖かいソファに寝転がる。
「あー、しゅーやん、トイレそっちな。通、そこ仕事部屋。通がそこ入ったらじゅりりんマジギレするからやめとけ」
 勝手知ったる家の事。清世が寝転がりながらも必要なポイントを説明する。
「えー……でもキヨくんがそう言うならやめとく」
 通が少し名残惜しそうにリビングに続く部屋の入口から離れ、清世の隣にちょこんと座った。

「おー、トイレも結構綺麗にしてある!」
 あちらこちらの扉を開けたり閉めたりしながら、愁也がはしゃいだ声を上げた。
 遥久にとっては初の白川邸・お宅訪問。興味深そうにリビングを見渡す。
「ミスターらしい。きちんと片付いている様子ですね」
 お前は姑か。
 白川がいれば内心で呟いたことだろう。
 続いて遥久は通が出てきた部屋を覗き込んだ。室内は片側が全面本棚。正面のデスクには様々な資料が広げられ、パソコンが灯る。
 礼儀正しくその画面や机の上はさっと流した遥久の視線が、壁際の額でとまった。
「……成程」
 満足そうに遥久が微笑んだ所で、白川が戻ってきた。

「幸い階下は留守だな。帰省しているらしい。ところで外のあれは何なんだ?」
「臼と杵ですっ! ひどいですよねー……折角持ってきたのに玄関前で待ち伏せとか! みんなでぺったんしようと思ったのにー」
 先刻の愁也の発言の意味がようやくわかった。
 通が頬を膨らませ、賛同の意を求めて白川を見る。
「あれは外で使う物だからね。しかし良く持ってきた物だ」
「15キロ位だからぜんぜん平気ですっ!」
 撃退士恐るべし。当然ながら白川は一式の使用を却下した。


●餅との戯れ

 白川が半ば呆れ、半ば感心したようにリビングに広げられた大荷物を見て回る。
「どうするのかと思えば、餅米は浸水済みか! それだけの準備期間があったのなら、事前に連絡してくれればいいものを……」
「ところで餅つきにはやはりこれが必要ですね」
 遥久がずずいと差し出すのは、フリフリエプロン。
「いや、他にもあるから……」
 多少の後ろめたさと共に、白川が視線を外す。が、遥久は逃がさない。
「大丈夫です、私も着用しますので」
 何処まで本気なのかさっぱり判らない、あくまでも真面目な表情。
 いやきっと、本気なのだろう。いつだってそうなのだ。

 室内に餅米を蒸す香りが広がり、湿気に窓が白く曇る。
 その香りに、フリフリエプロンを身につけた遥久がほんの僅か暗い表情になった。
 実家で使うのは木臼と杵。若者は率先して餅をつけ、とひたすら餅をつかされていたのは余り楽しくない思い出だった。
 ふと見ると、同じ記憶を共有しているはずの愁也は、鼻歌交じりで納豆のパックを開けている。
「懐かしいよな〜餅つきなんて久しぶり!」
 そこで餅つき機のブザーが鳴り響いた。エプロンをつけた白川が声を上げる。
「これは丸めるのかね?」
「あ、のし餅にしやす。この面子じゃあ……」
 大惨事が予想されやす。
 流石に言葉に出すのは控えたが、縁の意を白川はしっかり受け取った。
「成程な。その方が良さそうだ」
 だが想定していたのし餅の製造方法には、両者の間で齟齬があった。
 徐にラップを敷き打ち粉を撒いた上に餅を乗せ、そのまま立方体に纏め菓子箱に押し込む白川。
「え、せんせのとこじゃ、そうやって作るんで……?」
「大部分は丸めるがね」
 圧倒的ソウジャナイ感。
「ええと、一応道具はありやすんで」
 のし餅用の枠まで持ち込んでいた縁は、それを次回以降の為に準備する。
「使い方を指導願えますか」
 遥久が興味深そうに木枠を覗き込んだ。

 何回目かの餅が搗き上がり、初めの頃ののし餅が少し硬くなった頃。
「百々殿、お手伝いをお願いしていいですか」
「えー……まあいいけど」
 遥久に呼ばれ、渋々清世が近寄る。
「この線に沿って切り分けるそうです」
「えー、おにーさん、スプーンより重いものは……うそうそ。切ればいいのね」
 無言の圧力に流石の清世も屈した。

 切り分けた餅はキッチンで縁が順に磯辺焼きに仕上げて行く。途中、海苔の端をチョンと猫足にして遊んでみたり。
 居間の隅におかれた小さなテーブルの脇で納豆を混ぜつつ、キッチンを眺め愁也が声を漏らした。
「さすがよすがん、手際いいよなあ〜!」
「ありがとごぜえやす。……アネゴ、火ぃの周りは立ち入り禁止で」
「えっ……?」
 紅一点と張り切って腕まくりで縁の背後にいたのは通。
 だがその声音に慌てて手をひっこめた。
 やたらいい笑顔で、縁はいつの間にかジャイアントピコハンを構えている。ちなみにしっかり消毒済みだ。
 アストラルヴァンガードにインフィルトレイターがこれだけいれば、多少手荒な事をしても大丈夫だろうという恐ろしい想定である。
「縁くん! 何故止める!!」
 当然の抗議ではあるが、縁の眼はマジだった。
「立入り禁止で、おねげえしやす」
 どれだけ信用がないのか、通。

 しょんぼり座り込む通の肩を、清世がとんとんとつついた。
「通、通、俺きなこが食べたいなー」
 黄粉の袋を渡され、通はがぜん張り切る。
「これくらいなら私でもできる! おいしいきなこ餅作るね!!」
 鼻息荒く立ちあがり、通はハサミと砂糖を探して彷徨う。
「おー、黄粉餅もいいよね! アネゴ、こっち空いてるよ」
 愁也が招きする。まだ納豆を混ぜているのだ。
「ありがとうっ」
 ボウルにどばーっと黄粉を開けて笑顔を見せる通。その顔が不意に歪む。
「美味しいよね……きな……こぉ……ぉ……お……くしゃん!!」
 黄粉は美味しいが、鼻に来る。自明の理だ。
「うわっ、アネゴ大丈夫? ……ふぁ……ぁ……へくしょん!!」
 舞い上がった黄粉が次の惨事を呼ぶ。
 黄色い霧の中、涙目の二人は傍らに立つ人影に思わず身を縮めた。
「……邪魔をしているのか手伝っているのか、どっちだ愁也?」
「え、いや、俺は……今回は無実……かなって……」
「大体お前は……」
 遥久の前に並んで正座し、黄粉を被りながら説教を受ける愁也と通。
「……俺のせいじゃないし」
 清世はテディベアと共に、そっとソファの陰に隠れた。


●餅についてのあれこれ

 焦げた醤油の匂いが鼻をくすぐる。
 だが説教の後、愁也と通は吹き飛んだ黄粉の掃除だ。これが済むまでは餅もお預け。
「遥久ぁ〜これで綺麗になっただろ? ほらほら!」
「……ミスター、これで宜しいですか?」
 意見を求められ、白川は苦笑い。
「大体で構わないよ」
「そうはいきません。ご納得いただくまで徹底的に綺麗にさせますので」
「……君の判断に任せる」
 その後、遥久の厳しくチェックを受け、ようやく愁也と通は解放された。

「お待たせしやした。ささ、さめねえうちに」
 縁が次々とテーブルに餅を運んで来る。
 全員席について頂きます。
「私の家では磯辺焼きは余り食べなかったね」
 そう言って、白川が海苔を巻いた餅をしげしげと眺めた。
「先生はどんなお餅が好きですかー?」
 今度はくしゃみをしないように。通は慎重に安倍川餅との距離を測る。
「自分では焼き餅に醤油だけかけるのが一番好きなのだが」
 何故か一瞬暗い顔。
「私の出身地はからみ餅とか良く食べましたねー!」
「からみ餅ってなん……?」
 清世が安倍川餅を手に尋ねた。
「搗きたてのお餅に大根おろしにお醤油かけて食べるんですよー! あっさりしてていくらでも食べられちゃう」
「ふーん? でもきなこもうまいよ。はい通、あーん」
「え、えと、……あーん」
 もくもくもく。今日のきなこ餅、とっても美味しいです。
 白川は二人の食べさせあいっこを、笑いを堪える様な顔で眺めていた。
「……なに。じゅりりんもあーんして欲しいの?」
 清世が箸を止めて首を傾げる。
「いやいや、心から遠慮しておこう」
 彼女といるときの顔が新鮮だったから。それを口に出すのは流石に野暮というものだ。

「せんせー、白川せんせー! これ食べませんか、美味しいですよ!」
 愁也が丹精込めて混ぜ上げた納豆をかけた餅である。
 が、白川は顔をそむけ、視線を彷徨わせる。
「いや、遠慮しておこう」
「ほんとにすっごく旨いっすよ! ほら、一口どうぞっ」
 白川は尚も勧められ、ついに白状した。
「……申し訳ない。基本的に好き嫌いはないのだが、納豆だけは無理でね」
「えー? こんなに旨いくて栄養があるのに〜」
 もぐもぐ頬張りつつ、愁也が人生の損失だという表情をした。
「将来食糧危機が訪れて、納豆以外の栄養摂取方法が無くなった場合は真剣に検討しよう。その場で命を絶つかどうかを」
 そこまでか。そこまで納豆が嫌いか。
 愁也は納豆の名誉の為に誤解を解こうとしたが、そこで突き刺さるような遥久の視線に気付く。
(い い 加 減 に し ろ)
 部屋の気温が下がるような笑顔。
 結局、愁也は大急ぎで残りの納豆餅を口に運んだ。

「餅もでやすが、雑煮も色々あるようで」
 縁が追加の磯辺焼きを運んで来る。
「うちは醤油のすまし、ですねぇ。鶏肉とか小松菜いれて、ゆずの皮、飾りでいれたり。なんつっても鰹出汁が決め手なんが特徴ですかねぇ……」
 何かを思いついたように首を傾げる。
「俺は普通のー」
 清世は少し考え込んだ。
「つか雑煮とか、めったに食べた記憶なかったわ」
 ところが普通の基準が色々違うのが雑煮の面白いところだ。
 愁也が餅を飲みこみ、元気に挙手。
「北海道は醤油ベースで具沢山! 今年は帰省しないから、家政婦さんに作ってもらう予定ー!」
「家政婦さん……! なんてリッチな……」
 衝撃の余り、通は安倍川餅を思わず飲み込む。でも今のポイントはそこじゃないな。
「雑煮か……この話題になると必ずネタ枠になってしまうのだが」
 白川がちょっと困ったような笑いを浮かべた。
「うちは父方が讃岐の出身でね。白味噌仕立ての餡子餅だったんだ」
「ええっ!!」
「餡子餅といってもまぶすんじゃなく、皮の厚い大福のような感じだけどね」
 テレビのびっくりニュースなんかでは偶に話題になるが、本当に食べてる家があったのだ。
「まあそんな訳で、万事甘味が強かったんだよ。私も少しなら美味しく食べられるが、最後は普通の餅が欲しくなるね」
「へえー、色々あるんですねえ。持ち寄って食べ比べしたいぐらいですね」
 愁也が物凄く何かを訴える目で白川を見た。
「食べ比べですか、それは実に楽しそうですね」
 輝く笑顔で遥久も白川を見る。
「え……?」
 白川の笑顔が強張った。
 

●物思うひととき

 愁也の話に耳を傾け、ふと縁も表情を曇らせた。
 年末年始には多くの家庭で家族が集い、顔を合わせる。
 縁も今年は実家に帰らねばならない。

 離れて暮らす家族と顔を合わせるのは本来楽しいことであるはずだ。
 だが今年は気が重い。
 縁はいっそうそれを強く感じているだろう、姉の事を思う。

 家というのは入れ物を指すだけではない。
 先祖から綿々と連なる、一族の結束の象徴でもあるのだ。
 家を継ぐという事は、単にその家を住処とするだけでは済まない。
 そこに住んだ先祖の思い、一族の拠り所を自分が守っていかねばならないのだ。

(皆が逃げちまっちゃ、困るのは確かなんですがねえ……)
 誰かがそれを担わねばならない。それは判っている。
 判っているからこそ、その重圧を思い、縁はただ黙って磯辺焼きの猫足を齧る。
(まあ、なるようにしかならねえや)
 帰って顔を合わせるなら、自分の思う所をぶつける機会でもある。
 縁は軽く頭を振って、余計な考えを振り払った。


●良いお年を

 一通り餅を平らげ、土産のワインと上質のチーズ、その他簡単なあてをつまみにのんびり語りあい。
 やがてさり気なく時計を確認し、遥久が皆を促す。
「さて、そろそろいい時間ですね」
 それを合図に、一斉に片付け開始。
「適当で構わないよ。どうせ大晦日には大掃除なんだから」
 白川はそう言って笑うが、遥久の監視は厳しい。
「愁也、納豆のパックをそのままゴミ箱に捨てるんじゃない」
「へーい」
「あ、アネゴ、皿洗いはこっちでやっときやすんで」
 穏やかに、だが断固として縁は通の手出しを拒んだ。
「じゃあ拭いていきますねっ! ふきんはどこかな〜?」
「それもやっときやすんで」
 徹底的に信用されていない。
 白川は二人の間に、これまでに何があったのだろうかと思う。
「奥戸君、じゃあこっちで残った餅を分けて貰っていいかな」
「あ、はーい!」
 良い返事で通はリビングに戻っていく。
 その後、切り分けたのし餅を前に、公平に分けようと顔を真っ赤にして悩む通を、面白そうに清世が眺めていた。

 ぞろぞろと大きな荷物をかかえ、廊下を行進する一同。
「忘れ物はないかね? まあ、携帯だとか財布以外は別に」
 いつでも取りに来ればいいが。
 何故かその言葉が白川にはとても不吉なものに思え、喉元に押し返す。
「片付けはちゃんとできてやす。ご安心ください」
 縁が自身を持って胸を張る。
 来た時よりも美しく。事実、キッチンはもう大掃除の必要はなさそうなぐらいに、綺麗になっていた。
「では、お邪魔いたしやした。良いお年を」
「良いお年を。また来年」
 丁寧に挨拶を交わす縁と白川。
「んじゃねーじゅりりん、またー」
 直ぐ横を駆け抜けた清世がドアの向こうで手をひらひらさせていた。
「今日はお邪魔しましたー! とっても楽しかったですっ」
 玄関先で行儀よく頭を下げた通が、パッと顔を上げた。
「……次こそ杵と臼でお餅搗きましょうね!」
「その時はどこか会場を借りるとしよう」
 白川が改めて却下。
「絶対ですよー!」
 通は外廊下に置いてあった臼を軽々と背負い、杵を振って見せた。
 一体何処からあの恰好で来たのだろう。白川は手を振り返しながら、深く追求するのはやめようと思う。
「お邪魔しましたー!」
「良いお年をお迎えください」
 最後に愁也と遥久が並んでお時儀。
「こちらこそ今日は楽しかったよ。良かったらまた来ると良い。良いお年を」
 安心しきったところで、ポロリと出た言葉。
 愁也が満面の笑みで顔を上げた。
「はい! 今度はお年玉もらいに来ますねー! あ、それから雑煮の食べ比べ!」
「え?」
 遥久がやはり笑顔を向ける。
「家ばかりも失礼ですから。今度は初詣でも御一緒に」
「え?」
 笑顔の中にどこか油断ならないものを感じたのは気のせいか。
「では、良いお年をお迎えください」
 改めて丁寧に頭を下げ、遥久と愁也も出て行った。

 見送った白川は、ついさっきまで賑やかな声に溢れていたリビングに戻る。
 元の静けさを取り戻しただけの部屋は、妙に空虚で。暫くして白川は、その感覚がもう随分と昔になくした物だったと気づく。
「……来年も退屈する暇はなさそうだな」


 来年もどうぞ、彼らにとって楽しい一年となりますように。
 祈るように、余韻を懐かしむように。ソファにもたれ、目を閉じた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 / きなこすきー】
【ja6837 / 月居 愁也 / 男 / 23 / 納豆すきー】
【ja6843 / 夜来野 遥久 / 男 / 27 / たぶん隊長】
【ja7176 / 点喰 縁 / 男 / 18 / 磯辺焼き命】
【jb3571 / 奥戸 通 / 女 / 21 / 臼はともだち】

同行NPC
【jz0089 / ジュリアン・白川 / 男 / 28 / 特技は墓穴掘り】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お待たせいたしました。餅つきの想い出をお届けいたします。
この度はNPCもお呼びいただき、誠に有難うございます。
今回は台所指揮担当兼少数派の突っ込み役で、大変お疲れ様でした。各方面準備万端、抜かりなしですね。
尚『物思うひととき』の部分が個別になっております。同時にご依頼いただいた方の分も合わせてお楽しみいただけましたら幸いです。
ご依頼どうも有難うございました!
改めまして、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
winF☆思い出と共にノベル -
樹シロカ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年02月10日

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