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『シュガーレイズド・ハニーデイズ 』
リコリス・ベイヤール(gc7049)


 冷たい外気に、つなぐ手のぬくもりが幸せな季節。
 部屋が暖まるまでの間を、互いにあたためあう幸せな季節。

 
 ふかふかソファへ腰を下ろしたルナフィリア・天剣の、その隣へリコリス・ベイヤールが勢いよく飛び込む。
「へへへ〜! ん〜、ルナちゃ〜ん★」
 幸せいっぱいの表情で、恋人のルナフィリアへ頬を寄せる。
 さらりとしていて柔らかく、……少しだけ温度が高いのはふたりきりだから?
 膝下までの真っ直ぐな銀髪が、時折リコリスの頬に触れた。
 柔らかな彼女の髪質と違い、ひんやりと固くて、気持ちいい。
「こういうのは、おうちが一番だねっ、ルナちゃん!」

 たっぷりデートをしてきた帰りだけど、外には外、おうちにはおうちの、『ふたりきりの時間』がある。

「こうするのも久々だな……」
「足りなくなったルナちゃん分を補充〜♪」
 ここしばらく、ちょっと仕事を頑張りすぎていたかもしれない。
 休みはしっかりとるタイプと自負するルナフィリアだが、リコ成分が切れ切れだったことをこうして触れると痛感した。
「……存分に堪能しとこ」
 むぎゅっと抱き付くリコリスの、やわらかな体を受け止めながら、その背へと腕を回す。
 甘い甘い香りが、ルナフィリアの鼻先をくすぐった。




「ねぇねぇルナちゃん♪ わたしの事、好き〜?」
 そっと体を離し、リコリスは試すかのように下から可愛い恋人の顔を覗き込む。
 その眼差しの、凶悪さといったら。
 ルナフィリアが、少しだけ動揺を見せる。
「なっ、急に…… ……。リコ……、大好きだよ」
「〜〜あぁもうっ! ルナちゃんは可愛いなぁ!!」
 ちょっとだけ、恥じらってからの素直な言葉。
 リコリスのハートがキュンキュンと鳴った。
 たまらず、がばっと抱きつき肩口へ頬を寄せる。
 鎖骨から胸元への、滑らかな肌。とくとく、心臓の音が聞こえる。
「こうしてると、なんだか安心するね」
 リコリスは絡めた指に力を込めながら、白い首筋へキスの雨を降らせた。
「ふ、ふふ……くすぐったい……。んー、リコも可愛いよー」
 ルナフィリアは、子犬のように自身の肌を食むリコリスへくすくす笑う。
 あたたかくて、やわらかくて、きもちいい。
 わざと音を立てるキスが、くすぐったい。


 今日は久しぶりの、デートだった。
 食事に、ショッピングに、それから……
 その間中も、リコリスはずっとハイテンションだったけれど。
 こうして、完全にふたりっきりの場所、時間になって、今までがまんしてきた分が溢れだしている様子が温度という形でルナフィリアにも伝わる。
 ――寂しかったのは、自分だって一緒だったのだから。


 ルナフィリアの片膝へ乗る形で、胸元へのキスに夢中になるリコリス。
 こちらからは、彼女のポニーテールと、クリームイエローのワンピースしか見えない。
「んん、……」
 こっちを見てくれないことがなんだか寂しくなって、ルナフィリアはわざと身を捩った。
 そうして細い指先で、少女の無防備な背筋をなぞってやる。
「ひゃう!?」
 下から上へ、ちょっとした悪ふざけ。
「……ふふ。可愛い、リコ」
「ルナちゃぁ〜〜ん!!」
 ゾクゾクっとした感触に仰け反り抗議の声を上げるリコリスを、イタズラ成功とルナフィリアは笑顔で見下ろす。
「こっちも」
 ちょん、と唇を指して、ルナフィリアは片目を閉じた。
 その仕草に、リコリスは小さく震える。
「ルナちゃんたら」
 かわいい。

(かわいい、かわいい、かわいい。たべちゃいたい)

 リコリスとは対照的に、普段は感情表現が控えめなルナフィリア。
 自分にだけ見せてくれる『特別な表情』は、とてもとても、甘い。
(お砂糖まぶして、はちみつかけて、とろっとろにしちゃいたい)
「ルナちゃ〜ん♪」
 想像してみる。
 それはきっと、とっても甘くて、とっても可愛くて、とっても美味しい。
 自分だけの恋人。
「んふふ〜、呼んでみただけ〜♪ えへへ」
「リコ」
 幸せそうに微笑むリコリスの柔らかな唇を、ルナフィリアがそっと奪う。
「……甘い」

 リップクリーム?
 それとも昼間のケーキの味?

 理知的な赤い瞳で、そんなことを考える。
 考えるまでもないのに。
 だって甘い理由は、それがリコリスの唇なんだから。




 キシ、……キシ、……
 あたたまり始めた部屋の中、ソファの軋む音が響く。
 抱きしめあって、じゃれあって、繋いだ手を離さないで。
 此処にいるよ、お互いに確かめる。
 それは、とても優しい響き。

「ルナちゃん、これからもずっと一緒だよ〜♪」
「ん、……ずーっと」
 子供っぽい言い回しのリコリスの感情に裏表なんてなくって、いつだってまっすぐに好意はルナフィリアへと向けられる。
 ふわりとした微笑みも。
 甘い言葉も。
 やわらかい体も。
 全部で、気持ちを表現してくれる。
(ずっと、こんな甘い生活が…… リコと、一緒に)
 願う日が来るなんて、例えば10年前のルナフィリアに想像できただろうか。
 穏やかで、優しい気持ちに包まれて、少女は愛しい少女の髪に触れる。頬に触れる。
 触れて、触れられて、通い合う感情。その、幸せなこと。
 寒い季節の、暖かさ。
「大好きだよ、リコ……」
 もう一度、言葉にして、確かめるようにギュッとした。


 ふたりっきりの、ふたりだけの、秘密な『日常』。
 お砂糖まぶして、はちみつかけて、とろっとろに甘い、とっておきの充電タイム。
 おやすみなさいには、まだ早い。


 暖かな季節のお楽しみは、まだまだこれから。




【シュガーレイズド・ハニーデイズ 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga8313/ ルナフィリア・天剣 】
【gc7049/ リコリス・ベイヤール 】
▼Scene▼
http://t-on.jp/omc_gallery/gallery.cgi?id=233886

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました。
可愛らしいピンナップへの挿絵ということで、楽しく書かせていただきました。
柔らかそうな、お二人の肌の感触がとても印象的でした。
糖度増し増しでお届けいたします。
楽しんでいただけましたら幸いです。
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2014年02月25日

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