▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『弐と弐をかけて、その先は? 』
拍手 阿義流(eb1795)&所所楽 苺(eb1655)&拍手 阿邪流(eb1798)&所所楽 柚(eb2886)

「阿邪流、朝だよー?」
 所所楽苺(eb1665)の朝はいつだって早い。それが拍手阿邪流(eb1798)と共に請けた依頼の都合で旅籠に泊まったその翌朝であり、自分で食事の支度をしなくていいとわかっていてもだ。何があろうと毎日ほぼ同じ時間に意識がはっきりする癖がついているので、自分でも寝起きはいい方だと思う。
「あん? まだ時間もあるし、昨日も夜は頑張ったんだから、もう少し寝かせろよ」
 隣で寝ていた阿邪流はうすく目をあけただけで答える。『夜に』のところを強調したのは性分だ。今は昔ほどではないけれど、好みの女性を見ればすぐに口説こうとする好色はばからないのが阿邪流という男だ。今更治ると思わないし、ずっとこのままでも苺は気にしない。なんだかんだ言いつつも返事をくれるところとか、昔から変わっていないし優しくて大好きなのだから。そう思ったら今の状況が嬉しくなって、阿邪流の腕に自分の腕を絡めた。
「それじゃ、阿邪流が起きるまではこうしてても構わないよねー、どうせ寝てるんだし」
 おいらも少し寝ちゃおうかなと冗談めかしたところで、阿邪流が急に体勢を変えた。苺を見下ろせる位置だ。
「寝起きにそれは狙ってやってんのか?」
「嬉しかったからついねー。あっでも、時間があるならそれもいいかなとは思ったけどね」
 好きな方でいいよと言えば、それじゃ遠慮なくなんて返ってくるのも既に互いに見知った間合いだ。
「昔はサラシ付けるなって言っても聞かなかったお前がなぁ」
 仕事で動き回る時は、今でもサラシがないと落ち着かないので手放さないけれど。
「それは言わない約束っ、そもそも阿邪流に言われたくないっ」
 見た目武芸者なのに陰陽師ってもう詐欺だよと言いながら、髷を結う分だけ残して短くなった阿邪流の髪に触れる苺。それを見下ろす阿邪流からしてみれば今の苺だって、体型やらこうして見せる仕草やら急に色気を身に付けた点で十分に詐欺と言えるのだが。
「もう黙っとけ」
 そんなことを言っても喜ばせるだけだと知っているから、強引に口付けることにした。

「朝っ! な! の! だーっ!」
 どーーーーーんっ!
 夜這いならぬ早朝襲撃、しかも高頻度で馬乗りだけど色気なし。当時の苺はそうやって俺を起こしに来ることが多かった。大抵差し入れと言う名の朝飯が一緒に届けられるので、強く邪険に扱ったことはないはずだ。家事が得意な苺の料理にハズレはないという理由もあったと思うが、そう言うと兄貴の奴が『素直じゃないですね』とか言ってくるので理由についてはそのうち考えるのをやめた。とにかく飯は美味いに限る。
 じーっと見られるのも慣れていった。強いて言うなら俺は下になるのは好きじゃねえんだけど、苺にそれを言っても仕方ないんで黙ってた。
「こういうのは夜に来いっていつも言ってんだろうが。それかせめてサラシ付けてくんな」
「夜はおいら寝てるもん。サラシも、無いと走る時胸痛くなるから必要なのだっ」
「なんで走るんだよ」
「早く阿邪流に会いたいしー」
「むしろ巻く時間の方が勿体ねえんじゃねぇの?」
「勿体ないって思ってくれるのだ? 嬉しいのだー♪」
 話が通じないもんだから、結構怒鳴ってた気がする。しかも何言っても大抵喜ぶし、かと思えば急に本題に入ることもあるもんだから、それちも考えものだった。
「ねーちゃんに相談されたんだけど、おいらじゃよくわからなくてー。阿邪流に聞こうと思ったのだ」
「何をだよ、兄貴の趣味は見てのとおりだろうが。更に変なもんに目覚めでもしたならともかく」
 苺が姉のことで俺に相談するなら兄貴のことしかない。その頃既に俺の兄貴と苺の姉は恋仲だった。
「んー? なんか、手を出してくれないって言ってたようなー」
 マジか? って思ったね。二人で温泉付きの旅籠に泊まったこともある兄貴がそんなに甲斐性なしなのかってな。でも相手が苺の姉だから結局信じちまった。だって奥手に服着せたような感じの女だったからな。
「苺、直接聞きにいっちまおうぜ」
 兄貴をからかういいネタだし、ついでに逢引の邪魔して驚かせちまえば聞きやすいんじゃねえかって思った。でもまさか、そんなところまで読まれてるとは思わなかったぜ。

 拍手阿義流(eb1795)が、婚約者の所所楽柚(eb2886)をただ見た目通りの女性ではないのだと認識したのは、柚が弟妹の恋愛事情に一石を投じた時のことだった。
「‥‥阿義流さん、お花見に行きませんか?」
 いつもは俺の方から出かける約束を取り付けていましたが、柚さんの方から初めて誘って頂けた日でしたので、舞い上がっていたのですよね。だから当日のお弁当がいつもの倍だということも、弟と柚さんの妹が自分達を尾行――柚が見込んだ通りに――していることにも、彼らが昼時に現れるまで気付かずにいたわけです。
「兄貴が柚に手を出してないっての、マジなのか?」
 そんなことを阿邪流が言い出すものですから、最初は何かと思いましたね。
「なっ! ななな何を言い出すんですかお前はっ! こっちに来なさい!」
「いでっ、何すんだ兄貴!?」
 真っ赤になる柚さんに、興味深々の顔で見てくる苺さん、目を光らせて笑う阿邪流‥‥咄嗟に阿邪流の耳を引っ張り離れましたが。柚さんにてれぱしーの術で事情を話していただくまで、恥ずかしながらどうすればいいかわかりませんでした。
(「‥‥お願いがあるのです、阿義流さん」)
(「こ、これはその、どういう‥‥っ」)
 簡単にいえば、恋の橋渡し役ということでした。
(「‥‥わたくしからは、妹と関係をもってほしいなんてお願い、言えませんし‥‥阿邪流さんも、ご自分から出したことで、阿義流さんとの話の上でなら、聞いて下さるのではないかと‥‥だから苺に少し、嘘を」)
(「なるほど、二人が来るように仕向けたのですね」)
(「すみません、勝手な真似なのは重々、わかっているのですが」)
(「いえ、そういうお話でしたら任されましょう」)
 恥ずかしい思いをしてでも、妹の恋路を助けたいと思っている柚さんの真剣さは十分に伝わりましたし、何より愛する女性からの切実なお願いに答えないとあっては男がすたりますからね。
「ここまで来たんだから教えろよ、実際どうなんだ」
「出していますよ。温泉の時、一度だけですが」
「なんだデマかよ‥‥って、デマ? それマジか?」
 阿邪流は柚さんの嘘、つまり苺さんから聞いた話を信じていたようですが、俺だってそこまで甲斐性なしではありません。それはともかく。
「お前相手に嘘をついても、俺に得はありませんよ」
「じゃあ」
「それよりお前はどうなんですか、どう見ても苺さんとそんな関係に見えませんが」
「関係ねえだろ」
「ありますよ、弟と義妹のことなのですから。いつまでも逃げていないで、きちんとしなさい」
「義妹?‥‥なるほどな、理由がわかったぜ」
 これが柚さんの意向だということは、阿邪流にもわかったようでした。
「ならば余計に逃げないことです。お前がそんななのに一途でいてくれる義妹に、俺は頭が上がりません」
「わかっちゃあいるんだぜ。でもあいつ結構」
「阿邪流。‥‥俺はこの話、二度はしませんよ」
 これ以上は口をはさめないという意味もありますが。
「‥‥兄貴を転がすのが上手い姉貴の策に免じてもいい」
 少し時間をくれと言っていましたが、あれはただ素直に頷けない阿邪流なりのぽーずだったのでしょう。

(あの花見の後、柚さんのお宅に招待していただいて‥‥求婚したのでしたね)
 巻物を写す手を止め物思いにふけっていた阿義流だが、これではいけないと写しを再開する。当時は陰陽師としての勉学を修めきれていないと感じていたし、拍手家長子の嫁として柚を迎え入れるには準備が必要だったのだ。そのためまずは互いに陰陽寮の陰陽師として修行を重ねることになり、並行して阿義流は家での根回しを行う日々を過ごしていた。また求婚を機に二人の関係にも変化が訪れており、週に一度は柚の家で二人きりの時間を過ごすようになっていた。
 そしてついに、拍手の家からそろそろ嫁をとり後継ぎを成せと言われる頃合いとなり、柚の紹介もできる運びとなった。阿義流の目指す幸せは手を伸ばせば届くほどのところまで近づき、阿義流がつい物思いにふけるのも仕方のないことだった。
「‥‥阿義流さん、今大丈夫ですか?」
「柚さん! もうそんな時間でしたか」
 阿義流に嬉しそうな笑みを向けられれば、風呂敷包みを持った柚がその隣に膝を寄せる。包みを広げればそれは二人分の弁当だ。
「集中されていたようなので、お邪魔かと思いましたが‥‥昼間はこの時間しか、一緒に居られませんし‥‥」
 自分の言葉に頬を染める柚は今もまだ阿義流の趣味――炉、つまりちいさくて可愛いものが好き――そのままに年を重ねている。とはいえ傍目にはわからないが、少女の頃に比べて女性の柔らかさを相応に増していることは今では阿義流もよく知っている。対する阿義流も目立ったものはないが、青年から大人の男へと変わリ落ち着いた面が強く見えるようになっていた。
「今日の煮物は、阿邪流さんがお好きな味付けだと聞きましたので、きっと阿義流さんもお好きだと‥‥」
 苺ほどに上手にはできませんがどうぞと差し出すお弁当は、柚が苺を師として習っている料理修行の賜物である。阿義流が根回しのために奔走していて会えない間、柚は花嫁修業を自主的に行っているのだ。拍手の家に入ればそうした家事は別の人間がするのだろうとは思うものの、嗜みとしても教養としても学んでおくべきと考えたのが理由の半分。残りの半分は、阿義流にこうして差し入れを持ってくることで、共に過ごす時間を増やすためだ。
「それは楽しみですね。では、いただきます」
「はい‥‥ではわたくしも、いただきます」
 確かに好きな味だと感想をもらえて微笑んだ柚に、そういえばと阿義流が話しかける。ただ手料理を食べるだけでも楽しいが、せっかくならば柚の声も聞いていたい。
「また、花見の季節が来ますね」
 誰の衣が持ち込んだのか、早咲きの桜の花びらが一枚、庭の池に浮かぶ様子が視界に映り込む。先ほどまで花見の事を思い出していたせいか、気がひかれた。
「今年は、四人ではなく‥‥二人だけで夜桜もいいかなと、思うのですけれど」
 阿義流の言い回しに感じ取るものがあったのか、柚も同じことを思い出しているようだった。二人だけです、ともう一度小さく囁いてから、お酒も少し用意しておきますねと続き。それが意味する小さな決まりごとに互いに頬を染めた。

 ごっはんー、ごっはっんー♪ 美味しく炊っけろー♪
 へんてこな調子で歌いながら食事の支度をする苺を眺め、阿邪流はどうしたもんかと迷っていた。堅苦しい家に帰って小言――昔よりも少なくなったが――を言われるのも面倒だし、飯も出すから泊まっていけばいいと言われれば断る理由もない。苺は完全に阿邪流の好みの味付けを把握しているし、夜だって‥‥とにかく居心地が良すぎる事が当たり前になっている、この状況に迷っているのだった。
「苺、お前さぁ」
「なーにー? すぐできるーからもーちょっとー♪」
 まだ支度は終わらないようで、歌のついでのような返事。人の気も知らないでとは思うが感づかれるのも癪だ、気まぐれを装って一言だけにしておいた。
「昔っから変わらねえよなあ」
 気持ちばっかり強気に押しつけて来る癖に、ずっと受け身のところは特に。昔から人目を気にせず近づいて来るし抱きついてくるし好きとか堂々と言ってくるし、差し入れやらも気づくと完全に俺の味覚に合わせるくらい積極的にあぷろーちして来るのだが、肝心の口付けやら夜のナニやらは全て受け身だ。
 はじめて旅籠に泊まった時だって隣の布団で先に寝ようとしていたくらいで、阿邪流がすぐ横まで迫った時は本気で驚いていた。抵抗されるとは露ほどにも思っていなかったが、思いがけない驚き方で阿邪流の方が不思議に思い、今でも思い出すくらいだ。はじめの口付けの後、嬉しいと呟かれた事も妙に鮮明に記憶に残ってはいるのだが。
「どんだけ俺が好きなんだか」
「ずーっと言ってるのに、まだ足りないの?」
 いつだって、ちゃんとたくさん込めて言ってるんだけどなーと声がする。支度が終わったことにも気付かず考えているうちに、声に出てしまっていたようだ。
「ばっか。そうじゃねえよ」
 少しだけ熱くなった気がする顔を見られたくなくて、苺の頭をぐしゃぐしゃとかきまわしておいた。
 阿邪流にとって女というものはすぐ責任をとれだのと迫ってくる認識で、苺もそうだと思い込んでいた時期がある。だが実際は違っていた。苺は勢いの強さばかりが目立っているが、強引なたいぷではない。阿邪流に言葉や態度を強要したことは――勢いに負けて、好きだと答えた時を除けば――ないのだ。
(これも尽くすイイ女って言う奴なのか?)
 だとするならば、次も自分から動かねばならないのだろう。

 夜の闇にぼんやりと浮かび上がる桜の花が、月明かりに照らされ二人の周囲を彩っている。
「‥‥雨が振らないでくれて、よかったです」
 たしなむ程度の酒と甘味を少し乗せた膳を持ってきた柚が隣に座るや否や、阿義流は柚を抱き寄せた。
「綺麗です。‥‥柚さんも」
 普段から堂々と触れることは難しい立場上、こうして二人きりになると抑えが利かなくなってしまう。柚もそれをわかっているから、素直に身を任せるように力を抜いた。そのまま瞼や頬に幾度も短く口付けられて、時折くすぐったそうに身を震わせる。
「貴女と暮らせるのが待ち遠しいです。もうすぐだと思えばこそ、焦ってしまう」
 言葉通り急くような口付けに息を乱された柚は、ほんの少し阿義流の胸を押す。その際持参していた巻物が阿義流の目に触れた。柚の意図したとおりに阿義流の興味を引いたそれは、ふぉーのりっぢの術をしたためた魔法の品である。
「仕事でもないのに、どうしてまた?」
「景気づけに‥‥と思いましたので」
 誰かの辿り着く未来はいくつかある可能性のうちのひとつであることを前提とした上で、鍵となる言葉を足がかりとし、そのいくつもの未来の中でも努力を怠った場合の結末を垣間見ることができる術。見える場所も時期も指定はできないのだが、冒険者としての活動を主にしていた時期にはお互い重宝していた術でもあった。
「占いのようなものだと考えれば‥‥」
 使い方次第だと思っているのです。怪訝な顔の阿義流の目の前で巻物を広げ、柚は二つの鍵を大事そうに言の葉に乗せた。
「‥‥あ」
 柚の口から洩れる小さな吐息に、何か悪いものでも視えたのかと思う阿義流だったが、柚がくすくすと笑いだすのに気付き首を傾げる。
「努力をせずとも、四人‥‥みたいですよ?」
 鍵は『拍手の家』と『こども』だ。
「少し、体調に思うところがありましたので、もしかして、と‥‥明日は苺と一緒に、お医者様に診ていただこうと思います」
 既に宿った命が在るならば、決まった未来として視える可能性があるかもしれないと考えていたのです。驚かせてしまって申し訳ありませんと種を明かす柚。ですが拍手の家には先日招かれたばかり、挨拶をしたばかりですから‥‥阿義流さんとのお話に不都合がなければいいのですが。
「祝言の準備も始めます、すぐにだってできるように。だから、安心して待っていてください」
 阿義流は改めて腕の中に柚を招き、ありがとうございます、と優しく抱きしめた。

「仕事は、しばらく別の人と組んでくれるー?」
 こんびの解消を言いだしたのは苺のはずなのだが、阿邪流がわかったと頷けばその瞳を陰らせた。だったら素直に理由を言えばいいと思うのだが、言わないつもりでいることも知っている。決めたことは真っ直ぐに突き進むのが苺という女だ。だったらこちらが変わるしか手はないじゃないか。
(目は正直な癖に。この俺に気を使わせるとはいい度胸だ)
「ったく。お前はいい加減嫁に来たいって言え。‥‥いや、もう言わなくていいからさっさと来い」
「あれっ? だって別の人と組むって」
 他の女の人と組むんじゃないの、と今までの所業を責められている気になるが、実際の苺は本当に不思議そうにしているだけで。
「確かに仕事は別の奴と組む。だが男だ。自分の子身篭った女を放って遊ぶほど人でなしじゃねえぞ」
「っ!‥‥なんで知ってるのーっ」
「兄貴達に聞いた。知らなくて恥かいたの俺だぞ、責任取れよ?」
 俺は俺で勝手に結婚するからと言いに家に戻ったところで言われたのだ、子供ができれば阿邪流でも落ち着く気になるんですねと。思い出して苦い顔をすれば、苺はまだ不安げだ。他にもいるうちのひとりだと思ってたから、だから言わないでおいたのにとその目が物語っている。
「おいらは阿邪流が好きだから、育てるけど、えっと」
「あのなあ! 子供ができるくらい通う女ってのは、都合のいい女でもその他大勢でもないだろうが!」
 こいつ本気で言ってんのか、いや本気だからこうなったのか。
「お前は俺の女だろうが。言わなくても分かれ、ばーか」
「どーせばかだもんー‥‥」
 そう言いながらも嬉しくなるのは、阿邪流の声音がけなすようなものではないからだ。好きだと言われるより、こうして優しい声になる方がいいなとか、そっか阿邪流はちゃんと想ってくれてるんだとか苺もわかった気がする。
 ぎゅっと抱きついてくる苺の頭を、阿邪流がくしゃりと撫でる。この俺が、子供がいると知らないままでも嫁にすると決めた女なんだから。
「だから、俺が面倒見てやるよ」

「俺は勝手にやるって言ったはずだぜ?」
 手酌で酒を飲みつつ、ふてくされた顔で阿邪流は文句を言っている。
「拍手の面子というものがあるんです」
 準備に奔走した俺の苦労を考えて少しは殊勝にしてくださいと阿義流が小声で弟に説教をしている。
「本当にお疲れさまでした、阿義流さん。苺、あなたも食べてばかりじゃなくてもう少し‥‥」
 場を取り持とうとした柚だが、それよりも妹が心配で身が入らない。
「最近ますますご飯が美味しいし、しょーがないよー?」
 ねーちゃんも食べなよと言いながらも自分が食べる手は止めない苺。
 祝言の席でもいつもと変わらない彼らだから、これから先迷うことはないのだろう。
 京都に名物陰陽師ありと謳われた拍手兄弟と、そこに嫁いだ所所楽姉妹、双子同士の彼らの元にやってきた四人の子供達――やはり双子だ――が無事に誕生することを願って、今は祝いの杯を皆で干すとしよう。
WTアナザーストーリーノベル -
石田まきば クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2014年02月25日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.