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『毎日が夢いっぱい 』
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)&ラッカー・マーガッヅ(eb5967)

「絶好のデート日和ですねー」
 うきゅぅ、とお決まりの鳴き声を挟みつつ上機嫌なのはラッカー・マーガッヅ(eb5967)。彼の隣にはシシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)と、二人の間の娘アクリリアスも一緒です。過ごしやすいある休日に、家族三人はキエフの街に繰り出しました。
「お外ランチもたまにだといいですよね」
「パパのごはんが一番だけどねーっ♪」
 ママもそー思うでしょ? とリリアの声が妙に大きく響いて、シシルの顔がみるみる真っ赤に染まります。頬に手を当てれば、火照っているのがわかるほど。
(たっ確かにいつも思ってますけど、そんな堂々と言ったりはしてないし、でも本当だけどーっ)
「「きゃーっ♪」」
 照れたシシルと楽しげなリリアの声が重なりました。二重奏の分さっきより響いていますが、そんなことを気にする余裕のないシシル。というより、いつものことなので叱るも何もないのかもしれません。そしてそんな仕草もそっくりな母娘を、ラクはたしなめもせずニコニコと見守っています。
(イキイキしてるってほんと素敵でいいことですよねー)
 慣れたとか諦めたとかそういう様子ではなく、本気でそう思っているようす。家族揃って変人‥‥いや、変エルフかな?

 辿り着いた水竜亭は、昼飯時で賑わいを見せていました。
「まだランチあるかなー?」
「あるといいですね、でもリリア、一人分を全部食べられるんですか?」
「どーだろ?」
 かくりと首をかしげるリリアとシシルの椅子を引いて座らせてから、店内の様子を見回すラク。
(今日こそは大丈夫そうですねー)
 ほっと一息。さあ俺もと自分の席に座ろうとしたところで、パタパタとした足音が。どうやらこちらに近寄ってきているような気配です。
「「いってらっしゃい♪」」
 早々に察した母娘は、既に笑顔で見送る姿勢。やっぱりなーと思いつつ、ラクも足音の方を振り返ります。そこには予想した通りにエプロンドレスを差し出し、困り顔の従業員。冒険者をやっていた頃手伝いに来た縁で、こうして水竜亭に来るたび、ラクはこのエプロンを身につけて店の手伝いをするのがお約束になっていました。シシルも同様にこの店には縁がある、というより二人この店で結婚式をしたくらい浅からぬ縁があるはずですが、なぜかラクばかりが借りだされているような。
「じゃあ、ご注文はランチ2つですねー」
 慣れた手つきでエプロンを身につけつつ、ラクは家族の注文を伝えに厨房へ。そのままホールのスタッフとして働くようです。
「エプロン似合ってるねー」
「似合ってますよね、おうちでもあんなエプロンとか」
「ひらひらエプロン?」
「そうです、リボンも付けてひらひらです。お願いすれば、きっといつもの耳と尻尾もリボン付きになりますよ」
(おかえりなさい、あなた(はぁと)とか)
(お寝坊さん、もうごはんできてるよーとか)
(ごはんにする? お風呂にする? それとも栗鼠? なんてっ)
(ほっぺにちゅーしてくれなきゃ、もふもふさせてあげないよ、なんてっ)
((きゃーっ♪))
 ランチタイムが終わるまで解放されなかったラクですが、ランチを食べながら楽しそうに過ごすシシルとリリアの様子に一安心。つまらなさそうにしていたらすぐにお店から出るつもりが、杞憂だったよう。仕事中、ずっと背中がむずがゆかったような気もするけれど、いつものことだしいいかーと頭の外に片づけて、二人の元に戻ったのでした。

 絵描き道具の陳列棚を真剣な目で眺めるラクにあわせようとして、シシルとリリアは絵の具を物色しています。ちょっと離れたところから、絵の具の見本とラクを照らし合わせてああでもない、こうでもないとなにやら楽しげに――文字通り頭の中は色々なイメージであふれているような――相談中。
「ママ、赤いのは?」
「目にあわせるのはいいんですけど、最後の手段です」
「思いきって、紫なんかも」
「淡いのはいいかもですね。ですが決めつけると、モノがなかったら困っちゃいます」
「お揃いで紫とかー」
「でも、差し色なら確かに‥‥お揃い?」
「おそろいー♪」
((いいかも、うん、すごくいいかも?))
「「きゃーっ♪」」
 二人は内緒話の体で話していても、声の大きさはいつも通り。むしろ、最後の黄色い声で何があっても台無しのような気もします。でも話題の中心のはずのラクは画材選びに集中していて、会話の内容はさっぱり聞こえていないもよう。それを知っているから、二人とも遠慮せずに過ごせているのかも。
「リリアー? 新しい筆が欲しいって言ってませんでしたかー?」
 手招きで呼ばれて傍に来た娘に、気に入ったのが選べたらそれも買おうと頭を撫でて笑いかけるラク。そんな夫に嬉しそうに抱きつく娘にちょっぴりヤキモチを焼いたシシルは、リリアとは反対側に回ってラクの腕にぎゅっと抱きついてみました。
「シシルさん?」
「ラクさんは、私のっ、旦那さま、なんですっ」
 真っ赤な顔の奥さんを可愛いと思わない旦那さまなんて、そうそういるはずありません。だからラクはシシルの耳元にまで顔を近づけて、奥さんにだけ聞こえるように、一言。
「シシルさんのことがずっと一番好きです」
 リリアは俺らの子だし勿論好きですけど、女の人としての一番はずっとシシルさんですよー、って。いつもよりもっと気持ちを込めた、優しい声で。
(きゃーっ!?)
「えっ、シシルさーん、大丈夫?」
 少しの間だけ、シシル、ばたんきゅー。

 雑貨屋に着いてからは、シシルとリリアの本領発揮です。
「さっきの色に似たのを探しますよ」
「はーい!」
 張り切って髪飾りやアクセサリーへと向かっていく二人を見送りながら、ラクは画材をとりだします。待つ間に二人の絵を描くようで、後ろ姿しか見えないはずの二人の顔をさらさらと‥‥少しして、一度確認しようと顔をあげたラクですが。
「あれー?」
 二人が居ない?
「「きゃーっ♪」」
 ああ、居たいた。どうやら隣の洋服屋さんにいるようです。声が聞こえるって本当に便利。ラクは少し考えてから、画材を片づけました。やっぱり、今日は折角の家族デートなのです。
「えーっとー」
 合流したラクを待っていたのは、たくさんのワンピース。
「こっちも悪くないですけど、でもあっちも」
「これも可愛いのー」
 シシルが持っているものも、リリアが持っているものも大きなサイズ。ラクと同じくらいの身長の女性が身につけるような――二人はラクに服を当てたり比べたり――はっきり言うとラクの服。
「今日買うのは、二人の洋服じゃなかったんですかー?」
 ここ、女性向けの服屋さんですよねーと言ってはみたが、二人に届いた様子はさっぱりなくて。でも二人とも目がきらきらしていて、なんかもういいかなーとラクは思い始めます。ちょうどそこにお店の店員が近づいてきて、試着してみてはどうですかと声をかけてきました。
「あ、じゃあぜひ! ラクさん、これとこれ着てみてください!」
「あれとこれもっ」
 二人から服を持たされたラクを試着スペースに案内しながら、店員は下に着るコルセット等もいかがですかと提案してくれました。
「あ、いらないですー、俺男ですしー」
「パパ、早く着てみせてー」
 さらっと答えるラクとリリアの様子に、店員は一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに笑顔に戻りました。職業熱心な人です、プロですね。
(ぇっ? うちヘン? 変かも!?)
 リリアは店員さんの驚いた顔を見て首を傾げました。今までだって何度か見る機会はあったはずですが、いつもシシルと一緒に妄想、ではなく夢を膨らませるのに忙しかったのででこれまで気付いていなかったのです。
「リリア、どうかしたんですか?」
 シシルの尋ねる声も聞こえていないリリアは、改めて周りを見まわしました。お店の中には自分達みたいに、男の人に女の人向け服を選ぶ人はいなかったし、ラクのように女顔の男性も居ません。
「これでいいのかなー。シシルさん、リリア、どうかなー?」
 その時ちょうど、ラクが一着目を着て二人の前に姿を現しました。髪も長く伸ばしているラクは、娘のリリアから見ても女の人にみえます。ちゃんとパパって知っているんですけどね?
(んー、でもそれはそれでいいかも。おとーさん美人だし)
 深く考えることもなく片付いちゃいました。ラクもシシルも毎日これが当たり前に過ごしてますから、リリアも順調に、心の広い子に育っているようです。

 ジュースはどうだい、サービスしとくよ! そんな屋台の親父さんに勧められるままに飲み物を買った三人は、公園のベンチに仲良く座りました。お買い物でちょっぴり疲れた体には、甘酸っぱい果汁はとっても素敵な御馳走です。
 買ったばかりのワンピースとふりふりのエプロンドレスを着たラクに、両側に座ったシシルとリリア。三人の髪にはおそろいの淡い紫のリボンが増えていました。首尾よく雑貨屋さんで買ったものです。
「パパかわいいー♪」
「流石ラクさん、とっても似合ってますっ」
「パパ、耳と尻尾もあるともっとかわいいの」
「わかった、ミミクリー! リリア、これでいいかなー」
「わーい♪ もふもふだー、ぎゅー」
「リリア。独り占めはだめですよ? ぎゅー」
「やーっ、リリアのパパだもーん!」
「いーえっ。おとーさんはおかーさんの旦那さまだから、リリアには譲ってあげないのです」
「えーっ」
「‥‥仕方ないです、貸してあげるだけですからね」
「うきゅぅ、家族っていいですねー」
 リリアにねだられて、ラクのはやした栗鼠の耳と栗鼠の尻尾、特にまるまった尻尾はふわふわもこもこ、抱き枕にしたらちょうど好さそうな具合です。母娘でとり合いが始まって、ラクは父親冥利――栗鼠冥利かも――に尽きますねーなんて思っています。
 ですがここは公園で、家族三人だけというわけにもいきませんでした。お嬢さん達ぜひ一緒にお茶でもどうですかというナンパはもちろん。お姉さんだけでもぜひ獣耳っ子写生会のモデルにとかいうちょっぴりあやしげなもの。さらには禁断の姉妹の会に入りませんかとかいうものすごくあぶなげな勧誘まで。
 それらも無理はありません。ラクは女顔かつ童顔で、今は女装しているせいでどこから見ても獣耳美女。シシルもまだ十代ですし経産婦には見えないスレンダー美少女。リリアはそんな二人の特徴がうまく合わさった上に実際の年齢よりも大人びた美幼女なのです。そんなエルフが三人揃って同じリボンをつけて楽しく過ごしていたら、誰だって姉妹と思ってしまうに違いないのです。
((きたきたきたーっ))
 ラクが笑顔でお断りをしている間、シシルとリリアは想像の世界に存分に旅立っていました。だって夢の膨らむ素敵な状況が、次から次へと寄ってくるんです、妄想しない方が罪なんです。
「今度はパパ目当てのナンパでー、さっきのがママへの勧誘かー」
 そのうちリリアは、寄ってくる人たちの行動をもとに統計を取ることにしたようです。夕暮れになっておうちに帰る時間になるまで、その遊びは続いていたようでした。
 え、結果? リリアのパパ萌えメモは、門外不出だそうですよ。
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2014年03月05日

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