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『面倒臭いが仕方無い 』
ケヴィン・フォレスト3425)&(登場しない)

 ――――――賞金稼ぎ、と言う仕事がある。

 そう、賞金稼ぎ。…時々、何故自分はこんな面倒臭い仕事を選択したんだったかと嘆きたくなる事がある。いや、傭兵あがりとなると他に潰しが利かないとか前向きに言うなら自分の技能を活かせるとか武器マニアとしての興味が都合良く満たせるとかノルマとか義務とか無いので面倒になったら自分の都合で好きに休めるとか色々理由はすぐに頭に浮かびはするんだが――となると何故、と言う事も無いか。…いや、最後に挙げた理由にだけは少々注釈が要るか。…好きに休めない場合も無い訳じゃない。
 そう。幾ら面倒であっても好きに休めなくなる状況、と言うものは賞金稼ぎにもやっぱりある。例えば――賞金首と実際に対峙して真っ向から敵対してしまった時その直後には、やっぱり面倒臭いから止めたと言う訳には行かない――もうそんな選択をする段階を越えてしまっている。…事ここに至れば「休む」と言う選択肢はどうしても取れなくなる。…そんな状況下で面倒だからって休んだらそのまま永遠の休息になりかねないのでそこはさすがに仕方無い。幾ら面倒臭くてもそうなってしまっては当然困る――酒も飲めなくなる。
 よって、そんな場合は面倒臭いと思う気持ちを押して、休まないように何とか努力はする。休むのは賞金首を捕まえたり倒したりしてから、と面倒ながらも何とか頑張って頭を切り替え、実際にその通りに行動する。…具体的には腕尽くで叩きのめす。…その際、多少の八つ当たりが含まれる場合もある。

 …賞金稼ぎなどと言う仕事をしていると、予想外な事は結構良く起きる。
 だからまぁ、予想外な事でも想定外、とは思わない。常に想定はしている――「予想外な事が起きる事もあるだろう」とは常に考えていると言うか頭の何処かにある。…と言うか、俺の場合は常に何も考えないでそれまでの経験やら本能に基づく動物的勘に任せて場当たり的に動いているだけとも言うが。いちいち考え込んで動くのは面倒臭いから俺には向かない。…例えば今。目の前に振り被られる――振り下ろされようとしている重量級なゴツい斧刃を軽く躱し様、こちらの握る片手剣の刃を相手に一閃。危機に際しては考えずとも身体がこのくらい勝手に動くようで無いと、色々とどうしようも無い事になる。

 まぁそもそも、賞金首の手配書で重要なのは「賞金首の特定が可能か」と「賞金支払いの条件」の二点くらいになる。手配書に載っている賞金首のプロフィールと言うか履歴と言うか犯歴と言うか情報自体は――かなり偏っていたり、誇張や誤認されている情報がまことしやかに出されていたりする場合も多いので話半分に受け取っておくのが鉄則と言える。手配書にあるそれらの個人情報を完全に鵜呑みにしていては――身動きが取れなくなる場合も多々出て来兼ねない。…例えば今みたいなこんな場合。「手配書と違う」って理由で止まってしまっては――まぁ、普通に返り討ちで殺される。なのでその辺すぐに頭が切り替えられないようだと、非常にマズい。
 よって何事も臨機応変、その時その時に合わせて適切と思える行動を自発的に積極的に取捨選択して行けるようじゃないと、賞金稼ぎなんぞやっていられない。…例えば今の俺のように――ちょうど横から迫って来ていた相手の動線を見切り、身を翻しがてら軽く体を沈ませ足を引っ掛け転ばせてやってから――その背後に回り込む形にまた強か打ち込んで相手の意識を落としてやってみるとか。
 つまりは戦闘面や戦略面でそれなりの頼れる感覚を持つと自負する者ならば、いっそ場当たり的に動くのは結局、理に適っている事にもなる。…少なくとも俺はそう思っている。実際、それで今まで生き残って来れてるし。

 で、今。

 何故剣を振り回しつつわざわざそんな面倒な事をつらつらぐるぐると考えてしまっているかと言うと。
 今現在狙っている――と言うより既に絶賛交戦中でもある賞金首――強盗団についての「手配書に載っていた情報」がまさに全然信用出来ない類のものだ、とつい先程判明したところだったからになる。…いやつい先程と言うか、実際目の前にしたからこそ判明したとも言うのだが。そして「そう」なった時点で、「面倒臭くなっても今更休めない」と言う――賞金稼ぎと言う仕事を選んだ事自体を嘆きたくなるような、とことん面倒臭い状況に陥ってしまっている事にもなる訳で。

 で。
 いったい何がそんなに面倒臭いのかと言うと。

 狙っていた賞金首の強盗団が、手配書で予想されていた以上に大所帯らしい事と、
 その強盗団の面子が――やけにヤバげな荒くれ者らしい物騒な空気を醸してる奴ばかりっぽい、

 …と言う二点がまぁ、事ここに至って改めて面倒臭くなってしまっている最たる理由である。



 元々手配書で触れ回られていた賞金首の強盗団、の情報としては、何処か滑稽な印象すらある人物ばかりで構成された、三人から五人程度と思しき集団――とされていたと思う。…今更思い出すのも面倒臭いのでいまいちはっきりは言い切れないが確かそんな感じ。似顔絵が出されていたのが三人で、ちっこいのに丸いのにひょろ長いの、と童話や絵本にでも出て来そうなはっきり役割分担されてるC調の三人組、と言ったところだったような。
 手配書によれば、三人共に大して腕に覚えがあるようには見えなかった。少なくともそれ程に物騒な雰囲気は無かった。また更に厄介な事に、その三人以外にも二人くらいは強盗団の仲間は居そうだ、と不確定情報としてついでに載ってもいた。この不確定情報も含めて「五人程度だろう」と言う予想の話。…つまり、正体不明なのが三人の他にも居るだろう――とは元々手配書の中でも濁してあった事になる。
 強盗団と言う通り、手配理由の罪状は強盗。と言っても、どの強盗事件の時にも加害の程度は傷害止まりで死者は無しと言う軽い感触。の割に、結構派手にあちこちの町や村を荒らしていて、賞金額は結構高価かった。そして、一人につき幾ら、と人数によって額が増減する賞金の仕様。
 で、条件の方は軽い感触の罪状にしてはやけに重くて――生死を問わず。

 …この時点で若干、引っ掛かりはした。

 が、面倒臭いのであまり気にしなかった。賞金出るなら「どっちに転んでも」まぁいいやと頭の中で殆ど自動的に片付けてしまっていたんじゃなかろうかと思う。多分、その時点で「こう」なる可能性は頭のどっかで気付いていた。決して順序立てて考えていた訳では無いが、感覚の方で多分察しが付いていた。この手配書の詳細情報は信用出来ないぞ、と――狙う以上は結構派手に戦闘になる覚悟もしておいた方が良いぞ、と。
 だから今、結構確りと武装を固めてから、現在強盗団が本拠にしている――と言うか主を脅して乗っ取ってるっぽいと情報を得る事が出来た場末の宿屋――に単身出向いた訳になる。何事であっても面倒臭く思える事の多い自分だが、さすがに仕事の際にはそれなりに準備はしておいた方が良いと思える頭はある。…まぁ単純に俺の場合、様々な武器を準備する事自体は楽しみでもあるから苦にはならない面倒だとは思わないと言う面もあるが――今回の相手の場合いつもにも増して入念な準備が必要だ、と頭の何処かで思っていたのかもしれない。…何と言うか、感覚的に。無意識の方で。

 そして今。

 その入念な準備が――案の定と言うか何と言うか、派手に役に立っている。
 一人や二人を相手にする場合なら――相手に回すのが大人数であってもいちいち一対一に持ち込める地形条件さえあるなら、普段から常備している使い込んだ片手剣の一振りで武装はまず事足りる。が、そうでなかった場合に備えて、二刀流を出す場合用にもう一振りの片手剣も今日は持参してある――相手の武器破壊等、魔法的な効能も考えるなら聖獣装具のソニックブレイカーを二振り目に使う手もある。どちらにするかは状況次第。それから棒手裏剣にナイフのような投擲武器や、手榴弾に焙烙玉の類も幾つか念の為に持って来ていた。
 こちらの準備は、大人数を一度に相手にする事になった場合、手数を増やす為に幾分有用と見てのもの。単純にそれらの武器を使ってみたかったと言う面もあるが、それはさておき。…いや、大人数を一度に相手に回す事を考えるなら、いっそ連れの誰かも連れて来て魔法での人海戦術とかを頼むと言う手もあったのだろうが――なんか色々面倒臭くなって今回声は掛けなかった。なんで面倒臭くなったのかは忘れたがと言うか経緯を思い出そうと記憶を探る事すら面倒臭いので今更どうこう言う筋でも無いのだが。

 先程、結構人数が多めに集まっている――ひょっとすると強盗団のボスが居る本拠かも――と見た広間の部屋に、ピンを抜いて投げ入れた手榴弾が今になって炸裂した。閃光に爆発音。更に一拍置いて、一気にぶわっと煙も湧いて流れて来る。…それで、最早総勢何人になるかも良くわからない大所帯の賞金首強盗団を燻り出す。どうやら本来の宿屋の人間は――どうなったのか考えるのも面倒臭いが少なくとも既にこの場には居そうに無い。…今のところそれらしい人物は宿屋に入ってから見掛けていないし声も聞いていないし気配も無い。…既に消されている可能性も否定は出来ない。
 宿屋の中の通路。こちらの思惑通り、煙に燻り出されて咳き込みながら飛び出て来る奴も居る――当然俺はそれを狙って待っていてすかさず無力化。飛び出て来る中、闇雲に剣を振り回して警戒している「つもり」な隙だらけの相手を着実に一人ずつ獲りに行く。同様の手段で四人は獲れたが、そろそろ相手も我に返って真っ当に警戒し始めたのか同じようには出て来ない。

 …さて、次はどうするか。
 手榴弾が炸裂した部屋から影になるような位置関係。壁に背を預け、必要ならすぐに投げられるよう投擲武器を指の間に複数挟んで構えつつ思案する。…こちらの人数を誤魔化す為――複数だと思わせる為の撹乱にでも使おうかと考えて得物を選択。そろそろ煙も薄くなり幾分視界も開けて来る――煙が消え切る前に何処に撃つかも思案する。煙の中、まだ残っている人影らしき位置。建物条件からしての更なる伏兵が出て来る可能性――考え合わせて、まぁもう攪乱も何も、一気に直接飛び込んで暴れた方が早いか、と言う気もして来た。
 これまで戦り合ってみた感触からして、数は多いが特別に腕の立つ面倒な奴は多分居なさそうだし。少なくとも――魔法メインの厄介な奴とか、もしくは当人自体が魔法の産物めいた某異界人とか満月時に暴走する某魔女とかあのレベルのとんでもない奴はまずこの強盗団の中には居なかろう。さすがに。うん。…これまでの手応えからしてそのくらいはそろそろ言い切っても良さそうな。
 なら――と思い直し、俺はちょっと残念ながらも投擲武器を再びホルダーに戻す。そして代わりに二刀流用として用意していた二振り目の片手剣の柄に手を掛けるが――掛けたところでまた思い直して、二振り目は聖獣装具ソニックブレイカーの方を召喚する事にした。然程の腕で無さそうとは言え、まだはっきりと言い切れない、まだ見ぬ残りの賞金首の連中の戦闘手段。彼らの腕や得物はどの程度か。
 わからないなら、相手の得物をぶっ壊して行った方が――簡単にそう出来る手段があるならその方が面倒が無いか、と思う。ソニックブレイカーなら、魔法の掛かっていない武器を悉く共振波で壊して行ける。そうでなくとも動きを鈍らせたり出来るし――結果、ある程度の保険にもなる。
 そう決めて、使い込んだ主武器である片手剣と、召喚したソニックブレイカーの柄を握り直す。両手に掛かる剣の重みと感触、バランスを確かめつつ、息を整えて――まだ視界を遮る煙が幾らか残っている内に、賞金首の残りが居るだろう広間へと一気に突入。この場合、味方が居ないと言うのは逆に楽かもしれない。生死不問の条件も好都合。…斬ってはならない相手を考える必要が無い――自分以外は全員斬ればいいのだからそういう意味では面倒が無い。

 突入時点で、やっぱり宿屋の人らしい人間が居ない事を認めてほっとする。…これなら本当に遠慮無く行けるから。思い、近くに居た相手から一気に斬り倒す――片手剣の刃を横様に叩き付ける。…次。飛んで来た鎌刃をソニックブレイカーの方で咄嗟に受けた。小型の鎌、その柄には弧を描く鎖が繋がっている――お、鎖鎌。これ使うの結構難しいんだよな――と反射的に思うが、一拍置いてその鎖鎌が鎌刃どころか鎖まで粉微塵に砕け散っている。…ソニックブレイカーの効果。勿論相手に回している敵の武器を破壊した事になるから良い事ではあるのだが、少々勿体無い気がしてしまうのは武器マニアの性か。壊す前に動きを良く見たかったとか使ってみたかったとかつい思ってしまいもする。
 思っている間にも次が来る。突入後、煙が残っていようがさすがにこちらの位置も把握されたらしく一時に二人。それも少しは考えて二方向から一気に躍りかかって来る――が。それこそこちらの思う壷とも言う。俺は殆ど旋回に近い動きで、二振りの刃でそれら攻撃を弾く形に一気に打ち払う。内、弾かれた片方の相手を狙って追撃。逆にこちらから躍りかかって、テンポ良く二連撃を入れ止めを刺してから着地。それから次に見えた動く影へとすぐさま狙いを付け、一気に肉迫。今度は相手がこちらに攻撃を仕掛ける前に、こちらから。

 …そんな感じで、一人一人確実に獲って行く。
 が、獲っても獲ってもまだ次が居る。…どれだけ人数が居るのやら、いいかげん面倒臭くてしょうがなくなって来た。いや元から面倒臭かった事に変わりは無いのだが、それ以上に。…面倒臭いと表現する事すら面倒臭いと言うか、そのくらいどうしようもなく面倒臭い。何もかも放り出して今すぐ休みたい。
 とは言え、ここまで来たなら取り敢えず全員再起不能にさせる、くらいはしておかないとマズいとは理性の部分で思う。中途半端に残したら後々余計に面倒臭くなりそうな気がしてならない。…いいかげん面倒臭くてうんざりしつつも、向かってくる相手に剣を振るうのは止められない。…止めたい。でも止めたらきっと後がもっと面倒臭くなる、との一念で何とか剣を振るい続ける。…これだけの人数が居れば賞金額も多分当初の予定よりかなり上乗せ行けるだろうし、これが終わったら暫くがっつり休むと言う方向で。
 そんな風に己を鼓舞しつつ、なけなしのやる気を出して俺は賞金額の向上に努め続ける事をする。

 …あとどれだけ獲れば終わるだろうか。そろそろこちらに向かって来る人影が――少なくなって来てはいるような気がするけれどはっきりしない。もうじき終わるのか? それともまだか。どうだ?
 どちらにしろ、キリが付くまでやらないと。

 ――――――まぁ、面倒臭いがこればっかりは仕方無い。

【了】
PCシチュエーションノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2014年03月17日

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