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『比翼の鳥が歌う空。 』
ラシュディア・バルトン(ea4107)&クリス・ラインハルト(ea2004)&ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)&リディエール・アンティロープ(eb5977)&アーシャ・イクティノス(eb6702)&アイシャ・オルテンシア(ec2418)

 その教会を営んでいるのは、ノルマンで聖なる母の教えに忠実に生きる、とあるエルフの神父である。決して大きくはないけれども、どこか居心地の良い雰囲気が、教会のあちらこちらに穏やかに満ちている。
 窓の外から見上げる空は、抜けるように真っ青だ。こんな風に、神や精霊と名の付くすべての善きものが寄ってたかって祝福をしているような、晴れ晴れとした空には実に、結婚式は相応しい。
 その、結婚式の主役の1人であるところのラシュディア・バルトン(ea4107)は、そんな晴れやかな空から眼差しを、眼前の重厚な扉へと戻した。否――冒険者ギルドにも登録していた『バルトン』は偽名なので、今はラシュディア・シュタインバーグと名乗っているけれども。
 この扉の向こうには、教会の聖堂があって、そこでは今日の式のために駆け付けてくれた友人達が、新郎新婦の入場を今か、今かと待っているはずだった。そう考えながらちらりと今度は横を見て、ラシュディアはもう何度目になるか知れない、感嘆の息をほぅ、と漏らす。
 ラシュディアの隣に立っているは、今日のもう1人の主役であり、これから自分と結婚式を挙げる新婦アイシャ・オルテンシア(ec2418)。白いウェディングドレスを身に纏い、背筋をぴんと伸ばして凛と立っている姿に、ラシュディアはもう何度だって、見惚れずには居られないのだ。
 今日のために心を込めて仕立てられた、純白のドレスは他のどんな衣装よりも、アイシャを輝かせるような気がしてならない。友人によって作られたティアラやアクセサリーも、美しいウェディングドレスに負けないくらい美しいけれども、それらを身に纏ったアイシャ自身には到底叶わなくって。

(天使みたいに綺麗だ)

 柄にも無くそう思ってしまうのは、何もラシュディアがいよいよ今日という日を迎えた事に、舞い上がっているせいだけではないはずだった。教会画によく描かれるような、白き衣を纏った天使の姿に、白いウェディングドレス姿のアイシャがふわりと重なる。
 とはいえ。それを言葉にして伝えようとすると、やはりどうにも気恥ずかしい。とはいえこんな日なのだから余計に、それを彼女に伝えたい、という衝動が湧き上がってくる。
 ゆえに結局、アイシャの目を見る事は出来ないまま、照れ隠しに視線を外しながら呟いた。

「アイシャ、その‥‥なんだ。‥‥天使みたいに綺麗だ、ぞ」
「‥‥もう」

 言い終わると同時に真っ赤になり、ぽりぽりと頬を掻いてますます目を逸らしたラシュディアに、アイシャもまた真っ赤になって少しうつむき、手の中のブーケの花の数を意味もなく数えた。それから深呼吸をして、赤い顔のまま、ラシュディアの手をそっと握る。
 自分ではクールな方だと思っているアイシャだけれども、さすがに愛する人と結ばれる特別な日とあっては、平静ではいられない。ウェディングドレスにも胸が高鳴ってしまうし、これから神の前で彼との永遠を誓うのだと思うと、緊張してしまって実のところ、さっきから何度も深呼吸をしていたりするのだ。
 それだと言うのに、この男は。せっかくのアイシャの苦労を、無にするようなことを言って――そう思う一方で、素直に嬉しいと言う気持ちが込み上げて来る。
 聖堂の中の様子を窺っていた介添人が、そんな2人に「そろそろ」と声をかけた。それに、今の一瞬確かにどこかに追いやられていた緊張が、たちまち全身を支配するのを感じる。
 ゆっくりと、重厚な扉が開いた。その向こうに広がる聖堂の奥には、教会の主であるエルフの神父が祭礼服で立ち、ヴァージンロードの両脇には、椅子から立ち上がった友人達がラシュディアとアイシャを振り返り、入場を今か、今かと待っている。
 それを、見た。どちらからともなく無言でぎゅっと強く手を握って、エスコートをし、されながら、ゆっくりとヴァージンロードを歩き始める。

(友達の結婚式か‥‥)

 ゆっくりと進んで行く、親しい友の晴れ姿をしみじみと見つめながら、ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)はこの場に居合わせる事が出来る幸いを噛み締めた。結婚と言えば人生の一大イベント、結婚式と言えば押しも押されぬ晴れ舞台。
 そんな人生の節目に招いてもらえるなんて、こんなに光栄な事はそうそう、あったものではなかった。だから、招いてもらった2人への感謝を、そして新たな人生を歩むことになる2人への祝福を、永久なる幸いの祈りを――それら全ての想いを込めて、鍛冶屋として式を彩ることで恩返しとしたい、と張り切ったのだ。
 ティアラ、アクセサリ、ステッキ、鍛冶屋として役に立てそうな事は、実は結婚式には少なからず存在する。何より、結婚式には欠かせないウェディングリングだって、どこの鍛冶屋も創れると言うものではないにせよ、十分にロックフェラー達の領分だ。
 今はエルフの神父の手元で、おさまるべき所におさまる瞬間を、静かな輝きを放ちながら待っている対なる指輪。同業者でもある妻と2人、ああでもない、こうでもないとデザインし、叶う限り最高の材料を仕入れて彫金した、渾身のそれ。
 思えば若かりし頃、彫金を、デザインを学んだのはこういう日のためだったのだろうと、ロックフェラーはしみじみその頃の自分を振り返った。最後の方には文字通りの不眠不休、疲労困憊での作業となったが、その甲斐は十分にあったと言うものだ。
 そう、アイシャやラシュディアを彩る、自身の作った飾りの出来栄えを確認して、ロックフェラーは心から満足を覚えた。ちなみに、このあとの披露宴会場の装飾もここぞとばかりに頑張ったけれども、疲労を残しての出席は失礼だから、全ての仕事を終えたあとには1日中、意識を失うように眠ってよく休み、しっかり回復している。

「とにかく、今日は全力で祝わないとな!!」

 ぐ、と小さく拳を握って呟いたロックフェラーに、クリス・ラインハルト(ea2004)がくすくす笑った。こういった、友人のハレの場への招待は本当に嬉しい事だから、ロックフェラーの気持ちも良くわかる。
 とはいえ、それを素直に表現するところが彼の彼たる由縁だと、微笑ましくも好ましかった。そう考えるクリスのすぐそばではリディエール・アンティロープ(eb5977)が、ヴァージンロードを進んでいくラシュディアとアイシャ、それからこの教会で同じく結婚式をするもう一組の友人達へと思いを馳せる。
 こうして知り合いが巣立っていく様を見るのは、心から嬉しいと思うと同時に、少しの寂しさをも感じた。それはもしかしたら、着実に時を刻み、人生の節目を迎えていく友人達に、置いて行かれるような気がするのかもしれない――

(――いえ)

 そこまで考えてリディエールは、そっと息を吐いて今までの思考を振り払うように、小さく頭を振った。お祝いの席には、あまりにも相応しくない思索だ。
 だから。これはまた家で1人で居る時に、薬草でも煎じながら考えれば良い話であって、今はただ素直に、大切な友人達の幸いを喜べば良い事だろう。
 とはいえリディエールと同じような寂しさを、アーシャ・イクティノス(eb6702)も少しばかりは感じていたりした。否、すでにイスパニアに嫁いだ今は、エルダーと姓が変わっているのだけれども。
 愛する妹アーシャのウェディングドレス姿や、ラシュディアと共にヴァージンロードを歩いている姿を見ると、込み上げて来るのは掛け値のない嬉しさ。けれども同時にほんの少しだけ胸の中にある、アイシャが遠く離れていってしまうような寂しさ。
 とっくに距離の意味では遠く離れてしまった2人だ。イスパニアは決してノルマンとは近くないし、今日だって遥々ペガサスに乗ってやってきたくらいである。
 だからこれは、距離の問題ではなくて。ただアーシャが、アイシャが嫁ぎこれからはラシュディアとの暮らしを第一に日々を営んでいく事を、寂しく感じているだけで――自分だってとうに嫁いでいると言うのに。
 アーシャがイスパニアに嫁いだ時は、アイシャもこんな寂しさを感じたのだろうか。そんな事を考える間にも、式がゆっくりと進んでいく。
 新郎新婦が祭壇の前へと辿り着き、エルフの神父が聖書を片手に朗々と聖句と、それから説話を紡ぐ。愛の尊さを、互いを思いやる大切さを、重ね続ける日常の中で常に感謝を忘れてはならないという教訓を。
 透き通る声も美しい聖歌が聖堂に響き渡り、新郎新婦に神父が誓いを投げかける。2人が、力強く頷く。ロックフェラーの渾身の結婚指輪が互いの指にはめられて――そうして、誓いの口付け。
 明らかに緊張しているとわかるラシュディアの手が、アイシャの顔を覆うヴェールをそっと持ち上げる。その刹那に見交わした眼差しにも、緊張の色が見えていてアイシャは知らず、息を吐いた。
 そんなアイシャの顔にも、ラシュディアの表情と同じように、緊張がしっかりと張り付いていた。睫毛がそれを示すように、微かに震えているのが見える。
 いま、うまく息を出来ているのかすら、2人には良く判らなかった。けれども――その緊張はなにも、滞りなく立派に手順を終えなければ、と言うようなものではない。『ついにこの日が』という感動、そしてそれとともに湧き上がってきて抑えようにも抑えられない強い喜び、彼らの胸を満たしているのはそういった感情だ。
 ゆっくりと、2人の顔が近づいて行く。そうして唇と唇が触れ合った瞬間、世界のすべてが止まったかのように感じられた。
 今この瞬間、ラシュディアとアイシャにとって、間違いなく互いだけが世界であり、触れ合う唇の感触だけが互いの存在を確かなものにする唯一であるような気が、した。恋人としての口付けとは違う、それ。1つの終わりであり、そしてそれ以上の希望に満ちた新たな始まりの合図となるもの。
 時間にすれば僅かに過ぎない、それは永遠にも等しい瞬間だった。2人がまたゆっくりと離れていくのを見計らって、神父が穏やかに宣言する。

「――ここに、晴れて2人は夫婦となりました。おめでとうございます、ラシュさん、アイシャさん」
「おめでとう!!」
「おめでとうございます!!」
「ありがとう」

 今日の新郎新婦や主だった参列者達の親しい友人でもある神父の、どこか茶目っ気を帯びた言葉を合図に、聖堂のあちこちから祝福の声が上がった。それに、礼を言うラシュディアの声は心底嬉しそうに弾んでいる。
 それを聞き、聖堂に集まってくれた友人達を、大切な姉を、アイシャはゆっくりと見回した。誰も彼もが浮かべている、暖かな笑顔を目に焼き付けた。
 基本的に冷めた人間だと、アイシャは自分の事を思っている。だから例えこんな場面になったとしても、自分は泣いたりはしないのだろうとずっと、思っていたけれども。

(‥‥お姉や皆さん‥‥それにラシュディアの暖かい笑顔を見ていたら‥‥)

 じわりと胸に込み上げて来る、熱いものを感じてアイシャは小さく顔を伏せ、その衝動をやり過ごそうとした。傍らのラシュディアが不思議そうに、アイシャ? 呼ぶのが耳に届く。
 何でもないと、首を振ってアイシャはギュッと手の中のブーケを握り締め、込み上げてきたものを必死に飲み込んで顔を上げた。その、きらりと目に光るものを浮かべた美しい笑顔に、ラシュディアはまた見惚れてしまったのだった。





 披露宴は同じ教会の一室で、ささやかに行なわれた。ささやか、と言ってもそれは単に、お色直しした新郎新婦と友人達だけの集まりだからという意味であって、宴そのものはとても明るく、賑やかだ。
 何しろそもそもが友人同士なのだから、お互いにさほど気兼ねがない。おまけに宴の席で振舞われているのが、振舞われているのは、今はパリを離れた友人が領地から幾樽も持参した、美味しいワインなのだから尚更、飲みながらの思い出話に花が咲く。
 この美味しいワインを飲みながら、誰もが思い出してしまうのはやはり、冒険者酒場で無料で振舞われていた古ワイン。すっかり酸っぱくなってしまったそれは、けれどもこのノルマンの地で冒険者として活動した事のある者の多くにとって、決して忘れる事の出来ない『思い出』だ。
 頼み込んで宴の前にも味見をさせてもらったロックフェラーなどは、その古ワインをこよなく愛する(?)一員で。今も、美味しいワインを惜しげもなく飲みながら、古ワインをこよなく愛するロックはと言えば、馥郁とした香りや味に喜びながらもどこか、寂しそうだったりする。

「いやぁ、実に美味い! 美味いんだけどなぁ‥‥」
「ロックさん。それ、何度目のセリフですか?」

 唸るロックフェラーにくすりとリディエールが笑ってそう指摘すると、酔いで少し顔を赤くした彼は真顔で、古ワインの素晴らしさについて語り始めた。彼とて、人生の門出を祝う宴に古ワインが相応しくない事は解っているが、それとこれとは別らしい。
 そんな風に賑やかに過ごす友人達の姿を見ながら、けれどもラシュディアはどこかまだ夢見心地な気分だった。ついに結婚式を終えて、愛するアイシャと夫婦になれたのだと言う実感が湧かなくて、さっきから何度も自分自身に、これは本当に現実の出来事なのだろうか、と問いかけていたりする。
 これは自分の都合の良い夢で、起きたら結婚式なんてなかった事になっていて、アイシャだってラシュディアの妻ではないのではないだろうか。そんな不安が何度も胸を過ぎていくおかげで、ラシュディアは結婚式が終わってもずっと、アイシャと手を繋いだままだった。
 それを冷やかす友人達の声も、今日ばかりは祝福の調べにしか聞こえない。そうして、確かにこれは現実なのだとラシュディアを安堵させる。
 そんなラシュディアに握られた手を、アイシャが振り解かずに居てくれるのはもしかしたら、彼女もまたどこか、この光景を現実とは受け止められていないからなのだろうか? ちら、と傍らのアイシャを横目で伺うラシュディアの耳に、流れてくるのはクリスが奏でる、横笛の調べだ。
 この横笛はクリスが冒険者になったばかりの頃、手に入れて共に冒険へと向かった事のあるものである。もちろんラシュディアやアイシャと一緒の依頼にだって、何度か連れて行ったことがあった。
 だから、彼らとの思い出を音色へと込めながら、賑やかな宴にあわせて何曲か披露するクリスの傍らでは、飛び入り参加の女性が身の丈ほどもある大きな白亜の杖を握り、楽しげに踊っている。偶然お祝い事を聞きつけて、楽しそうだからと参加してしまったらしい。
 そんな知己の姿にくすくすと笑い、リディエールは新郎新婦へと近寄った。気付いた2人が彼の方へと向き直り、しっかりと手を握り直すのを見てまた、くすりと暖かな笑みが漏れる。

「ラシュさん、アイシャさん。ご結婚おめでとうございます。お2人とも素敵ですよ」

 そう言いながら、2人にリディエールが渡したのは揃いのコサージュと、彼が仕込んだ手製のハーブワイン。もう1組の友人夫婦にも、同じものを渡している。
 コサージュは、身に着ければいつでも互いの存在を感じられるよう、願いを込めて。そうしてハーブワインは、今はまだ仕込んだばかりだけれども、ワインが熟すようにゆっくり時間をかけて、2人が素敵な夫婦になりますようにと願いをかけて。
 友人からのそんな、心のこもったお祝いに、ラシュディアとアイシャの顔が嬉しそうに輝いた。さっそく、互いの胸にコサージュを着け合って、くすぐったそうに微笑み合う新郎新婦に、見ているこちらが中てられそうだとリディエールはこっそり思う。
 少し離れた所で、久し振りに会った友人達とイスパニアでの生活の話をしたり、最近のノルマンの様子を聞いていたアーシャが、そんな2人に気付いてふ、と眼差しを向けた。あちらもアーシャに気付いたのだろう、2人顔を見合わせて何事か頷き合うと、揃ってこちらへ歩いてくる。
 幸せそうに手を繋いだラシュディアと、それをさせたいようにさせている、といった表情を装っている妹。眼前までやって来た2人を見比べて、ふうん、とアーシャは悪戯っぽく微笑んだ。
 そうして、楽しげにこう宣言する。

「間違いなくラシュさんは尻に敷かれるね!」
「な‥‥ッ」
「アイシャもあまりいじめないように、ほどほどにするんだよ〜」
「お、お姉‥‥!!」

 遠慮のない、昔から良く知るからこその可愛い妹とその友人へ向けたアーシャの言葉に、ラシュディアとアイシャは真っ赤になって言葉を詰まらせた。だがすぐに顔を見合わせて、照れたように、幸せに微笑み合う。
 幸せを隠し切れない、どころか隠そうともしていない様子の妹と義弟に、やれやれ、とアーシャは暖かな吐息を漏らした。大切な愛しい妹と大切な友人、そのどちらもの幸いがアーシャにとっても嬉しくないわけはない。

「あ、そうそう。ラシュさんは私の弟になるんだよ。だから私のことはお姉さんと呼んでね」

 半ばは本気で、半ばは冗談でそう言ったら、「はいはい」と気のない返事が返ってきた。これはあとでもう一度、しっかり言って聞かせなくちゃと拳を握ったアーシャに気付いて、アイシャが「お姉ってば」とくすくす笑う。
 そんな賑やかで暖かな様子は、決して広くはない部屋の中のどこに居ても、十分に見て取る事が出来た。横笛の演奏を無事に終えたクリスもまた、ようやく件のワインを頂いてまったりと傾けながら、にこにこ笑って眺めている。
 そんな流れになったのか、ラシュディアとアイシャはそれからも、次から次へと友人達の元を訪れて、結婚の挨拶をして回っていた。やがてクリスのところへも、もちろん2人は手を繋いだまま、揃って幸せそうにやって来る。
 幸せ、という言葉を絵に描いたら、こんな形になるのだろうかと思えるような笑顔。幾度も目にしたようで居て、1度だって目にしたことはない、数多あるたった1つの幸せのカタチ。
 それを眩しく、微笑ましく見つめながら、クリスは「おめでとうございます♪」と笑った。

「辛さ半分、喜びを倍にできる伴侶との門出、心から祝福します♪ イザという時は既婚の先輩たるボクが相談に乗りますね☆」
「その時は頼むな、クリス」
「ありがとう。頼りにさせてもらいますよ」

 にっこり笑ってそう言った、クリスにラシュディアとアイシャは同じく笑みを零して、口を揃えてお礼を言った。もちろん、そんな機会はない方が良いに決まっているが、これからの短くはない人生の中、何が起こるとも知れない。
 そんなやり取りを聞きつけたロックフェラーが、結婚生活の先輩の矜持を示さねばと張り切って、『俺も俺も』と手を挙げ始めた。だが真っ赤になった顔を見れば、完全に酔っ払っているのが解る。
 むしろ新しいワインを飲み慣れてなくて、いつもより酔いが早いんじゃないか? 誰かがそう言ったのに、それもありそうなことだとロックフェラー自身も含め、会場のあちらこちらから笑い声が漏れた。
 暖かな、幸せな時間。幸せな結婚式。
 それは眩暈がしそうな幸福だった。――ハーフエルフとして生まれた自分には、もしかしたら過ぎたる幸いですらあるのかもしれないと、ふとアイシャは思う。
 ただそこに居るだけで疎まれ、ハーフエルフと言うだけで当たり前の幸いすら享受出来ないことも、決して珍しいことではない。何か悪い事をしたわけでもなく、ただそう生まれついたというだけで、自分達は当たり前に差別され、迫害され、神の祝福を受けられない。
 もちろんアイシャはこうして、ハーフエルフの自分をも受け入れてくれる優しい友人達に出会い、神の名の元に祝福されて、ラシュディアと夫婦になることが出来た。だから、ハーフエルフで良かったと、その生を一度も恨んだ事がない、とそう言える程の強さは、まだ自分にはないけれども。

「ラシュディア、皆さん。私は今、本当に幸せですよ。ありがとう♪」
「アイシャ‥‥」

 本当に、本当に幸せそうな笑顔でそう言い切った、アイシャを見ながらラシュディアは、自分こそだ、と胸の中だけで呟いた。彼女に自分はいつも、いつでも幸せにしてもらっているのだと。
 この胸の中にはまだ、自分が嫌いだ、という思いがずっと奥底に眠っていた。ラシュディアの心の中、一番深いところにしっかりと根を下ろしてしまったその感情は、例え愛するアイシャと共に居たとしても、もしかしたら一生消えはしないのではないかと思っていた。
 それほどに、その感情はラシュディアにとって馴染み深く、まるで我が半身のようにこの胸に居座り続けていたものだから。意識をせずとも当たり前に、常にそこにあるものだったから。
 けれども――その感情が、今、ゆっくりと消えていくのを感じた。雪のようにゆっくりと溶けて、胸の中から消えていくのを確かに感じた。
 ここに立てて良かったと。アイシャと結ばれ、こんなにもたくさんの友人たちに祝われて嬉しいと――幸せだと、今、心から思う。
 これからの人生を、死が2人を分かつ時までずっと、共に歩んでいく。そのささやかな始まりに過ぎないはずの、けれどもこの上ない幸せな時間に、これからを想って新郎新婦は顔を見合わせ、微笑み合ったのだった。





━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 /      PC名       / 性別 / 年齢 /      生業     】
 ea2004  /  クリス・ラインハルト    / 女  / 27  /     吟遊詩人
 ea4107  /  ラシュディア・バルトン   / 男  / 30  / プロスト辺境伯付き魔導師
 eb0346  / ロックフェラー・シュターゼン / 男  / 20  /     ナイト
 eb5977  / リディエール・アンティロープ / 男  / 21  /     薬草師
 eb6702  /  アーシャ・イクティノス   / 女  / 23  /     警護
 ec2418  /  アイシャ・オルテンシア   / 女  / 23  /     馬廻り

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、蓮華・水無月でございます。
この度はご発注頂きましてありがとうございました。

大切なお友達の皆様での特別な日の物語、如何でしたでしょうか。
こんな特別な日のノベルをご指名頂けまして、心から光栄だと感じると同時に、いつも以上にどきどきしながら書かせて頂きました。
何だか余計な人が出てきていますが、何だか流れ(?)に乗ってしまったようでして、本当に心から申し訳ございません(土下座

呼び方などが違うとか、口調などに違和感のあるところがございましたら、いつでもお気軽にがしがしリテイク下さいませ(土下座
皆様のイメージ通りの、気の置けない友人同士の見守り、見守られる素敵な結婚式のノベルになっていれば良いのですけれども。

それでは、これにて失礼致します(深々と
WTアナザーストーリーノベル -
蓮華・水無月 クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2014年04月23日

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