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『スイーツ祭典は最愛の人と 〜猫野・宮子編〜 』
猫野・宮子ja0024

☆スイーツよりも甘いデート
 バレンタインデーとホワイトデーが2月・3月と続く今、とある地域でスイーツ祭典が開催されることになった。
 スイーツ祭典では世界各国の様々なスイーツを食べることができると聞いて、ALと宮子は来てみたが……。
 二人一組で入場するのだが、甘い仲である(仲が良い)ことを証明する為に相手の頬にキスをしなければいけないことを知り、入口で固まってしまう。
「みっ宮子様、緊張しなくても大丈夫です! この祭典に来ている人達はみな、同じことをしているのですから!」
「たっ確かにお互いの頬に、キスをしているわね……」
 二人の目の前で、いろんな人々のキスが繰り広げられていく。誰もが少し恥ずかしそうに照れながらも、それでも幸せそうな表情で入場している。
「こっここで立ち止まっていても寒いだけですし、行きましょうか」
「そっそうだね」
 寒さからとは違う別の理由で顔を真っ赤にしながら、ALと宮子は入口に向かう。そしてチョコレート色のスーツを着た受付の女性の目の前で、お互いの頬にキスをした。すると入場を許可されて、貸衣装の店がある場所を教えられた。この会場の中では着替えて洋装することがルールらしいので、入場者は着替えなければならないのだ。
 宮子とALは会場内を歩いている人々の服装を見て、ギョッとする。
「洋装というか、仮装っぽいね。ううっ……! 知り合いがいないことを願うよ」
「そっそうですね。結構、派手なお召し物ですし……」
 二人は入場してすぐに男女分かれた貸衣装の店を見つけて、着替える為に一旦別れることにした。
 そして十分後、黒のタキシード姿になったALが店から出てきて、心配顔でまだ姿が見えない宮子を外で待つことにする。
「僕は洋装を着慣れているので平気ですが、宮子様は大丈夫でしょうか?」
「おっお待たせ、ALくん」
 しばらくして店から出て来た宮子は、可愛らしいデザインの真っ赤なドレスに身を包んでいた。
 ALは大人っぽい雰囲気がある宮子の姿を見て、紫色の瞳を大きく開き、興奮気味に駆け寄る。
「宮子様っ……! とても麗しいドレス姿でございますね」
「普段はこんなドレス着ないから、落ち着かないんだけどね。ALくんは何だかしっくりくるよ」
「ありがとうございます。よければ僕の腕を、お貸ししましょうか?」
「うん、お願い。実はこのブーツ、ヒールが高くて歩くのが大変なんだよ」
 少しヨロヨロしながら歩き、宮子はALの腕に捕まった。
「さて、どこへ行きましょうか? 僕も甘い物が大好きですけど、やっぱり女性のワガママを優先したいと思います」
「ん〜、それってボクの行きたい所で良いってことかな? だったらスイーツの屋台で食べ歩きをしてみたいな♪」
 二人は恋人のように腕を組みながら、屋台を回って行くことにする。
 まずは近くにあった屋台のホットショコラを飲む。ALはマシュマロ入り、宮子は生クリームたっぷりのを飲んで、ほっとしたように白い息を吐く。
「美味しいですねぇ。ほんの少しですけどお酒が入っているおかげで、体があたたまります」
「うんうん。それに甘くて最高だよ! ねぇねぇ、ALくんのマシュマロ入りはどんな味なの? ボクのも飲ませてあげるから、一口良い?」
 二人はホットショコラで体をあたためた後、様々なスイーツの屋台を見て歩く。
「バレンタインデーとホワイトデーを合わせたイベントだけあって、チョコスイーツの他にもいろいろとありますね」
「ホワイトデーによく見るマカロンやマシュマロ、キャンディーやクッキーもいっぱいあるね。あっ、猫の形をしたお菓子も売っているよ!」
 多種多様なスイーツを見て目を輝かせながら、二人はいろいろな種類のお菓子を食べていく。あえて違う種類のスイーツを選んで、お互いに食べさせ合い、笑い合う。
 クレープの屋台でALはバナナチョコを、宮子はイチゴを買って、食べながら歩く。
「このクレープも普段食べているのとはまた一味違って、美味ですね。ほっぺが落ちるとは、まさにこのこと……」
「あれ? ALくん、顔に生クリームがついちゃっているよ。取ってあげるから、止まって」
「えっ! おっお願いします」
 ALはびっくりした表情で立ち止まると、宮子の身長に合わせようと少し屈んで目を閉じる。
 すると宮子はニヤっと笑い、ALの口元についた生クリームをペロッと舌で舐めた。
「うひゃあっ!? みっ宮子様! 今、何をっ……」
「えへへ♪ ここではこれぐらいしても、大丈夫でしょ?」
 赤い顔でそれでも一生懸命に笑みを浮かべる宮子を見て、ALは熱いため息を吐くしかない。
「……まあ確かに、この場は特別ですからね。周囲にいる人達も、似たようなことをしていますし」
 二人の近くにいる人々も、笑顔でイチャついている。恋人だけではなく、友達や家族など、一緒にいると嬉しくて楽しいと思える人といるせいか、人目を気にしていない様子ではしゃいでいた。
 そんな熱々の空気に当てられたのか、宮子は少し大胆になっているようだ。
 クレープを片手に甘えるように寄り添ってくる宮子の肩に手を回し、ALは浮かれる気持ちを抑えつつクレープを食べる。


 二人が一通り飲み食いを終えた頃、すでに空は闇色に染まりつつあった。建物や屋台はライトアップされて、街灯と照明の光もつけられる。
 幻想的で美しい光景に、二人はうっとりした表情で周囲を見回す。
 ふとALは人々がどこかへ向かう姿を見て、入口で見た看板を思い出した。
「そういえば夜になると、広場でダンスパーティーが行われるそうです。行ってみませんか?」
「ダンスパーティーかぁ。……あんまり上手に踊れないんだよね」
 しかし宮子はダンスに自信がないのか、少し暗い顔つきになる。
 そんな彼女に向けて、ALは輝く笑みを浮かべて見せた。
「では僕にお任せください。レディをエスコートするのは、紳士のつとめですから。ダンスと言いましてもあまり難しく考えず、僕にくっついて動いているだけでも十分ですから」
「ん〜。それならいいかな? じゃあよろしくね、ALくん」
 二人が広場に到着した時には洋楽器の生の演奏がはじまっており、人々が楽しそうに踊っている。
「音楽のリズムに合わせて体を動かせば、それだけで立派なダンスに見えますよ」
「アハハ。確かに気軽で良いみたいだね。みんな、楽しそうに踊っているし」
 ほっとした宮子はALと向かい合いながら手をつなぎ、体を動かし出す。
「今度、宮子様にダンスを教えますね。社交界デビューの為に」
「うっ……! そっそんな日は永遠にこないと思うけどね」
 ALの意味ありげな笑顔を間近で見ていられず、宮子は思わず顔を背ける。それでも二人は体勢を崩さずに、踊り続けられた。宮子はALのリードのおかげであることに気付き、ちょっとだけ複雑な気持ちになる。
「ALくんって割と何でも器用にこなすよね。ボク、ALくんが失敗したところ見たことないかも」
「そうですか? それはきっと、宮子様のお世話をすることを心から喜んでいる証拠でしょう。宮子様の幸せそうな顔を見ることが、僕の幸せですしね」
「うぐっ!? ……そういうことをアッサリ言えちゃうって、どうなのよ?」
 宮子が俯きながらブツブツ言っている間に一曲終わり、二人は広場から少し離れて休憩することにした。
 ライトアップされた広場で、音楽に合わせて楽しそうに踊る人々を見ているうちに、宮子の顔に自然と微笑みが浮かぶ。
「……凄くキレイな光景だね。今日、ALくんを誘ってここに来れて良かったよ。とっても楽しいんだもの」
「『とっても美味しかった』のお間違いでは?」
「うっ! そっそれは否定できないけど……」
 珍しくも美味しい世界のスイーツを食べまくった宮子は、本当に幸せそうだった。
 そんな宮子を見つめていたALも、幸福な気分になれたのだが……。
「……でもいつか、僕だけの力であなたを幸せにしたいですね」
「ん? 何か言った? ALくん」
 ALの小さくも強い意志がこもった呟きは、宮子の耳に届かなかったものの、彼は本心を隠すように笑顔を浮かべる。
「そろそろ夜が遅くなってきました。この衣装を返さなければいけませんし、行きましょうか」
 宮子は広場にある時計塔を見て、目を丸くした。
「うわわっ、かなり遅い時間になっちゃった! 早く行こう!」
 ALの手を掴んで走り出そうとした宮子だが、慣れないブーツのせいで一瞬転びかける。
「きゃあっ!」
「宮子様っ!」
 慌ててALが支えてくれたおかげで転ばずに済んだが、宮子の心臓は痛いほど高鳴り、背中に嫌な汗が流れた。
「あっありがとう……」
「そのブーツで走るのは危険です。ですからこうしましょう」
 ALはヒョイっと宮子をお姫様抱っこする。
 宮子の胸は、先程とは違った意味で鼓動が早くなった。
「ALくん、恥ずかしいよ。他の人もいるし……」
「この場ではアリですよ。宮子様だって、先程似たようなことを仰ったではないですか」
「ううっ……。こんなところで反撃するとは……」
「時間が惜しいですし、急ぎます。しっかりと捕まっていてください!」
 ALは宮子を離す気はないらしく、そのまま負担をかけないスピードで走り出す。
 必死にALに抱き着きながら、宮子は彼の真剣な横顔を見て呟く。
「……何だか王子様みたい……」
「はい? 何か仰いました?」
「えっと……、ありがと!」
 宮子は誤魔化すようにALの頬に口付けたものの、逆に二人とも、もっと照れ臭くなってしまった。


★彼女の思いは……
「……何か今日のALくんがステキ過ぎたせいで、食べたスイーツの味がよく思い出せないよぉ」
 自分の部屋に到着した途端、宮子は真っ赤な顔でがっくり項垂れる。
「お土産も買ってもらったけど……。でもALくんはボクが部長をしている部活の部員であり、そして師匠と弟子の関係なんだから、本来ならボクが買ってあげた方が良かったのかも」
 紙袋の中から買ってもらった猫の形をしたキャンディーとチョコレートを取り出し、宮子は深いため息を吐く。
「ALくんってプライベートだと、ボクをスッゴク甘やかすんだよね。嬉しいんだけど……でも他の女の人にも同じことをするのかな?」
 宮子はALが美しい女性と共にいる姿を想像し、ムッとする。今日、自分に向けられた笑顔やお姫様抱っこを他の女性にしている場面も思い浮かべると、胸の辺りがムカムカしてきた。
「……何だろう? この嫌な気持ち……。ヤダな……。甘い物、食べ過ぎちゃったかな?」
 胸の辺りを手でさすりながら、窓越しに星空を見る。
「また今日みたいに、ALくんと二人っきりで出かけたいな」
 宮子はまだ、ALへの気持ちの名前を気付かずにいた。


【終わり】

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb4583/AL/男/13/ダアト】
【ja0024/猫野・宮子/女/14/鬼道忍軍】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびは依頼をしてくださり、ありがとうございました(ペコリ)。
 友達以上、恋人未満の関係の中でも、今回は特にイチャイチャ&アツアツぶりを強調して書かせていただきました。
 『★』の部分からは個人ストーリーとなっていますので、お二人分を合わせて読んでいただければと思います。
 ではまた機会がありましたら、よろしくお願いします。
不思議なノベル -
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エリュシオン
2014年03月31日

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