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『湯けむり慕情・あばれ旅 』
小野友真ja6901)&青空・アルベールja0732)&喜屋武 響ja1076)&亀山 淳紅ja2261)&百々 清世ja3082




 風薫る5月。
 若葉が陽の光を遮る木陰のベンチに人影を見つけ、小野友真と亀山 淳紅は顔を見合わせた。
「なあ淳ちゃん、あんなところで珍しいな?」
「うん。なんとなく黄昏てる感じやねえ……?」
 二手に分かれて大きく目標を迂回。タイミングを合わせ一気に距離を詰め、同時に背後から近寄り……
 わっと声をかけようとした瞬間、ジュリアン・白川が警戒心も露わに振り向いた。
「……何をしてるんだね、君達は」
 ばれていた。
 友真と淳紅はちょっと可愛くポーズを作り、親愛の情であることをアピールする。
「えへへ、こんにちはー」
「どうもですう」
 両脇を挟むように並んで座り、白川が手にしたチラシを覗き込む。
「あれー先生、温泉いくんです?」
 友真が尋ねると、白川がチラシを寄越してきた。
「駅で渡されたのをそのまま持ってきてしまったよ。見るかね?」
 書かれているのは、日帰りできる位の程々の距離にある温泉郷の名前だった。
 立ち上がりながら白川が笑顔を向ける。
「温泉でのんびり過ごすのも魅力的だがね。ひとまずは次の授業があるので、失礼するよ」
 片手を上げ、白川は踵を返す。

 残された淳紅と友真は、改めて顔を見合わせた。
「先生もたまにはリフレッシュすると良いと思うん」
「温泉……行く?」
 にやり。
 すぐさま2人はスマホを取り出す。
「やっぱり賑やかな方がええもんね!」
「旅は道連れっていうしな!」
 淳紅は喜屋武 響に、友真は青空・アルベールに連絡する。
『温泉!? 行く行く超行くー!』
『男子会というのかな? たのしみだねー!』
 響も青空も即答だった。
「あとは……そうや!」
 友真は暫く考え、百々 清世に電話をかけた。
「あ、おにーさん! 温泉とかいきませんかー!」
 明るくお茶目にノリノリで。友真はうきうきと切り出した。
 が。
『あ? 温泉ー? 何でそんなとこ行かなきゃなんねえのよ』
 あからさまに不機嫌な声だ。寝起きなのかもしれない。
「え、あの、白川センセと、一緒なんで、どうかなー、て……」
 清世のテンションの低さに、友真の声が震えている。
『え、じゅりりん引率なの? ばか先それ言えよ、何泊?』
 1泊です。1泊なんです。なんかごめんなさい。
 何故か涙目で電話を切る友真を、淳紅が心配そうに覗き込む。
「どうしたん、ゆーま君?」
「な、なんか、怖かった……」
 ともあれメンバーは揃った。




 車を降りた白川は集まった顔を見渡し、どこか理不尽な思いを拭いきれなかった。
 確かに今日と明日は特に予定もない。
 だがしかし。
「白川先生、今日は宜しくお願いしますなのだ」
 ぺこりと丁寧に頭をさげる青空。
「あの有名な白川先生ですかっ!? 初めまして、ゴチになります!」
 きゃっきゃと無邪気にはしゃぐ響。当人には悪気は全くない。
「これナビ付いてんの? じゃあ後ろで寝てるわ。ついたら起こしてー」
 さっさと後部座席に乗り込む清世。
「遊園地とかって思ってたんです。でも先生温泉行くって言うたから……」
 てへり。そんな笑顔で袖を引く友真。
「あ、ちゃんとカード使える所にしときました! ご安心を!」
 いい仕事したって顔で親指を立てウィンクする淳紅。
 友真と淳紅の話に乗せられ、気がつけば団体旅行の引率である。どうしてこうなった。
 白川の視界が暗くなったのは、あながちサングラスのせいだけではあるまい。
「あー……まあいい。早く乗りたまえ」
 諦めたように白川は運転席に乗り込む。
「「「わーい、おじゃましまあーす!!」」」
 賑やかに乗り込む男子学生一同に、思いついたように振り向いて声をかけた。
「借り物だからな、お菓子はこぼさないように! 掃除させるぞ!」
「は、はーい……!」
 スナック菓子の袋に手をかけつつ、一同の笑顔が固まる。何故わかった。
 あとどうでもいいけど、先生の私服姿、凄く……胡散臭いです……。

 カラオケとお菓子と昼寝で(運転手を除き)楽しく過ごし、一度料金所で(運転手が)職質を受けたりもしたが、明るいうちに目的地に到着。
 窓を開け、響が目を見張る。
「わあ、もう硫黄の匂いがする! 温泉って感じだよねー!!」
 街道沿いに温泉旅館や土産物屋が軒を連ね、ところどころから白い湯気が立ち昇る。
 浴衣姿の人影も見え始めた。
「温泉街てやっぱりいいなー……」
 友真も目を細めて窓外を眺めていたが、不意に大声を上げる。
「あっ先生! 車止めてくださいッ、すぐ!!」
「何!?」
 白川が慌ててブレーキを踏むと、友真はドアを開けて飛び出して行く。
「本場の温泉卵発見!! 温泉卵が、食べたい、です!!」
「それかーー!!!」
 突っ込みも虚しく、なし崩しに次々と誘惑に崩れて行く一同。
「先生ー温泉饅頭! 饅頭買うてくださいー!」
 淳紅が旅情も吹っ飛ぶ、素晴らしくよく響く声で叫ぶ。
「饅頭もいいけど、私は温泉蒸しプリン食べたいなー! とにかく甘いもの、甘いもの!」
「えっ何それ、珍しい!」
「どっち? いこいこ!!」
 青空が素早く幟の文字を読みとり指差すと、響と淳紅もそっちへ走って行く。
「いつになったら目的地につくんだ……」
 白川はぐったりとハンドルにもたれかかった。




 ようやく旅館に到着し、案内されたのは中々に居心地の良い部屋だった。
「いいお部屋ですね、お世話になります」
「ほほほ、ごゆっくりどうぞ」
 お茶を淹れてくれた中居さんがいなくなると、友真は待ちかねたように立ち上がり、あちらこちらを点検し始める。
「ゆーまくん、何してるの?」
 青空が尋ねると、床の間の掛け軸をめくりながら答える。
「部屋チェックは嗜み……この裏とか見とかんと、なんか後で怖いやろ?」
 白川が笑いながら茶化した。
「安心したまえ、この賑やかさなら一人ぐらい増えてもわからないよ」
「増えるとか……! センセ、怖いからやめてください!!」
「んー、でも一人減るよりは怖くないと思うのだ」
「やめて、お願い、青ちゃんやめて……」
 震える友真を尻目に、青空はてきぱきと備品チェック。人数分の浴衣をセットにして並べる。
「浴衣の着方がわかんない人は、教えられるよ?」
 普段から和服を着馴れている青空には、浴衣はまさにくつろぎ着である。
「浴衣とかまじ久しぶりに着るやつな……」
 手早く帯を締める青空を、そっと横目で窺う清世だった。

 全員浴衣になったところで、いざ大浴場へ。
「着替えると一気に旅館来たーって感じな!」
 青空が物珍しそうにしつらえを見渡す。
「うん、なんかワクワクする! 誘ってもらってありがとうねっ!」
 響は跳ねるような軽い足取りだ。
 この中では一番年下の響だが、気兼ねなく一緒に楽しむことができるメンバーだ。自然と笑顔になる。
「こっちだそうだよ」
 白川が指さす方に、大きな紺色の暖簾が下がっていた。
「あー、どうせなら女の子も呼べばよかったのにー。ヤローの浴衣とか、全然嬉しくねえし」
 ぺたぺたとスリッパを鳴らし、清世が男湯の暖簾をくぐる。
 それにしても、このふたりの浴衣姿はかなりミスマッチである。

 大浴場はまだ早い時間のせいか、他に人影もない。
「うっわー貸切!! すごい! やばい!!」
 手早く浴衣を脱ぎ、響が手拭片手に扉を開ける。友真も後に続いた。
「おー、意外と広いし。穴場でいい感じすね!」
 それぞれ洗い場に腰かけたり、お湯につかったり。
 のんびりゆったりした時間が流れる。
「ええ湯やなぁ〜」
 頭に手拭を乗せ、いつも血色のいい頬を一層赤くした淳紅が、とろけそうな息を吐いた。
「マジ温泉、やばい。寝そう」
 清世も湯船の縁にもたれ、ぼんやり天井を見あげている。
 露天風呂へ続く扉を開くと、響が歓声を上げる。
「すごーい、いい景色! 風が気持ちいい〜!!」
 ばしゃばしゃばしゃ。
 水を掻くように、響は景色がよく見える場所へと突進する。
「青空くん、すごい! ほら、川が見えるー!!」
「ほんとに?」
 後をついて露天風呂に出てきた青空は、そこでふと抑えたくすくす笑いに気付いた。
「……?」
 どうやら目の詰まった竹垣の向こうは女風呂らしい。
 青空は低い声でそちらを指さす。
「なんか、笑われてるみたいだよ……」
「えっ」
 響は顔を赤くして鼻まで湯につかり、竹垣と青空の顔を見比べた。

「先生、いつも無茶付き合うてくれてありがとございますっ」
 身体を洗う白川の背後から友真が声をかける。
「お礼と言ってはなんですが! お背中流させて頂きまっすv」
 友真は手拭を取り出し、泡立てる。
「ははは、まあこれはこれで楽しいものだけどね。ではお言葉に甘えようか」
 白川がそう言いながら顔を両手で拭う。その肩には薄く、けれどはっきりと皮膚の色が違う筋が走っていた。
「……この前の依頼でもお世話になりました」
 言いたいこと、聞きたい事がこみ上げそうになるのを堪え、友真は広い背中を流す。
「どうしたね?」
 何か言いたげな気配を察し、白川が促した。
「いえ。あーなんか、温泉の匂いって目に沁みますよね! はい、いっちょあがりぃ!!」
 敢えて明るく声を上げ、友真はざばりと手桶の湯をかけ流すと、そそくさと湯船につかる。
「ゆーま君、泳がへんの? 広いで?」
 淳紅がニヤリと笑うが、友真は真面目な顔で首を振る。
「だって浅いし」
 ……深かったら泳ぐのか。
「その代わり……油断大敵! くらえ、温泉水精密狙撃!!」
 両手を組み合わせた水鉄砲が、淳紅の顔に水を噴射。
「うわぷっ!? よおし、おかえしやあ!! 温泉水マジックスクリュー!!」
 片手用の手桶を手に取り、淳紅が振り回す。
 露天風呂から響と青空もわくわくしながら戻ってきた。
「なになにー! 何やってんの?」
「私も混ざるのだー!」
 ばしゃばしゃと水を跳ねて、男子4人が大騒ぎ。と、思ったその時。
 カ、カ、カ、カコーン!
「いでっ!?」「おうふ!」「うきゃ!?」「うわ!!」
 白川が投げた石鹸箱が、水切りのように正確に全員の頭を跳ねて行ったのだ。
「……」
 無言で笑顔の引率者。
「おっさきー!」
 我関せずとばかり、清世はとっとと出て行った。




 扇風機の風で身体を休め、再び浴衣を身につけた一同は大浴場を後にする。
 お約束のように通路にはマッサージ椅子、自販機が並び、ゲームコーナーから響く賑やかな音が溢れていた。
「先生、大事なお話が!」
 不意に白川の袖を引き、淳紅が真剣な顔で見上げてきた。
「どうしたね?」
「お風呂上がりに、牛乳! 忘れてました!!」
「……」
 淳紅が指さす先には、牛乳の自販機。
「銭湯じゃないのだからね……」
 等と言いながら、白川は小銭を取り出す。
「せ、せんせい、ちょい高めのフルーツ牛乳でもええですか!」
「あーもう、好きにしたまえ」
「わーーい!!」
(この扱いは喜ぶべきか、嘆くべきか……)
 少し前まで、物陰からこわごわこちらを窺っていた淳紅の変わり様に、複雑な思いの白川である。

 休憩所に腰掛けて休んでいると、どこからか小気味よい音が聞こえてきた。
「卓球がある!」
 青空が腰を浮かせた。
「めんどくせえし疲れるし。卓球とかしたことねぇし……」
「やってきていいよ。私はここで待っているからね」
 あからさまにパスする気満々の清世と白川だが、激しくブーイングが起こる。
「ええええどうせやったらみんなでやりましょうよ!!」
「えー……じゃあ負けた奴がジュース奢りな」
「「その勝負乗ったぁーー!!」」
 清世の提案に、青空と響が激しく反応。当然友真と淳紅もノリ気だ。何に負けたわけでもないのに、既に牛乳を奢らされた白川だけが無言である。
 だがそんなことは気にしない。
「丁度6人やしくじでダブルス組んで総当り戦? それともシングルスバトル? 先生どっちがいいと思う?」
 友真がうきうきと、備えつけの黒板を引きずってきた。
「あー……ダブルス総当たりの後、最下位チームの二人がシングルで戦えばいいのではないかね」
 白川の(最も試合数が少なくて済む)提案に従い、チーム分けの籤引きとなる。
 響&青空、友真&白川、清世&淳紅の3チームに分かれ、総当たり。

「本気で行くで?」
 友真がボールをふわりと投げる。コーラがかかっているのだ、負けられない。
「インフィの命中率を見せて……あれ、結構みんなインフィだったな! ならば尚更、負ける訳にはいかないのだー!」
 物凄い形相で、台の上で跳ねたボールを青空が打ち返す。普段のどこかおっとりした風情とは別人のようだ。何と言っても、コーラがかかっているのだから。
「インフィ勝負で負ける訳にはいかないのだよ!!」
 白川、大人げなくスマッシュ。インフィの技術はどう見ても関係ない。
「みんなすごいね……でもコーラ奢ってほしいし、頑張るよー!」
 響も食らいつく。
 淳紅はゆらりとラケットを構え、気迫を見せる。
「ええやろう……No1ダアトの力を見せたろうやないか……」
 何がどうNo1なのか、ダアトと卓球に何の関係があるのか。そういうことはこの際関係ないらしい。
「えー、これこうやって打ち返したらいいの?」
 周りの熱気と無関係に、自分の正面に来たボールだけを適当に打ち返す清世。初めてという割に、ちゃんと打ち返せているのが謎だ。
 
 その結果。
「わ、私としたことが……」
 orz の姿勢で膝をつく青空に、容赦なく手が伸びた。
「「「ゴチでーす♪」」」




 部屋に戻ると、隣の部屋に食事の用意ができているという。
 勿論すぐに移動。お膳がきちんと並んで、皆の到着を待っていた。
「汗流してお腹すかせて晩ご飯、すっごい贅沢!!」
 友真がさっそく覆いの紙を取りのける。
「えーとまあ、皆、これからも怪我しないように元気に過ごしてほしい」
 白川の誰の事だよと言いたくなるような謎の発声で、食事スタート。
「やっぱ旅館の晩御飯ってええなあ」
 淳紅が嬉しそうに蟹の身をほじり、青空が笑顔で頷く。
「美味しいもの皆で食べてって幸せなー」
 響は終始ニコニコしながら、忙しく箸を動かしていた。
「うん、美味しい! あっ、これも美味しい!」
 腹ペコの男子学生の食欲は、とどまる所を知らない。
「ほたて! 蟹! もうめっちゃ幸せ……」
 友真は目をうるうるさせ、じっと白川を見つめる。
「……良かったら、これも食べたまえ」
 根負けして自分の分を差し出す白川。
「わあ、ええんですかっ! 先生優しい!!」
「あ、エビさん、私のな!」
 青空が容赦なく箸を突き出し、皿は綺麗に空になった。


 賑やかな食事を終えて部屋に戻ると、既に布団が敷き詰めてあった。
「わーっ、お布団! 気持ちいい〜!!」
 響がさっそくダイブ。糊の匂いがいかにも清々しい。
 淳紅がいそいそと自分の鞄を抱えて、窓際の布団に向かう。
「自分まどぎw……」
 ふとそこで、さっき友真がめくっていた掛け軸が目に入った。
 ひとり増える。ひとり消える。その会話が思い出される。
「……いや、やっぱり真ん中がええな……」
 窓や掛け軸を見ないように、なるべく皆とくっついていられる場所を確保する淳紅。
「どうしたのー?」
 布団の上をころころ転がっていた響が、きょとんとして見上げる。
「えっと、良かったら、隣で寝てもええかな?」
 淳紅はそう言いながら、そっと響の荷物を自分の横に引っ張って来た。
 響の明るさは、怖い物を近づけさせないような気がするのだ。
 そんな淳紅の思惑を知らず、肘をついて寝そべって響が嬉しそうに笑う。
「うん、いいよ! 何だか合宿みたいで楽しいよね!」

 それぞれが自分の場所と定めた布団に潜り込む。
 例の床の間の前の布団は、「先生、上座へどうぞ」という理由づけで白川に。
 その向かいの布団に、煙草を吸うのに便利だと清世が座り込む。
 白川の隣に淳紅、その隣に響。淳紅の位置は床の間が近いが、まともに見なくて済む。
 寝相が良さそうで転がり出ないだろうという理由で、青空が入口に近い場所。
 友真はその隣、清世との間だ。

 思い思いに布団に潜り込んだり、起き上がって胡坐をかいたり。
 暫く取り留めのない話をしていると、白川の携帯が鳴った。
「何だ? ……ちょっと失礼」
 白川が部屋を出て行った。

 その直後。
 響が囁くように言いだした。
「あのさ、枕投げって、やったことある?」
 旅館で枕投げ。青春の象徴。永遠の憧れ……らしい。
「ええね。枕投げしましょ、枕投げー♪」
 淳紅がもぞもぞと起き上がると、自分の枕を抱える。
 唐突に起き上がった青空が、力いっぱい枕を振り被った。
「さっきのお返しなのだ。いっけーーー!!」
 青空の枕は、先刻卓球でボコられた淳紅の顔に。
「ぶほっ!?」
 それが戦闘開始の合図だった。
「負けへんでー!!」
「かかってこいやー!!」
 ぼふーん。
 ばふーん。
 飛び交う枕が宙に弧を描く。
「しらねーぞ……」
 清世は窓際の籐椅子に避難し、細く開けた窓に向かって煙草の煙を吐きだした。
「きゃあああ」
「うおおおお」
「ひゃあああ」
 奇声と物音は次第に大きくなり……
「こらあーーーーッ!!!!」
 戻ってきた白川の一喝で、ようやく収まった。




 行燈型の灯が、暗い室内に柔らかな明かりを投げかけていた。
 穏やかな寝息が布団から漏れ聞こえて来る。

「じゅりりん、お疲れー」
 窓際の椅子にぐったりと沈みこんでいた白川に、清世が抑えた声をかける。
「ガキども寝たから……飮も?」
 冷蔵庫から取り出したビールや缶チューハイを座卓に並べ、手招きする。
「……少し貰おうか。私は運転に響くと困るから、君ほどは飲めないが」
 ニヤリと笑う白川にグラスを握らせ、清世はビールを注いでやる。
「心配しなくても、俺だって出先で酔い潰れる程は飲まねぇって。信用ねえな……?」
 さも心外そうに言いながら、チューハイの缶を取り上げた。
「ま、かんぱーい」
「乾杯」

 小声でかわされる会話、小さな笑い声。
 ささやかな酒宴を、布団の中からそっと友真が見守っていた。
 大騒ぎして叱られて、それも旅行の華のうち。
 収まらない興奮のせいもあったが、それよりも何だか眠ってしまうのがもったいないような気がして、寝付けないまま友真は皆の寝息を聞いていた。
 素晴らしい「今」はずっとは続かない。それは知っている。
 それでも、なるべく長く。そう祈らずにはいられない。


 そうして夜も更けた頃。白川が時計を見て切り出した。
「我々もそろそろ休むとしようか」
「あー、そうする? ちょうど酒も無くなったわ」
 辺りを片付け、清世と白川もそれぞれの布団に移動する。
「じゅりりん」
 清世の呼びかけに、白川は布団をまくり上げた手を止め、首を巡らす。
「なんだ?」
「おやすみの……」
「……………………」
 何を言い出すんだ何を。
 白川の無言の抗議を知ってか知らずか、清世は少し考え込む。そして白川の片手を持ち上げた。
「ちゅー、な」
「……………!!!」
 指先に弾力のある暖かさ。白川は騒ぐ訳にもいかず、声にならない声で布団を掴む。
「おやすみー、じゅりりん」
 清世はさっさと布団に潜り込むと、満足そうに白川を見上げる。
「全く……!」
 白川は軽く清世の額を小突くと、自分も布団に潜り込んだ。


 ……この状況に一番驚いたのは、友真かもしれない。
(お、おにーさんと、先生って……!?!?!?)
 ますます眠れないまま布団をかぶり、ひとり狼狽するのであった……。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ja0732 / 青空・アルベール / 男 / 18 / 浴衣マイスター】
【ja1076 / 喜屋武 響 / 男 / 18 / 青春の枕投げ】
【ja2261 / 亀山 淳紅 / 男 / 19 / 寝床は真ん中】
【ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 / みんなのおにーさん】
【ja6901 / 小野友真 / 男 / 18 / えらいものを見ました?】

同行NPC
【jz0089 / ジュリアン・白川 / 男 / 28 / 引率担当】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
男子5人+1の賑やか温泉旅行をお届します。
NPCもお誘いに乗っかり、大いに楽しませて頂きました!
尚、卓球の組み合わせと勝敗は厳正なる(?)ダイスの結果によるものです。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
樹シロカ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年05月01日

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