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『魔法少女ナギリンOVA〜SiRent City〜 』
暮居 凪ja0503)&ルドルフ・ストゥルルソンja0051)&御手洗 紘人ja2549)&桐生 凪ja3398)&月居 愁也ja6837)&アスハ・A・Rja8432

●邪道!いつもと違う始まり

 クオン・シティ。
 二度の魔法少女大戦を経て、未だ修復の過程にあるこの街。
 暮居 凪は、今日も平和な一日を過ごしていた。

「今朝の授業は‥‥げっ、古文。‥‥余り好きではないのよねぇ」
「なら、チェリーと契約して、またテンマと――」
「フンッ!」
「!?!?」
 狐のような小動物が、彼女の前に現れる――その瞬間に、気合の一声と共に、凪の靴底がその小動物の顔にめり込み、遥か空の彼方へと蹴り飛ばす。
「はーあ。朝から嫌な幻覚を見てしまったわ。さて、学校学校」
 まるで何もなかったかのように、凪は学校への道を進む。
(「これ以上、平和な生活を邪魔されるのは、勘弁だわ。もう、誘惑には惑わされない」)

「えーいしょ」
 ビルの屋上に、頭からコンクリートにめり込んだ何か。
「うんしょ。‥‥とと」
 壁から、多大な労力を以ってして顔を引きずり出したその狐のマスコット。
 その勢いでぺたんとしりもちをついて、チェリーチェリーは考える。
「うーん、やっぱり何度も同じ勧誘をしちゃうと、避けられちゃうよね。この展開もマンネr――」

 ドカバキグシャゲシゲシドコン
 〜現在、禁句を言ってしまったチェリーチェリーへの教育及び修正中です。暫くお待ちください〜

「‥‥うーん、やっぱり何度も同じ勧誘をしちゃうと、避けられちゃうよね。何か新しい手を考えないと」
 何やら今見苦しいシーンが入って修正された気もするが、気にしてはいけない。
 大人の事情に触る方が悪いのである。

「そうだ!なら、強制的にナギリンが変身したくなる状況を作ってしまえばいいんだ!」
 ――寧ろ、全ての黒幕は、この狐なのでは無かろうか。


●強行!異世界への誘導

 午後。
 一日の授業を終え、帰宅する凪。
(「はぁ‥‥平和な一日。それに越したことは無いわね」)
 だが、彼女の足が、とあるマンホールを踏みつけた、その瞬間。
「っ!?」
 魔方陣がマンホールに浮かび、光りだす。
 彼女がそこから脱出できる前に、光の壁が彼女を包み込み――そして、次の瞬間。マンホールのふたと共に、彼女の姿は消えていた。

「よしよし、これでおっけー!」
 それを見届けた狐のマスコット――チェリーチェリーの姿もまた、同様の光の壁に包まれ、消えていた。


「ん‥‥ここは?」
 光の壁が消え、凪が周囲を見回す。
 町並みは殆ど元に居た場所とは変わらず。だが、それでも違和感を感じるのは、恐らく余りにも「人気」がないせいだろう。

「あちゃー、ここに飛ばされちゃうなんてね」
 聞き慣れたその声に、条件反射の如く猛烈なバックスピンキックを繰り出す凪。
「いいのかなー?チェリーがいないと帰れないよ?」
 シュッ。
 猛烈な蹴りは、狐のマスコットの鼻先1cm未満の所で停止する。
 内心冷や汗を浮かべながら、チェリーチェリーは飽くまでもポーカーフェイスで話を続けていた。
「この世界から元に戻るには、ナギリンの魔力を『不憫王』っていう人にぶつけて、ゲートを開かなきゃならないんだよ〜☆」
 ギロッ。
「‥‥何でこんなに詳しく知っているのかしら?」
 異様な迫力をその全身から放ち、凪がチェリーチェリーに迫る。
 狐、がくぶる。
「あ、ちょっとナギリンのための準備があるから、チェリーは先に行くねー☆」
 神速の四足走行が土煙を巻き上げ、チェリーチェリーの姿が一瞬で遥か彼方へと。

「待ちなさ――ッ!?」
 追おうとしたその瞬間、響き渡るサイレンの音。
「っ、何これ‥‥!?」
 思わず耳を押さえ、足を止めてしまう。だが、彼方へと走るチェリーチェリーをその目に捉え、再度追跡しようとしたその瞬間!

「!?」
 キン。
 矢が彼女の前に突き刺さり、吹き出す冷気が行く手を阻む。

「――今、不憫王と言ったな?」
 現れたのは、タイトスカートに身に纏い、黒装束に身を包んだ弓を構えた者。
「誰っ!?」
「聞かれたならば仕方ない」
 何故急に態度が一転した。
 ‥‥ま、まぁ、それも魔法少女のお約束、といえば仕方ない。
「魔法少女ルドレッド! ただいま参上!
 俺の氷は結構コールド、あんたの居場所をがっちりホールド☆」
 ‥‥著作権大丈夫なのだろうかそれは。
 そんなどこかで聞いたような決め台詞を吐いた謎の魔法少女(?)に、目尻を押さえる凪。
(「どうして私の周りにはこう変人ばかりが集まるのかしら‥‥」)
 恐らくはそれが運命なのでしょう。恨むなら某狐マスコットを恨んでください。


●変身!魔法少女ナギリン参上

「さぁ、不憫王をどこへやった‥‥!」
「それは私が知りたいわよ!」
 思わず直ぐ近くにある何かを掴み、すぱーんと突っ込みを入れてしまう。
「まったく‥‥どいつもこいつも。‥‥あ」
 気付くのが、一歩遅かったようだ。
 ツッコミの為に凪が掴んでいたのは、魔法少女ナギリンへの変身アイテム。『ディバイン☆ブレイド』なのであった。

「ふふふ。成功なのですよー☆」
 どこかで笑うチェリーチェリー。恐るべき孔明の罠である。

 ♪♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪
 凪の意思とは無関係に、まばゆい光が彼女を包み込み、服を吹き飛ばし――
 布が絶妙に危険な場所をぎりぎりで隠しながら、彼女の体に巻きついていく。
「魔法少女ナギリン、ただいま参上っ!」
 一回転して『キラッ☆』のポーズを取った‥‥と思ったら、すぐにorzのポーズになってしまう。
「やってしまった‥‥」

 そんな凪改め、魔法少女ナギリンの心中は露知らず。ルドレッドは、武器である弓を構える。
「大人しく言うつもりは、ないんだな」
「だから知らないってば!」
「しかもナギリンの名を語る偽者か‥‥ならば、捕まえて強引にでも聞き出す!」
「偽者って何の話よ!っていうか人の話を聞きなさい!」
 しゃがみ、バネを精一杯に使っての跳躍。そこから放たれるナギリンの蹴りが、一直線にルドレッドを襲う。
「甘い‥‥!」
 連射で放たれる氷の矢。
「その程度、砕いて――!?」
 連続で回転蹴りを放ち、飛来する矢を砕く。だが、その勢いに押されて着地した瞬間。ナギリンは、脚が動かせなくなった事に気付く。

「凍結――!?」
 見れば、脚はヒールごと、地面に氷付けされている。
「がっちりホールド☆ って言ったろ?」
 にやりと笑い、タイトスカートの魔法少女は更に弓に氷の矢を具現化させる。今度は牽制ではなく、一矢で絶対領域を貫くつもりだ。
 片足が動かない状況では回避できない。かと言って迎撃すれば今度こそ両足が氷付けにされ、確実に次の攻撃が命中する事になる。
(「ここまでなの‥‥!?」)
 ナギリンの頬を、一筋の汗が伝う。


●強襲!新たなるドン・アスハ

「これで‥‥終わりだ!」
 射出される巨大な氷矢。
「仕方ないわね‥‥!」
 氷付け覚悟で、蹴撃で迎撃しようとナギリンが脚を上げた瞬間。
 人影が、その前に躍り出る。
「はぁぁッ!」
 爆発音と共に、水蒸気が辺り一帯を包む。

 それが晴れた時、そこに立っていたのは、鬼の面をつけ、巨大なパイルバンカーを構えた謎の男。
「一つ、響くサイレン異なる世に」
 ガシャン。パイルバンカーから機械音。
「二つ、粉砕するは我が鉄杭」
 ガシャン。
「三つ、見よこの突貫力! ドン・アスハ‥‥参上!」

「え、あんた、ドン・アスハだったの!?」
 意外な事に、驚愕していたのは敵であるルドレッドではなく、救われたナギリンの方であった。
「どうしたナギリン。幾度とバンカーを交えた、このドン・アスハを忘れたと言うのか」
「毎度登場する度に面が変わるせいでしょうがっ!!」
 ツッコミ(踵落とし)を受けても鬼の面が割れなかったのは、さすがドン・アスハと言った所か。

「で、何でここに来たのよ」
「いや、ゲームをやっていたら、画面に吸い込まれたのでな。ついに二次元の世界に入り込めた!と思ったら、到達した場所がここだったのだ」
 何とも締まらない話である。
「テンマと連絡を取ろうにも、応答がない」
 困った話だ、と頭を振るドン・アスハを他所に、驚愕したのは、今度はルドレッド。
「テンマ‥‥だって!? そんな、アレは、俺とナギリン様が3年前に、壊滅させたはず‥‥」

 ん?何か今凄く大切な事が言われた気がする。

「‥‥」
 じっと、ナギリンの方を見るドン・アスハ。
「いや、私は知らないわよ!?第一、最初にあんたと戦ったのは2年前だったじゃない!?」
「それもそうだった」
 もっと早く気付け。

「その残党がいるとなれば、見過ごせない‥‥死んでもらう!」
 扇状にばら撒かれた矢が、一斉に四方からドン・アスハに向かう。
「その程度で‥‥僕を止める気か‥‥!」
 振り抜かれたバンカーが、全ての矢を迎撃する。凍結される前に、バンカーから迸る熱気が、冷気を相殺し、水蒸気となり辺りに散らばる。
 その霧を目くらましとし、ドン・アスハが急襲。突き出されるバンカーはまず地面に刺さり、爆風が吹きあがる。だが、タイトスカートに包まれたルドレッドの絶対領域は強固であり、一ミリたりとも揺らいでいない。
「ならば直接貫くまで‥‥!」
 重量のあるはずのそのバンカーを、軽々と引き上げ。受身を取ったものの空中に飛ばされたルドレッドへ、一直線に突き出す。
「くっ‥‥」
 矢を自ら粉砕し、氷の壁として一撃を防ごうとするルドレッドだが‥‥突破力に優れるバンカーを止めきれず、貫通されてしまう。
 バンカーはそのまま、絶対領域と接触し――
「領・域・喪・失ッ!!」
 破壊する。


●驚愕!二人のナギリン

「何っ‥‥!?」
 振り向き、ドン・アスハはまたもや驚愕する。
「そんな‥‥魔法少女は絶対領域を失うと、魔法の力が――」
 ナギリンもまた、以前チェリーに言われた事を思い出す。
 あの狐マスコットが嘘八百を並べていた可能性も考えたが、過去に魔法少女オクトスルーが領域を喪失した時の事を思えば、信憑性は高い。

 ――ならば、何故倒れた目の前の魔法少女は、未だにその力を失わぬまま、魔法少女装束なのだろうか。

「‥‥無様ね、ルドレッド」
 地に伏せたルドレッドが見上げると、そこには、もう一人の魔法少女。
「凪様‥‥!」
「ナギリンと呼べと、いつも言っているよね?」
 それだけ言うと、その手に出現したのは二丁拳銃。
「さーて‥‥私のシモベをいじめたのは‥‥言うまでもなく、そこの貴方だったよね?」
 ドン・アスハへと銃を向けると共に、その顔に、凄絶な笑みが浮かぶ。
「首置いて行きなさいよ、ねえねえ?!」
 連続の銃弾。その射速はルドレッドのそれを上回り、重いバンカーで受ける事になるドン・アスハは苦戦を強いられる。
 それを横目に――

「不憫王はどこか、知っている?私が元の世界に戻るのに必要なんだけど――」
 ピタ、と新たな魔法少女(ナギリンだと紛らわしいので、監督は『ナギニン』と呼称する事にしました)の動きが止まる。
「‥‥あなた、不憫王の事を知っているの?」
 そこへ更に、火に油を注ぐようなルドレッドの一言。
「先ほど聞いたところ、答える様子がなく、抵抗されました。何か知っているかもしれません」

「よーし、力づくで聞き出しちゃうぞ?」
「お前もかっ!?」
 ずっこけるナギリン。だが、その様なコメディを行っている時間はない。
「ナギリン・バーンレイッ!!」
 ナギニンの二丁拳銃はそれぞれ彼女とドン・アスハに向けられ、太いレーザーのような光線が打ち出される。
「くっ‥‥とりあえず、落ち着いて話を聞いてもらえる状況に持ち込まないと」
 強烈な蹴りでレーザーを逸らし、そのままレーザーの上を走るようにしてナギニンに接近するナギリン。
 ――非常識極まりない技ではあるものの、魔法少女アニメに常識を求めてはいけない。
 そして、跳躍し飛び蹴りの体勢に入っているナギリンは恐らく気付いていないだろう。彼女もまた、ナギニンと同じ手段をとっている事を。

「ほらルドレッド、行って。私が無事な限りあなたも戦えるんだから」
「はい、分かりました‥‥」
 無理やり立ち上がる、ルドレッドが弓を構える。
「まずい‥‥!」
 氷の矢の威は良く知っている。故に空中で体を捻り、空中で旋風を起こして起動を変え、矢を回避する。
「掛かったね、狙い撃ちよ!」
 だが、そこへ更にナギニンの銃口が向けられる。再度、この体勢で回避するのは無理であり――ドン・アスハは、レーザーを防ぐのに手いっぱいで、動けそうにはない。

 ――だが、乱入が一度だけだと、誰か言いましたか?

「爽やかトイレタイムを台無しにするのは、誰だァアアア!」


●再来!ウォッシュレッツ激怒

 ――時は少し、遡る。
「よし、今日もクリーンになったな」
 トイレ清掃役 月居 愁也。
 彼には習慣があった。
 それは、清掃を終えたトイレで、用を足し。自らの清掃の『成果』を確かめる事である。
「あー、いいねぇ」
 某音声製品の爽やかな音を聞きながら気持ちよく――

「ん?」
 だが、異変はその時起こった。
「あ?」
 用を足した後には、当然尻を拭く必要があるのは、諸君もご存知の事であろう。
 だが、それを行おうと尻を上げようとして、抜けない事に気付いた。
 愁也の焦りは、推して知るべきだろう。
「どうなってんだこれ?まさか‥‥俺のミス?」
 使用した薬品類を思い出し、数え始める愁也。仕事にまじめなのはいい事なのだが、方向が間違ってないか。
「‥‥間違いはない――」
 その言葉を発した瞬間。強烈な吸引力により、彼はトイレに吸い込まれるようにして――その場から消えた。

「――あ、あれ?」
 起き上がった場所は、先ほどと同じようなトイレの中。
「ん、何かおかしな事が起こったと思ったんだけどな。ま、いいか」
 トイレットペーパーに手を伸ばした彼は、先ほど聞いていた某音声製品の音が消えている事に気付く。
「これこれ、最後までこれがないとね」
 スイッチをいれ、再度トイレットペーパーに手を伸ばした瞬間。

 ――ウゥーン。
 低い唸りの如くサイレンの音が、音声製品の音を掻き消した。
 ブチッ。
 怒りが頂点に達し、その髪型が逆立ち、小便小僧の彫像の如き形を呈する。俗に言う「モヒカン」の一種とも言えなくもないこの髪形は、彼が変身した証。
 かくして、トイレの平和を守るため。トイレ星人ウォッシュレッツはトイレを流すと共にバンッと扉を蹴り開き、飛び出していく。
 ――果たして彼はちゃんと、尻を拭けたのだろうか。

 そして今。降下した彼は、周りを見渡す。
「誰だァァ!このサイレンを流してるヤツはァァア!」
「またテンマ?丁度いい。一気に退治する!」
 ルドレッドが狙いを変え、ウォッシュレッツに向かい放つ。
 武器で受けたりすれば、冷気はそれを凍らせるだろう。

「逆流・六角返し!!」
 然しウォッシュレッツの防ぎ方は想像を超えていた。
 ラバーカップ(俗称:かっぽん)が絶妙なタイミングで矢の側面を捉えて吸い付き、ウォッシュレッツがそれを横に円を描くように振り回すと――水しぶきと共に、矢がそのまま逆にルドレッドに向かって飛来したのである。

「ぐはっ!?」
 自らの技を返されると思わずに、防御の準備をせず。油断した故の直撃。
 凍気が全身に回り、そのまま氷像と化してしまう。
 ――何故か像のポーズがナルシストっぽい物になっているのはこの際気にするべきではないのだろう。


●激突!魔法少女大戦!

「テンマと手を組むなんて、恥ずかしくないの、お・ば・さ・ん?」
 わざと、挑発するように、ナギニンは言う。
 ピキッ、とナギリンの額に青筋が走る。
「別に手を組むつもりはなかったわよ。けど‥‥そんな生意気な事を言うおこちゃまには、お仕置きをしないとね」

「このサイレンを止めやがれ‥‥俺の爽やかなトイレの一時を、返せェェエ!」
 ナギリンの攻撃よりも早く、襲い掛かったのはウォッシュレッツ。
 投げつけられる五本のラバーカップ(俗称:かっぽん)。それを、次々とかわし、銃口を向けるナギニン。
「その程度?アホな髪型通り、行動もアホだね!」
「俺を馬鹿にすると‥‥怪我するぜェェエ!」
 最後に投げつけられたのは、トイレ用洗剤のボトル。それをナギニンの弾丸が打ち抜くと、四方に洗剤がばら撒かれる。
「掛かったなァァア!」
 複雑な印を次々と手で組むウォッシュレッツ。これで髪型がもっとまともであれば、イケメンだったのだが――まぁ、ここで言っても仕方あるまい。
「激洗・五行水流陣!!」

 ボン、と五本のラバーカップ(俗称:かっぽん)に囲まれた中から、洗剤で泡だった水が上空へと勢いよく吹き出す。
「なっ‥‥!?」
 絶対領域の最大の弱点は、下方。
 着地し、下へ潜り込もうとするウォッシュレッツに、空中で縦回転し、頭を下へ向けるナギニン。
「ナギリン・バレットストーム!!」
 回転しながら放たれる弾丸の嵐に、ウォッシュレッツの足はとまり、ナギリンもまた接近できない。
 その隙に着地し、一気に詰め寄る。
「武器が銃だから接近戦できないと思った? ざーんねん」
 ゴッ。
 肘打ちがウォッシュレッツの腹に叩き込まれる。
「ガハッ‥‥てめぇは‥‥やっぱ偽者だぜぇ」
「何?」
 見れば、その胸には、ラバーカップ(俗称:かっぽん)が吸い付いていた。
「吸い付くのはナギリンじゃねェ‥‥行くぜ、和式・螺旋――」
 ぶち。
 あ、何か逆鱗にウォッシュレッツは触れたようだ。
 引き回される前に、突きつけられるナギリンの双銃。
「ナギリン・ゼロバスタァァァ!!」

 ドン。巨大な爆発が、遥か彼方までウォッシュレッツを吹き飛ばしていく。
「ウォッシュレッツゥゥ!」
 誰ともなく、叫ぶ。彼は、星になったのだ。


●意外!不憫王

「くっ‥‥ナギリン、アレは強敵だ」
「言われなくてもわかってるわよ」
「かくなる上は‥‥先にそちらが突撃して、その隙に僕が」
「ごたごた言ってないで囮になってきなさい!!」
 げしっ。強烈な蹴りがドン・アスハの尻に突き刺さり、彼は一直線にナギニンへと飛んでいく。
「どうせ飛ぶなら、やってやろうじゃないか‥‥!喰らえ、バンカー・ガトリングストレッチ!」
 突き出される無数のバンカーの幻影。しかし、脅威の反応神経で、ナギニンは次々とそれを捌いていく。
「最強にして最後の魔法少女の名は、伊達じゃないのよ――!」
 ガッ。
 僅かな隙を突いて、ドン・アスハの襟元を掴み、そのまま大回転して投げ飛ばす。
 空中にいる彼に、ナギニンの銃口が向けられる。
「‥‥ここまでか。ナギリン‥‥貴様は僕の――」
 ドン。

「油断は禁物よ!」
 銃口が上を向いたその一瞬。ナギリンはナギニンの足元にスライディングで近づいていた。足を交差させ、そのまま挟み込み転倒させる。
「ナギリン・シザーブレイカー‥‥このまま折られたくなければ、降参しなさい」
「ふ、ふふ、おばさん、そんな脅しが効くと思う?」
「‥‥どうやら一度、痛い目に合わせる必要がありそうね」
 だが、その時。まばゆい光が、倒れたドン・アスハから放たれ、彼の体は二つに分かれていく。

「不憫王さま!?」
 ナギニンが叫んだのを、ナギリンは聞き逃さなかった。
「アレが不憫王‥‥なら!」
 足のロックを解除し、全力で駆け出すナギリン。
「渡さないわ‥‥おばさんには!」
 ダメージで足は動かないものの、強引に上半身を起こし、銃口をその背に向けるナギニン。
 引き金が引かれるその瞬間。ナギリンの手が、不憫王と呼ばれた少年の背に触れ、あたりはまたもや、光に包まれた。


●普通!元に戻る日常

「あれは何だったんだろう‥‥思い出したくもないけど」
 あの異世界事件から、一週間。
 特に何も異状はなく、暮居 凪は元の生活に戻っていた。
「ねぇ、ナギリン、チェリーと契約して――」
「全ての元凶よ去れ!」
 猛烈な蹴りが狐のマスコットを蹴り飛ばす。
 ――ナギリンが平穏を得るのは、まだまだ遠そうだ。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年05月13日

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