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『エブリディ・カーニバル!〜アーリーサマー・カーニバル!〜 』
地領院夢jb0762)&鴉女 絢jb2708


 お天気がいい日のショッピングは素敵。
 それが憧れの大好きな先輩と一緒だったら最高!

「鴉女さん、こっちです、こっち!」
「夢ちゃん、こっちもいいよ」
「わっ、本当だ! 悩みますー」
 地領院 夢(jb0762)と鴉女 絢(jb2708)は本日、初夏に向けてのお買い物の真っ最中。
 ファッションビルの立ち並ぶ街。日差しは春というよりそろそろ夏の気配。
 ビルの谷間を吹き抜ける風は涼しいというより爽やかで、2人のわくわくを加速させる。
 ファッションビルはどこも初夏に向けての服をマネキンに着せて、夢と絢を誘う。その服のセンスもビルによって少しずつ違うから、お店選びは慎重に。
 あっちのお店のディスプレイとこっちのお店のディスプレイ。2人で想像力を駆使してお互いに着せ合って夢と絢は顔を見合わせた。
「こっち!」
 2人の声が揃って、思わず笑い声が漏れる。笑いながら、決めたファッションビルの中に飛び込む。
 夢と絢は学年も1つしか違わない。身長もあまり差がない。
 夢にとっては絢は可愛い上にスタイルもよい、素敵なナイトウォーカーの先輩。今日は絢に可愛らしい服を着せるべく、気合充分だ。
 ファッションビルの中は複数のテナントで成り立っている。ビルに入ってまず2人を出迎えたのはファッショングッズのお店の数々。
「鴉女さん、リボンも素敵ですけどこんなヘアゴムどうですか?」
 手にするのはふんわりピンクの花で飾られたヘアゴム。ほら、と鴉の羽のように黒い絢の髪に花を合わせると、絢はちらりと鏡を見て手を振った。
「私、こんな可愛い色似合わないよ。夢ちゃんのほうが似合うんじゃないかな」
「そんなことないです!」
 ぐっと夢は握りこぶし。
「鴉女さん、可愛いのも似合いますよ」
「ええーっ、可愛いのは夢ちゃんのほうが似合うよ。こんな感じで……」
 絢が手にとったのは少し大きめの花柄ヘアピン。同じく濡羽色の夢の髪に合わせる。
「わあ、鴉女さん、センスいいですね! 可愛い!」
「ね。どうかな」
「うーん、でも洋服買いに来たから、お金が余ってから考えます」
 お値段的には手頃だけれども、お財布の中身は無限ではない。手にとってしまいたくなる衝動をぐっと堪えて夢はエスカレーターを指さした。
「全部のお店見て回っちゃいましょう。ぜーったい鴉女さんにぴったりの洋服、見つけますから!」
「夢ちゃんのやる気……! よーし、私も夢ちゃんに似合う洋服見つけるからね」
 絢がそう言ってくれるのも夢には嬉しくて。
 はやる気持ちを押さえて、いざ、カラフルな戦場へ!

 1つのビルなのにテナントによってカラーが違うのは当然のこと。
「あそこのお店、すごい大人っぽい! 鴉女さん、着てみて、着てみて」
 夢の目に真っ先に入ったのは白地にドット柄のビスチェ風ワンピースにふんわり甘いパステルカラーのカーディガン。
「夢ちゃん、センスいいな。でも、これは夢ちゃんのほうが似合うよ」
「私は無理ですよー、だって……」
 ワンピースを体に合わせてみると……結構なミニ丈。
「恥ずかしくて。鴉女さんだったら足もすらっとしてるし!」
「してないよー!」
「ほらほら、ね!」
 自分に当てていたワンピースを絢に合わせてみる。
「……鴉女さん、似合います!」
「うーん……私もこの丈はどうも……」
 というわけで、名残惜しいけれども1着目はそっとお返しして。
「あ、黒」
 次は絢が発見。白黒のボーダートップスにハイウェストな黒のスカート。
 体に合わせる絢に夢はむむむ、と腕を組む。
「似合うんですけど、今日は鴉女さんに黒以外を着てほしいです」
「私、可愛いお洋服持ってないし、あんまり着たことないんだけど……似合うのかな?」
「絶対! 似合います!」
 ぐぐっと力を入れてお勧めする夢。
「たとえばー……」
 ぐるっと店内を見渡して、夢が手にしたのは淡いピンク地にフラワープリントのワンピース。絢に当ててみて。
「ほら、似合います!」
「ええっ、こんな可愛いの、大丈夫かな……」
「一度、試着してみませんか? 絶対に素敵だと思います」
「じゃあ……」
 絢は同じデザインの色違いのワンピースを手に取る。こちらは淡いブルー地。
「夢ちゃんも一緒に、ね?」
「お揃い……!」
 と言うわけで、2人でそれぞれ試着室へ。
 せーの、でお披露目!
「鴉女さん、素敵です!」
「夢ちゃん、可愛い……っ」
 2人で並んで鏡に映ると興奮も最高潮。
「これで、こう、薄い黒のカーディガンとか羽織って……」
 夢が絢に渡すと、
「夢ちゃんは淡いクリーム色が似合いそう」
 絢も夢に柔らかいジャケットを手渡して。
 再度2人で鏡に映り。
「鴉女さん、可愛い……」
「夢ちゃん、可愛い……」
 お互いのコーディネートに大満足。
 そして今度は値札を見てこそこそと相談。
「お値段もこのくらいですよね」
「でも、まだ見てないお店たくさんあるよ」
「じゃあ、第一候補で!」
 こんないっぱいのお店、全部見て回らなくちゃ勿体無い!

「あ、水着」
 とある階で夢の目に止まったのは季節先取りの水着。
 カラフルなビキニが並び、綺麗な浜辺の写真が飾られていると夏へと心が弾む反面。
(鴉女さん、スタイルいいなぁ……)
 ちら、と横の絢を見ると、絢もうーんと水着を見て悩み顔。
「夏が近いから水着も出てるねー」
「鴉女さん、スタイルいいからどれでも似合いそうです」
「そんなことないよー」
 ぱたぱたと手を振って、絢もちらりと夢を見る。
「中学生の時に着てたスク水しか持ってないし、今年は水着買おうかな」
「わ、見繕いますよ!」
「違う違う、夏にね」
 そう言ってにっこりと笑う絢。
「そのときは私も夢ちゃんの水着、見繕ってあげるから」
「じゃあ夏になったらまた一緒にお買い物しましょうっ」
 また次の買い物の約束も取り付けられて夢も笑顔が溢れる。
(それまでに鴉女さんみたいにスタイルよくなれますように)
 女の子には切なる願い事。

 流行のシフォンスカートにも惹かれて2人で試着して、満足して。
 ショップの店員さんにつかまってオフショルダーのブラウスを試着させられ、買わされそうになったところで逃げ出したりして。
 欲しい服を見比べるためにエスカレーターを昇ったり下りたりして。
 買うのはほんの一握りの洋服なんだけれども。
「鴉女さんのワンピース、可愛かったです」
「夢ちゃんのスカートもよかったよ」
「あのっ、今度洋服の交換とかもしてみませんか?」
「あ、それ素敵。是非やろう!」
 身長が近いからできる秘密のファッションショー。
 考えただけでまたわくわくしてしまう。
「とりあえず休憩しましょうか」
「そうだね、どこに行こう」
 夢はスマホを取り出し、素早く画面を絢に見せた。
「昨日調べておいたんです。美味しいケーキ屋さん。行ってみませんか」
「本当、美味しそう。行こう、行こう」
 というわけで、隣のビルに入っているというケーキ屋さんへ。
 時間的に空いてるタイミングだったのか、すんなりと窓際の席を用意してもらった。
 店員さんの置いていったメニューを開くと。
「わあ、ウサギのドームケーキだって」
 半円の形のショートケーキにホワイトチョコでウサギの耳が。赤い目はきっとラズベリーソース。チョコレートでひげも描いてある。
「かわいいですねっ」
「こっちもかわいいよ、黒猫のチョコケーキ」
 こちらも半円の形のチョコケーキにチョコで猫の耳が。青い目はブルーベリー。
 その横に並ぶメガネふくろうのチョコケーキはヘーゼルナッツチョコケーキ。メガネがチョコレートで描いてあるのがまた可愛らしい。
「こ、これ、頼んでも食べるのに躊躇しそう……」
 可愛らしくて迷う夢がメニューを捲ると。
「鴉女さん、これ!」
「え」
 縦長のカクテルグラスにバニラアイスとイチゴアイス。ラズベリーソースがかかった一番上にバニラアイスがちょこん。そのバニラアイスからホワイトチョコで耳が、ラズベリーで目が……。
「ウサギパフェ!」
「見て見て、これ、グラスにしっぽが描いてある!」
 2人とも可愛らしさにノックダウン状態。
「普通のラズベリーケーキとかチーズケーキとか霞んじゃう……」
「迷う夢ちゃんも可愛いなあ」
 お水を一口飲んで、絢はにこにこと夢を見る。思わず顔が赤くなってしまう夢。
「鴉女さん、決まりました?」
「うん、黒猫にしようかなって」
「じゃあ、私、ウサギのケーキにします!」
「パフェもあるよ、夢ちゃん?」
「わーっ、迷わせないでくださいーっ」
 メニューを何度もめくって、めくって。
 結局2人はウサギと黒猫のケーキと紅茶を注文。

 紅茶はポットで、2人それぞれに。
 ウサギと黒猫はそれぞれお皿の上にソースで可愛くデコレーション。
 夢はスマホでケーキの写真をばっちり撮影。撮影した画像を絢に見せて2人で大満足。
 そうして、ケーキをどこから食べるかで数分2人で悩み合ってから。
「あの、聞いてもいいですか?」
 ウサギのおしりから食べ始めた夢は絢を見る。
「鴉女さん、恋人さんとは今、どうですか?」
「どうって……普通だよ」
 動揺することもなくさらりと答えられ、夢のほうが逆にどきどき。
「うまく行ってるってことですよね?」
「うん。おかげさまで」
 にこりと笑う絢の表情にほーっとため息をついてしまう夢。
「素敵だなーっ。鴉女さん、すっごく幸せそう」
「ありがとう、夢ちゃん」
 そうお礼を言える余裕にも夢はほんわりしてしまう。
「いいなぁ、鴉女さんみたいな素敵な恋、してみたいです」
「夢ちゃん、可愛いんだからすぐに彼氏見つかるって」
「そんなことないですよー」
 ティスプーンをくるくるかき回しながら夢は再び、ほーっとため息をついてしまう。
(いつか私も鴉女さんみたいな恋愛できるのかな)
 1つしか違わないのに、なんだか夢には絢がとても大人に思える。
(なんだか遠い話だけど……いつかできたらいいな)
「あ、夢ちゃん、黒猫食べてみる?」
 絢が黒猫のケーキを取るとフォークを差し出してくれる。
「いただきます! 私のウサギもどうぞっ」
 ちょっぴりビターな甘さの黒猫とスイートなウサギ。
 どちらも美味しいねって話をしていると話題は恋愛から別のところへ。学園のこと、お洒落のこと、共通の友だちのこと……ケーキが終わっても尽きぬ話題は、女の子同士ならでは。
 ケーキ屋のお値段にはおしゃべりのお値段も含まれるのは、女の子の特権。

 たっぷり話してケーキ屋さんを出る。
 まだ夕暮れには時間がある。
「鴉女さん、まだ時間あります?」
「もちろん大丈夫だよ。次はどこのお店行こうか」
 当然のような返事に夢の表情に笑顔が浮かぶ。
「じゃあ、さっき迷ったお店に! せっかくなのでもっと鴉女さんに可愛い服着てほしいです」
「夢ちゃんも着るんだよね?」
「えっ」
「見繕ってあげるからね?」
「えっ、えっ」
「じゃあ行こうか!」
「はいっ」
 ごく自然に手を繋いで、駆け足になって。
 こんな1日、めいっぱい楽しまなくちゃもったいない。

 初夏の1日。
 あなたと一緒に楽しんで駆け抜けよう。
 そして夏も一緒に、ね。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb0762 / 地領院 夢 / 女 / 14 / ナイトウォーカー】
【jb2708 / 鴉女 絢 / 女 / 17 / インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はご発注ありがとうございました!
なんだかもう初夏の日差しで、遅くなってしまい大変申し訳ありません。

女の子同士のお買い物、テンション上がりますよね。
ご発注いただいてからお2人のイラストを拝見して似合うお洋服を妄想し続けました。
黒に暖色系って合いますよね、ね。

どうぞこれからも素敵な思い出を、日常をお2人で紡いでいけますように。
心からお祈りしつつ。ハッピー・カーニバル!
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
さとう綾子 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年05月19日

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