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『●Stakeout 』
レギーナ3856)&(登場しない)
(積み荷が3つ。こんな夜更けに届くなんて一体何が入っているのかしら?)
 影に身を潜め、荷馬車の様子を伺うレギーナ(3856)──。

 最近、街に出回り出した危険な薬。若者が薬を買う金欲しさに強盗を働いたりと物騒な事件が続いていた。
 調査の結果、供給元と思われる街中にある商家に目星をつけた憲兵隊は、
 薬が運び込まれる日を特定し、
 踏み込んだのだが、積荷を発見する事が出来なかった。
 レギーナに回って来たのは、商家に潜入し、証拠品を抑える仕事だった。

 レギーナが人形の姿に戻れば気配を消し、食事も取らず不眠不休。
 空気すら必要としない。
 それ故、普通の人間ならば出来ないような場所に身を潜め、監視を続けるのは、
 まさにレギーナにうってつけの仕事だった。

 取引先の娘に人形として抱きかかえられ、
 堂々て表門から疑われる事なく商家に入ったレギーナが、今隠れている場所は物置だった。
 物置の住民──ネズミ達は人形の姿で張り込むレギーナを食べ物と勘違いして襲ってきたが、
 片っ端から人形に変えてしまっていた。
 その後、数日に渡り小さな空気穴から静かに商家の監視を続けていたレギーナが出した結論は、
 新月の夜に倉庫に運び込まれた荷物=薬だった。

 ──勿論、断定は出来ない。
 特定する為にも間違いないという証拠の品は、必要だろう。


●Booth Laufmadchen
(問題は、どうやって倉庫に近づくかよね)
 レギーナのいる物置から倉庫まで距離が、あった。
 間には、屈強な男達が警備に当たっている。
 なぎ倒していくのは簡単であるが、それでは憲兵達が到着するまでに荷を隠されてしまうだろう。
(静かに怪しまれずに……か)
 二人一組で警備している男達を一人ずつおびき出したとしても呪をかけている間に片方に見つかってしまうだろう。
 上手く二人に呪をかけたとしてもむさくるしい男が、人形(レギーナ)を抱えて倉庫まで向かう姿は目立つ。

 どうしたものかと悩むレギーナに幸運の女神が微笑んだ──。
 物置のドアが開き、一人の少女が入ってきた。
 商家で働く小間使いの少女であった。
(ちょうどいいわ。彼女に手伝ってもらうっと♪)

 ***

「何時来ても嫌ね、ここ。薄暗いし」
 言われた場所に頼まれたティーセットが入った箱がないと文句を言いながら、棚を一つ一つ確認していく小間使いの少女。
「ほんと、あの人毎回言う事適当だし。嫌になっちゃう」
 仕事を紹介してくれた人に悪いが、早く辞めたい愚痴を溢す。
『そんなに酷いの?』
「そうなの………って、あれ?」
 自分の他に誰もいないはずの物置──。
「そういえば坊ちゃんが言っていったけ……ここは(幽霊が)出るって……」

「気のせいよ。ここはネズミが出るってメイド長が言っていたじゃない」
 疲れていたから空耳を聞いたのだと頭を振り、箱を探す小間使い。
 散々探しまわった後、一番最初の棚の置くの方に件の箱を見つけて溜息を吐く。
「良かった。これで怒られないわ」

 ──カタっ。
 空耳ではない小さな音に慌てて振り返る小間使いの少女。
 目の前には、いつの間にか少女の人形(レギーナ)が立っていた。
『ここが嫌いなら連れ出してあげる。但し、私の役に協力してくれたらね♪』
「──ヒッ」
 小間使いの少女は、悲鳴を上げる間もなくレギーナの呪に落ちた。
 箱を抱え虚空を見つめたまま動かなくなる少女は、人間と見間違うような蝋人形に変わっていた。

『ちょっと(呪が)強かったかな? 騒がれるマシだし。ま、いっか』
 体のみならず心も人形と化し凍りついた少女は、急に体が動かなくなった事にすら疑問を持たなかった。
『ねえ、私に協力してくれる?』
『いいよ。何を手伝ったらいいの?』
 球体関節人形と蝋人形。素体は、違えども同じ人形同士。
 レギーナを仲間と考えた少女は、そうレギーナに答えた。

『じゃあね。まず新月の夜に届いた荷物がなんなのか教えて。差出人は、誰?』
 荷物が運び込まれた倉庫の構造と状況。警備の人数と配置、交代時間──
 レギーナは、思いつく限りの事を蝋人形の少女に質問した。

 レギーナと蝋人形の少女の人形同士の会話を見るものがいたら不気味に感じるだろう。
 質問するレギーナも答える蝋人形の少女も瞬きもせず、その可愛らしい唇も動かさず微動だにしないで答えるのだから──。


●Lager
「何処に行く!」
 ランプに照らさしだされたのは、大きなバスケットを抱えた小間使いの少女であった。
「はい。執事さんからお客様の忘れ物を届けるように言い付かったので」
「こんな時間にお使いか? 随分大きな籠だな」
 籠の中を見れば人形が入っていた。
「人形?」
 少女の顔は何時もより固く青白く光って見えた気がしたが、もう一人の男が人形に見覚えがあると言った。
「こんな夜更けに大変だな。誰か一緒に護衛についていった方がいいんじゃないか?」
「大丈夫です。馬車を呼んでいますから」
 ぎこちなく頭を下げると少女は、裏門の方へと歩いていった──

 ──ように見せかけた少女は、建物の影に隠れてキョロキョロ周囲を見回した。
 警備の姿が見えない事を確認すると少女は、人形を倉庫の高窓に向かって思いっきり投げた。

 か弱い少女の力では窓に届かず失速して落ちそうになる人形。
「あ!」
 少女の口から小さな悲鳴が上がる。
 だが人形から高窓に向かって細い糸が放たれ、嵌められた格子に絡みついた。
「ふぅ……投げられるのって思ったよりスリルがあるわね」
 レギーナは、蝋人形の少女に大丈夫だと手を振った。

 ナイフで格子を外して倉庫内に進入するレギーナ。
「さて……ここで活躍するのは、あなた達」
 背負ったバックからネズミの人形を取り出すレギーナ。
「ちゃんと探さないと猫に食べさせるわよ」
 そうネズミ達に命じるレギーナだった。

 こうして程なく証拠品を回収したレギーナ。
「さあ、もう一仕事頑張らなきゃ♪」


●Maus
 人々が寝静まった深夜──静かに商家の裏門が開き、荷馬車が到着した。
 品物を確認し、運び出された荷物を倉庫に入れる為、商人が鍵を開けてドアを開く──

 ドアが開かれたと同時に大量のネズミが倉庫から飛び出してきた。
 ネズミ達は所構わず駆け回り、目に付くものを構わずを齧ろうと襲い掛かる。
「荷を守れ!」
 家中のネズミが出てきたのかと思う大軍である。
 敷地中、蜂の巣をつっついた騒ぎであった。

 その騒ぎに乗じて家の外に小さな影が飛び出し、側に止めてあった馬車に素早く滑り込んだ。
 レギーナである。
「なんだかお屋敷の中、大変そうですね」
 蝋人形の少女が、馬車の窓から屋敷を見上げる。
「ネズミって人形にとって天敵だけど、使い方によっては意外と役に立つの」
 この騒ぎは、レギーナが起こしたものであった。

「後は、これを憲兵に渡してお仕舞いよ」
 この後、どうしたいか蝋人形の少女に尋ねるレギーナ。
「蝋人形にままと他の人形とか、人間に戻る事もできるけど?」
「そうね。私は──」
 憲兵隊の詰め所まで今後の事を色々相談する少女達であった。





<了>



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【3856 / レギーナ / 女 / 13歳 / 冒険者】
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聖獣界ソーン
2014年05月19日

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