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『●これはサルディニアを根城にするsms社創設の物語である。 』
藤田あやこ(ga0204)&熊谷真帆(ga3826)&三島玲奈(ga3848)&常夜ケイ(ga4803)&キャル・キャニオン(ga4952)&マーガレット・ラランド(ga6439)


「地中海のマフィアを壊滅してもらいたい」
 UPCから藤田あやこへの依頼内容は、不可思議なものだった。
「バグア関係ないじゃない!」
 なんで私、というような表情をするあやこに、UPCの担当者は苦笑した。
「キメラマフィア、という言葉を耳にしたことはないか?
戦後、マフィアは幾多の内部抗争と政治との黒い癒着の末全国統一を成し遂げ、さらにバグア残党と手を結び地中海の空を支配する巨大な犯罪組織を形成した」
「じゃあ、それって――」
「そうだ。藤田あやこ、君に地中海エリアの空路開拓と、肥大化したマフィア・キメラ掃討を命じる」
 命令を受けたあやこは、『はっ』と短く返事をすると、敬礼を返す。


●イタリア国内某所

「んマァ! まさか私共の系列にバグアが!?」
 実家の財閥を継いだキャル・キャニオンは、あやこの言葉に大仰した。
「や、そういう可能性があるだけよ。バグア残党の力を奇跡的にうまく利用できちゃった感じね」
 あやこはキャルに簡単ないきさつを説明。
「実は……先頃不穏な動きがあるのも事実なんですのよ……我が傘下企業の内偵をお願いいたしますわ」
 真剣な眼差しをあやこへと向けるキャル。
 そこに偽りなどは感じられない。
「私のギャラは高いよ?」
「演技派女優なら全く問題ありません。勿論、援助は惜しみませんわ」


●昔の面影
 穏やかな午後、カフェテラスで雑誌を読んでいた常夜ケイは、見覚えのある人物が目の前の道路を横切って行ったため、思わずその人物を眼で追った。
(あれ……藤田、さん?)
 ケイも世界的に有名な歌手となっているが、あやこもまたボリウッド女優として知名度も高い。
 あやこに相談したいことがあったためすぐに追いかけようか迷ったケイだったが、もうすぐミラノ興行の打ち合わせもある。
 夜にでも電話しよう……そう思い直し、水滴のついたグラスを手に取った。

●カジノ潜入!

「私の勝ちみたいね」
 カードの図柄を見せるよう、テーブルに置くあやこ。
 ディーラとの読みあい、掛け合いを続けていたあやこの前に、コインが集まってくる。
 十数回、彼女の勝ちが続いていた。
「――お強いですね、お客様」
「マグレ勝ちじゃないかしらん。あんまりよく知らないの、こーゆーの」
 ぎこちなく微笑むディーラーへ、サングラスをかけたまま明るく笑っているあやこ。
 そんな彼女を――カジノの従業員が、どうしますかと上司へと相談する。
「目立ちすぎると、どうなるかを……あの女に教えてやらなけりゃな!」
 ぱちん、と指を鳴らす音が部屋に響き、柱の陰より少女が一人歩み出る。
「あれはタチの悪いイカサマ師だ……殺しても構わん」
「悪い事を平気でやる人なのですね……わかりました、切り捨てちゃうのですぅ」
 真面目そうな外見の黒髪の少女、熊谷真帆が可愛らしい声で恐ろしい事を口にした。
 上司にあたる男も、頼りにしているぞと不敵な笑みを浮かべて真帆を送り出した。


「……私になんか用なのかな? コソコソしないで出て来たら?」
 店を出た後、夜道を歩いていたあやこは後方を振り返る。

 すると、そこにいたのは10人程度のガラの悪い男たち。
 そいつらの正体がなんであるかを察知したあやこは、なるほど、と小さく笑みを漏らす。
「取材のお願いじゃなさそうねぇ……逆に私も聞きたいことがあるから、ちょうどいい」
 時間は取らせないんで、と言いながら自ら近づいていく。
「サツかもしれねえ、ぶっ殺せ!」
 男の内の一人がそう怒鳴り、あやこへナイフを振りかざした。
 だが、それを見越していたあやこは、ナイフを簡単に避けると膝蹴りを男の鳩尾へ見舞い、男たちの懐に飛び込むと、次々と手刀や拳を叩きこんで気絶させていく。
「あ、いけね。全部倒しちゃった」
「全部じゃないですよ」
 東洋人と思しき少女……真帆が、ゆっくりと刀を抜き放った。
「正義は真帆ちゃんにあるのですぅ!」
「うぉっとっ!?」
 可愛らしく言うや否や、真帆は大きく踏み込んで水平に刀を薙いだ。
 危機を感じたあやこも素早く避けたが、コートの一部が斬られてしまっている。
「イカサマ師は成敗ですぅ」
 緊迫感をまるで感じられない真帆の声だが、あやこの命を狙うその太刀筋は鋭い。
「戦いにくいったらありゃしない! それに、私は演技派女優であってイカサマ師なんかじゃない!」
 言いながら闇夜に輝く白銀を躱し、交戦しやすい間合いを取ろうとするのだが――真帆はその距離を置かずに踏み込んでくる。
 途中の橋上、暗い隧道などに相手に不利な地形へ追い込んでいき、真帆は見事にあやこの得意とする遠距離攻撃を封じていく。
「くっ……なかなか、しつっこいわね」
「そろそろ、終わりにするですよぉ?」
 真帆は一気に刀をあやこの胸部目がけて突きこむ。

「ンなろぉッ!」
 あやこはコートの中に隠していた短剣で真帆の切っ先を逸らすと、鍔迫り合いのような体勢を取った。
「大人しく罪を認めるです!」
「イカサマ? 私はね、いつだって本気の真っ向勝負よっ!」
 そんなイチャモン冗談じゃないわ、と言いながら、真帆をキッと見据えた。
 その瞳から、逃れることができない真帆。
(この人は、嘘を言っている眼をしてないですぅ。真帆ちゃん、何か勘違いしてるかもですよ)
 心に迷いが出た真帆は、あやこに事情を一部始終話してほしいと告げた。

 キメラを使ったマフィアがいること。あやこはその調査に来ていて、真帆はそのマフィアの悪事を幇助する形で携わっていたことも、話の流れで知った。
「行っていたことが悪事だったなんて……真帆ちゃん、大ショックですぅ……」
「気持ちは分かるけど、とりあえず私の誤解は解いて頂戴ね」
 ふぅと一息ついたあやこだったが、長年の経験か、はたまた野生の勘か。
 背中に冷たいものを感じて飛びのいた瞬間、今いた場所に銃弾が撃ち込まれた。
「なっ……! まだいる!?」
 危ないと言いつつ、素早く周囲に視線を彷徨わせるあやこ。真帆も狙撃されたと思しき場所を睨みつけた。
「立ち止まってると危ないなぁ!」
「待ってくださぁい! 真帆ちゃんも心を入れ替えてお詫びにご一緒しますぅ!」
 あやこの後を追いかける真帆。だが、今は会話どころではない。
 彼女らの足元や急所を狙おうとする謎の狙撃者。
 長距離戦を得意とするあやこも、なんとなくの勘で避けているが、もうそろそろ相手も、あやこの逃げ方のコツを掴むだろう。
(やっばいなー……どうすっか……ん?)
 逃亡しつつ次の手を思案していると、あやこの携帯が軽快な音を立てた。
『――あやこ、どこにいるの?』
 電話の主は、キャルであった。
「丁度猫の目通りを曲がったあたりの――」
『抜群のタイミングね……大通りに出ずにその場で待機よ! よろしくて!?』
 一方的に電話は切られ、絶句したあやこの耳は……爆音を捉えた。
 なんと、急角度のドリフトを決めるジーザリオが飛び込んでくる!
「お乗りなさい、あやこ!」
 ドアを素早く開けたキャル。あやこの顔がほころんだ。
「おお、シニョリーナ……! 感謝します! あんがと――ええい、あんたも来る!」
 真帆の手をひっつかみ、ジーザリオに押し込むようにして乗ると、急発進させた。


 路地を去りゆくジーザリオを見て、チッと舌を鳴らしたのは……あやこたちを狙っていた女。
「運のいい奴……だが、この私から逃れられた標的はいない……」
 憎々しげに呟くとゆっくりと狙撃銃をおろし、女はうつぶせの状態から立ち上がった。
 長い髪が風に揺れ、髪の間からは怒りにぎらつく瞳が見えた。



 ほっと胸をなで下ろすあやこへ『そうも言ってられませんのよ』とキャルは柳眉を潜めながら答える。
「……マーガレットにも調査を頼んでいたのですが……音信不通になってしまったのです」
「マーガレットが……?」
 あやこがそう聞き返すと、キャルは神妙に頷いた。
「マーガレットは野良キメラ撲滅業者の資金洗浄疑惑を暴く為、シチリア島に潜入しましたが……失踪しました」
「失踪って――じゃあ、シチリアに、悪い奴らが集まっているのですかっ!?」
 思わず話に割り込んできた真帆を一瞥したキャルは、あやこからいきさつを聞いた後、考えるそぶりを見せる。
「行き場が無いのであれば、少々手伝っていただきましょうか……」
 キャルが後部座席に投げてよこした書類の束をあやこが拾い上げ、ふむふむと言いながら読み進めていくと……ページをめくる手が止まった。
「……目撃情報じゃない」
「容姿が似ているというだけですけれど、あのカジノからそう遠くない地域で見かけ――」
 話の途中で、あやこの携帯が再度鳴り響いた。思わず口をつぐむキャル。
「ったく、今日はよく電話鳴るわね……はーい、もしもし? 携帯藤田でーす」
『あ、藤田、さん……? ケイです。お久しぶり……』
 おずおずとした声に、あやこは思わず電話を持ち変えた。
「ケイ!?」
『今、イタリアにいて……』
「いたりあァ?! 私もよ! ……っていうか話はいっぱいあるけど、今は……」
 ごめんねと遮ろうとした瞬間、ケイは大変な情報をあやこに伝えたのだった。
『あの、この間から行方不明だったマーガレットさんを見かけたんですけど、なんか様子が変で……』

「……ケイ、あんたやっぱり幸運の女神って感じね……今からちょっと会って話さない?」

――今日はツキまくりじゃない。
あやこは、喉の奥で笑いながら、迎えに行く旨を伝えると、キャルに場所を伝えた。


●藤田隊、結束。

「ふぅん。マーガレットを心配して、イタリアに来てたんだ」
 ケイと合流し、人気の少ない郊外の港までドライブをしながら、あやこは情報をまとめ始めた。
「……何か大きな事件に巻き込まれたのかもしれないと、イタリアに。丁度公演もありましたから……」
「ですが、マーガレットが無事だった――とは考えにくいですわね」
 任務が完了したのであればUPCに連絡も行くはずだ。先ほど打診したが、任務完了の報告は上がっていないらしい。
 その辺をふらふら歩いているのは妙だとキャルは言う。
「助けて、あげたいんです……」
 ケイは力を貸してくださいと、あやこに潤んだ瞳を向ける。
「こっちも用事があるから協力は惜しまないけど、もしかして、バグアに洗脳されたり、強化人間みたいになってたり……?」
「可能性はありそうですぅ! 改造や洗脳をするのは悪の常套手段ですぅ!」
 何の根拠も無く力説する真帆に『あのねぇ』とあきれたが……あやことキャルは、僅かな異変を感じ取った。
「ケイ! 真帆! 早く車に入って!」
 そう鋭く叫ぶとホルスターに納めていた銃を手に取り、あやこはコンテナなどの遮蔽物が多い場所へと駆けだした。
 狙われているのは自分だと判断したからである。
 それを裏付けるように、彼女が走り出した瞬間銃弾は放たれ、執拗にあやこを狙う。
(もしかして、さっきのスナイパーなんじゃ……?)
 弾道を予測し、撃ちにくい場所に身を潜めるあやこ。
 身を低くし、物陰を移動するのだが、彼女の動きを相手も見逃さない。
 あやこの潜んでいたコンテナの角を銃弾が掠めた。
「パンパンうるさいっつの!」
 あやこも負けじと素早く照準を定め、撃ち返す。
 それを繰り返し、徐々に相手との距離を詰めていく。
「……ようやくご対面ねぇ」
 見事だけど、私にゃ勝てないよとあやこは不敵に言い放つ。その挑発は、十分相手を煽ることが出来たようだ。
 女狙撃手……三島玲奈は、感情を押し殺した声でこう告げた。
「あなたもスナイパーか……撃つなら撃たれる覚悟を持て……」
「はぁ? そんなもんはとっくにできてる。その言葉、そっくり返すわ」
 あやこと睨みあったのも一瞬。2人はほぼ同時に行動を起こした。
 物陰に潜み、あるいは射撃しながら移動し、別の場所へと移動する。
 長く感じる激しい銃撃戦ののち、玲奈の腕をあやこの銃弾が貫いた。
「ううッ……!」
 銃を取り落した玲奈に、あやこが『私の勝ちだね』とニヤリと笑った。
「こ、殺すがいい……。銃を握ることができない狙撃手なんか……」
「そういうのに興味ないんだよね。私に協力するならその腕を治療してあげてもいいよ」
 大した傷でもないし、と言うあやこに、玲奈はフッと笑った。
「私は敗者で、あなたは勝者。断り切れるわけがない……」
 それに、僅かにあやこのほうが玲奈よりも射撃精度正確であり、距離も彼女のほうが遠かった――はずなのに、自分に命中させたのだ。
「互角に見せといてもあなたのほうが、一枚上手だったよ……」
 玲奈はそう言って笑ったが、その表情は晴れやかなものだった。


●決戦!

 仲間となった玲奈から港近くにあるというアジトの場所を聞き出し、いよいよ、キメラマフィアの掃討に入ることとなったあやこたち。
 キャルは既にセイオウボの内装を豪奢にし、凱旋パーティの準備で動き回っている。
 ケイがもう始めるのですかと不思議そうに聞き返すと、キャルは『負けるとお思い?』と、不思議そうに返してきた位である。
「……はい。みなさんは、負けません……!」
「攻撃致しますわ。覚悟はよろしくて?」
 キャルの無慈悲な宣告に、ハイと手を挙げた真帆。
「一番槍は、真帆ちゃんにお任せなのですよっ!」
 刀だけど、と言いながら真帆は覚醒し、その逞しい腕から繰り出される斬撃を用いてキメラを次々に斬り伏せていく。
「バグーア!(ひええ、お助け!)」
「悪い人とバグアは切り捨て御免なのですよっ!」
 正義の名のもとに。真帆の刀が翻る。
「私も、皆さんの為に……! 歌よ、戦場に響いて!」
 ケイが仲間への想いを歌にのせ、セイオウボから歌声での支援を行っている。
 その清らかな歌声は、仲間たちの戦いぶりを鼓舞するようであった。
「ケイ、いいんじゃない……? でも、ノりすぎないように注意しなくっちゃね」
 玲奈はそう呟きながらも、キメラを次々と狙撃し倒していく。

「あいつら、KVはともかく生身で易々とキメラを!」
「くっ、あれが能力者かよ……」
 マフィアたちの狼狽をよそに、次々とスワロウトレイルは敵を駆逐していく。

 地上で仲間たちが戦っている間、あやこはアジト内に潜入。
 徒手空拳で三下マフィアを叩きのめしていた。
「私を覚醒させたいか……? 普通の人は、死ぬかもよ」
 言いながら既に戦意を失っているマフィアの襟をつかみ上げた。
「お前らのボスはどこ?」
「ヒッ、殺さないでくれ……ボ、ボスは……すぐ――ギャアッ!」
 何かを言いかけたマフィアが、醜い叫び声をあげた。
 胸に深々と突き刺さっているナイフ。これは、あやこがやったものではない。
「――フハハ! よくぞここまで来たな。フジタ!」
 聞いたことのある女の声。口封じのために死んだマフィアの体を横たえ、通路の先を見る。
「マーガレット!」
 ケイが心を痛めていたマーガレットだ。
 だが、その雰囲気は何かおかしい。こんな風に喋る奴ではなかったはずだ。
「だが、目障りだよフジタ。お前にはここで死んでもらう! 今すぐにな!」
 言うや否や、拳銃を向けるマーガレット。
 しかし、こういったことを予測していたあやこは素早く隠していたナイフを投げた。
 ナイフに気を取られたせいで、手元は狂ったが……あやこの頬を銃弾が掠め、僅かな痛みに顔をしかめる。
「自分からのこのこやってくるとは……お得意の射撃も狭い所では存分に発揮できまい! 次は外さん!」
「フ……私は一人じゃないんだな……」
「なに?」
 この局面で余裕の表情のあやこに、マーガレットが油断した瞬間。
 あやこの携帯から、軽やかな歌が聞こえた。

――眩しい光の波、青い船に乗ってすみれ色の未来へ駆け出せば。
心が躍るメロディー響いて来るよキラキラの夢で溢れてる。
大空、歌えばきっと全てが君を変える。煌く想いと貴方の笑顔、輝く海に映るよ♪

 携帯から流れているのは、ケイの持ち歌。
「うう……頭が痛い……! なんだこの、歌声……は!」
 思わず銃を取り落とし、膝をつくと頭を抱えたマーガレット。
「ケイだよ。あなたを心配している気持ちが、歌声に乗ってるのさ……」
「や、やめろおおッ……!」
 大きく身をのけぞらせ、マーガレットは叫んだ。
 その刹那、アジト内が轟音と共に大きく揺れた。
 戦場で聞き慣れた爆発音。仲間たちには極力大きな火力は使わせないよう指示を出していたあやこ。
「爆破するつもり!?」
「その、ようだな……フジタ……お前だけでも逃げ、ろ……」
「何カッコつけてんの! あんたもホラ……一緒に行くんだよ!」
 マーガレットの腕を引っ張るが、彼女はあやこを思い切り突き飛ばす。
「このアジトのボスは……ヘルメットワームに乗ってる。速度と軽量化を優先したあまり、ちょっと装甲が薄いのが、弱点……なんだよ」
 ケイをよろしくね、とマーガレットが微笑んだ瞬間、あやことマーガレットを分かつように、天井が崩れ始めた。
「マーガレット……! ちくしょう……! バグア、許さん!」
 あやこは拳を握ると、マーガレットの無事を祈りながら走り去る。


 敵は逃げるつもりだ。もはや一刻の猶予もない。
 戦局は圧倒的に不利と感じたのだろう。
 黒幕と思しきバグアは、ヘルメット・ワームに乗ると戦地を離脱しようとしていた。


 無論、仲間や見方を全て切り捨てるつもりで。
「隊長……! 逃げようとしている奴がいますよぉ!」
 燃え盛るアジトから脱出してきたあやこの姿を認めた真帆は、離陸動作に入るヘルメットワームを指す。
「フフン、お任せあれッ! キャル! 出せッ!」
 セイオウボから射出されたアンジェリカ――あやこの機体である看看兮。
 着地の衝撃でアスファルトや砂塵を大きく巻き上げる。
 暴風をものともせず、覚醒したあやこは強靭な脚力で飛び上がり、コックピットに飛び乗ると、書き歓声をチェックしながらスピーカーをオンにした。
「ハイッ、キメラの皆さ〜ん! この右手に構えたる大口径ガトリング砲で――蜂の巣でっせ! 釣りはいらない、三途の駄賃にとっときな!」
 言うや否や、猛烈な勢いで弾雨が降り注ぐ。
 飛び立った瞬間のヘルメット・ワームを狙撃し、その弱い装甲に無数の風穴を開ける。
 動力部を破壊したらしく、黒煙を上げながらヘルメット・ワームは、徐々に高度を下げつつ――爆発。
「やりましたねっ、隊長っ!」
「フッ、またつまんないものを撃ち落しちゃったわね……」
 そして、あやこは……アジトに視線を送る。
(マーガレット、最後の最後に……ケイの想いで正気に戻ったんだよね……)


●後日

「お祝いと新たなる門出に……smsのビルでも、建てましょうか」
「えっ、本当?! やった、じゃあお言葉に甘えてやってもらおうかな!」
 大いに喜ぶあやこ。その笑顔を微笑ましく見守る、smsの一同。
「これから忙しくなりますわよ。なんたって、その費用以上の利益を挙げなければいけませんからね」
「私も運営を手伝います。なにより、フジタとケイは恩人ですから」
 まだ包帯姿が痛々しいマーガレットも、屈託のない笑みを仲間たちへ向けていた。
 そばにはケイが付き添って、彼女を支えている。
 彼女はあれからエミタ技師らの尽力で仮死状態から蘇生し、今は通院生活を送っている。
「じゃ、一作目は真帆の殺陣を活かしたムービーなんか作っちゃわない? 監督に打診してみるわん♪」
 あやこが携帯を取り出すと、どこかへと電話をかけ始めた。
「ああ、もしもし。ちょっといいお話があるのよ――」

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登場人物一覧

(ga0204)藤田あやこ
(ga3826)熊谷真帆
(ga3848)三島玲奈
(ga4803)常夜ケイ
(ga4952)キャル・キャニオン
(ga6439)マーガレット・ラランド
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
藤城とーま クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2014年06月02日

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