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『桃華と翡翠 』
安瀬地 治翠jb5992


 日々重なる運の巡り合わせは星の数。
 そんな中、今日も又一つの巡り合わせが生まれる。


「あ」
「おや」
  安瀬地 治翠(jb5992)とキョウコ(jz0239)はショッピングモールの角で鉢合わせるなり、声を上げた。
 治翠の手には買い出しの日用品の数々、キョウコの手には衣類だろうか、幾つかの紙袋。
「安瀬地くんじゃん! 今日は買い物?」
「ええ、そうなんです。奇遇ですね」
「ほんとほんと。私も今日はファッショナブルに買い物に来ちゃいましたー!」
 そう言ってキョウコが両手に掲げる紙袋には年頃の女子好みの何店舗かのブランド名が刻まれている。
 相も変わらず元気な女性だ、と微笑ましく眺めながら治翠は一瞬思案し、それからふと先日行われた花見の会を思い出すと、口を開く。
「お花見のお礼も兼ねて、お茶でも如何ですか? 先日お渡ししたお菓子のお店なんですが、すぐ近くにありまして。イートインも出来るみたいなんですよ」
 お菓子、と聞いたキョウコはぱあと顔を輝かせ、紙袋を握り締めた手をぐっと握りこくこくと頷く。
「マジ行きたい! ……けど、もうちょっと買いたいものがあるから、その後でも大丈夫?」
「ああ、でしたらこちらの買い物はもう済んでいるので、御迷惑で無ければお付き合い致しますよ」
「マジで! ――じゃあ、付き合っちゃって貰おうかな! どーんと! ばーんと!」
 にっこり笑って告げられるのは、買い物続行宣言。
 それに対し治翠は穏やかな笑みを浮かべたまま当然といったように頷き、それからさり気無い動作でキョウコの荷物を預かる。
「ご一緒して頂ける女性に荷物を持たせる訳にはいけないので」
「やだ、安瀬地くんマジ紳士! ……じゃあ、お言葉に甘えちゃおっと!」
 そんなこんなで、お菓子と聞いて駆け足で目的の店に向かうキョウコの後を追う治翠といった形で、買い物の旅は始まったのであった。

 ――女の買い物は長い。

 キョウコは高いテンションのまま服の一着一着をうきうきと眺め、その様子を治翠は穏やかな表情を乗せたまま見守る。
 時には「これ似合う!? 超似合う!?」なんて試着室ではしゃぎながら、それに対し治翠は実にスマートに「似合ってますよ。キョウコさんには青が映えますね」とさらりと褒め返す。
 付き添うと言うよりは、連れ回されると言った方が正しいだろう。あちらへ行ったと思えばこちらへ、こちらへ行ったと思えばあちらへ。
 次から次へと店舗を変えては試着だ何だとてんやわんや、それでも穏やかな表情を崩さない治翠は非常に落ち着いていると言えるだろう。
 増えていく荷物がそろそろ両手でも収まり切らなくなった頃、キョウコはやっと一息といった様子で伸びをして笑った。
「一杯買っちゃったー! でも超嬉しい、人と買い物なんて最近出来て無かったから!」
「喜んでいただけているようでしたら良かったです。私も楽しいですよ」
「ハイタッチイエー……って、両手塞がってるんだった! ていうか重いだろうにほんとごめんね!? 早い所そのお菓子屋さん行っちゃお!」
 のほほんと告げる彼に対しキョウコは慌てて手を打ち、そうして二人は治翠の言う菓子屋に向かって歩き出した。
「何だかさー」
 何とはなしと言った口調で呟くキョウコに、治翠は隣を歩く彼女を見る。
「はい?」
「こうしてるとデートみたいだよねっ、デート!」
 にっかり笑顔で告げるキョウコは一度腕を組んで背の高い治翠を見上げぎゅっと近付いて、直ぐさまぱっと離れる。
 そんなキョウコに対し治翠は思わず小さく噴き出すと、「光栄です」と笑って返した。



 治翠に連れられ着いた店は、小洒落たスイーツショップ。
 イートインのスペースが店の奥に在り、内装はアンティーク調の壁紙に、女子が好みそうな小物やインテリアが並べられている。
 その様子に目を輝かせたキョウコは、そわそわとした様子で席のひとつに腰掛ける。治翠もまた荷物を隣席に置き、キョウコの正面の席に腰を下ろす。
 そうして、二人でそれぞれ飲み物を頼み、菓子を注文し、語り始めるのは曰くの『デート』とは無縁の依頼の話。あの時の依頼はどうであったとか、この時の依頼はどうであったとか、――つまりはお互い根は至極真面目ということである。
「どうしたら本当の救済なのか、っていうのは……ちょっと気になる所だな。悪魔どもが言ってたのはまるで口車に乗せられるみたいで釈然としないけど、何だか必要なことなんじゃないかな、って思うわけ」
「ええ、そうですね。未だ未だ判らぬことも多いですし、次回の折にでも探れたらと思っています」
 紅茶のカップを手にしながら唸るキョウコを目に、治翠は翠の双眸を細めた。
 彼女は元気で良い子、そして仕事熱心な女性だ、と彼は思っている。
 治翠はそんな彼女の話の聞き手に回る。それは、感受性の高いキョウコの方が思う所があるだろうな――という心配り。
「それにね、心配なんだ。大規模作戦なんかもそうだったけど……皆がちゃんと帰って来れるか、ちゃんと五体満足で学園に戻って来れるか……って。――気が気じゃない時も偶にゃああるのさ、私にもね」
 冗談めかして言うキョウコだったが、それは掛け値無しの本音だろう。
 治翠には直ぐに判った。彼女はそう言った部分の本音を中々表に出さない女性だが、それは大人数の場での話。良く彼女が一人で呻いている様子を見掛ける治翠にとって、その真意は直ぐに判る。
「キョウコさんが斡旋所で待っていてくださると思うと、大分心強いですよ」
 治翠の言葉もまた、心からのもの。
 常日頃から依頼の斡旋手続きを行い、背中を押してくれ、待っている、と笑顔で確約してくれる彼女。
 その存在に心救われる者は、きっといる。
 治翠にとってもそうだ。だからこそ、彼女に心配をかけるわけにはいかない。今後も努めて頑張ろうと、改めて思った治翠だった。
「――ん、これ美味しい。ホワイトデーの時にくれたやつだよね?」
 生の苺が練り込まれた、ほんのりピンクのソフトタイプのしっとりクッキー。それを再度摘まんで口に放るキョウコは頬を綻ばせ笑うと治翠を見て、それから紅茶のカップを手に取る。
 治翠は頷き、それから自身も注文した茶葉入りのクッキーを摘まみ齧る。
 その後ちらほらとしたのは、他愛無い世間話。
 斡旋所の同僚――ウヅキに叱られただとか、依頼書のファイリングが三冊に達しただとか、サボっていたら先生に叱られただとか、諸々。
 そんな話を聴きながら治翠はひとつひとつ丁寧に頷き、時には笑い、相槌を打つ。

 ――時計は十八時を回った頃だろうか。

 そろそろ、と互いに頷き合い、店を出る間際。
 財布を取り出そうとしたキョウコを制し、治翠は笑って言う。
「お茶にお付き合いいただいたので、奢らせてください」
「んん〜……じゃあ、ありがとっ。今回は有り難くご厚意に感謝しちゃおっかな!」
 あくまでスマートに言う治翠に暫し思案したものの頷いたキョウコははにかみ、礼を言う。
 その際、治翠はお菓子を三つテイクアウトした。
 キョウコの分、自身の当主の分、そして最後は彼女の同僚であるウヅキの分。
「こちらはキョウコさんへ。そして、こちらはウヅキさんへどうぞ」
「わ、ありがとう! ホントに良いの? 貰っちゃうからね!?」
「はい、是非どうぞ。今日は有難う御座いました」
 嬉しそうに朗らかに笑うキョウコを眺めながらにこやかに返す治翠もまた満足そうだ。
「――それじゃ、今日のお礼に、私からもプレゼント!」
 言いながらキョウコが鞄から取り出すのは、小さな小包。
「さっき実はこっそり買っておいたんだよね。ハンカチ一枚だけど、良かったら使ってよ」
「すみません、わざわざ有難う御座います」
 中身は深緑を基調としたシンプルなハンカチ。
 断るのも失礼だろう。治翠は若干照れたように笑うと、素直にその小包を受け取った。

 今度は荷物は半分こ。ときっぱり言ったキョウコに従い、荷物を分け持ち合った治翠とキョウコは帰路へとついたのであった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb5992 /  安瀬地 治翠 / 男 / 23歳 /  アカシックレコーダー:タイプA】
【jz0239 / キョウコ / 女 / 18歳 / インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、相沢です!
 ご依頼&キョウコに振り回されていただきまして、有難う御座います!
 今後とも依頼では無茶せず、無事帰って来てくださることをキョウコ共々願っております。
 それでは、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。本当に有難う御座ました!
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
相沢 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年06月04日

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