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『Lagna―Mirror 』
ラグナ・グラウシードja3538

「む?ここはどこだ?」
 確かに、自分は憎む相手を追っていた筈。
 だが、その途中。何かの罠に掛かったのか、この異様な世界に飛ばされてしまったのである。

 ――ラグナ・グラウシードは、周囲を見渡す。
 異様な、鏡がありとあらゆる場所に設置された世界。
 また彼の仇敵の仕業か、とも思ったが――いくら悪戯に長けているとは言え、あれはここまでの力は持たない。

「おや、また誰か来たみたいだお、うさみちゃん!」
 さっ、と一瞬で振り返る。そこに居たのは――
「私‥‥だと!?」
 角が生え、耳が異様な形をしている以外は、自身にそっくりな誰かが、そこに居たのである。
「くっ‥‥新手の天魔か、正体を現せッ!」
「ちょっとまて、何でいきなり襲ってくるッ!?」
 ぴたっと、振り上げた大剣が止まる。

「――リア充」
「消し飛べえッ!」

「‥‥どうやら、お前は同志のようだな」
「寧ろ同じオーラを感じる‥‥ッ!」
 合言葉で通じ合ったのか。がっしりと、握手する二人。

「所で、背中に背負っているそれは何なのだ」
 角のない方が角のある方に聞く。
「これはうさみたんだお!うさみたん、かぁいいお!」
「そ、そうか‥‥」
 角のない方は思いっきりたじろいでいる。
(「異界の同志は、こんなにも気持ちの悪い感じだったのか‥‥! 同志である自信がなくなってきたぞ‥‥」)
 そんな角なしラグナの苦悩を知らずに、角ありの方は相変わらず背中に背負ったそれ――ウサギのぬいぐるみを愛でている。
「うさみたん、異世界の同志もかっこいいお?」「うん!」
 ――腹話術で受け答えしている『これ』を変質者として認識しない者はごく一部だろう。

「悪・霊・退・散!」
 大剣が、角ありの方の頭部を猛撃する。
「はっ‥‥!?私は一体!?」
「どうやら悪霊に取り付かれていたようなので、祓っておいた。気をつけろよ同志、ここは異界だから、どんな敵が出るか分からないぞッ」
「おお、すまない」
 何故角ありの方はかぁいいモードに入らなくなったのか。
「お?何で私の背中に黒い布が?」
「ん、元々ついていたのではないか?」
 ポーカーフェイスで角なしの方が答える。
 講じられた『対策』は、どうやら有効のようだ。


●リア充撲滅すべし

「ところで同志」
「ん?」
「何故お前は、リア充を嫌うようになったんだ?」
 ピキッ。
 場の空気が凍結する。
 あ、今余りの空気に鏡が一枚割れた。

「――お前はどうなのだ、同志」
 逆に茶を濁そうと、角なしラグナが角ありに聞き返す。
「う、うむ‥‥」
 今度は角ありのほうが言葉に詰まる番だ。
 ――お互い、言いたくない理由があるのだろう。
 それもそのはず。彼らがリア充撲滅を誓う理由は――

『貴様ら、モテないからと言って逆恨みをしているから、どんどんモテなくなっているのではないか?』
 ――どこかから聞こえた天の声。
 それにピクリと反応し、びしりと声の聞こえた方向を二人のラグナが一斉に睨みつける。
 あ、天の声がビビッて引っ込んだ。恐ろしい怨念の篭った視線である。

「‥‥お前もか、同志」
「と、言うことは‥‥」
 はぁ、と溜息をつく。
 このまま気分を沈ませていてもラチは空かない。
「奴らは人の敵だ」
「ああ、粉砕して灰にして、更に爆砕させなければ」
「バレンタインも、あの憎むべき聖なる日も。全て粉砕せねば」
 ちなみにその聖なる日が、二人の誕生日です。自分の誕生日を粉砕してまでリア充を倒したいのか。そこまで恨んでいるのだろうかこの二人は。だから――

 ギロッ

 あ、はい、すみません。そこにはもう触れません。


●小娘がつなぐ関係

「まったく、この天の声はッ‥‥あの忌々しい小娘を思い出すッ」
 吐き捨てるような角なしラグナの声に、角ありの方がぴくりと反応する。
「まさか、その小娘、エ――」
「知っているのか?」
 目を見合わせる二人。
「――ああ、私の敵でもある」

「‥‥だが、違う人間、か。偶然もあったものだな」
 二人の持っていた、各自の『敵』に対するイメージを照らし合わせた所、それはとてもよく似ていたが、細部が違っていた。
「――そう言えば、聞いていなかったが、同志」
「何だ?」
「お前の名は?」

 ――そう。意気投合したは良いが。ここまでに二人は、正式に名乗っていなかったのである。

「ラグナ・クラウシードだ」
「ッ!?」
「ん?どうした?」
「‥‥私も、ラグナ・クラウシードだ」

「「なんだと――ッ!?」」
 驚愕の声が、(今更)響き渡る。

「――そうか、そちらは『天儀』と言う所から来たのか。さすが異世界の私だ。同様に美しいな!」
「うむ。かぁいいもの大好きなラグナだ!」
 角ありの方のその台詞に。先ほどの恐怖を思い出し腰の大剣に手を当てる角無しの方だったが、幸いにも問題はなかったようだ。
 ――ナルシストという意味では本当に同類なのかも知れん。
「然し、あの小娘だけは未だに勝てん。どうしたらいいだろうか、同志よ」
「私も知らん。何故かいつの間に手玉に取られていて、辱めを受けているのだ‥‥」

 ――それは『ギャグ補正』なる物が働いているせいではなかろうか。


●非モテの反対

「ところで同志。考えた事はあるか?」
「何を?」
「恋人にするのならば、どのような人が良いのか」
 ぶふっ、と問われた角無しのほうが吹き出す。
「貴様‥‥!同志だと思っていたら、裏切り者かッ!」
「どうしてそうなるッ!?」
 大剣を構える角無しの方に、あわてて手を挙げる。
「恋人もちだったのかッ!」
「そんな訳がないだろう!」

 ――ともかく、誤解を解く。
「聞いたのは、単に仮想の話だ。お前だって、一度は考えた事はあるんじゃないか?」
「う、う‥‥む‥‥」
 完全には否定できない。

「ちなみに私は、とにかくかぁいい女の子がいいな。そう、うさみたんみたいに!」
 はらり、と背中に背負われたぬいぐるみに掛けられた布が落ちる。
「そ、そうか……私は、そうだな。優しくて、慎ましく、そう、あのにっくき小娘とは、正反対の――」
「うさみたんかぁいいお!うさみたんのような恋人がほしいお!」
 聞いちゃいねぇ。

「然し、同志が万一にもリア充になってしまったなら‥‥私は、それを爆殺しなければならないのだろうか」
 目を閉じ、フルフルと葛藤する。
 そんな角無しラグナの悩みを他所に、相変わらず角ありのほうはぬいぐるみを愛でている。旗から見ると――痛い。

「お、うさみたんが増えたお!」
 そう、ここは鏡の世界。好物である「かぁいいもの」が増えた角ありラグナの暴走が、どんどん加速していく。
「うぉぉ、うさみたんうさみたんはぁはぁはぁ」
 鏡を突破しながら進む角ありラグナ。
「待て同士!ここには何があるか――」

 静止も空しく。何かの条件に触れたのか、空間が揺らぎ始める。
 次々と、鏡が壊れていく。
「はっ‥‥うさみたん!?」
「同志よ、ここはもう長くは持たん‥‥もう、お別れの時間のようだな!」
「‥‥お互い、帰る時が来たな」
 硬い握手を交わす。

「今度会った時は、あの小娘を倒した話を聞かせたいものだ」
「リア充撲滅の数を競おうではないか」

 お互い、別れの時を感じたのか、手を振る。

「「ではな!」」

 かくして、一時の夢は終わり。
 二人の同一存在は、再び各自の世界へと戻っていったのであった。
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剣崎宗二 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年06月11日

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