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『連なる花の環、絆の縁 』
神室 時人(ic0256)&音野寄 朔(ib9892)&神室 巳夜子(ib9980)&徒紫野 獅琅(ic0392)&ジャミール・ライル(ic0451)


 目が覚めて。
 朝。抜けるような青空。

「ピクニック日和だねえ」

 窓を開けると、キリリとした冷たさの残る風が気持ちよくて、雨上がりの雫が庭の葉に美しく輝いていて。
 花の香りを楽しむように神室 時人が目を細めると、朝餉の支度を整えていた妹の神室 巳夜子がピクリと耳を動かした。
 平素はツンとしたお嬢様然としている彼女だが、好奇心の強さは年頃相応に。
 妹の赤い瞳が微かに大きくなったことに気づき、時人が柔らかく笑う。
「穴場をね、知っているんだ。皆で準備から一緒にやらないかい?」
「みんな…… ですか」
 兄の言う『皆』。
 巳夜子にも思い当たる顔がひとつ、ふたつ。
 兄の言う『準備』。
 巳夜子が思い描く眩暈の種がみっつ、よっつ。
「それでしたら、大勢の方が楽しいと思うのです」
 この世界には、『予防線』という言葉がある。




「ぴくにっく……? て、何やんの?」
 朝一番の呼び出しに、眠い目をこすりながら姿を見せたのはジャミール・ライル。
 寒い冬が終わり、眠るに心地よい季節となって、遊ぶにも最適な季節となって。
「よくわかんねぇけど、仕事もねぇしいいよー」
 楽しいお誘いも、普段より増し増しで大歓迎。そんな季節。
「よろしくねー、妹ちゃん」
「…………っ」
「巳夜子?」
「い、いえ、よろしくお願いします、ライルさん」
 警戒心の欠片もないジャミールの笑顔。出会った瞬間から対人ゼロ距離の姿勢に、巳夜子は少しだけ兄の背に隠れ、失礼だったと顔を出す。
「ライル君はね、私にとって大切な友人の一人なんだよ。なんといっても…… あ、来た来た。獅琅君!!」
「おはようございます。お誘い、ありがとうございまし…… ……またジャミールさんたちと? あ、お嬢さんもいらっしゃるんですか……」
 礼儀正しい物腰の徒紫野 獅琅だが、途中から言葉の歯切れが悪くなる。
 兄の後ろから顔を出したままの巳夜子が、少年をちろりと見上げた。
「何か不都合でも?」
「あ。いえ、楽しみです」
 にこり。
 獅琅はすぐに笑顔へと切り替える。
「天気が良くてよかったわ。あら、私が最後かしら?」
 微妙に強張る空気を霧散させる女性の声。

「……さ、朔君」
「音野寄さん……」
「わーい、音野寄ちゃんもいっしょー♪」

 ふんわりとした花緑青色の髪をかき上げ、 音野寄 朔が面々へ軽く頭を下げる。
「神室さんからのお誘い、乗って正解だったみたいね。楽しい一日になりそう」
 男性陣の、実に様々な反応を切って捨てて、朔は巳夜子へ笑いかけた。
「時人の妹の、巳夜子と申します」
 ――皆さんにも、お弁当の準備は手伝っていただくとして…… どなたか、女性の方もご一緒していただけないでしょうか。私一人では心もとない部分もあります。
 そう兄へ頼んでみた巳夜子だったが、こんな方と交友があったなんて。
 少しの驚きと、少しの安心を胸に、巳夜子はようやく兄の背から離れた。
 握手を交わした朔の手は、優しく暖かいものだった。


(誰とどうなるんだ、俺は)
 ここ最近の出来事を振り返り、獅琅一人が青ざめていた。

 


 準備するのは、五人分のお弁当に飲み物、お菓子類。
 それから芝生の上でものんびりできるような敷物等々。
「そこのお二人。働かざる者食うべからず、お手伝い願います」
 キラッと巳夜子の目が光る。
 所在無げに台所に立っていた獅琅、甘いモノはないかなと物色をしていたジャミールに白羽の矢が当たる。
「えー……。働くのやだけど……、こんな可愛い子にお願いされたらしかたないねー」
 金平糖の入った小箱を見つけたジャミールが、パッと笑顔を向けて。
「じゃあ、しろちゃんこれお願いー」
「えっ」
「えっ」
 巳夜子が突きだしたボウルをジャミールが受け取り、ジャミールは受け取ったボウルを獅琅へ手渡す。
「あれでしょー、食べる以外にも必要なモノあるんでしょー? 俺、そういうの得意だから。探すの任せてー」
 橙色の金平糖をひとつ、頬張って。
 ジャミール、華麗なる逃亡。
「あ、ジャミール君。それだったら蔵の鍵を持って行ってくれるかい。そこで揃うと思うんだ」
 時人、それに気づかない。
「ありがと、室ちんー 寝心地良いやつ選んでくるわ」
「私は買い出しに行って来ようかな。急な思い付きだったから、足りない食材もあるんだろう?」
「……あ、それは…… はい」
 ジャミールを見送り、時人が巳夜子へ視線を合わせる。
 彼自身、何がしか手伝いをしたいという気持ちが伝わるから、巳夜子も強くは出られない。
 在庫のある材料で作れるものと、せっかくだから買い出しでお願いしたいものを頭の中で素早くまとめ、紙へと走り書きする途中で手が止まる。
「あの…… どこで買うか、わかりますか?」
 我が兄ながら失礼と承知の上で、巳夜子。
「…………すまない、朔君も一緒に来て貰えるかい?」
「ええ、行きましょう」

 神室さん、泣きそうな顔をしていたわね。
 後に朔は語る。




 町に並ぶ様々な店が暖簾を上げ始める時間を、時人と朔が並んで歩く。
(勢いで同行を頼んでしまったが…… その、これは、少々、気まずいな)
(なるほど……。良いおかずの構成だと思うわ。これだったら、油揚げを増量してもバレないわね……)
 時人は過去の事故を思い出しては落ち着かず、
 朔は買い出しに当たっての野望を考えては落ち着かず。
「……恥ずかしながら」
 気まずさをどうにかしようと、努めて平静を装い時人が口を開いた。
「家事は殆ど、経験がなくてね。出来ることから少しずつ覚えようと思っているんだが……巳夜子に邪魔者扱いされてしまって」
「しっかりした妹さんだものね」
「その上、とても可愛いんだ」
「……。そうね?」
 確かにそうだが、そこへ全力で食いつくのか。
「ジャミール君や、朔君や…… こうして縁に恵まれたことを、私は幸運に思っているんだ」
 自分に無い知識を、経験を持っていて。
 嫌な顔一つせず、付き合ってくれる。
「巳夜子の邪魔にならずとも、そっと巳夜子を驚かせるくらいの家事能力を私もいつか」
「…………そうね?」
 目標は、そこなのか。
 最終地点は違うのかもしれないが、そうして息巻く年長者はどことなく微笑ましい。
「出会いの縁は、楽しいものよね」
 今日の朔にとっては、巳夜子とはそれになるのだろうか。
 戻ったら、一緒に料理を手伝おう。
 そこへ時人が入る隙があるかどうかは、別として。
「そうだ。最後で良いから、あの店に寄りたいんだ」
「――いい趣味だわ。賛成よ」
「……だろう?」
 悪だくみをする子供たちのように、二人は顔を見合わせた。




「無理です、巳夜子さん…… これ以上、キツくて俺……」
「何をなさってるんですか。力押しでは、壊してしまいますよ。ほら、ここを寄せて……」
「……」
「はい」
「……魔法みたいだ」
「重箱へ、おかずを詰めるだけでしょう……?」
「色の順とか、考えたことないですし。すげぇな、これ、俺が作ったんだ……」
「葉野菜を千切って調味料と和えただけですけどね?」
「またそうやって、意地悪を言う」
 卓の上には、熱冷まし中の重が幾つか。
 巳夜子が手早くおかずを作り上げていく間に、獅琅が仕上げた数種類のサラダもその中のひとつ。
「ただいまー。戻ったよ」
「巳夜子さん、手伝うわ」
 買い出し組が戻り、朔は手早く髪を結いあげ巳夜子の隣へ。
「なーんかいい匂いしてきた〜 もう食べれんの?」
「……ジャミールさん、つまみ食いはダメよ」
 朔は、味付け前のお揚げを容赦なくジャミールの口へと突っ込んだ。華麗なる菜箸さばきである。
「私も料理は得意なの。細やかなことは任せてね」




 太陽が空気を暖め、草花の香りが輪郭を際立たせる。
 昨夜降っていた霧のような雨も、今は緑が全て吸い取っていた。
 向かう先は、町はずれにある小さな広場。
 目的地へ向かうまでの歓談も、ピクニックの楽しさの一つだ。
「獅琅君、それは重いだろう。ひとつ、私が持つよ」
「先生…… これくらい、どうってことないですって」
 お弁当に、茣蓙や座椅子。
 体よくジャミールに押し付けられた荷物持ち。
 見るに見かねて、時人が手を伸ばせば、子供扱いするなと獅琅が眉を寄せる。
 こうして、何がしかに誘ってもらえることは嬉しい。
 心配してもらえることだって、嬉しい。
(……それでも、少しくらい頼りにしてくれたっていいのに)
 片や、獅琅の目には危なっかしく映るジャミールに対しては、全幅の信頼を寄せているようなのだ、先生は。
 いわく、『彼は自分にはないものをたくさん持っているから』。
(それは、そうだろうけど…… 変に染まらないか心配なんですよ……)
 獅琅にとって、時人は『特別』過ぎる。
 喪うことも、裏切られることも面倒だから、出来ることなら執着なんて、持ちたくない。
 そう身構えていても、それ以前の存在で。
「まー、なるようになるんじゃね?」
 獅琅の肩へ腕を回し、手ぶらのジャミールが鼻歌交じりにそんなことを言う。
「時々、人の思考を読むのやめてくれませんかジャミールさん……」
「え。読まねーよ、めんどくさい。真面目腐ったしろちゃんの顔がおもしろいだけー」
「……! …………!」
「ああ。それは、面白いわよね」
「音野寄さんまで!?」
「……なんとなくですが、わかる気はするような」
「巳夜子さんが、それを言うんですか」


(誰とどうなるんだ、俺は)
 本日二度目、獅琅は青ざめた。

(皆、仲良くしてくれていて嬉しいなぁ)
 時人、まったく気づかず。




 朝一番に、時人が思い立って集合を掛けて。
 午前中の半分を、お弁当や買い出し準備に宛がって。
 そこから、のんびりおしゃべりしながら歩くこと一時間足らず。
 太陽が中天へ差し掛かる前に、様々な花の咲き誇る広場へと、一行は到着した。
 日当たり良好、人の数も少なく落ち着いた雰囲気の、時人とっておきの場所。
 難しいことなんて全て放り出したくなるような、そんな場所。




 芝生に茣蓙を敷くと、ジャミールが真っ先にダイブする。
「いえーい! すげぇ、これ気持ちの良いやつ!」
「ライルさん、邪魔です。お弁当が広げられません」
「やだー、妹ちゃんわかってねーなー。ななめになってたら、せっかくの弁当傾くじゃん? ならしてるの!!」
「ふむ……。では、私も」
「先生は真似しなくていいですから!?」
「おいで室ちん、ごろごろしよーぜ!!」
「わかってないわね……。最上の寝心地は、座椅子にあるのよ?」
 脚を組み、朔が二人を見下ろす。
「「!!!」」
 木陰で優雅に体を伸ばすその姿は、確かに最上に思える。
「獅狼君はどうかしたの……?」
「いーえ。とりあえず、お弁当にしましょうよ……。俺、おなか空きました」
 この角度からだと、どうにも強調される朔の胸へ視線が行ってしまい、獅琅はそそくさと目を逸らす。


 定番の卵焼き、季節の野菜の天ぷら・から揚げ・肉団子。焼き魚と、簡単な煮物。
 調味料や野菜を変えての、数種類のサラダ。
 炊き込みご飯のおにぎり、お揚げを甘く味付けした稲荷ずし。
 桜でんぶや海苔を使って、見目美しく仕上げられている。
 暖かなお茶も、一緒にどうぞ。

 広げた茣蓙の上にも、鮮やかな花が咲く。


「巳夜子の料理は格別だろう?」
 我がことのように、時人は誇らし気だ。それぞれの取り皿へと、分けていく。
「音野寄さん、お酒を注ぎましょうか」
 そそっと、巳夜子は朔の隣へ。
 油揚げを使った品が多いのは、朔によるもの。
 好物なのだろうと察し、取り皿へ多めによそいながら。
「あら、ありがとう」
「聞けば、動物がお好きだとか」
 朔は杯を傾け、少女の言葉にゆったりと頷いた。
「ええ、相棒は家族も同然ね。けど……ジライヤも素敵よね」
「私の相棒は、大蛙なんです。いずれお目にかかる機会があれば良いのですが」
 こくり。喜びに、巳夜子の尾がフサリと揺れた。
「……今度相棒を連れて出掛けましょうか」
「是非」
 時人が巳夜子を大切に大切にする気持ちが何だかわかって、朔もまた上機嫌に尾を揺らした。


 紆余曲折を経て、ようやくたどり着いた弁当。
(あ、美味しい…… これも。あれ、なんか懐かしいな、この煮物)
「たくさん食べるんだよ。獅琅君は育ちざかりなんだから」
 そういって、時人がせっせと取り皿へおかずを分けてゆく。
 少年が反発していたのも最初のうち。
 歩き疲れと精神疲労も相まって、食事の美味しさが体に染み込んでくると黙々と食べ続けていた。
 ――そこへ。
「ああ、焼き菓子を買ってきたんだ。巳夜子には内緒だよ」
 膝元へ、焼き菓子ののった皿が寄せられる。朔と、こっそり買ったのだ。
 女性二人が相棒語りに興じている隙を見て、時人からのちょっとした差し入れ。
「内緒…… ですか」
 その響きに、獅琅の心臓がドクリと鳴る。
(先生には内緒で、お嬢さんと祭に出掛けたばっかりだ……。何も、なかったけど)
 むしろ、何かあったのはジャミールや朔とだったのだが。
 それでも、どことなく後ろめたい気持ちになるのは……
 『巳夜子』だから、なのだろうか。
 巳夜子自身だからなのか、巳夜子が時人の妹だからなのか、――それが、わからずにいる。


「音野寄ちゃーん、お酒わけてー」
「構いませんが、高くつきますよ?」
「やっだー、ツケといて? ほっぺに、ちゅーしてあげるから」
「高くつきますよ」
 ゴロゴロ転がりながら、ジャミールが加わる。
 大人組が酒を酌み交わす傍らで、巳夜子は指先の器用さを活かし、花を編み始めていた。
 白、薄紅、黄…… 野に咲くものも、彩り豊か。
 手折る際にも、花の寿命を出来るだけ延ばす方法がある。
 茎の緑もアクセントとなるよう考えながら、今日のこの時間を共に過ごす人々へ、何が似合うだろうかと思い描きながら。




 土の匂いが近くて、なんだかとても気持ちいい。
 親しい人たちの笑い声が、遠く、近く。
 ジャミールのスカーフを手繰り寄せ、時人はいつの間にか寝入っていた。
「……ふふ」
 そんな兄へ、花の冠を。
 載せた巳夜子が、ご満悦に微笑んだ。
「あ、気持ちよさそー。俺もー」
 程よくホロ酔いになったジャミールが、時人の隣へ体を伸ばすと、その手の先へ巳夜子は花の腕輪を通した。
「金属もお似合いですけど…… たまにはこういったものも素敵でしょう?」
 みずみずしい感触に、ジャミールは少しだけ驚いて。それから、腕輪に鼻先を近づける。
 紫と黄を基調とした色遣いで、なかなかに洒落ている。
「ありがと。大事にするねー」
(ここで、はぐとかぎゅーとかちゅーとかしたら、きっと後ろから室ちんにバサッとやられるやつ)
 そんなことを考えつつ、微笑ましい贈り物に青年は上機嫌の笑顔を返した。
 面倒な駆け引きは要らない、ギブもテイクも要らない、贈り物。
「室ちん、妹ちゃん可愛いねー」
 コロリ転がり、時人の頬へおやすみのちゅー……

 ――ザンッ

「……ライルさん?」
「え ……事故?」

 首筋に、ヒタリと刃物が奔る。
 巳夜子が、着物の袷から取り出した短刀である。
 はらりとジャミールの髪が数本、切れては落ちた。
 まさかの、妹ちゃんにバサッとやられるやつ。
 痛いのは嫌なので、さりげなさを装って、ジャミールはコロコロと位置を変える。




「音野寄さん」
 ザルの朔が一人呑みへ突入し、足元の酒瓶が片手を越えたあたりで。
 巳夜子が花で編んだ髪飾りを手に。
「一輪物の飾りも素敵ですが…… 一日限定と思って」
「あら」
 小さな花で、蝶をかたどった。
 色のグラデーションが美しく、朔の耳元に可憐に咲く。
 白い耳を幾度か動かし、朔は目を細めた。
「素敵な贈り物を、ありがとう」
 少女の頬へ指先を伸ばすと、年相応の表情が覗いた。

 ――その後ろで、獅琅の悲鳴。

「何をやってるんですか……」
 呆れかえって、巳夜子が見下ろす。
「なんにもしてないよー」
「なにもって! ひとの! お尻をも…… っ」
「揉まれたのですか?」
「さらっと言わないでください、巳夜子さん!」
「静かに。兄が起きるでしょう。せっかく穏やかに寝ているのに」
「…………」
 快適な昼寝スポットを求めてゴロゴロしていたジャミールの手の先に、何か柔らかなものがあったので揉み込んでみただけ。他意のない事故だ。
 ジャミールだって、折角だったら可愛い女の子の柔らかいものに触れたいところ。
「見た目より硬いし」
「感想は要りません……」
(だれもわかってくれない)
 さめざめと泣く獅琅。

「……これを差し上げますから、泣き止んでください」
  
 真っ白な花で作られた首飾り。
 お菓子よりも甘い甘い香り。
「……お似合いです」
 清廉な、その色合いが。
 いつだって、獅琅にはツンとした顔のお嬢さんが、微かに笑ったように見える。
「……首輪つけてお似合いだなんて。いい趣味ですね、巳夜子さん」
「?」
 獅琅の言葉の意味を、最初は飲み込めず、巳夜子が小首を傾げ。
 それから、見る見る不機嫌となる。
 何事か言おうとし―― 口を閉ざす。肩を落とす。
(あ)
 しまった、と獅琅が思ったのも後の祭り。
(……お嬢さんは、良くも悪くも純粋培養なんだ)
 『自分とは違う』形にしかけて、振り払う。
「冗談です。……それでも俺は、構わないですけど」
「徒紫野さんは…… 意地悪です」
「自覚はあります」
 濁し誤魔化し、獅琅は俯く少女へ目を合わせる。
「内緒ですよ」
 時人から貰った菓子を、その唇へ。




 なんだかとても、優しい夢を見ていた。
 肌寒さを感じて時人が目を覚ませば、大切な人たちがそこにいる。
 載せられていた花の冠に気づき、笑みをこぼす。

「楽しかったね……。付き合ってくれて、ありがとう」
「また来ましょうね。こんなお誘いなら大歓迎だわ」
 持ち込んだ酒を全て空にし、朔は上機嫌。
「酒瓶以上に重いお持ち帰りさえなければ、俺も嬉しいです」
 まったく目覚める気配のないジャミールを背負い、獅琅。
「……そう、ですね」
 甘い洋菓子の味。
 持ち込んだ犯人の目星は付いているが責めることもできず、複雑な気持ちを抱えて巳夜子が頷いた。



 太陽の光。
 風の香り。
 緑の鮮やかさ。
 手作り弁当の味に、可愛らしい花の環。
 
 今日という一日を、忘れられない最良のお土産に。




【連なる花の環、絆の縁 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ic0256/  神室 時人 / 男 /28歳 / 巫女】
【ib9980/ 神室 巳夜子 / 女 /15歳 / 志士】
【ic0392/ 徒紫野 獅琅 / 男 /14歳 / 志士】
【ib9892/ 音野寄 朔 / 女 /19歳 / 巫女】
【ic0451/ジャミール・ライル / 男 /24歳 / ジプシー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ご依頼、ありがとうございました。
ほのぼの楽しくピクニック♪ お届けいたします〜。
お楽しみいただけましたら、幸いです。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
舵天照 -DTS-
2014年06月20日

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