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『SHACHIKUへ捧ぐ鎮魂歌 』
小野友真ja6901)&加倉 一臣ja5823


 \天界を始め各種並行世界のアイテムを中心に、不思議★素敵なラインナップを揃えています/
 『輸入製品通販会社・エンジェル商会』
 少ない社員、過酷な労働、頼れる社員は大体目が死んでいる。

 これは、京都支社におけるある社畜と愉快な仲間たちの紡ぐエピソードの一つである。




「ぶちょーう!新事業の最高責任者て、すごいですやんかー!!」
 朝日の如き明るい表情、大仰な身振り手振りで駆け込んでくるのは小野友真。
 エンジェル商会京都支社の社畜の頂点を極める、米倉創平の部下である。
 他社から出向した折に創平の仕事ぶりを目にし、「あかん、ほっとかれへん。このひと死んでまう」からの華麗なる転職、今に至る。
「おはよう、小野君。昨日は、よく眠れたか?」
 微かに目を細め、抜けるような白さの――裏を返せば青白い――肌の創平が友真を見上げた。
「そのお顔は、寝てへんですね部長」
「熟睡した」
「何時間です?」
「……0.5」
「30分て、仮眠にもカウントされんやつ!!」
「資料を調べ始めたらキリがなくてな……。こういったことは、君の得意分野だと気付いた頃には夜が明けていた」
「!? 俺の出番! ですか!!」
 眉間をギュウと摘まみながら、創平が資料を手渡す。
 新事業に関するものと、夜を徹して集めたらしい資料。
「アクセ部門のテコ入れと新規開拓……」
「これを機に、WEB方面も刷新したくてな」
(当たり前みたいに俺もメンバーに入っとるんて嬉しいな)
 胸のソワソワを抑えながら、友真は資料に目を通した。
「……部長、是非紹介してみたいデザイナーおるんやけど」
 加倉 一臣。
 友真の恋人であり、フリーランスで活動中の『何でも屋』デザイナー。
 社畜経験もあるから、ここのデスマにも耐えてくれるはず。
(いつか一緒に仕事できたらなー、て思うとったし)
 交際は、友真が学生の頃から。9歳年上で既に社会人だった一臣の仕事ぶりは近くで目にしている。
「えーと、例えば…… こことか、こういう仕事、してるんです」
 パソコンを簡単に操作し、彼の『仕事』を紹介してみせる。
 ふむ、と創平が顎を撫でた。




 翌日。
「ご紹介に預かりました、加倉です」
「こちら方面が本職だったんだな。改めて、今回はよろしく頼む」
 スーツ姿にノンフレームの伊達眼鏡、髪を後ろへ流した一臣が姿を見せると、創平が立ち上がり…… 友真は事態を把握するのに数秒を要した。
「……って、既に知り合い?」
「ハハハ、鬼の副長……じゃなかった、部長さんとは何度か仕事させて頂いてます」
「えっ、家で話した時に言うてよ! マジでか、恥ずい……」
「家?」
「あ」
「仕事に恋愛は持ち込まない主義ですが、友真の仕事っぷりにも興味あったもので」
「ああ」
 ぽふ。
 スーツ姿もそこそこ板についてきた友真の頭へ、一臣が手を置く。
 短い『説明』で合点がいったらしく、創平も相槌を打った。
 二人の『関係』よりも、普段の二人それぞれの仕事ぶりに満足していればこそだろう。揶揄も口にしない。
「打ち合わせは、奥の部屋で」

(恋愛敬愛の両手に花……で、いいんかな、これ……?)
 談笑する二人の間に入りこもうとしてコーヒーの準備が先だと踵を返しつつ、友真の頬がついつい緩んだ。


「なるほど。メインアイテムがこちらでしたら、ベースのカラーは……」
「ああ、ストップ。今のサンプル、それが良いな」
 商品サンプルをテーブルに数点。
 それに、一臣が持ち込んだカラーサンプルやサイトデザインサンプルのファイルを広げる。
 向かい合い話を進める二人の間に、友真、入りこめない。
(両手に花…… 俺は、そしたら何になるん? ……木?)
「はいはーい!!」
「どうした、小野君」
 このままではいけない、思い立って友真が手を挙げて存在アピール。
「学生をターゲットに入れるんやったら、親御さん世代にも共感貰えるようなデザインが良いですよね」
「……ふむ、たしかにな。となると、操作性も解かりやすい方がいいか」
 それを受け、一臣もファイルをいくつか捲る。
「サイトマップも、ですね。子供は吸収が早いけど、特定層は否定から入るんで――」
 付箋を貼り、ノートに書き込む。
 その長い指に、友真は目を奪われる。
(一臣さん、こうしとると仕事できる男って感じやんなー)
「友真、見惚れない」
「!!?」
「モックアップは来週までに提出しますね」
「さすがだな。期待している」
 流れるような動きで友真を動揺させつつ、一臣は創平へサラリと笑顔を向け。
「部長、今日は仕事、早う終わりますよね! よかったら三人で、おでん屋いきませんか?」
「おでん? あ、ときどき土産に持って来てくれてる屋台の?」
「そそ」
「……悪くないか。加倉君、この後の予定は?」
「空いてます空けてます。冷めてないおでん、食いたいです」
 



 ――今日はまた、豪勢なことで。
 明るい笑顔で、赤毛の大将が来客を出迎えた。
 屋台の椅子に腰掛けると、そこだけ空間が切り取られたような不思議な感覚になる。
「景気づけに来ました! 大将、俺、餅巾着ー!」
「はいよっと。米倉さんは、しらたきとはんぺんの他にどうする?」
「……大根」
「もう少し、色のあるものを……。いいけど。君は?」
「卵とタコと牛スジと熱燗一杯。あ、大将、ツブはある?」
「良い出汁でてるよー。ちなみに北海道産」
「ふっ。大将、こう見えても俺、道産子なんですよ……。看板に騙されませんからね」
「ふっ。今日はなんと『根ぼっけ』入荷してるんだよね」
「おでん屋ですよね!?」
「すみません、共通言語で話してもらえます……?」
 友真が恐る恐る挙手をした。
 その隣で、創平が「根ぼっけか……」と珍しく興味を引かれた風に呟いた。

【根ぼっけ】春から初夏にかけてが旬の、岩礁に住みついたほっけ。道南近海で主に獲れる。でかくて美味い。


(なんか、ええな)
 屋台特有の暖かさに包まれ、友真はそう思う。
 この会社へ来て積み重ねた経験と、信頼と。
 なんでも笑いあえる行きつけがあって。
 てらいなく、恋人を紹介できて。
 恋愛相手、敬愛対象、その三人で動かす仕事の書類は、友真が鞄に入れて大切に抱えている。
 アツアツのおでんに笑みをこぼし、明日からも頑張ろうと――

 最初に反応したのは一臣だった。体を逸らし、屋台の外を覗く。
「どうしたん、一臣さん?」
「いや、なんか視線が……」
 何かを察したのか、創平が箸を置く。

 次の瞬間――煙と閃光と爆音が屋台を襲い、慌てた友真がテーブルに膝を打ち皿をひっくり返した。

「あっ、おでん落ちた! 仕事帰りを癒やす好物に何て事を」
「いまどき爆竹とか、古いなオイ」
「ごく一部に効果てき面でしたけどね」
 身を乗り出す大将へ、一臣が苦笑いを返す。

「エンジェル商会の新事業チームだな?」
「違う、といったら?」
「見間違えるかよ、その死んだような面ァ!」
(敵対会社ってところか)
 7、8人の黒スーツが屋台を囲んでいる。
 飛び道具をもっている者は居らず、バットだの木刀だのの打撲系の武器を手にしている。
「野郎共、お相手したげましょか……」
「末端から、アシはつく。トカゲの尻尾であろうが、切られたとして本体には必ず報いが及ぶ」
 創平は胸元からスマートフォンを取り出し、素早く面々を激写。それから警察へ連絡し、スマホを大将へ放り投げる。
 有無を言わせぬ流れだった。
「さて…… 優秀な日本の警察が到着するまで三分ほどか。どうする? 逃げるか、此処を墓場にするか?」
「決まってらぁ、お前らの墓場にするまでよ!!」
 飛びかかってくる黒スーツの、その足元へすかさず一臣がスライディングで払う。
「失礼、ガキの頃から足癖が悪くってね」
 浮いた腕を創平が叩き、木刀を落して奪う。
「まず一人」
 容赦なく水平に振りぬかれたそれは、鈍い音を立てて男のこめかみに当たり数m程ふきとばした。
「ぶちょう。なんかエグイ音がしたんですけど」
「納期には余裕が必要だ。警察が来る前に潰す」
「こんな時まで仕事脳……ッ」
 如何せん、狙われたのが仕事に関するものなので。
 鬼の社畜のハートに火が吐いた。
(死人は出したらあかんやろ……!)
 友真は振り下ろされるバットを転がりながら回避し、腕を伸ばした先にあった椅子を掴んでは遠心力をつけて投げる。
 肩口に強く当たり、恐らくは武器など扱えまい。
「屋台は無実だと思うんですけど!!」
 煽りを喰らった大将が、背後から襲って来た黒スーツへ肘鉄を喰らわせ、屋台の屋根を取り外して角で痛打する。
「「なにその便利機能」」
 友真と一臣が声をそろえる。
「商売柄…… 色々とあってね」
 おでん屋台・大将、筧 鷹政。影のある男。

 程なくパトカーのサイレンが近づき、残った男たちは仲間を背負い撤退する。
「あ。前回のコンペで負けた会社やん」
「……小野君?」
 短時間で相手の懐に入り、入っただけではなく名刺を抜き取っていたのは友真である。
「頼もしい部下に育ったねえ」
 誰に似たのやら。
 大将が、ニヤニヤ笑った。




 美味しいおでんで景気をつけて、チームの結束強化イベントもクリアして。
 デスマーチもクリアして。

 待望の新企画お披露目――
「部長ー! メイン商品、完売しました、次回入荷はいつですかー!」
「部長ー! 広報から連絡ですー、内線まわしまーす」
「部長ー! 0.5でもいいんで寝て下さい!!!」


 輝ける社畜ライフは、今日も平和に。




【SHACHIKUへ捧ぐ鎮魂歌 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja6901/小野友真/男/社会人】
【ja5823/加倉 一臣/男/何でも屋デザイナー】
【jz0092/米倉創平/男/社畜】
【jz0077/筧 鷹政/男/屋台の大将】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました。
社畜ライフおでんMIX、お届けいたします。
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佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年06月30日

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