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『●青薔薇のドレス 』
ブルームーンjb7506
「おはようございます。マネージャー」
「おはよう。ブルームーン。今日は、寝坊せずきちんと起きられたみたいね」
 他愛無い挨拶を交わしてマネージャーの車に乗り込む私。


 私の名前は、ブルームーン(b7506)。
 仕事は、スーパーアイドル。
 そこら辺りにいる一山幾らのアイドルじゃないわ。
 曲を出せばダウンロードもCD販売数もミリオンの乱発。
 ドーム球場や武道館で行われるライブは、追加チケットも販売開始数分で売り切れる伝説級のアイドルなの。

 今日は、私がプロデュースしたウェディングドレス『ブルームーン』の完成品試着日。
 ウェディングドレスの為に夜遊びも封印し、お肌の状態もばっちり整えたのよ。
 お披露目イベントまでは、ウェディングドレスの事はトップシークレット。

 私位のアイドルになるとパパラッチは、当たり前。
 移動中の車が止まった僅かな隙にパチリと写真を撮らたりするから気をつけなきゃね。
 その辺りは、撃退士だった頃とは一味違ったスリリングな仕事よね。
 仮縫いも何時ものスタイリストさんの事務所じゃなく衣装を保管して入る倉庫で行った念の入れようよ。

 そんなウェディングドレスがやっと完成したんだから、ワクワクしない方が可笑しいわよ。
 今までイメージを伝えて衣装を作って貰った事はあっても、デザインや素材まで関わったのはウェディングドレスが初めてよ。

 私のドレスは、自分で言うのもなんだけど、とっても素敵なドレスなのよ。
 白いプリンセスラインのウェディングドレスを飾るのは、たっぷりとしたドレープとリボンに青薔薇。
 私が私の為に作り上げたウェディングドレス。

 仮縫いから今日までの日が、本当に長くて待ち通しかったわ。
 髪もメイクもバッチリお披露目イベント当日と同じにしてもらうのよ。
 一番乗りで、しかもほぼ独り占めで見る喜びに浸れるのだから、今日は最高の日になるのは間違いないわ。


「今日は、大事な日ですもの。寝坊なんてしていられませんわよ」
 きっと私は、最高の笑顔でマネージャーに微笑んでいるわ。


 ***


「おはようございます♪ 今日はよろしくお願いします」
 倉庫に着くと、何時もコンサートでお世話になっているメイクさんと衣装さんが待っていたわ。
 大事な衣装を保管する場所だから電灯やエアコンがあるし、場合によってはメイクのテストもするから大きな照明や鏡が置いてあるのは便利よね。


「チーフ。髪に隠れてしまいますが、イヤリングどうしましょうか?」
「そうね……ゴテゴテしつこくなり過ぎるから当初の予定通り、着けない事にしましょう」
 私がメイクや衣装で変わっていくのを見るのは、楽しい時間だけど今日は我慢だわ。
 ウェディングドレスを着た時の感動をMAXにしたい私は、現在、目を瞑ったまま。
 それでもメイクや髪が整えられるチョーカーや手袋がつけられていくのが、触れた感覚で判るのね。
 でも細かいチェックは、マネージャーが頼りだわ。
「どう? マネージャー?」
「綺麗よ。ブルームーン」

 次は、衣装さんに手を引かれてウェディングドレスが待つ場所へ移動だわ。
「ここ、段差がありますから足元に気をつけてくださいね」
「はい」
 花飾りを踏まないように気をつけながら、広げたドレスの中央に私が立ったのを確認すると、
 衣装さんが二人係りで私にウェディングドレスを着せ、背中のホックを止めていく。
「ブルームーンさん、背中も綺麗ですね。何か特別なお手入れしているんですか?」
「うふふ。ありがとうございます。でも特別に何もしていませんのよ」
「もうちょっと待っていてくださいね。今、メイクさんがベレーを調えていますから」

 メイクさんが部屋に入ってきて、髪を手直しをしているわ。
 ああ、本当に待ち遠しいわ。
「はい。お待たせいたしました。目を開けていいですよ♪」
 その言葉にゆっくりと目を開ける私は、思わず溜息を吐く。

「なんて素敵なんでしょう。デザイン画や仮縫いで何度も見ていた筈なのに……」



 私の目の前の鏡に映るのは『ブルームーン』に彩られた花嫁──。
 ──花冠のようなベレーに飾られた髪は、トップからハーフまでを纏めて、他はすべて下ろして清楚さを。
 何時もの小悪魔的なメイクではない花嫁らしい優しいイメージに。
 オフショルダーの白いドレスは、リボンと青薔薇をアクセントにした甘さとセクシーさを兼ね添えた豪華なプリンセスライン。
 青いリボンチョーカーは、青薔薇とカボションのサファイアが煌き、
 薔薇のブーケを持つ腕は、指先がオープンの白い長手袋。
 花びらのようなネールに彩られた指先は、左手薬指にだけ小さなラインストーンが飾られている──。


「綺麗ですね……」
「『ブルームーン』の花言葉は『神の祝福』だそうですが、このウェディングドレスに相応しい言葉ですね」
「ブルームーンさんの為に作られた最高のドレスですよね」
「明日のイベントは、きっと大成功ですよ」
 うっとりとした周囲のスタッフから感嘆の溜息が心良いわ。
 きっと明日のお披露目イベントも同じように。
 いいえ。それ以上の、沢山の賞賛の声が上がるわ。
「あさってのお昼のワイドショーは……いいえ、明日のネットニュースの速報もこのウェディングドレスがトップニュースよ」
「ええ、本当に楽しみですわね」
 マネージャーの言葉に強く頷く私だった。


 ***


 ──そんな事を考えているブルームーンの思考を邪魔するものがいた。

 ジリジリジリ──!
 激しいベルの音が倉庫の中に響く。
 照明が突然消え、周りが真っ暗になってしまった。
「火事なの?」
 両手で耳を塞いでも響くベルの音は、火災警報器のベルにも似ていなくもない。
 ふと気が着けば周りにいた筈のスタッフやマネージャーの姿が、消えていなくなっていた。
(一体、何が起こっているの?)
 そしてブルームーンが着ていた服もまた、ウェディングドレスから何時もの黒いゴシックドレスに変わっていた──。








「私のウェディングドレス──!」
 自分の悲鳴で目を覚ましたブルームーン。
 何時もと変わらぬベットの上である。
「……なんだ、夢なのね」
 目覚ましのベルを止め、がっくりするブルームーン。
「ちょっと話が、美味過ぎると思ったのよね」
 目覚ましを見れば寝なおす時間はないようである。
「学校サボっちゃおうかしら? ん〜でも教室を覗いたらアイドルの勉強になるような依頼があるかもしれないわね」
 小悪魔ブルームーンのいつもと変わらぬ久遠ヶ原ライフの始まりであった──。





<了>



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 b7506 / ブルームーン / 女 / 18歳 / アカシックレコーダー:タイプB 】
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エリュシオン
2014年06月30日

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