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『So Funny Trip 』
百々 清世ja3082


 どうしてこうなったのか。
 新幹線の座席でジュリアン・白川は眉間に皺を寄せる。
「あ、じゅりりーん、アイス食べよー!」
 隣の席には百々 清世。
 自宅を出たところで偶然遭遇したのだが……。
 ちょっとコンビニまで一緒に。気がつけばそんなノリで、大阪への週末小旅行についてきた。
「デートの予定はなかったのかね」
 じろりと横目で見ると、アイスを頬張りながら清世はこともなげに言う。
「今してるじゃん?」
 何かが違う。そう思ったが、それ以上の議論に意味がない事は理解できた。



 やたら足早に歩く人々を縫うように進み、駅の外に出る。
「今からどこ行くのー?」
「近くのギャラリーで友人が個展をやっていてね」
 清世に答えながらも白川は歩速を緩めず、ムービングロードの上もどんどん歩く。もっとも、ほとんどの人が同様に、競争するように歩いていた。
「個展ー?」
「彫刻家なのだがね。ああそうだ、良かったら君は近くのカフェででも待って……」
「いいよー、付き合ってやるから」
「……」

 ほどなくして、小さな画廊に着いた。
 白川と同年代と思しき女が笑顔で出迎える。
 清世は然程広くもない画廊の中をぶらぶらと見て回った。動物とも植物ともつかない、不思議な作品ばかりだ。
「ゲージュツとか、よくわかんねえわ」
 首を傾げる清世の耳に、小声の会話が届く。
「貴方、いつの間にそういう……」
「誤解するな! 偶然会っただけだ!!」
「大丈夫。私はそういうの、理解あるから」
 その内容が面白かったので、清世は白川の腕に掴まりながら言ってやった。
「じゅりりーん、今日どこ泊まるー?」
 彫刻家は何も言わず、ただ意味ありげに微笑んでいた。



 画廊を出たところで、白川は疲れたように呻く。
「全く、君は何を考えているのだ……!」
 友人の誤解は最後まで解けなかったようだ。
 それには答えず、清世は前方を指さす。
「あれ何? オブジェ?」
 ビルの上に妙な存在感を示す赤い観覧車が見える。
「いや、普通に観覧車だ」
「え、マジで。乗ろ!」
「えっ!?」
 今度は清世が先に立って歩きだす。
「カップルと女性の団体ばかりだぞ!」
 白川の抗議を顧みず、清世はスマホを操る。
「おー地図あったわ。こっちだ」
「だから、何故、男同士で……!!」
 抵抗する白川を列に押し込め、清世は興味深々の体でこちらを見る女の子に愛想よく笑顔を向けた。
 黙って立っていても、金髪にグラサンの白川は目立つ。横にイマドキのモテ系男子の清世がいると、一層目立つ。
 下手をするとホストクラブの店長が新人をスカウトしたようにも見える二人が真っ赤な観覧車に乗りこむところは、シュールですらあった。

 ゴンドラが静かに上昇して行く。
「おー、すっげ、駅とか近い!」
 清世は窓の外の景色に思わず声を上げた。
「晴れていれば明石海峡まで見える、と書いてあったな」
「ふーん……? 距離感とかわかんねーわ」
「まあそうだろうな」
 白川が笑いながら、どんどん低くなっていくビル群に見入る。
「上から見ると随分違って見えるものだな」
 眺めは思った以上に素晴らしかった。
「じゅりりんあれ何ー?」
「ん? ああ、……って、何故こっちに座る!?」
 向かい合っていた清世が、同じ側に来たのだ。
 すぐに理由は分かった。
 後に続くゴンドラの中で、女の子の集団がこちらを見て何やら盛り上がっているらしいのが見えたからだ。
 清世はわざと肩をくっつけ、笑顔でひらひらと手を振る。
「……君のサービス精神には感服するが、私を巻き込むのは止めて貰いたい」
 能面のごとき無表情で白川が口だけを動かした。
「じゅりりんも女の子が喜ぶの見るの、嬉しーだろ?」
「笑顔を見るのは好きだが、笑われるのは好きではない。もしかして画廊のもそれが理由か」
「えーあれはひとりでヒマだったし?」
「だからついてこなくていいと言っただろう……!」
「ひとりだとつまんないじゃん? ほらほら、笑えー」
 ゴンドラ内にシャッター音が響く。



 夏の長い日も暮れつつあった。
「じゅりりん、腹減ったわ」
「そうだな。君は好き嫌いはないのだったかな」
「美味しい物なら何でも好きよー」
「……付き合って貰ってもいいか?」
 珍しく、少し照れたような白川の表情だった。

 高層ビルを背に、それなりの距離を歩いた頃。
 白川は入口を緑の葉に覆われたマンションを指さした。
「あそこだ。どうしても久しぶりに寄りたくてね」
 インド料理の店だった。民族音楽が流れ、極彩色の雑貨が並んでいる。
「なんか意外。じゅりりんてもっとなんかこう、違う店のイメージ」
「そうか?」
「うん。インド料理でもホテルのレストランとかー」
 テーブルに皿が運ばれ、香辛料と焼立てのチャパティの香りが鼻をくすぐる。
「こういう料理は雰囲気も味わう物だろう。それに神話を研究していると、インド神話、ひいてはインド哲学にも興味を惹かれるのだよ。音楽、料理、そういった物と思想とは切り離せる物ではないと思うね」
 滔々と語る白川を、胡散臭い物を見る目で清世が窺う。
「じゅりりん……そんなこと考えながら飯食って、うまい?」
「勿論だとも」
 どこまで本気か判らない白川の笑顔だった。

 それでも白川がわざわざ寄りたいというだけあって、料理もデザートも、食後のチャイも絶品だった。
「明日はどこ行く予定ー?」
 清世の問いに、白川が少しの間の後に予定はないと言う。
 個展の為だけに一泊するものだろうか?
 そうは思ったが、予定がないというからにはないのだろう。清世はシンプルに判断する。
「んじゃ、この辺りもうちょっとぶらぶらしよ」
「そうするか」
 外に出ると、夜空には雲ひとつ見当たらなかった。明日も晴れそうだ。



 朝から振り回され続けた白川だったが、トドメが待っていた。
 荷物を預けていたホテルに戻り、チェックインする段になって、清世の部屋を押さえていないことを思い出したのだ。
 週末の観光地のこと、シングルは満室だという。
「俺、ダブルでいーよー?」
 横から口を出す清世の頭を押さえこみ、白川はそこを何とか、と食い下がる。
 だが、ない物はない。
 結局予約済みの部屋の代わりに、ツインルームに腰を落ちつけることとなった。

 ごろりとベッドに横になり、清世が口を尖らせる。
「ダブルで良かったのに。ベッドが狭いじゃんー」
「充分広いだろう。セミダブルのツインだぞ」
 白川はジャケットをハンガーに掛けながら部屋を見渡す。
「一緒に寝たら狭いじゃん?」
「寝 な い !!」
 ふかふかの枕が宙を飛んだ。
 顔面にぶつかった枕を抱え込み、清世が訴える。
「じゅりりん、俺のこと嫌いなの……?」
 白川は全身の力が抜けるような感覚に襲われた。
「好きとか嫌いとかいう次元の話ではない」
「嫌いじゃないなら一緒に寝よ?」
 満面の笑顔。
 誰かとくっついて眠ると気持ちが良い。清世は自分の感覚に正直だった。
 気持ちのいいこと、楽しいこと。
 それを分けあえると思うからこその笑顔なのだが、白川はときどき困惑する。
 これは信頼されているという事なのだろうか。それとも単にからかって遊んでいるのか?

 突然、清世がベッドの上に起き上がり笑いを収めた。
「もしかしてさー俺が女の子だったら、じゅりりんもっと笑う?」
「は……?」
 意外な問いに、白川は暫し言葉を失う。
「なんかいっつもこんな顔してる」
 清世が顔芸で白川の苦虫をかみつぶしたような顔を再現。
 呆れつつ、白川はつい声を上げて笑い出してしまった。
「君が女子学生だったら、全力で逃げ出しているだろうな」
 恐らくは、自分自身の中に危険を感じて。それ程に――
「何それ。よくわかんない」
「顔については気をつけよう。だが君は敢えてそうさせているときもあるだろう?」
「えー?」
 清世がふたたび寝転がった。
 ちょうどテレビでは好きな映画のクライマックスシーンが流れていて、そのまま清世は画面に見入る。
「先にシャワー使うからな」
「うん」
 微かな水音が室内に響いた。

 映画が終わり、清世もシャワーを浴びる。
 備えつけの浴衣は、何だか面倒だったので放り投げた。
「あれー? 寝ちゃったのかよ」
 部屋に戻ると、白川はベッドに突っ伏したままの姿勢で寝息を立てていた。
「せっかく一緒に飲もうと思ってたのにー」
 わざと乱暴に傍に腰を下ろすが、起きない。
 余程疲れていたのだろうか。何やら苦悩する様に眉を寄せたまま、眠り続けている。
 ある意味気を許しているからこそなのだが、清世としてはつまらない。
「しょーがねーな……明日はばっちり埋め合わせさせるからな」
 だが清世も小さな欠伸を漏らす。
「俺もねむねむだわ。ちょっと詰めろー?」
 清世は白川の身体の下から布団を引っ張り出し、ごそごそと潜り込む。
 普段ならここでぶつくさ文句を言う白川が実に大人しい。
「でもなー、おやちゅーもできてねえじゃん」
 そこでふと思いつき、清世はスマホをかざす。
 顔を寄せて自撮りモード。残された写真は、後日のお楽しみということで。
「おやすみ、じゅりりん」
 答えはただ、何も知らない平和な寝息のみであった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja3082 / 百々 清世 / 男 / 21 】

同行NPC
【jz0089 / ジュリアン・白川 / 男 / 28 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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大阪観光をご一緒に。今回はキタをご案内いたします。
かなり趣味に走りましたが、お楽しみいただけましたら幸いです。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
FlowerPCパーティノベル -
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エリュシオン
2014年07月03日

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