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『流れ星 』
強羅 龍仁ja8161)&加倉 一臣ja5823


 ――星を観に来ない?


「……星? 来る、ってことは、お前の家か?」
『YES。マンションの屋上。穴場なんだよ。気温も上がって来たしさ、宅飲み……とも、ちょっと違うけど』
 軽い物なら、キッチンで作って持ち込める。
 筧 鷹政からの誘いに、強羅 龍仁が少し考え込む。
「そうだな、……この日と、この日なら空いてるが。それでどうだ?」
『オッケ、加倉にも俺から聞いてみる。アルコールはこっちで準備するから、強羅さんは一番美味い物を頼む』
「それは、鷹政の家の冷蔵庫次第だな。在るもので用意するぞ」

「わかった筧さん、花火もってくからバケツ用意してて」
 屋外で飲み。
 気心の知れたメンツで。
 時間無制限、終電逃したら泊りもドウゾ。
 仕事? 今おわったトコー☆
 という話の流れを聞いて、加倉 一臣は状況を理解する。
 つまり。
(パーッとしたいんですね、筧さん……)
『で、ひとつ提案なんだけど』
 通話の向こうの声が、たくらむような笑いを見せた。




「おい鷹政、カセットコンロはあるか?」
「あー、それくらいなら」
「餅焼き網は?」
「ある」
「じゃあ、ツマミはこれくらいでいいか。炭火とは言わんが、上で焼きながら食べる物もあると退屈しないだろう」
「……バーベキューセット準備する?」
「筧さん落ちついて、それ屋上まで持って行くのは誰? テントとか寝袋とか言い出す流れだよね?」
 龍仁が焼きビーフンを皿に開けたところで、鷹政が挙動不審となり、簡単に荷物をまとめていた一臣が言葉を差し込んだ。
「イッ、イワナイヨ!」
「目を合わせて、もう一度」
「カセットボンベの在庫確認して来まーす」
「……浮かれてるね」
「浮かれてるな」
 一臣と龍仁は、視線を交わして肩をすくめ、それから笑い合う。

 戦い疲れた日常の、ほんの少しの休息時間。
 流れる星のように、きっと過ぎてしまえば一瞬のような時間。
 だからこそ大切に、楽しく過ごしたい。そう思い願う。




 空が、近い。
 前日の雨が上がり、澄み渡った空に星々が輝いている。
「これは見事だな」
「だろー。夏祭り時期に花火大会があれば住民も上がってくるんだけどさ、普段はホント、あずましくって」
「あずま……?」
「だからって飲みすぎ注意ですよー。網焼きをかっぱがしたら大惨事だ」
 鷹政と共に、アウトドア用のテーブルを広げながら一臣は笑って応じるが、龍仁には織り交ぜられる単語の意味が時々わからない。
「かっぱが……?」
「どれだけ飲んでも大丈夫ー。現地で買ってきましたと言いたいところですが、オトリヨセでっす」
「ちょ!!! 北海道限定ビール! それにこれ、修道院ビールって、筧さん!?」
 懐かしい地元のラベルに一臣が歓声を上げ、そこでようやく
「……北海道、か?」
「…………一部、翻訳不可な会話が混ざっていたことをお詫び申し上げます」
 首をひねる龍仁へ、鷹政が頭を下げた。


「学生時代に剣道習ってた師匠がさ、故郷が函館なのよ。それで、自然とうつりましたよね」
 網で、一臣の持ち込んだスルメを炙りながら鷹政が切り出す。
「冬休みの帰郷で、出くわしましたもんね」
「そんなことがあったのか……。函館には、俺も今年の修学旅行で行ったな」
「海産物、美味しかったでしょー」
「酒の種類も色々あったし…… 面白いところだな」
「文化に半分、青森が入ってるから『北海道』全体とも少し離れてるんだよな」
 三人のカップへビールを注ぎながら一臣が続ける。
 北海道は洞爺湖を中心に冥魔軍の総大将がゲートを構え、巨大な支配領域を張り。
 秋田や青森は不穏な空気が続く中、『函館』は文字通りの『陸の孤島』状態だ。
 住まう人々は平和に暮らしているし、往来が不可能というでもない。かといって、気軽に頻繁に――と思えば、『修学旅行』などといった名目があった方が、行きやすいだろうか。
「ま、懐かしいことにも触れつつ」
 笑い、鷹政がカップを掲げ。

「ひとまずは。平和な星空に、かんぱーい!!」

 本格的な夏の手前。
 涼やかな夜風と星と龍仁の手料理を肴に。
「あ、強羅さんは二杯目からは、こっち」
「うん?」
「ネットで調べてるうちに拍車がかかりましたよね。東北の地酒! 青森・秋田・宮城で揃えた」
「全部、飲めというのか?」
「え、全部飲めるの……? 一口ずつは俺らにも分けてね?」
 どん、と用意された一升瓶を前に龍仁が唸り、鷹政が震える。
「東北っていうと辛口が多いんだっけ」
「ツマミと食べるなら、そっちの方が合うと思って辛口セレクトしてみた」
 首を伸ばし銘柄を確認する一臣へ、アルコール準備担当が頷く。
「米と水が美味しい土地だから、なんでも美味しいとは思う!」
 三つあるうち、一つは自分も気に入りの物なのだと添えて。
「……なるほど。常温だと香りがよくわかるな」
 花のような柔らかな香り、しかし舌の上を通るはキレ味の良い辛さ。
 ふわりと浮きあがるようでいて、地に足の着いた味わいだ。
(あまり、酔った経験はないが…… 酔うのがもったいなく感じるな)
 繊細な風味に、龍仁はそう思った。
(……強羅さん、酔うかな)
(ビールで使ったカップに、並々と日本酒注ぐって鬼ですか筧さん)
(おかわりのピッチ感覚、狂うじゃん? 普段、なかなか酔わねーんだもん)
(え、そこまで強いの)
 飲み会連絡の際に、鷹政が告げた『提案』とは、『酔った強羅を見てみたい』であった。
 が。
(ところで。強羅が酔いつぶれたら、誰が階下まで運ぶんですか)
(……誰だろうね)




 赤、黄、白、青、火花が噴水のように迸る。
 コンビニで既に売り始めていた花火セットを手当たり次第に咲かせてゆく。
 強い灯りが無いだけに、闇夜に美しく鮮やかに燃え上がる。
「火ィもーらい!」
「ちょ、危ないですよ、筧さん!」
 そこへ鷹政が噴射型の線香花火の先を近づけ点火しては一臣へ向ける。
「だからって武力行使はなくね!!? やばいって!」
 すかさず一臣の放ったネズミ花火が、足元を強襲し。
「……懐かしい、と言えばこれだな」
「あっ」
「あっ」
 騒ぐ二人を静かに見守っていた龍仁だったが、グイと酒を飲みほしてから、袋の中の一つに手を伸ばす。

 ――ヒュルルルル……

「加倉! 回避射撃、回避射撃!!」
「いやいやいやいや」
「行かないのか?」
「強羅さんのばかぁ!!」
「……諦める、という選択肢はないんですね」
 闇夜を降りる落下傘を追いかけ、鷹政が走ってゆく。
「子供だな……」
「男は永遠に少年の心をって言うしね」
 見送りつつ、一臣もイスへ戻る。龍仁から酌を受け、鷹政オススメだという秋田の酒に唇をつけた。
「……へぇえええ、これは凄いな」
「凄いな」
 次の銘柄へ移っていた龍仁も頷く。
「俺の地元はどっちかっていうと焼酎が多いんだよな。修道院ビールっても、まあ作ってるの修道院だし」
 分類するならば『ベルギービール』で、それを看板にしている店で飲むよりリーズナブルに入手できる。
 知られているようで浸透はしていない、地元でもちょっとした『隠れた銘品』というやつだろうか。
「一臣も、よく勉強しているな。良い子だ」
「へ?」
 ぽん。
 龍仁の大きな手のひらが、二十代半ばも越えました一臣の頭を撫でる。
 大人が子供へするような仕草で。
「というか、先ほどから気になっていたんだが。俺も、そっちのビールを貰っていいか」
「ああ、うん。これね、ちょっと凄いぜ」
(気のせい、か? いつもの強羅、だよな)
 違和感をねじ伏せ、一臣は修道院ビールを注いでやる。ブルーラベル、深い色味で泡も濃い。
「……? ビール、なのか?」
 普段から飲み慣れたそれと、あまりにも違う。香りも、味も。
 深みもコクもある、後味は簡単に消えるのではなく、香りが余韻として残るイメージだ。
 揚げ物や焼き物を、さっぱりと押し流すのが日本のビールだとしたら、それでは、これは――……
「漬物が欲しくなるな……。マリネでも良いか」
「あーー、そんな感じ、そんな感じ」
「鷹政!」
「はぁい」
 無事に落下傘を拾い上げた赤毛が呼びかけに振り返る。
「料理を追加してくる。鍵を貸してくれ」
「えっ!?」
「俺としたことが迂闊だった……。これだけ揃えがあるなら、合わせたものを作るべきだった」
「加倉、強羅さんに何があったの。これ、酔ったの?」
「どっちかっていうと…… 目覚めた?」




 後片付けも綺麗に終えて、多少覚束ない足取りで三人がフェンスに並ぶ。いつの間にか、星は位置を変えていた。
「美味かったー!!!」
「鷹政、ご近所迷惑だぞー」
「加倉、強羅さんに何があったの」
 ワシャワシャに髪をかき混ぜられながら、鷹政は龍仁を挟んで向こうの一臣へと呼びかけるが、向こうも引き攣った笑みを浮かべるだけである。
「二人とも、まだまだ可愛い子供なだけだ」
「四十のオッサンからみりゃ、そりゃあね」
「三十四が何か言ってますけど」
「あと三年で三十路がどうかした?」
「「…………」」
 酒の勢いで削り合いもご愛嬌。
 程よくホロ酔い、月の光が目に優しい。
「あっ、星が流れた」
「うそ、どれ?」
「世界が平和になりますように」
「強羅、冷静だな?」
 

 戦い疲れた日常の、ほんの少しの休息時間。
 流れる星のように、きっと過ぎてしまえば一瞬のような時間。
 いつか全てが思い出になっても、褪せることなく輝くであろう、星の軌跡。




【流れ星 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja8161/ 強羅 龍仁 / 男 / 30歳 / 料理担当】
【ja5823/ 加倉 一臣 / 男 / 27歳 / 花火担当】
【jz0077/ 筧 鷹政  / 男 / 26歳 / 酒類担当】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました。
大好きを詰め込んだ、のんびりまったり飲み会ノベルお届けいたします。
お楽しみいただけましたら、幸いです。
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佐嶋 ちよみ クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年07月14日

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