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『Je te veux 』
天谷悠里ja0115)&シルヴィア・エインズワースja4157

 秘密の話をしましょう。
 小さな、小さな秘密の話。
 そう貴女と私しか知らない。誰も知らない秘密の誓いの物語。

 
 世の中は不思議に満ちている。
 あの晩、あそこにもにも秘密はあった。そして、ここにも。
 そう、あの冬の月の夜、月明かりの下だけにしか現れないお菓子屋もあれば、真に心を通わせた女性同士だけが見つけることのできる写真館もある。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 その写真館の店員だろうか、優しい微笑みを浮かべ女性が、天谷悠里とシルヴィア・エインズワースを迎え入れた。
「えっと……ここって……」
「はい。ここは男子禁制のフォトウェディング専門店でございます」
 悠里の問いに女性の店員はニコリとして答えた。


【Side 悠里】
 ヴァレンタインのあの夜、お姉ちゃんに唇を奪われて将来の約束をされて……私はすごく嬉しかった。それこそこのまま死んでもいいと思うくらい嬉しくて、夢なら覚めないでと思った。夢ではないことは左手の指輪が告げている。
「でも……」
 私は少しだけ後悔していた。それはずっと受身であったこと。愛おしいお姉ちゃんのキスを、言葉を受け入れるしかできなかった自分が不甲斐なく思うわけではなかったけれど、自分からも何かしらの形で伝えたかった。
 そんな時に聞いた小さな噂。
『将来を誓い合うほどの女性カップルのみがたどりつける、不思議な男子禁制のフォトウェディング専門店があるらしい』
 季節は梅雨直前。ジューンブライドが世間で騒がれる時期だった。
「どうしよう……」
 携帯のメール画面を見ながら私は考えていた。メールの相手はもちろんお姉ちゃん。
 行ってみたい。誘ってみたい。そして、今度は自分からお姉ちゃんに誓いとキスを捧げたい。でも、どこにあるのか、本当にあるのかもわからないのに誘ってなかったらどうしよう。
「もう!うじうじするな悠里。きっと見つかる。お姉ちゃんとなら奇跡だって起きてくれる!!」
そう言って私はメールを送信した。


【Side シルヴィア】 
 ユウリからメールが来たのは珍しい時間だった。
「こんな時間に何かしら?」
 メールに目を落とせば
『一緒にとあるお店を探して欲しいんです!よろしくお願いします!』
 実にユウリらしいメールだった。2月のあの月の夜からユウリの様子が少しおかしかったから、ユウリはあの場の雰囲気に飲まれていただけで、私の愛は受け入れられないのかと思ったけれ……、
「そう思っていても嬉しいものね。デートのお誘いは」
 私はそう微笑むと返信をした。
『もちろん構わないわ。ユウリが探してるお店ならきっと素敵なお店なんでしょうし、一緒に探しましょう?』

 デートの日、待ち合わせの時間になってもユウリは来なかった。
「あの子にしては珍しいわね」
 そう思っていると、こちらへ走ってくるユウリの姿が見えた。
「ご、ごめんなさい。遅れちゃって……」
「いいのよ。それより髪がぐしゃぐしゃよ」
「えっ!?あっ……」
 慌てててぐしで直そうとするユウリにカバンからすっと串を出しといてあげる。
「あっ……ありがとうございます」
 俯くユウリに自嘲にもにた笑顔が一瞬浮かぶ。
「ありがとうございます。行きましょう!」
「そういえば、どんなお店を探すのか聞いていなかったけれどお店の名前とかはわかっているの?」
 私の言葉にユウリの足が止まる。
「大丈夫ですよ。きっと見つかります」
 私は一抹の不安を覚えたけれど、そういうデートも悪くないと思い直して歩き始めた。


 暫くぎこちない雰囲気のまま2人が歩いていくと自転車同士がすれ違うのがやっとくらいの、でも雰囲気のある小道があった。
「こんなところに道なんてありましたっけ?」
「私は知らなかったわね」
 2人は首をかしげたがなんだか呼ばれているような気すらしてどちらから言うでもなくその小道に入っていった。
そこには、個人経営だろう小さな雑貨屋さんや素敵な洋服屋さん、美容室、宝石店等があって2人さっきまでのぎこちない空気はどこへやら、楽しそうに小道を歩いて行った。
 ふと、シルヴィアの目に1つのお店が目にとまった。ショーウィンドーに飾られているのはウェディングドレスを纏ったマネキン。
「綺麗ですね。お姉さまが来たらすごく似合いそう!」
「ありがとう。でも、あなたの方がきっと可愛らしい花嫁さんになるわね」
 シルヴィアは率直な感想を述べただけだった。だが、悠里の心に刺のようなものが刺さる。
「そ、そうですか?お姉ちゃんには適わないですよ」
 などと愛想笑いをしていると中から店員と思われる女性が出てきた。
「もしよろしければ試着もできますので中へどうぞ」
「あっ、でも……私たち女同士ですし……」
 そういうと、店員は微笑んで
「大丈夫でございます。ここに男性はいらっしゃいませんから、さあ中へどうぞ」
 そう意味深に言って中へと案内されたのだった。

「えっとじゃあ写真ウェディングよろしくお願いします」
 悠里が軽く頭を下げたので、シルヴィアも頭を会釈程度に下げた。
「かしこまりました。ではお二人共お召し物を変えさせていただきますね」
 そう女性がいうと2人は別々の部屋に案内された。


【Side シルヴィア】
 女性店員の言葉に私は内心驚いていた。ユウリの表情を見ればわかる。ここが探していたお店なんだろう。
 でも、どうして急に写真館なんて……それにフォトウェディングだなんて……
 きゅっと手を握ると左手で月の夜交換した指輪が『大丈夫』とでも言いたげに主張した。
「どういったものをお召になりますか?」
 部屋に入ったところで少しぼんやりしていた私を気にしてか店員が声をかけてくれた。
「あっ、そうですね……これにします」
 100着はあろうかというドレスを全て見終わる前に選んだのは神秘的なロングトレーンのエンパイアラインの白いドレス。いつもはこういう服に抵抗があるのだが、ドレスが呼んだというか、このドレスを見た時、着たいと率直に思ったのだ。
「よく似合われると思います。もっとお似合いになるよう頑張らせていただきますね」
 女性はそう言うと両手でガッツポーズを小さく作った。その動きがなぜかユウリを思い出させて私は肩の荷物を降ろすかのように楽な気持ちになって微笑んだ。


【Side 悠里】
 私はドキドキしていた。お姉ちゃんと一緒に探せば見つかる。そう思っていたけれど、本当にあったなんて。
 嬉しくて少し恥ずかしくてお姉ちゃんはどう思っただろうとか、いろいろ考えてしまう。
「お客様、大丈夫ですよ。お客様とお連れ様の気持ちは本物です。ですから、当店にいらっしゃっることが出来たのですから」
「そうなんですか?」
 ドレスを物色していた私は驚いたように振り返った。
「はい。この世に人の想いほど強いものはありません。私達は中でも強い想いをお持ちの方に少しだけお手伝いをしているのです。普通の方にはこの店を見つけることはできません……ドレスはそちらでよろしいですか?」
「えっ?」
 気がつくと1着のドレスを持っていた。少し大人びたマーメイドラインのドレス。
「これすごく素敵だなって思いますけど、私に似合いますか?」
 ちょっと不安になって店員に尋ねてみる。
「はい。大丈夫ですよ」
 その穏やかな笑顔を信用して任せてみようと思った。
「じゃあこのドレスでお願いします」

 案内された小さな式場(といってもセットなのだけれど)に、お姉ちゃんはいなかった。
「あっ、ピアノ……」
 ふと、祭壇の上に静かに置かれたピアノを弾いてみたくなって椅子に腰掛ける。指で鍵盤を押すと狂い無く音が鳴った。
「おねえちゃんが来るまで……」
 そう思って曲を引き始める。ピアノがまるで私を待っていたかのように凄く弾きやすい。そして、1曲終わると後ろから拍手が聞こえた。そちらを見るとお姉ちゃんだった。
 女神さまを思わせるようなドレスにいつもは見ることができないアップにした髪、長いベール、控えめなアクセサリー。
 本当に神話の世界から出てきたような神秘的でとても綺麗だった。胸がドキドキして壊れてしまいそうなくらい。


【Side シルヴィア】
 案内された教会から音楽が聞こえる。よくCMなどでも使われている有名なクラシックだ。私は曲が終わるのを待ってから教会に入った。邪魔したくなかったから。
 ユウリのドレスはマーメイドラインだった。ユウリならもっとかわいらしいドレスを選ぶのかと思っていたから少し意外だった。ベールも銅像などで聖母マリアが付けているような特徴のあるベールだったが全く違和感がない。アクセサリーはシンプルだが、いつも高い位置で結ってある彼女が髪を下ろすだけであんなにイメージが変わるものかと、胸がたかなってため息が出た。


 ピアノから離れ悠里がシルヴィアに歩み寄る。シルヴィアも悠里に歩み寄った。
「私ずっと気になっていたんです。ヴァレンタインのあの日、私ちゃんと言えなかったから」
「そうだったのね。私もあの後ユウリの態度がおかしかったから言ってはいけないのかと思っていたの」
「違う、そうじゃないんです」
「それはさっきわかったわ。さあ、2人だけの誓いの儀式をしましょう?」
「はい!」
 教会の十字架の前でお互いに指にはまっていた指輪を相手に渡し、
「この世界中で誰よりもあなたを愛しているわ。ユウリ」
「私もお姉……」
 すっと人差し指で唇を遮られる悠里。
「お姉ちゃんじゃなくて名前で呼んで」
「あっ、はい。……シルヴィア、さっきの曲じゃないけど、私、貴方が大好きです。あなたが欲しいです」
 そう言って悠里の方から唇を重ねた。
 シルヴィアはそれを受け止め、優しく悠里を抱きしめた。
 何分たっただろう。それは永遠にも一瞬にも感じる素敵な時間だった。
 それから2人は手の甲に敬愛の口付けした後指輪の交換をした。

「おめでとうございます。お2人の誓いが一生のものになりますように。そして、お二人に幸あらん事を」
そう言って入ってきた店員は写真を何枚も撮ってくれた。
1人で。2人で。中には口づけあっているところもあった。

「こちらは後日アルバムにしてお送りしますね。一生の記念になりますように」
帰り際、店員はそう言って、にっこり微笑んだ。それに対して、照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑む悠里とシルヴィアの繋がれた手の先、薬指にはしっかりと指輪がハメられていた。

Fin

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja0115 / 天谷悠里 / 女性 / 18 / アストラルヴァンガード】

【ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23 / インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はご依頼ありがとうございました。大変お待たせ致しまして本当に申し訳ありませんでした。それでも、待っていただき本当に感謝しております。
おふたりがこれからより一層仲良くお幸せになることをお祈りしております。
本当に今回はご依頼ありがとうございました。そして、遅れてしまいましたこと大変申し訳ありませんでした。
FlowerPCパーティノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2014年07月18日

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