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『『BlueLobelia(ブルーロベリア)結婚式』 』
サライ・バトゥール(ic1447)

●仕組まれた依頼?

「ううっ……! 絶対に騙された気がします……」
 サライは完成したばかりの新しい結婚式会場の控え室で、どよんとした暗い空気を身にまといながら重いため息を吐く。
 サライが落ち込んでいる理由は、着ている白いウエディングドレスのせいだった。
「最初、開拓者ギルドで依頼内容を聞いた時は、『新しい結婚式会場で、新たに雇ったスタッフに式の流れを知ってもらう為に模擬結婚式を行うから、そこで新郎役をやってほしい』と言われたんですけどね」
 開拓者ギルドの受付職員が言うには、あくまでも模擬なのでサライのような小柄な新郎でも良いらしい。
 結婚式シーズンの今、こういった依頼が多かった為にサライは何の疑問もなく引き受けたのだ。
 しかし指定された日時に会場に到着するなり、女性スタッフ数人に歓迎されて、何故か逃げられないように囲まれた。そしてそのまま控え室まで強制的に移動させられ、挙げ句の果てに新郎の衣装ではなく、新婦のウエディングドレスに着替えさせられたのだ。
「……僕が選ばれた理由が、ようやく分かりましたよ。男として、見られていないんですよね。……ううっ!」
 自分で言った言葉に傷付き、サライは泣きそうな表情で胸を両手で押さえる。
 何せ着替えさせられた時、下着までも女性用に替えられたのだ。その上、白いレースのニーソックスとガーターベルトまで着せられた。
 その時、サライは後ろを向いていたのだが、スタッフ達は手際良く脱がせて着せたのが恐ろしい。
「いつもは服の下に隠していた尻尾まで、見られちゃいました……」
 サライは兎の獣人なので、お尻に黒い尻尾があるのまで見られた。スタッフ達から「可愛い♪」と言われた時は、穴があったら入って隠れたいほど恥ずかしかったのだ。
「よくよく聞いてみたら、『女装が趣味の人の為の、新たな結婚式プランの試作会』だったなんて……」
 確かに開拓者は依頼の為に、女装や男装をすることが少なくはない。依頼の為に、どんな手段でも使うことがプロであるからだ。
 今回の依頼人はそこに眼をつけたが、素直に『ウエディングドレスを着る男の人を募集している』と言っても応募する者がいないと思ったのか、受付職員を言葉巧みに騙したとしか考えられない。
「まあその分、お給料ははずんでくれるそうですし、数時間の我慢ですね」
 今回の依頼には他の地域の開拓者ギルドからも開拓者達が手伝いに来ているらしく、サライはこれから顔合わせになるらしい。
「……とりあえず、知り合いがいないことだけを願いましょう」
 依頼で何度か女装をしたことはあるが、流石にこんな姿を見られては後の仕事に影響がないとは言えない。
 そこへ女性スタッフがサライを呼びに来た。会場の準備が整ったとのことで、女性スタッフはサライのフォロー役になるらしい。
「もうここまできたら、腹をくくるしかありませんね! 開拓者として、立派に仕事をやり遂げましょう!」
 サライは女性スタッフから、美しい青い花のブーケを受け取る。
「瑠璃色の小さな蝶々みたいなお花ですね。何ていう花なんですか?」
 実はこの花、サライが言った通り、瑠璃蝶々という和名であることを女性スタッフから教えられた。花言葉は『いつも愛らしい』というので、新郎が新婦のことを思い、ブーケの花として選ばれることが最近増えているらしい。
 そして今日行う式は花の洋名を取って、ブルーロベリア結婚式と名付けられた。
「今はこういうブーケがあるんですね。まあ勉強になります」
 サライは弱々しく微笑みながら、部屋を後にする。


 今回はあくまでも模擬結婚式なので、スタッフと開拓者以外はいないと言う。
 少しほっとしながらも、サライは女性スタッフに教えられながら赤い絨毯を慎重に歩き、牧師が待つ祭壇まで歩いた。
(やっぱり相手は男性なんですね)
 ある程度は予想していたものの、相手役の新郎は男性だ。八等身の美青年で、サライを見るとニコッと柔らかく微笑みかける。
(……後の仕事で会わないような人だといいんですけどね)
 顔立ちや体つきから見るにシノビらしく、その身にまとった空気からサライは自分と同業者であることに気付いていた。
 彼の他にも同じ会場にはスタッフにふんした同業者達が何人かいるものの、今は仕事中なので余計なことは一切しない。入ってきた花嫁が男の子であるのは見て分かっただろうが、それでも表情一つ動かさなかった。
(プロはどんな仕事でも、平然と受けた方がカッコいいですしね。僕も頑張りましょう!)
 サライは真剣な顔付きで、前を見る。
 結婚式の流れは知っており、女性スタッフのフォローもあったので、特に困ったことがなく進む。
 ところが最後の方になり、サライの顔色が徐々に悪くなっていく。
(この流れだと、そろそろ誓いのキス……。でもお互い男ですし、フリで充分ですよね)
 そしていよいよ、その時になった。
 サライと新郎は互いに向き合い、彼はサライのベールを上げる。
(んん? 何か体が熱くなってきたような……)
 彼の眼を見た途端、サライは自分の体が熱くなっていくのを感じた。
 ぼぅっとした表情で彼を見つめている間に、二人の唇は重なる。
(はっ!? もしかしてシノビのスキルの【夜春】? このスキルにかかった人は、かけた相手に好意的になるという……)
 だが気付いてもすでに時は遅く、サライはスキルによって支配されてしまった。
(もっもしかして、誓いのキスから逃げようとしたのを察したのでしょうか? でもこんなやり方をするなんて〜!)
 文句は口が塞がれているので、叫べない。
 そしてスキルにかかったまま式は進み、ある意味無事に終わった。
(ようやく終わりましたね。これで解放……)
 されはしなかった。
 気を抜いた瞬間、よろけたサライの体を支えたのは新郎役の彼だ。
「大丈夫? 少し休もうか」
 そのままお姫様抱っこをされて、どこかへと連れてかれる。
(ええっ!? 一体どこへ連れて行く気なんでしょう? 控え室ならありがたいんですけど)
 しかし彼は何故か、会場の奥へと歩いて行く。
 そして到着した部屋は、まるでホテルのような一室だ。
「この部屋でしばらく休もうか」
(休憩室……にしては派手ですね。ダブルベッドが置いてありますし、何かこう……新婚さんが泊まるような部屋です)
 不思議に思っているサライをそっとベッドに寝かせた彼は、次にサライが着ているウエディングドレスを脱がし始める。
「ふえっ!? いいですよ! 後は自分で脱ぎますから!」
「まあそう遠慮しないで。慣れない仕事をして、疲れただろう? 後は俺に全てを委ねなさい」
「……はい」
 慌てて彼の手を止めようとしたが、にっこり微笑まれるとスキルのせいで逆らえない。
(だっダメです! このままこの人の自由にさせたら、いろんな方に合わせる顔がなくなる気がします!)
 サライは最後の力を振り絞り、【夜春】を自力で解除した。そしてスキルの【夜】にて三秒間、周囲の時間を止めて、彼の背後に回ると【飯綱落とし】をくらわせる。
「落とした先はベッドの上なので、軽傷で済みます。ごめんなさい! もう無理なんです!」
 サライは真っ赤な顔で涙ぐみながら、脱がされかけたウエディングドレスを体に巻いて部屋から飛び出た。そしてそのまま会場からも出て、神楽の都を走り出す。



●黒幕は……
 サライが会場から去った後、気絶した新郎がいる部屋の奥の扉が開き、中から数人の女性達が出てきた。
 彼女達は残念そうに、窓から走り去っていくサライの後ろ姿を見ながら思いを口に出す。
「あーん! 逃げられちゃったぁ!」
「せっかくサライくんファンクラブのみんなでお金を集めて、わざわざこの依頼を頼んだのにね」
「新郎役、顔だけで選んじゃったのが悪かったかしら? でもコレでも一応一流のシノビだって、聞いていたんだけどね」
 女性達はベッドの上で眼を回している男を見て、険しい顔付きでチッと舌打ちをする。
「でもサライくんのウエディングドレス姿を見れただけでも、よしとしましょうよ。可愛くてステキだったわぁ」
「そうね。可愛いサライくんもいつかは成長してしまうんだし、今が見頃だったと思えば、良かったと思えるわ」
「まっ、結婚式は見られたし、後でギルドにお金払いにいかなきゃ。サライくん、次は逃がさないからね?」


「ひぃっ、っくしゅんっ! ……今の寒気は何ですかーー!」
 サライは得体の知れない気配におびえながら、自分の家へ全力疾走で向かうのである。


 ――ちなみに後に男性同士で行った今回のような結婚式のことを、ブルーロベリア結婚式の略称・『BL式』と呼ばれるようになったことを、サライが知ることはなかった。


<終わり>


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ic1447/サライ/男/12/シノビ】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびは依頼をしていただき、ありがとうございました(ペコリ)。
 サライ様が可愛らしくいじられているストーリーになりましたが、楽しんで読んでいただければと思います。
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舵天照 -DTS-
2014年07月22日

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