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『お嬢様の背中 』
大鳥居・麗華(gb0839)


 ここは、とある孤児院。
 窓辺で憂鬱そうに外の雨模様を見ている姿がある。
 長く気品のある金髪に、愁いを帯びた青い瞳。しとしと降り続ける雨を見詰めている。
 娘の名は、大鳥居・麗華(gb0839)という。
「ええ〜っ。代えの服、まだ乾いてないの?」
「ごめんなさいね。まさかこんなに雨が続くとは……」
 突然、背後のそんな会話が聞こえた。
 ぴくりと瞳を流すと孤児院の子供と職員女性がいた。
 麗華、背を向けたまま瞳を戻す。
 問題の原因は分かっている。
「仕方ありませんわね。わたくしが一肌……」
 思わず呟いたが、それ以上は口にしない。
「そのようなこと、わたしくのプライドに関わるからに決まってますわ」
 と、仮に聞いたなら答えるかもしれない。
「衣食住に影響が出ているということは相当に厳しいということ。長雨で乾かず着替えがないというのも不憫なものですわ」
 もしもさらに聞いたら先の一幕でそこまで読み取れる状況を説明してくれたかもしれない。
 もちろん、実際には無言。
 前を見据えしっかりした足取りで部屋を横切る。
「あ、麗華……」
「しばらく休暇を頂きますわよ?」
 声を駆けて来た同僚に言い捨ててその場を後にした。
 裾の長いサマードレスが舞い、扉が閉まった。



 数日後、長雨はついに止んだ。
 地域で一番広い海水浴場には多くの人が繰り出している。
 人々はしばらくぶりの夏らしい日差しの中、鬱陶しかった日々の鬱憤を晴らすかのように水遊びに興じ、あるいはビーチにのんびり横たわり、そして飲み物や軽食を楽しんでいた。
「とはいえ、この暑さは異常だろ……」
 中にはこの世の終りのような表情でくたばっている男性もいる。へろへろと涼を求めて海の家に逆戻り。
 その時だった。
「あら、いらっしゃい♪」
 涼やかな声が響く。
 ぐったりと俯き加減で入ってきた男性ははっと瞳を凝らす。
 ビーチサンダルを履いた足はくるぶしまで白く。
 足首はしっかり引き締まりすらっと伸びる脚は美しく。
 赤いビキニの水着姿はパレオで隠すなどはせずにまるっと滑らかに腰を包み。
 くびれた腰からフェミニンな曲線を描いてこれまた美しい丸みを帯びる胸を赤いビキニトップがゆっさと支えていた。
「ふっ、よく私の海の家に来ましたわね♪」
 そして、さらさらの金髪をばさーっと左手の甲で払うその姿。
「め、女神……」
 顔を上げて思わず呟いた男性。
 そう。
 目の前に立っていたのは麗華だった。
「褒めて差し上げますわ♪ 食事、着替え、レンタル、どれでも好きなものを選ばせてあげますわよ♪」
 ふふっ、と青い瞳が悠然と細められた。
――すぱ〜ん!
 そんな麗華の背後から突然ハリセンが襲ってきた。
「あいた!? な、何をしますの!? 私は普通に接客を!?」
「ちょっと麗華ちゃん、うちはお嬢様喫茶じゃなくってよ? 普通に普通な、キングオブ普通の海の家なのよっ!」
 頭を押さえて涙目で振り返る麗華。背後にはファンキーなサングラスをかけた海の家の店長らしき人物がぎゃんぎゃんわめいている。内股で主張しているが、男性である。
「そんな普通なことをしているから……ごらんなさい」
 ばっ、と麗華は外を指差す。離れた海の家は大繁盛だ。
「よその海の家とこんなに差がつきますのよ!」
「きーっ。ここは後発で外れた場所にしか構えられなかったのよっ!」
 言い合う麗華と店長。
「いや……もっぱらオカマがいるからって……」
「なぁんですってーっ!」
 男性客、余計なことを言った。ぐりんと向き直ったオカマ店長に睨まれる。
 これを知ってふーやれやれと肩を竦める麗華。
「仕方ありませんわね。外にもちゃんと見えるように接客いたしましょう」
 麗華、かき氷を銀盆に載せると軽やかなモデル歩きで店の外に。ちょっと大回りしてから「はい、苺シロップ練乳とろとろ仕上げのかき氷、お待たせいたしましたわ♪」などと給仕する。
 そんな様子を見てぽかんとしているビーチの男性客には、「あら、ごきげんよう」的なごあいさつ視線を投げておいて、ふいと微笑しそっぽを向いて給仕。男心をくすぐることこの上ない。
「おい……あそこってオカマ海の家じゃなかったのか?」
「もしかしてお嬢様海の家に鞍替えしたのかな?」
 あっという間にビーチの男性の話題になっていたり。



 その後、海の家。
 麗華は調理で忙しい店長を手伝おうと手を伸ばしていた。
――すぱーん!
「痛っ……ちょっと何をしますの?」
「何をじゃないでしょっ! 焼きそばに七味唐辛子をこんなにかけてどうするのっ!」
 涙目でむっと見返す麗華。オカマ店長、またしてもハリセンで叩いたようで。
「麗華ちゃん、この店はねぇ。お客様は少なくても舌の肥えたお客様が……」
「店長、その焼きそば、買った!」
「なにおう、俺が」
「俺だ俺だっ!」
 涙声で訴える店長。その周りからなぜか激しく欲しい欲しいコールが。
「おおぅ。お嬢様の味付けした焼きそばのなんと刺激的なことよ……」
「容赦ねぇ……。コショウと七味が容赦なくピリピリして、お嬢様らしいねぇ〜」
「あら」
 なぜだか大人気。麗華も不思議そうだったが、すぐに「当たり前ね」。
 その後も。
「あっ。ごめんあそばせ」
「あ、いいです。……え? ふ、拭いてくれるんですかっ!」
 よろめき客に水を掛けるが、拭いてやると大喜び。
「店員さ〜ん、こっちこっち。こっち向いて〜」
「分かりましたからもうちょっとそこで大人しくしていてくださらない?」
「いやっほぅ。待つよ。待つ待つ〜」
 モテモテで忙しい麗華をわざと呼んで振り向かせたり。
 この様子を、最初に入った男性客が店の隅で呆然と見ている。
「客が少ないのが魅力だったんだが……見事にああいう客で溢れたな……」
「こうなったらもうやけくそよっ! これまでの赤字分、バンバン取り戻すんだからっ!」
 寄って来た客筋を嘆いていたオカマ店長も考え方を変えて一心不乱に焼きそばを焼いている。
「お、おい。あっちの海の家じゃケモノ耳ケモノ尻尾のお嬢様が店員してるってよ?」
 そんな話題も飛び交っている。
 海の家を改めて覗いてみよう。
「おーっほっほっほ♪ これが私の実力ですわ♪ 私にかかれば海の家の1つや2つ、繁盛させるのはわけないですわ♪」
 麗華、手の甲を口元に上品に添えて高笑……失礼、お嬢様笑い。いつの間にか覚醒して狼の獣耳が現れている。ついでにビキニのボトムがずりりと下がって尻尾もふりん☆。
「おおーっ!」
 賛同して意気をあげるアレな客たち。
「わああっ。お姉さんの尻尾、先が白くなっててかわいい〜」
 尻尾につられてチビッ子も親を連れて来店しているようで。

 実は麗華、経営難の孤児院を少しでも支えるべく内緒で海の家でアルバイトをしていたのだ。バイト最終日には、契約時に提示されたよりも大幅に増額されたバイト料を受け取っていた。
「ま、これで少しは運営の足しになりますかしらね」
 これには高飛車な麗華も気分が良かった。



 そして、孤児院。
「汚れちゃった〜」
「はいはい。すぐに着替えましょうね」
 窓から外を眺めている麗華の背後で、孤児と職員女性のそんな会話。どちらも機嫌が良さそうだ。
 そして、改めて職員の女性が麗華の背中に声を掛けた。
「麗華さん、ありがとう。海でアルバ……」
「あら、何のことかしら」
 麗華、手の甲で髪を跳ねのけて振り向くと強い口調で言葉を被せその先を止めた。
「……そのサマードレス、似合ってますよ」
「そう? ありがと♪」
 にこりと話題を変えた職員。
 麗華、再び長髪を跳ねのけてその場を後にする。
 サマードレスの短い裾から覗く足は小麦色に焼けていた。
 これだけなら、ただ日に焼けただけかもしれない。
 ただ、ざっくり開いた背中から覗く、肩甲骨の下にくっきりとついたビキニの日焼け跡だけはごまかしようがない。
 もちろん、麗華は一肌脱いだことなど知られたくもない。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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gb0839/大鳥居・麗華/女/21/ビーストマン

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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大鳥居・麗華 様

 初めまして、いらっしゃいませ。
 お嬢様の秘密のアルバイト。麗しゅうございました。
 孤児院での描写が多くなりましたが、一肌脱いでまで守りたい場所を強調したかったから。心の美しさが伝わりますように。

 この度はありがとうございました♪
アクアPCパーティノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2014年08月12日

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