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『弾丸バケーション! 』
月居 愁也ja6837)&加倉 一臣ja5823)&夜来野 遥久ja6843)&小野友真ja6901


 ドアノブに手をかけ、足を止めて室内を振り返る。
 忘れ物はない。電気も消してある。
 そこで改めてドアを開けて、ジュリアン・白川は廊下に出た。
 いつも通りに教授室の鍵をかけたところで、ふと違和感を感じ身を固くする。無意識のうちに『索敵』も使っていた。
 薄暗い廊下に、光るモノふたつ。

 <○><○>

 いやいや、さすがに気のせいだろう。夜来野 遥久だって人間だ。……たぶん。
「お待ちしておりました、ミスター」
 佇む長身の青年に、白川は愛想よく笑顔を向けた。
「おや、危うく入れ違いになるところだったね。何か質問でも? では中で聞こうか、諸君」
 ひとりではない。四人の人影を確認し、何となく安心する白川。だが待っていた目的が質問ではないことは明白だ。
 遥久が満面の笑みを浮かべた。
「それには及びません。急遽入ったオフ、そして予定がないのも調べはついております」
 笑顔を崩さす返す白川。
「それが何か?」
 だがじわじわと『何かおかしい』という感覚が足もとから這い上ってくる。
 確かに、数日この部屋に籠る予定が、電気設備の点検とやらで潰れたことは間違いない。だが白川自身がそれを聞いたのは昨日の夕方だ。何故遥久がそれを知っている?
「ですので」
 遥久がすっと片手を上げた。
「待ってましたー!」
 瞬間、踊り出たのは月居 愁也。『縮地』の勢いを乗せて白川に肩から突っ込むと、そのまま担ぎあげる。
「ぐふぅ!」
「わーい先生! 旅行!」
「何だって!?」
 意味不明の出来事が連続し、白川に考える暇を与えない。
「分かるように順を追って事情を説明したまえ!!」
 抗議の声にも耳を貸さず、嬉しげに白川を担いだ愁也が、先を行く遥久に続く。
 不自然な体勢のままで白川が首を巡らせると、気の毒そうな顔の小野友真がいた。
「先生、おはよさんです。えっと、この人ら多分悪いようにはせんから……」
 助け舟を出したつもりだが、却って恐怖を煽る台詞である。
「ハハハ、うん、多分な」
 友真の隣で、乾いた笑い声の加倉 一臣が慈愛の眼差しを向けていた。
 その瞳に浮かぶのは『諦めてください』のメッセージ。
「どういうことだー!!」
 白川の叫びは、表に停まっていた車の中に消えていった。

 車の次は連絡船、そして到着したのは空港である。
 引き摺られるように連れて来られたチェックインカウンターで、ようやく白川にも目的地が分かった。
「沖縄……?」
「そうですー! 遥久ん家からのお中元のお裾分け、リゾートホテルで二泊三日の快適な夏休みですー!」
 愁也は明るく答えながら、スーツケースをレーンに置く。
「今回は俺らもお邪魔しまっすー!」
 見事なリレー式で、友真が次の荷物を愁也に渡す。
 白川が溜息をついた。
「そういうことなら普通に誘いたまえ。旅行ならそれなりの準備が要るだろう」
「申し訳ありません、急に決まったものですから。お忙しいミスターが予定を入れられる前にと思いまして。ああ、荷物についてはご心配なく」
 立て板に水。口を挟めないままの白川に、遥久が大きなスーツケースを示した。

 機上、持ち込み荷物を覗いて、白川はまたも溜息をつく。
 洗面セット、空気枕、軽食、その他諸々。完璧な旅行セットだ。恐らくスーツケースには着替えなどが揃っているのだろう。
(そういえば夜来野君の実家は素封家だったか……)
 それにしても。
「よく私の予定がわかったものだね」
「それはもう」
 遥久が笑顔を向ける。
 貴重な情報ソースは白川の上司の准教授だが、簡単には漏らさない。後ほど高級アイスクリームのセットでも手配するつもりだ。
「なんか面白いゲームとかねえかな」
 愁也は早速機内設備をあちこちいじりまわしている。せいぜい三時間足らずのフライトだが、どうせならめいっぱい楽しもうという訳だ。
 窓際の端席では、一臣がアイマスクをして眠り込んでいる。急な予定に合わせて、突貫で仕事をやっつけて来たらしい。
「すいません、コンソメスープ、お願いします……!」
 横に座る友真は、一臣を起こさないように気をつけながら客室乗務員に声をかけた。
 暖かいスープを啜りながら、息をつく。
「これほんま、絶品なん。何でこんなおいしいんかなー。あ、センセ、沖縄の方が湿度ないし過ごしやすいと思います! いっぱい遊びましょー♪」
 ひそひそ声で力説する友真。
 白川は小さく笑う。
(ま、連行からが遊びの始まりということか)
「ではお言葉に甘えるとしよう。なるべくお手柔らかに頼むよ」
 想定外の夏休みの始まりである。



 賑やかな三線の音に迎えられ、沖縄到着。眩しい日差しが心地よい。
 部屋に入れば即、行動開始。
「折角だからダイビングやりましょー! 予約入れますね!!」
 愁也が部屋に備え付けられたテレビを操作し、素早くガイドに目を走らせる。
「お、ダイビングやりたい! あっという間だからな、しっかり計画しないと何もできないで終わるぜ」
 一臣も来たからには有意義に遊び尽くすつもりだ。後のことは帰ってから考えりゃいいんだ……帰って、から。
 その横から白川が首をのばす。
「ダイビングはいいが、ライセンスが無くてもできる物なのかね」
「大丈夫ですよ。初心者向けのツアーもありますから」
 ……水中戦闘もこなす撃退士が、ダイビングのライセンスを気にしているのも妙な話ではあるが。
「あー、明日しかやっぱ無理だな! しょうがない、空いてただけラッキーか」
 愁也がぶつぶつ言いながら予約を入れた。
「ほんなら、今日はビーチいこ、ビーチ! 海見てるだけでも楽しいと思うん!」
 ベッドの上で跳ねながら友真が手足を泳ぐようにばたつかせた。
「プライベートビーチがありますから、ゆっくりできますよ。着いたばかりですし、ちょうどいいでしょう」
 早速電話を取り上げ、遥久がビーチセットを申し込む。
「わーい、ホタテおるかな! ホタテ!!」
「あれは北の方ではないのかね? 流石に沖縄では難しいのではないかな」
 皆の連携に半ば呆れつつも関心の面持ちで、白川が呟いた。
「ええっ……!!」
 友真の手から捕獲用の網が滑り落ちた。

 目の前に広がる白い砂、水平線まで続くエメラルドグリーン。
 南国の海は見ているだけでも心が明るくなる。
「さすがに透明度が違いますね」
 手をかざしながら沖を眺め、遥久が目を細めた。
「実は沖縄は初めてなんだ、海の色が全く違うのだね」
 白川も飽かず眺める。荷物に入っていた水着がぴったりだったことについては、考える事を止めたようだ。
「遥久ー、泳がないのか? センセーも早く!」
 愁也が水を滴らせながら近付き、手を引っ張る。夏が良く似合う笑顔だ。
「では行きましょうか。ミスターも折角ですし。ここまで来たら、楽しまないと損ですよ」
「早く、こっち! 魚がいっぱい!!」
 友真が海の中から両手を振りまわして呼んでいる。
 まさに水を得た魚だ。友真にも夏の海が良く似合う。寒さに縮こまるよりは夏の暑さの方が馴染むらしい。尤も、その後で倒れることも少なくないのだが……。
 青いガラスのような水の中には、南国色の小さな魚が身をくねらせているのが良く見えた。
「おい友真、こっちこっち! 俺の足元!」
 一臣も童心に帰ってはしゃいでいる。
「どしたん、一臣さん……って、うわっ!」
「すごいよな!」
 見るとサラサラの砂の上、一臣の足のすぐ傍を、一匹のタコが這いずっていた。
 全く人を恐れていない。
 恐れていないどころか……
「げ」
 一臣が妙な声を上げた。タコの足が一本、一臣の足の甲に伸びて来たのだ。
 慌てて足を引くが、それがタコの本能に火をつけた。
 思わぬスピードで数本の足が伸び、一臣の足を絡め取る。その何とも言えない感触。
「ぎゃああああ!?」
「うわあああ一臣さん!?」
 波を跳ねあげ、一臣と友真がひっくり返った。
「おーおー、仲いいじゃん」
 愁也は初めのうち笑っていたが、友真の必死さにようやく気付く。
 急いで波を掻き分けて行くと、友真の反対側から一臣の腕を掴んだ。
「加倉さん、大丈夫?」
「ふ……モテる男は辛いな……」
 濡れた髪をかき上げた一臣は確かに色男だった。
 浜辺に戻って来たのを見て、白川は内心ほっとしつつニヤリと笑う。
「随分と熱烈なキスマークだな」
「え?」
 白川の視線を追って、一臣は自分の右足を見る。
「……ハハハ、なかなか相手が離してくれなくてですね……」
 そこには、吸盤の跡が赤くくっきりと並んでいた。
「ぶっは! タコ好きのする男。って称号貰うと良いよ!」
 愁也が大笑いしているが、友真は黙って手を一臣の足に。
「……」
「サンキュ。タコは好かれるよりも食べる方がいいしな」
 一臣は応急処置で綺麗になった足を確認し、友真の頭をくしゃくしゃと撫でた。



 絶品の夕食を終え、のんびりしようかという頃。
「あー、ビリヤードがあるんだ! やりたい!!」
 愁也が目ざとく看板を見つけた。
「んー、最近ご無沙汰なんだが。でも久しぶりにやりたいな! けど愁也、お前がビリヤードってなんか意外だな」
 一臣がそう言うと、愁也は満面の笑みを返す。
 実は少しかじったことがある程度。正確には自分がやりたいというよりは、キューを握る遥久を見たいというのがポイントで。
「どうせなら本気勝負だよな! えーと……そうだ、負けた人はシーサーと同じ顔して記念撮影ね!」
 愁也が実にいい顔で一臣を指さす。
「よし、本気勝負と言ったな? ふ……シーサー顔か。その勝負乗った! 負かすぜ、遥久!」
 びしっと指さす一臣。その指がすっと横に流れた。
「ジュリーが!!」
「こら待て」
 美しい角度で身体を傾け、さっと手で先を促す一臣。
「顧問、どうぞ」
「勝負は君達でやりたまえ。私は公平に審判を……」
「シーサー顔……見てみたいですね」
 物凄く近い所で声がした。振り向いたらなんかすごく怖い事になりそうな感じがして白川は言葉を失う。

 友真がうきうきとビリヤード台にボールを並べる。
「ビリヤード対決? 任せとけ! 俺は大阪の天才少年と言われ……」
「念のために言っとくけど、スキルなしだからな」
「えっ」
「全く、インフィル多すぎだろ……!」
 愁也に釘を刺され、友真の視線が泳ぐ。
「人数が半端だからな、こういう方式でどうかと思うんだが」
 変なところで真面目な白川、ボードにトーナメント表を書き出した。
 一回線はシード一名。敗者復活戦の勝者とシードが戦い、その勝者が二回戦の勝者と戦い優勝を決める。
 じゃんけんの結果、シードは一臣となった。
(ラッキー! 試合見て勘が戻ればなんとか……集中さえできればいける)
 ほくそ笑む一臣の前で、まず遥久と友真が対戦する。
「ないわー……」
 友真が思わず真顔で呟いた。
「なんか……さあダンジョン行くぞー! て張り切って突っ込んだら、ラスボスがお出迎えみたいな、そんな感じやん?」
「勝負はやってみなければわかりませんよ」
 そう笑顔で答える遥久だが、どう見ても目はマジである。
 勝負はナインボール。白い手球を前に、きれいなフォームでキューを構える遥久。
(ああー……遥久超かっこいい……!!)
 うっとりと眺める愁也、至福の時間。
「うう……負けへんで……!!」
 友真は必死で立ち向かうも、蛇に睨まれた蛙状態。結果はお察しである。

「よーし、じゃあ先生、勝負だ!」
 愁也が張り切ってキューを握る。
「私も随分久しぶりだからね、お手柔らかに頼むよ」
 チョークを使いながら、白川が微笑を浮かべた。何だかんだで勝負事には大人げない性格である。
(でもなー……ここで俺が勝ったら、遥久とセンセが対決できないのか……)
 自分が負けることを望んではいないだろうが、遥久が楽しみにしている気持ちも想像できる。これは困った!
 愁也の心に生じたその考えが、手元を狂わせたのかは定かでないが。
「……あー!!」
「惜しい、では残りは頂いて行くよ」
 黄色に白いラインのボールが、無情な音を立ててポケットに落ちていった。
 愁也がきっと向き直る。
「くっそー、友真にはぜってー負けねえ!」
「それはこっちのセリフやー! 愁也さん相手やったらビビらんで!!」
 さっきはビビっていたという告白に他ならず。
 白熱の敗者復活戦は大接戦となったが、プレッシャーからの解放感によるものか、友真が僅差で勝利した。
「うはははー、シーサー! シーサー!!」
「くそおおおお!!!」
 教訓。罰ゲームは自分もやる可能性があることを考慮しよう。
 とはいえ、悔しがる愁也の顔は既にシーサーに近い物があった。

 一臣がニヤリと笑った。
「いよいよ出番ですね、っと」
「俺は今、ノってるからな! 一臣さんにも負けへんでー!」
 不敵な笑顔を浮かべる友真。
 ここでこんな風に対戦できるとは願ってもない事。互いに相手の性格をよく知っているだけに、駆け引きは熾烈になる。
 熱い戦いが今、始まろうとしていた。
 一方別のテーブルでは。
「シーサーはともかく、何か賭けませんかミスター?」
「それは怖いね。手元が狂いそうだ」
 遥久と白川の周囲が、光纏もしていないのに光っているように見える。
「何、大したものではありません。上等の白を一本」
「いいだろう。受けて立つよ」
 ふっと遥久の口元が緩む。
(流石「世界一のオトコマエ」……俺、やっぱり負けて良かったかも……!)
 従兄の嬉しそうな顔をうっとりと見つめる愁也であった。



 涼しい海風が頬を撫でて行き、微かに揺れるキャンドルの柔らかな明かりが、不思議な心地よさを醸し出す。
「あーあ、なんかあっという間だったなあ」
 愁也が溜息をつきつつ、デジカメを覗き込んだ。
 そこには沖縄での思い出が詰まっている。青い海に漂う大きなカメに手を振り、数えきれない程の魚に取り囲まれ。
 思いきり駆けまわって、思いきり声を上げて。そんな数日はあっという間に過ぎてしまった。
「これは昨夜の優勝者に、だな」
 白川が手に提げていたワインボトルを、一臣の前に置いた。
「遠慮なくいただきます。今度は本業の方で是非勝負をお願いしたいですね!」
「任せたまえ。そちらは入念に準備してお相手しよう」
 笑いながら白川は籐製の椅子に掛ける。
「流石、と言わせて貰おうか。いざという時の加倉の集中力は」
 遥久がボトルを取り上げ、一臣のグラスに中身を注ぎ入れる。心地よい音と涼やかな色が沁み入るようだ。
「遥久に褒められるとなんか緊張するな?」
 悪戯っぽく肩をすくめて、一臣がグラスを掲げた。そこでふと、寄りかかる暖かさが気にかかる。
「友真、眠いなら部屋に戻るか?」
「えっ? だ、大丈夫! 全然大丈夫やし!!」
 友真が慌てて目を見開いた。
 本当は体温が上がる程に眠いのだ。こうならないように昼間セーブしたつもりだったのに……大好きな海が、それを許してくれなかった。
 眠いけれど、この場に居たい。この空気を共有していたい。
「そうか、じゃあ何か飲むか? ワイン、はまずいな……せっかくだから夏っぽくサマー・デライトはどうよ?」
 やがて運ばれてきたのは友真の髪と同じ、オレンジ色のノンアルコールカクテル。
「炭酸好きだろ」
「ありがと、一臣さん」
 ふにゃりと笑う友真。夏らしいカクテルはまた一つ、大事な思い出に。
「明日はお土産にシーサーの置物とか買いましょー! お揃いのやつ!」
 愁也がシーサー顔の自分の移ったデジカメの横で、同じ顔をして見せる。いやよく見ると、ちゃんと口が開いたのと閉じたので対になっている。
 不意に遥久が、真面目な顔で白川に向き直った。
「無理を申しあげましたが、楽しかったです。お付き合い有難うございます」
 白川がくすくす笑う。
「最初は驚いたがね。こちらも楽しかった。どうも有難う」
 笑いながら右手を差し出すと、ほんの一瞬だけ驚いたような顔になった遥久が握り返した。
「そうですか、それは良かった。では次もまた是非御一緒に」
 次もまた。ご一緒に。その言葉と同時に、ぐっと手を握る力を強くする。
「え?」
 慌てて引っ込めようとした手を、がっちり上から掴むのは愁也。
「やったー、先生また一緒に旅行しましょうね!」
「わーい、旅行! また遥久さん、お願いしまっす!」
 友真がぱちぱちと拍手。一臣もグラスを傾けながら追撃に加わった。
「来年もお裾分けがあるといいな!」
「来年じゃなくても、冬がある! 北海道でスキーもいいかな、スノボでも! また行こうぜ!」
「いやちょっと、あの、だね」
 白川が口を挟む間もなく、盛り上がって行く一同であった。
 

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5823 / 加倉 一臣 / 男 / 27 / 大学部5年】
【ja6837 / 月居 愁也 / 男 / 23 / 大学部4年】
【ja6843 / 夜来野 遥久 / 男 / 27 / 大学部5年】
【ja6901 / 小野友真 / 男 / 19 /  高等部3年】

同行NPC
【jz0089 / ジュリアン・白川 / 男 / 28 / 久遠ヶ原学園大学部講師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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素敵な沖縄リゾート、大いに楽しませて頂きました。
NPCが役得で羨ましい限りです。
ビリヤードのシーンは都合上省略せざるを得ず、非常に残念な気もいたします。
今回も大変楽しいご依頼を頂戴しまして、本当に有難うございました!
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エリュシオン
2014年08月28日

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