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『Special Surprise for Sunshine 』
加倉 一臣ja5823)&小野友真ja6901


 2014.07.22.00:00:01

 ――この物好きめが。今日もまた笑顔を見せてくれな。愛してるよ、これからもよろしく。
 ――物好き上等って最初に言うたのは変わってへんのです、愛してるぜい! これからもよろしくー!

 加倉 一臣と恋人同士になって迎える、小野友真の三度目のバースデー。
 出会った頃は、16歳。関西弁がキュートな少年は、19歳となり―― 相変わらず、関西弁はキュートであった。
 一臣に対してのツッコミが、ややキレを増した感じであろうか。
 変わらないところ、成長したところ。

 共に過ごし、暮らすようになり、新しい発見は尽きることなく。




 窓の外では小鳥がピチチと鳴いている。なんて爽やかな朝。
 Happy birthdayを告げて眠りに就いて、まさかそれだけで終わるとでも?
(本番は寝て起きた後、ってね)
 さりげなく前日のうちに各種仕込みを終えている一臣は、熱したフライパンへ生地を流し入れた。


 ――ほわほわと、甘い香り。温かな気配。
 夢の続きを見ているような気持ちで、友真が眠い目を擦る。
 一緒に居られる事が、何よりのプレゼント。恋人からの嬉しい言葉でご機嫌な誕生日を迎えた――そう、思っていた。
 いた。
「パンケーキ!!」
 寝起きの弱い友真が、匂いの正体を察すると同時に跳ね起きる。
「Good morning,Honey?」
「ハニーやなくて、メープルシロップやんな!? ふぉおおお、ホイップバターとでパンケーキ! めっちゃ良い匂い!」
「愛の言葉をまさかのスルー」
 テーブルで友真を待っていたのは、バターミルクの風味が香るパンケーキ。小瓶にたっぷりメープルシロップと、口当たり軽いホイップバターを一緒にどうぞ。
 表面をカリカリに焼き上げた厚切りベーコンと友真お好み仕上げの目玉焼き、それから季節の夏野菜サラダ。
「全部好き過ぎて何だこれ泣きそう」
 夢の続きだろうかと、友真は背伸びをして一臣の頬をつねった。
「痛い、普通に痛いから」
 まだ少し寝ぼけてる?
 笑い、一臣はコツリと額と額をぶつける。感触と温度が、夢じゃないよと伝える。
「コーヒーは俺が淹れるー!」
 完璧なレイアウトに、一つだけの余白。
 ウキウキと、友真は棚からコーヒーカップを取り出した。




 午前中は久遠ヶ原島内を二人でドライブ。
 BGMの友真お気に入りの曲が、全開車窓から後ろへ後ろへ流されてゆく。
「SO! HEY!!」
「ほんとお前、これ好きな?」
「幻のCDやねんで? 中古屋で発見した時、運命感じたわ!!」
 ハンドルを握る一臣が笑い、友真は窓から腕を伸ばして御機嫌に歌った。
「海ー! 海やーーーー!!」
「からのー 左に曲がって、登りまーす」
 絶景海岸線から、緑の濃い丘に向かう道へとカーブ。
「でっかいアゲハー! この辺も自然豊かやんなー……」
 海も木々も、大好きです。大自然万歳。
 日常生活ではなかなか足を踏み入れる機会のない場所が、久遠ヶ原にはたくさんある。
 四季折々に、表情を変える場所がある。
 去年は奮発して海外旅行だったけれど、今年は落ち着いて日常と向き合うような。日々を愛せるような、そんなデートプラン。


 丘を登りきる前に、一臣は細い道の入り口に車を止めた。
 名も知らぬ野鳥が梢で鳴いている。
「こちらへどうぞ」
 紳士よろしく恭しく、一臣が手を差し出す。
「何があるん? 秘密基地?」
「惜しい」
 歩きでしか入れない道の先には、秘密基地ならぬ隠れ家風の惣菜屋。
 自家製パンやキッシュ、ケーク・サレを主軸に、鮮やかサラダやスープなど、楽しげにショーウィンドウを飾っている。
 唐揚げ、コロッケ、フリッター。揚げ物は、注文を受けてからの揚げたてアツアツ。
「俺は! 帆立と肉と蟹と米が好きです!」
「少しずつチョイスするか。蟹…… クリームコロッケでも良いか?」
 計り売りだから、無理なく好きな分だけ頼めるのも魅力だった。
 ピタパンを一緒に買って、あれこれお好みでサンドできるように。

 残りは歩いて丘の上へ。
 左手で紙袋を抱える一臣の、右手は友真の左手と繋がっている。
「心が洗われる感じがするなー」
「なー……。風も気持ちいい。いい天気だな」
「サンシャイン! ですから!!」
 ぶん、と大きく手を振り回せば、一臣が転びそうになる。慌てて抱き留めて、くふふと友真は笑った。
「どうした?」
「気づかん? ちゃーんと、背ぇ伸びてんで?」
 力だって、ついている。出会った頃ならきっと、一臣の態勢を崩すくらいに引っ張ることもできなかったかもしれないし、支えようとしたなら一緒に潰れていたかもしれない。
「……出会った頃は、こんなに小さかった友真が」
「ベタなボケやんな?」
 膝丈を指す恋人へ、ツッコミを入れることにも慣れた。
 いつも通りの二人だけれど、何故だか新鮮な心持ち。
「たとえばさ」
 ――もうすぐ、頂上へ。
「この、登ってきた道が俺たちの過ごしてきた時間だったり、乗り越えてきたものだったりしてさ」
 風が、少し強くなる。木々がざわめき、視界が広くなる。
「ほんとの道は、まだまだもっと続くけど…… こうやって、ご褒美みたいな景色が広がってるのって。なんか良いよな」

 車の中から眺めた海が、一望できる場所へと到着した。

「…………やだ」
「……。キザでしたか?」
「幸せすぎて超歌い出したい」
「!?」
「幸せを歌っていいか、俺作詞作曲で!!」
「ついにSOHEYを越えるか!」
「それは別腹ーーーー!!」
 繋いだ手をぎゅっとして、友真は叫んだ。
 
(あぁ。最高の日だ)

 吹き上げる風を受けて、太陽の光を全身に浴びて、めちゃくちゃな旋律で友真が歌う。
 笑いながら、一臣が合いの手ハミング。
 デビューしちゃう?
 あかん、これ二度は歌えへん、覚えてへん!
 幸せを歌ったんじゃないのかよ! 忘れるような幸せかよ!!

 幸せ丸ごと、一臣は友真を抱きしめた。




 一臣セレクトおすすめドライブコースを堪能し、帰宅する頃には一番星が空に輝いていた。
「なぁなぁ、ケーキどんなん買ったん? 苺? チョコ? 苺?」
 ドライブがてらに立ち寄ったパティスリーは、友真の知らない店。
 一臣が撃退士の傍らで生業としている、ITデザインの仕事先だという。
 撃退士の仕事ならいくらでも背中を守るつもりだけれど、デザイナー業となればそうもいかない。
 普段は触れることのできない一臣の一面を覗いた気がして、なんだかくすぐったい。
「それはディナーの後の、お楽しみ」
「ディナー! 一臣さんの手作り?」
「もちろん。下ごしらえは済ませてあるよ、ちょーっと待っててな」
 そわそわ落ち着かない友真へ、一臣が片目を閉じて。
「何手伝お、お皿出す?」
「そうだな、それじゃあ――……」




 明かりを落として、キャンドルライトに浮かぶお子様 じゃない、大人様ディナー。

 甘めソースのハンバーグにサフランライス。
 帆立のグラタン。
 ポテトサラダ。
 かぼちゃのポタージュ。

 腕によりをかけ、何より愛情をたっぷり籠めた、一臣スペシャル。
 その美味しさは、食べる前から知っている。
 友真の『大好き』を知っている、ここでしか味わえない最愛の味。
「改めて。誕生日おめでとう、友真」
 嬉しさに肩を震わせる友真へ、一臣が身を乗り出して鼻先を触れ合わせる。
「ふふ…… 19も最高の年にする……一臣さん、だいすき」
「    」
 一臣さんは大人なので、涙声で言ってのける恋人との間に立ちはだかるテーブルに殺意を覚えてなどいません。


 美味しいを連呼して、満面の笑みで、時おり目の端に涙を浮かべる友真が、一臣にとっての幸せの形そのもので。
 共に過ごし、暮らすようになり、新しい発見は尽きることなく。
 愛しさは、日ごと深まるようで。
(――本当に)
 本当に、テーブルが邪魔だ。


 バースデーソングと共に、19本のロウソクを一息に吹き消す。
 特注ケーキは赤いリボンで周囲を結んだ、サンシャインのシャルロット。
 下がオレンジ風味のレアチーズ、上は香り豊かなオレンジムースの二層仕立て。
 太陽イメージして飾られたブラッドオレンジが、トッピングのクラッシュ寒天から透けて輝く。
 夏らしく爽やかな酸味で、満足感のある逸品は、友真のイメージを伝えて作ってもらったものだ。
「そして、これが最後のプレゼント――」
「え、まだあるん?」

 ――今後5年間はプレゼント『じゃがりこ』でもいいかなって

「ほんまにじゃがりこやった!」
 それは昨年の誕生日での他愛ない会話。
 差し出された期間限定味に、友真はテーブルへ突っ伏す。
「美味しくて大好きやから、後で一緒に食べような!」
「両端から?」
「……俺は3年で大人に近づいた気がしてんけど、一臣さんはオ」
「よし、ケーキ食べよう」




「……最高の一日ありがと」
 就寝前の、おやすみのぎゅー。
 いつもより、力が入る。
「…………ん」
 一臣は額、それから目元へと遊ぶようなキスを返す。
 言葉にするのが、なんだか照れ臭かった。


 眠りに落ちるその時まで、握った手を離さないで、幸せを抱きしめて。
 今日一日で、一生分の愛してるを言った気分。
 だけど、ふたりで歩く道は、これからも。この先も。
 風吹く丘の上で見たような景色を、何度だって見ていこう。
「ありがとう。一臣さん、好きやで」



【Special Surprise for Sunshine 了】


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5823/ 加倉 一臣 / 男 /27歳/ インフィルトレイター】
【ja6901/ 小野友真  / 男 /19歳/ インフィルトレイター】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼、ありがとうございました! バースデーデート、お届けいたします。
ケーキのモデルは実際に作ったことのある、非売品です。その他、心ばかりのプレゼントも詰め込みました。
これからも、お二人が素敵な景色と出会ってゆきますよう。
アクアPCパーティノベル -
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エリュシオン
2014年09月03日

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