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『タコアヤカシと再戦!? 』
リィムナ・ピサレット(ib5201)

●タコアヤカシと再会

「二年前に全滅させたはずのタコアヤカシ達が復活したと聞いた時は、我が耳を疑ったけど……どうやら本当らしいね」
 相棒の滑空艇・改弐式のマッキSIに乗り込んだリィムナは、二年前に依頼で訪れた海の上を再び飛んでいた。
 リィムナの視線の先には海を埋め尽くすほどのアヤカシのミニタコがおり、その中心には大蛸入道――別名クラーケンと呼ばれる十五メートルサイズの大タコアヤカシが一匹いる。
「本当に二年前と同じ光景だけど、やっぱり何かが違うよ。でも戦うことは避けられないみたいだし、念の為に水の戦い用の服に着替えといて良かったよ。洗濯物をあんまり増やすと、家族に迷惑かけちゃうしね」
 リィムナはスクール水着の日焼け跡が残る体に、『祭』と白文字で書かれた赤い前掛けを上半身につけており、白い水褌を下半身につけていた。
「さて、雑魚のミニタコアヤカシはとっとと倒しちゃおうか。二年前から成長しているところ、ちゃんと証明しなきゃね!」
 ニヤっと笑ったリィムナの頭にはローレライの髪飾りがあり、大きく口を開いてスキルの【魂よ原初に還れ】を歌いだす。
 歌声が響き渡る中、ミニタコアヤカシ達は次々に消滅していく。
「ふふんっ♪ もうこの程度の敵なら、あたし一人で充分だね!」
『そうはいかないニョロよ〜!』
「ふえ?」
 妙な男の声が聞こえてきた方向を見ると、リィムナの体ほどの大きさの赤い拳が三つほど向かってきたのを見て、慌てて横にそれる。
「あわわっ!? 今の攻撃って……」
『ふふっ、そうニョロよ〜。ワシニョロよ〜』
 ミニタコアヤカシは全滅させたものの、大タコアヤカシはまだピンピンしていた。
「やっぱり親玉は簡単には倒せないね。……にしても、喋るアヤカシなら上級なのかな? 二年前の親玉は喋らなかったし、やっぱり別のアヤカシだね」
『そうニョロよ〜。憎き兄の敵めぇ〜!』
 大タコアヤカシに憎しみの宿った眼で睨まれ、ふとリィムナの頭の中に二年前に倒した大タコアヤカシの姿が浮かぶ。
「『憎き兄の敵』って、まさか……」
『そうニョロ〜! ワシは二年前、貴様ら開拓者に倒された大蛸入道の弟ニョロ〜!』
「……兄弟、だったんだ」
 上級アヤカシならばともかく、大タコアヤカシ程度にも兄弟というものが存在していることを知ったのがはじめてだったリィムナは少し遠い目になる。
『ワシは貴様ら開拓者に復讐する為に、兄上が倒された日から毎日海底でスクワットをして、上級アヤカシになったニョロよ〜!』
「……スクワットを二年間、毎日したら、アヤカシって上級になれるんだ」
 感心半分、呆れ半分で複雑な気持ちになったリィムナは、妙に冷静になった。
 しかし大タコアヤカシは真剣な殺意をリィムナに向けながら、海の中に隠していた足を出していく。
「あっアレ? タコの足って確か、八本だよね?」
 だが海から出てきた足は八本だけではなく、次々と出てくる。
 その一本一本を指さしながら数えていたリィムナは、全ての足の本数を知った時に驚きの表情を浮かべた。
「はっ八十本っ〜!?」
『ふははニョロ〜! これが修行の成果ニョロよ〜! ちなみに数だけではなく、長さも十倍ニョロ〜!』
「何でそんな成長の仕方をしたんだよ! スクワットにそんな効果はないはずなのにぃ!」
 海を埋め尽くすほどの大タコアヤカシの八十本の足を見て、リィムナは慌てて海から離れようとマッキSIを操縦する。
『逃さないニョロよ〜! くらえニョロ〜! 必殺、八十拳!』 
 大タコアヤカシは八十本の足をグイっとまげて拳の形にすると、リィムナ目掛けて放ってきた。
「うっきゃあああ!」
 拳は吸盤のおかげでぶつかった時には衝撃があるものの、体にダメージはほとんど無い。しかし衝撃が次々と襲ってきたせいで、リィムナはマッキSIから手を離してしまった。
「あっ、ヤバイ!」
 リィムナから離れたマッキSIはすぐさま大タコアヤカシの足の一本が捕まえて、陸の方にポーンッと投げてしまう。
「ああーっ! マッキSIっ!」
 相棒に手を伸ばそうとしたリィムナだったが、その腕にはアヤカシの足が巻き付いた。
「しまった!」
 空中では自由に動くことができず、腕を捕まえられたリィムナはそのままもう片方の腕、そして両足をも捕まってしまう。
『両手両足の動きは封じさせてもらったニョロよ〜。それと厄介な歌をうたう口も封じるニョロ〜!』
 大タコアヤカシは吸盤をリィムナの口につけて、声が出ないようにする。
「んむぅ〜!(何するんだよ!)」
『ふははニョロ〜! このまま叩き潰してやるニョロよ〜!』
 そして大タコアヤカシは次に空中で足を動かし、バシバシッとリィムナの体を叩き始めた。
「んぐぐっ!(イタタっ!) ……んぐっー!(もう怒った!)」
 涙目になったリィムナは何とか片腕を曲げると、前掛けの中に手を入れて符を数枚取り出した。【白面式鬼】を発動するべく、練力を込めて式を召喚し、自分の体を拘束している大タコアヤカシの足を解かせる。
「今度はこっちの番だよ!」
 そして空中に浮いている【白面式鬼】に支えられながら、
 自由になった手で再び符を手にすると【黄泉より這い出る者】を発動させた。
『ぐはっニョロ……!』
 すると一瞬のうちに大タコアヤカシは大量の血を吐いて、海に沈んでいく。
 その間にリィムナはマッキSIを呼び戻し、再び乗って海から遠ざかる。
「残念だけど、成長しているのはあたしも同じなんだよ。あたしだってこの二年間で、超強くなったんだから」
 半べそをかきながらリィムナは、大タコアヤカシが沈んでいく姿を見続けた。


○戦い終えて

「はあ……。海の近くに温泉宿があって良かったよ」
 マッキSIで帰ろうとしたリィムナだったが、その途中で温泉と宿を見かけて寄った。日帰りでも良いと言うので、温泉に入ってサッパリしようと思ったのだ。
 仲居に話を聞いたところ、ここの温泉はぬるめなのだが、リィムナのように日焼けした肌には良いらしい。
 先程倒したアヤカシ達のせいで、海の近くにあるこの温泉宿にはリィムナ一人しか客がいないと言うので露天風呂に入ることにした。
「……でも今日は日焼けの他に、打ち身もヒドイなぁ。イタタっ」
 リィムナの肌は今日一日で日焼けをした他に、アヤカシに打たれた跡も痛々しく残っている。特にお尻は、お湯がしみるほどに叩かれた。
「ううっ……! 何故だか分からないけど、お尻をいっぱい叩かれたよ。あたしって、お尻を鍛える為に生まれてきたのかな?」
 そう思うほどに、お尻をしょっちゅう叩かれるリィムナであった。


<終わり>


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ib5201/リィムナ・ピサレット/女/外見年齢10歳/シノビ】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 依頼をしてくださり、ありがとうございました(ペコリ)。
 タコアヤカシ達との再戦シーンはいかがだったでしょうか?
 シリアスというよりはコメディなストーリーになりましたが、楽しんで読んでいただければと思います。
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舵天照 -DTS-
2014年09月18日

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